衛生管理者

登録日:2020/06/30 Tue 13:48:08
更新日:2020/07/01 Wed 22:40:25
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衛生管理者(えいせいかんりしゃ)とは、労働者の健康を守るために会社の中に配置される人のこと。また、厚生労働省認定の国家資格(免許)である。

概要

労働安全衛生法に基づいて定められた国家資格(免許)である。簡単に行ってしまうと、職場の労働環境を改善し、労働者の健康を守り、病気や労働災害を予防するために設定されている。

社員の健康管理においては、医師(医者)など医療従事者の仕事だけで全てを賄うのは困難であるため、この制度が定められた。

生活習慣病や職業病などを予防するために社員に健康診断を受けさせる(スケジュールを立てる)ことや、職場の見回りなどが衛生管理者の主な仕事である。近年はハラスメントやうつ病に悩んでいる人のためのサポートなど、メンタルヘルスにおいても重要な役割を持っている。

企業によっては衛生管理者免許の取得が、昇進、昇給のための条件として課されていることもある。特に工場ではこのようなケースが多い。

この資格を取るためには原則、国家試験に合格する必要があるが、一定の条件を満たせば試験を受験しなくても衛生管理者の資格を得ることが可能である(後述)。

従業員50人以上の職場では必ず最低1人以上は衛生管理者を選任する必要がある(必置資格)。ちなみに従業員200人以上になると必要な衛生管理者の人数は増えていき、従業員3000人以上になると最低でも6人以上の衛生管理者が必要となる。
また、従業員1000人以上の場合、最低1人以上、専任の衛生管理者(他の仕事と兼務しない)を置かなければならない。
危険な作業が多い工業、農業、運送業、医療などだけでなく、商業やサービス業(保険業や、銀行など金融業なども含まれる)も対象となる。

大企業は従業員数1000人以上なので、中小企業でも一定規模以上なら衛生管理者を置く義務がある。
従業員数10人以上50人未満の職場では、衛生管理者は必置資格ではないが、代わりに安全衛生推進者という立場の人を選任しなければならない。こちらは衛生管理者と異なり、講習を受けるだけで取得できる。

ちなみに国家公務員の職場(官公庁など)では、衛生管理者を置く義務はない。しかし地方公務員の職場には衛生管理者を置く必要がある。

区分

区分としては第一種衛生管理者免許第二種衛生管理者免許がある。
工業系や医療など危険な作業が多い業種では第一種衛生管理者が必要である。
逆に危険な作業が少ない商業やサービス業では第二種衛生管理者でもOKである。
もちろん、第二種で対応可能な職場でも第一種免許を持っているに越したことはない。第一種は第二種の完全上位互換である。

また、特に有害な業務(放射線や有害な化学物質などを取り扱う業務など)のために、第一種衛生管理者のさらに上位の衛生工学衛生管理者免許も存在する。

ちなみに船乗りのために船舶衛生管理者という資格が、衛生管理者とは別に存在する。
船舶衛生管理者は船員法という法律で決められた国家資格であり、国土交通省の認定資格である(衛生管理者は厚生労働省の認定資格)。
船乗りは長い年月陸上から離れるために、外部からの医療支援を受けることができず、船舶が転覆や沈没する危険性があること、そして、船の中で生活するため事実上の24時間労働となってしまうことが船舶衛生管理者が必要な理由である。
ちなみに船舶衛生管理者は予防注射(ワクチン接種)や血圧測定、止血などの医療行為が一部解禁されており、これが衛生管理者との違いでもある。

似たような名前の資格に食品衛生責任者食品衛生管理者があるが、衛生管理者とは全くの別物である。
食品衛生責任者は飲食店や喫茶店の営業や、小売店(スーパーマーケットなど)で食べ物を販売する際に必要となる都道府県の認定資格(公的資格)である。
食品衛生管理者は、食品を加工する工場などでリーダーとなるために必要な国家資格である。

衛生管理者国家試験

衛生管理者になるためには原則、国家試験に合格する必要がある。

ただし、医師、歯科医師、薬剤師、保健師の資格を持つ者は試験を受けなくても自動的に衛生管理者になることができる。
(厳密に言えば、医師や歯科医師は、衛生管理者の免許を持った人の代わりに、会社が衛生管理者として選任することができる。また、薬剤師や保健師の資格を持っていれば、申請するだけで衛生管理者免許もついてくるのである。)

また、学校で保健体育を教えている先生(教師)も、医師や歯科医師と同様に、衛生管理者と認められる。

受験資格

衛生管理者国家試験には実は受験資格が存在しており、最終学歴に応じた実務経験が必要となる。
4年制大学、短期大学、高等専門学校(高専)を卒業した人は1年以上の実務経験が、最終学歴が高校卒業なら3年以上の実務経験が必要である。最終学歴が中学校の場合は10年以上の実務経験が必要になる(ただし高卒認定試験に合格すれば高卒と同等の扱いになる)。未成年者*1や学生の受験はほぼ不可能である。
ちなみに専門学校(専修学校)卒業の場合は少しややこしくて、一部の学科なら大卒などと同等の扱い(実務経験1年)で受けられるが、ほとんどの場合は高卒と同じ実務経験3年が必要である。
実務経験とは、簡単に言ってしまうと、社員の健康管理や衛生環境の改善などがあげられる。実は普段当たり前のようにやっている職場の清掃(掃除)や、机の周りの整理整頓なども、衛生環境の改善として実務経験に含まれる。自分に受験資格があるかどうかは会社の上司や先輩などに聞いてみると良い。

試験内容

労働衛生、労働生理、関連法令の3科目が課される。
試験時間は3時間(180分)。100点満点中60点以上で合格となる。ただし、足切り制度があり、3科目のうち1科目でも得点率40%未満のものがあったら、総合評価が60%以上でも不合格となってしまうので要注意。
第一種試験では有害業務を含めたすべての範囲から出題されるが、第二種試験では有害業務に関する内容は除外される。
解答形式は5択のマークシートである。ITパスポートや危険物取扱者などと同様に、記述問題はない。

合格率はだいたい40〜50%くらいであり、国家試験の中では比較的簡単なほうであり、特に難関という訳でもない。
同じビジネス系の資格なら、情報処理のITパスポートや、経理の日商簿記3級と同じくらいの難易度だろう。工業系の資格なら危険物取扱者の乙種と同じくらいの難易度とも言われている。

ただし、後述する通り、一般常識だけで合格できるほど甘い試験ではないので、数ヶ月程度は真面目に勉強する必要がある。高校理科(化学、生物)の基礎知識がないと苦戦する。

試験は毎月実施されているが、会場はとても少ないため注意が必要である。
基本的に安全衛生技術センターがある都道府県(北海道、宮城県、千葉県、愛知県、兵庫県、広島県、福岡県)でしか実施されない。しかもどの会場も県庁所在地から遠い。そのため、住んでいる県によっては受験前日または受験直後に宿泊を伴うこともある。
ただし、年1回、安全衛生技術センターがない都道府県でも、大学などの施設を借りて出張試験が行われることがある。安全衛生技術センターから遠い地域に住んでいる人なら、これを利用するのも手だ。

  • 労働衛生
職場環境の管理や健康管理に関する問題が出題される科目。職場内に必要なトイレ(便器)の数についての問題も出題される。
それほど難しくはないが、一般常識だけでスラスラ解けるような問題はほとんどないため、ちゃんと勉強して知識を身につける必要がある。
特に第一種では、危険物取扱者の乙種で出題されるような有害物質に関する問題も出てくるため、中学校の理科や、高校の化学基礎が苦手だとキツいかも。
第二種では有害業務に関する内容は省略される。

  • 労働生理
人間(ヒト)の体についての問題が出題される。
高校や大学で生物学が得意な人なら楽勝な科目だが、苦手な人だと苦戦する。
感染症や食中毒に関する問題が出ることもある。

  • 関連法令
労働安全に関する法規や制度などに関する科目。
中学校の社会科や高校の現代社会が苦手だった人だと大変。
第二種では有害業務に関する内容は省略される。

  • 特例第一種
既に第二種衛生管理者免許を持っている人が、第一種衛生管理者免許を取りたい場合に受験する試験。
内容は労働衛生、関連法令の2科目で、有害業務に関係する範囲のみ出題される。
有害業務に関係ない内容や、労働生理は免除される。
試験時間は2時間(120分)。合格ラインは満点の60%以上である。ただし、労働衛生と関連法令のどちらかが得点率40%未満だった場合は、総合評価が60%以上でも不合格である。

第二種免許を持っていなくても第一種試験を受けることは可能なので、正直に言うと第二種を飛ばして、完全上位互換である第一種をいきなり受ける人も少なくない。
しかし、第一種は範囲が広いため、まずは第二種の範囲を片付けてから、特例第一種で有害業務に特化して対策するという人もいる。


追記、修正お願いします。

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