専門学校

登録日:2023/04/01 Sat 16:35:06
更新日:2023/05/28 Sun 16:23:14
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専門学校(せんもんがっこう)は、学校の種類の一つ。
大学や短期大学と並び、高校を卒業した人が進学できる場所の一つとして有名である。

高等専門学校とは異なる。

概要

主に教養(と学部・学科によっては職業的なスキル)を身に付ける大学とは対照的に、専門学校では英語数学などといった教養的な勉強をほとんどしないのが特徴。
しかしその代わり、研究などの職業とあまり関係のない勉強をしない分、将来仕事に就く上で必要な専門分野(要は実務に直結した勉強)に特化しているのが強みである。文字通り、「専門学校」である。
また大学に比べて国家資格をはじめとした各種資格の取得に力を入れているのもメリットと言えるだろう。

ただし大学と比べると卒業後の進路が限定されやすいので、専門学校に進学する際には高校生のうちから職業に対する意識を持っておく必要があるとも言える。また職人を目指すならともかく、総合職や管理職を目指す場合はどうしても大卒の方が有利になってしまう点も考慮する必要がある*1

専門学校の中でも国から認められた正規の学校のことを特に専修学校(せんしゅうがっこう)という。
専修学校の条件としては
  • 卒業までに必要な年数が1年以上であること。(多くは2年以上だが)
  • 年間の授業コマ数が800時間以上であること。
などがあげられる。

2年制または3年制の専修学校を卒業すると専門士(せんもんし)の、4年制の専修学校を卒業すると高度専門士(こうどせんもんし)の称号(学位)を得ることができる。
2年課程の専門士の場合、学歴としては4大卒よりは下、短大卒とほぼ同等、高卒より上と認定される。就職後の初任給でも短大卒とほぼ同等の待遇を得られることが多い。

専修学校の中には通信制の短大や4大とのダブルスクール制度があるところも存在する。この場合、卒業すれば専門士と短期大学士(または学士)の称号を両方得ることができる。
一部の資格は短大卒や4大卒じゃないと取れなかったりするので、ダブルスクール制度は意外と需要がある*2

ちなみに専修学校と異なり、無認可の専門学校も存在する。
こちらは奨学金や通学定期券、学生割引などの公的な制度がほぼ利用できないため、進学する際には注意が必要である。
無認可校は最終学歴も高卒扱いとなってしまう。仮に履歴書に書いたとしても「私はホグワーツ魔法魔術学校出身です」と書いているのと同じことである。でも学費はしっかり取られる。
主な見分け方としては無認可校は「学校」の名称が使えず、「学院」「スクール」「アカデミー」「カレッジ」などの名称を使用していることが多いという特徴がある。


主な専門学校のタイプ

専門学校には以下のようなタイプがあると言われている。

資格取得のために通学が必須となるタイプ

美容師や理容師*3などを養成する専門学校が該当する。看護師や臨床検査技師、栄養士などの医療系の国家資格もこのタイプであることが多い。
これらの資格は「その資格が無ければできない仕事がある」というタイプ(業務独占資格)なので、持っていればかなり強いといえるだろう。
しかしその反面カリキュラムが厳しく、国家試験に合格できそうにない学生は容赦なく留年または退学に追い込まれてしまうというデメリットもある。特に医療系の専門学校の場合、高校までの基礎学力(特に化学、生物学)に大きく左右されがちであるため「学力検査(入学試験)が無いから」という安易な理由で入学するのは全くオススメしない。進学する場合は覚悟が必要だろう。

なお医師、歯科医師、薬剤師、獣医師に関しては大学の6年制の学科(医学部医学科、歯学部、薬学部農学部獣医学科)を卒業しなければならないので、専門学校では取ることができないので要注意。
また管理栄養士は4年制の大学または専門学校を卒業しなければ受験資格が無い(ただし2年制の専門学校に通って栄養士になった後に一定年数以上の実務経験を積んでから管理栄養士の国家試験を受験するというルートも一応存在する)。

通学が実務経験となるタイプ

自動車整備士調理師、製菓衛生士、パン製造技能士、建築士、保育士、介護福祉士などを養成する専門学校が該当する。
これらの資格は高卒でも取れなくはないが、国家試験を受験するために「一定年数以上の実務経験」が要求されるという特徴がある。
専門学校に通えば通っていた期間が実務経験と認定される上に国家試験の対策授業も充実しているためとても有利になる。

なお調理師など料理系の資格は業務独占資格ではなくあくまで名称独占資格に分類されるため、持っていなくても料理人として働くこと自体は可能である*4。しかしながら多くの飲食店では調理師や製菓衛生師などの資格保有者しか採用しないという場合も多いので、資格を取る意味は大きいのである。
※ちなみに調理系の資格の中でもフグ調理師*5や船舶料理士*6のようにその性質上、業務独占資格に指定されているものも一部存在する。

ビジネス系の専門学校

日商簿記検定や全経簿記能力検定などの合格を目指す。学校によってはITパスポートや各種パソコン検定(MOSなど)、秘書技能検定などの勉強もする。
これらの資格は高校生でも頑張れば取ることが可能だが、専門学校に行けば対策授業が充実しているのでオススメ。
日商1級か全経上級に合格すると税理士国家試験の受験資格が得られるので、在学中に税理士試験の簿記論や財務諸表論に合格する人も稀にいる。
商業高校から進学する場合は実質的に高校の延長という感じになる。ただ多くの商業高校生が取る全商簿記実務検定と異なり日商簿記検定は大学生や社会人にも人気が高い試験なので2級でもなかなか難易度が高い。入ってからはちゃんと勉強しましょう。

医療事務系の専門学校

将来医療事務として働きたいという人が行くところ。その性質上、学生は女性が多い。
ただ医療事務の資格というのはほぼ全てが民間資格であり国家資格が存在しない*7。また知名度が高い資格もほとんど無いため、旨味はあまり大きくないかもしれない。むしろ容姿やコミュニケーション能力の方が重要だったり。
ちなみに近年では大きな病院を中心に「採用条件:大卒以上」というところが増えているのだとか。このようなところに就職したい場合、ダブルスクールが必要となる。

公務員系の専門学校

公務員採用試験の勉強をする。学校によっては簿記やITなどの勉強をする場合も。
特にこれといった資格が取れる学科ではないが、公務員になれれば待遇が安定しているので人気が高い。
ただ警察官自衛隊、消防士などの公安系の職種ならともかく、都道府県庁や市役所といった行政系の職員の採用試験はかなり難しいので入学してからはちゃんと勉強しなければならない。

IT系の専門学校

主にC言語やJava、Pythonなどのプログラミングの勉強をする。その性質上、学生は男性が多い。卒業後はプログラマーやシステムエンジニア(SE)、Webデザイナーなどの職種に就く者が多い。
工業高校や商業高校でも情報処理に関する勉強はするが、専門学校であればより深い勉強ができる。
また資格取得に力を入れている学校では最初に基本情報技術者試験(FE)の勉強をし、FEに合格したらより難易度の高い国家試験(応用情報技術者試験など)に挑戦することが多い。
ただ初心者にとっては比較的難易度が低いとされるFEでもそれなりに覚えることが多いため、今までマトモな勉強習慣が無かった人にとっては結構辛いかもしれない。
またそもそもFE自体、情報工学系の大学生や既にITエンジニアとして働いている人から見れば基礎レベルの資格でしかないという点に留意する必要がある。

クリエイター・エンタメ系の専門学校

漫画・イラスト・CG・アニメ・ゲーム・音楽・デザイン・俳優・声優などの専門学校が該当する。
ゲーム系の専門学校であればプログラミングの勉強をすることも。
資格取得というよりは職人養成のための学校という印象が強い。
卒業後はクリエイターを目指したり、もしくは関連職種に就くことを目標とする。

ファッション・服飾系の専門学校

ファッションデザイナーやパタンナー、スタイリストなどを目指す。就職先はアパレル関連企業が多い。
色彩検定やカラーコーディネーター検定*8、販売士*9などの資格を取る者も多い。

観光系の専門学校

観光業界への就職を目指す。ホテル(旅館)、鉄道会社、航空会社なども就職先として想定される。
取得を目指す資格としては旅行業務取扱管理者*10、ホテルマネジメント技能士、世界遺産検定、旅行地理検定、TOEICなどがある。

職業能力開発大学校

通称ポリテクカレッジ。高校卒業後に入学できる基本的には国立の大学校である(ただしパナソニックやデンソーなど一部の民間企業が設立した能開大も一部存在する)。
厳密には文部科学省が管轄する学校ではなく、厚生労働省が管轄している。そのため卒業後に学歴として認められるかどうかは企業によって異なる*11。履歴書でも学歴欄ではなく職歴欄に書くのが普通である。
機械系、電気系、情報系、建築系など工業に関する学科が中心*12ほぼ工業高校の延長である。
2年制の専門課程と4年制の応用課程がある。また専門課程のみを置くポリテクカレッジのことを特に職業能力開発短期大学校という。

ポリテクカレッジのメリットとしては
  • 学費が一般的な専門学校より安い。
  • 就職先によっては4大卒または短大卒と同等の待遇を受けられる。
  • 一般的な専門学校より自由時間が多い。長期休暇も長め。
などがある。

デメリットは
  • 学歴として認められない場合がある。
  • 専門課程を卒業しても文科省管轄の大学に編入することができない。
  • 応用課程を卒業しても大学院には行けない。
  • 単位認定が意外と厳しく、留年または退学になってしまう者も少なくない。
などがある。

専門学校のメリットとデメリット

専門学校に行くのはメリットだけでなくデメリットも存在する。

メリット

  • 4大卒よりも早く社会に出ることができる(4年制の専門学校を除く)。
  • 修学年数が3年以下の学校であれば、学費は私立の4年制大学よりは安い。
  • 美容師や看護師などのように高卒では取れない一部の国家資格を取ることができる。
  • 大学に比べて先生方の面倒見が良いことが多い。
  • 大学と異なり一般教科(教養)の授業がほとんど無いため、専門分野の勉強に集中でき効率が良い*13
  • 現場で活躍した経験のある講師から直接指導してもらえる。
  • 学校にもよるが、就職のサポートがある。そのため就職率は大学より高いことが多い。
  • 入学試験の学力検査がないことが多い(一部の専門学校を除く)ので、普通科だけでなく工業・商業・農業といった実業系の学科の高校の出身者でも入りやすい*14
  • 社会人になってからの待遇は高卒よりは良い場合が多い(無認可校を除く)。
  • 出身高校が普通科の場合、高卒でそのまま就職するよりは進路の選択肢が広がる*15
  • 主要都市にある専門学校の場合、立地自体は大学よりも良い場合が多い*16

デメリット

  • 長期休暇が大学に比べて短い。
  • 大学と異なり詰め込み型のカリキュラムになりがち。そのため高校までのように朝から夕方まで授業が入っており自由時間が少ない。
  • 大学に比べて校則が厳しい。
  • メリットの裏返しでもあるが、講師の質は学校毎にバラツキがある。
  • 一部の資格は4大卒や短大卒じゃないと取れない場合がある。
  • 本気で資格取得を目指すような学校の場合、基礎学力や能力が無いと退学に追い込まれてしまう危険性が高い。
  • 就職してからの待遇(特に若いうち)はどうしても4大卒の人たちとは差がある。もっとも、入社して年数が経ってからは実力勝負だという意見も多いが。
  • 資格によっては学校に通わずに独学で勉強しても取れるものもある(IT系、簿記、医療事務など)。学費のことを考えたら工業高校や商業高校で取得した方が良い場合もある。
  • 学費は私立4大よりは安いがこれは修学年数が短いからであり、年間にかかる費用は私立4大と大差ない。むしろ年間の学費は4大よりも高額になる場合すらある。
  • (個人差はあるが)4大卒の人たちに比べて収入が安くなりやすい傾向があるため、奨学金を返済するのが難しくなる可能性もある。
  • 4大卒や短大卒に比べて、卒業後の進路が狭くなりがち。昇任などにも影響が出る可能性がある。
  • 就職を斡旋してもらえるのがメリットと言われるが、学校推薦で内定をもらった場合、それを辞退することが難しい。
  • 専門学校を出ても、希望通りの職種に就くまたは安定した収入を得られる職業に就けるとは限らない(特にクリエイターや声優など)
    看護師などの医療従事者や公務員ならばともかく、クリエイター系の職業や美容師・理容師・料理人などは完全実力勝負の厳しい世界なので離職率も高い(例えば声優などは1学年に1人が成功したら良い方とまで言われる)。
    そのためその分野が好きで本気でプロを目指している、一生をそれに捧げる覚悟がある人以外は後悔する可能性もある。


追記、修正をどなたかお願いいたします。

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最終更新:2023年05月28日 16:23

*1 特に大手に行くほどこの学歴重視の傾向が顕著になりやすい。一方で中小企業の中には学歴に対して比較的寛容な企業も多く、専門卒であっても総合職を狙いやすい場合がある。

*2 例えば栄養士や保育士は専門学校でも取れるが、栄養教諭や幼稚園教諭免許状は短大卒以上じゃないと取れない。

*3 ちなみに美容師と理容師は混同されがちだが実際には別物であり、やって良い業務の内容は微妙に異なる(例えば理容師は顔剃りができるが、美容師はメイクに関係する場合以外は顔剃りをしてはいけない。逆に美容師はまつ毛エクステができるが、理容師はできない。)。

*4 もし仮に調理師や製菓衛生師、パン製造技能士が業務独占資格だった場合、世の中のお母さんやお父さんが家でご飯やお菓子を作れなくなるという問題点が発生してしまう。

*5 フグの内臓には猛毒があるため、専門的知識を持った人が調理しなければ危険。

*6 船員は長期間陸上から離れなければならないため、食中毒を起こさないために特別な衛生管理が必要となる。

*7 一応、診療報酬請求事務能力認定試験という厚生労働省認定の公的資格は存在するが。

*8 東京商工会議所の認定資格

*9 日本商工会議所(日商)の認定資格。リテールマーケティング検定とも言う。

*10 国内旅行のみを取り扱える国内旅行業務取扱管理者と、海外旅行も取り扱える総合旅行業務取扱管理者がある。特に後者は英語力も必要となるため難関である。

*11 ただし公務員であれば応用課程の卒業生は4大卒と、専門課程であれば短大卒と同等の待遇になる。

*12 沖縄職業能力開発大学校ではホテルなどでの接客サービスや物流システムに関する学科も用意されている。

*13 ただしダブルスクールの場合を除く

*14 実業高校は英語や数学などの一般教科の授業が卒業に必要な最低限の単位しか用意されていないため、(学校外でも学習をしていないと)推薦以外で大学に行くことは困難(もっとも大学にも入学試験がほぼ無い学校もある)。

*15 普通科は卒業後に大学や専門学校に進学するという前提でカリキュラムが組まれていることが多く職業に関する授業が少ないため高卒で就職活動するとなるとかなり難易度が高くなる。「大学受験は不利だが就職活動では有利」という実業高校とは対照的である。

*16 大学は市街地から離れた郊外にあり交通が不便な場合も多いが、専門学校はターミナルとなる駅前や市街地に普通にあったりする。