地理歴史科・公民科

登録日:2020/06/16 Tue 21:08:05
更新日:2024/12/21 Sat 18:22:44
所要時間:約 20 分で読めます




地理歴史科(ちりれきしか)および公民科(こうみんか)とは、高等学校(高校)のカリキュラムに含まれている教科のこと。
地理歴史科に関しては地歴科(ちれきか)と略されることが多く、2つ合わせて地歴公民科(ちれきこうみんか)と呼ばれることも多い。

概要

義務教育のカリキュラムでは小学校低学年の生活科、小学校高学年と中学校の社会科に相当し、これらの後継の教科である。

中学までの社会科のうち、地理分野および歴史分野を発展させたのが地理歴史(地歴)科で、政治経済や人間の生き方・あり方などに関する分野を発展させたのが公民科として存在している。
昭和時代には中学校までと同様に高校にも社会科が存在したのだが、大人の事情で平成に入ってから地歴科と公民科に分割されたのである。

高校のカリキュラムでは、地歴公は最低でも履修することになっている。歴史総合+地理総合+公共は必ず必修で、 さらに一科目(世界史探求、日本史探求、地理探求、政治経済、倫理のいずれか)を必修することになっている。

他の教科(数学、理科、英語、国語)に比べて暗記要素が強く、考える要素が少ないため、主要教科の中では比較的立場が低いと言われることが多い。また、歴史マニアや旅行マニアの人だと勉強しなくても必然的に知識を得やすい教科でもある。

ただし暗記が苦手または嫌いな人にとっては地獄でもある。また、国公立大学志望者ならほぼ全員が受験する大学入試センター試験では文系はおろか理系でも地歴公民から1科目は受験しなければならないのが普通であるため、あまり侮ってはいけないのである。
(特に国公立医学部志望の場合、センターの合格ラインが非常に高いため、地歴公民で点数が取れなければ他科目でよほどカバー出来ないかい限り学費のバカ高い私立に行くか、医学部自体を諦めざるを得なくなってしまうため悲惨である。)

大学入試での地歴公民

大学の入学試験においては文系の場合、国公立大学ならセンター試験で地歴公民2科目が必須である。地歴と公民からそれぞれ1科目ずつ選択する場合や、地歴から2科目選択する場合(公民不可)がある。ちなみに公民から2科目選択するのは不可。
同一名称を含む科目を2つ選択することはできない。(公共+地理総合かつ公共政治経済の組み合わせ、公共政治経済と公共倫理の組み合わせ、など)
ただし、二次(個別)試験では必須ではないどころか、選択科目としてすら存在しないケースが多い。
文系なら勿論、英語、国語と並ぶ重要教科だよね?と思ったら、実はそうでもないのである。ちなみに難関国立大学では文系でも二次試験で数学が必須の場合が多い(ただしここは例外)ので、地歴公民の立場が弱いことがよくわかる。理系の理科が数学と並ぶ重要教科であるのと対照的である。
ただし、最難関級大学の一部(東京大学、京都大学、一橋大学、東京外国語大学)では文系学部では二次試験でも地歴が必須なので注意。特に東大文系は二次試験で地歴2科目が必須である唯一の大学である(公民は選択不可)。
地歴公民というと暗記教科のイメージが強いが、難関大学の二次試験になると論述問題が多く国語などと同じように思考力も要求されるため大変。

私立文系の場合は3教科受験が基本で、英語、国語が必須で、残り1科目は地歴公民1科目または数学(1A2B)のどちらかを選択することになっている。
ちなみに私立大学の場合、地歴公民の問題はかなりクセが強い場合が多い(特に日本史)ので、実は数学を選択した方が有利ということもある。また、私立文系では数学が1Aのみで良い(2B不要)大学もある。
(文系の受験生は数学が苦手な人が多いというのは大学側も知っているので、あえて数学の出題難易度を下げてくれていることも多い。)
また、私立の場合、歴史科目はまず使えるが地理が使えない大学が多いので注意が必要である。倫理に至ってはほとんどの大学で使えない。政治経済は一部の大学で使えることもある。

国公立理系の場合、センター試験で地歴公民1科目が課されることが多い。ほとんどの場合、地理または公民が選択される。歴史選択は稀。
センター試験の配点が大きく、二次試験の配点が小さい大学の場合は注意が必要。先述の通り、特に国公立医学部を目指す者は地歴公民の点数が低いとかなり危険である。
国公立の二次試験および私立理系では出題されない。

主な科目

地理歴史科

地歴科には地理世界史日本史が含まれる。

それぞれ地理総合(旧地理A)、歴史総合(旧世界史A+旧日本史A)と探求科目(旧B科目)分けられており、一般的に大学受験向けで学習時間が長い(単位数が多い)のは探求である。
逆に卒業要件に含まれているから仕方なく履修するのが総合科目である。

  • 地理探求(旧:地理B)
日本および世界について、その地方の気候や地形、産業(農業、工業)、経済、社会、文化について学ぶ学問。地図の読み方などもこの科目で学ぶ。
文系科目でありながら社会科学や人文科学だけでなく、自然科学(理科の地学)の要素も含まれる。

暗記要素が比較的少なく、計算問題やグラフの問題も出題されることから、理系でセンター試験を受験する人にオススメの科目である。
また、歴史科目と比べるとある程度常識力で点数を稼ぎやすい科目でもある。例えば、中国やインド、アメリカが人口の多い国であること、サウジアラビアが石油がたくさんとれる国であることなどは誰でも知ってる事項である。
普通科進学校の理系クラスでは必修科目となっている場合が多い。国公立大学理系の場合、ほとんどの受験生はセンター試験の地歴選択でこの科目を選択している。

ただし、私立文系では入試で地理を使えない大学も多い(そのため、理系の理科で言えば生物ポジションと言われることも多い)。特に難関私大を志望する受験生は注意が必要(ここここは選択科目に地理が含まれない*1)。
また、取っ掛かり安い一方で極めるのが非常に難しい科目で、特に共通テストの社会科科目では一番点数が伸び悩むとされる。

しかし、地歴が2科目必要な場合は実は地理探求と世界史探求の組み合わせはオススメである。なぜか?世界史探求と地理探求は関連性が高い部分も多く、セットで学習すると非常に覚えやすいのである。
(逆に世界史探求と日本史探求の組み合わせは覚えることが多すぎる上に重複部分も少ないため大変。あと地理探求と日本史探求の組み合わせも重複部分がほとんどない。)

  • 地理総合(旧:地理A)
その地方の社会や文化などが中心の科目。地理探求に比べると地学的な要素(気候、地形など)は少ない。

  • 世界史探求(旧:世界史B)
世界の歴史について古代から近代現代まで幅広く学ぶ。日本の歴史についても、海外と関わる場合にはきちんと触れる。
戦前の学校教育のカリキュラムでは中国やインドなどアジアについて学ぶ東洋史と、ヨーロッパやアメリカなどについて学ぶ西洋史に分かれていた。
とにかく範囲が広く、覚えることがとても多い。地歴公民のみならず、高校で勉強する全教科の中でも最も暗記量が多い科目とすら言われている。
中国・朝鮮史を除いてカタカナ語が基本なので、カタカナを覚えるのが苦手だとマジで苦痛。
また、各国の時系列(縦の流れ)だけでなく、同じ時期に他の国で起こった出来事(横の繋がり)も理解する必要がある。

ただし、それぞれの地域単位の内容は日本史探求より浅い。
また、中学時代歴史が苦手だった人でも(日本史に比べれば)逆転のチャンスがあると言われている。
なぜか?中学校の歴史はほとんど日本の歴史だからである。だから中学時代歴史が得意だったとか苦手だったとかは(日本史探求ほどには)関係ないのである。
「漢字を覚えるのが苦手だけどカタカナなら覚えられる」という人なら日本史より世界史のほうがオススメである。
また、大学受験では世界史探求は日本史探求ほどマニアックなことは聞かれなくて、基本的な事項がわかっていればOKな面も多い。難関大学でも日本史探求ほどの恐ろしさはない、はず。

文系ではこの科目が必修で、残り1科目は日本史探求か地理探求の選択であることが多い。そのため、理系の理科でいえば化学ポジションと言われることも。(理系の理科は化学が必修で2科目目は物理または生物を選択するのが王道。)

ここなど外国語や国際関係の大学や学部だと、入学試験では英語とともに重要科目となっていることが少なくない。

ただし、やはり地理探求と比べると暗記の負担が大きいため、理系の地歴選択ではあまりオススメできない。

  • 歴史総合(旧世界史A+旧日本史A)
2022年新課程からの必修科目。簡単に言えば旧世界史Aと旧日本史Aを合体したような感じ。世界史分野は主に近現代史が中心で、古代史は控えめ。日本史分野は近現代中心の日本史。

  • 日本史探求(旧:日本史B)
日本の歴史に特化した科目。古代から近現代まで幅広く、そして深く学習する。
戦前の学校教育のカリキュラムでは国史と呼ばれていた。

世界史探求に比べて範囲は狭いが、その分、内容としてはかなり深く掘り下げたものとなっている。特に難関私立大学の入試ではクイズと揶揄されるほどかなりマニアックな知識が要求されることがある。そのため、トータルでの暗記量は実は世界史Bとあまり変わらない。

言うまでもないが、覚えるべき事項は中学の歴史より桁違いに多い。漢字を覚えるのが苦手だと、内容が深いことも相まって世界史以上に地獄となる。

文系で世界史探求か日本史探求か迷った場合の判断基準として、「中学時代、歴史が得意(または好き)だったか」がある。
中学校の歴史はほとんどが日本に関する内容であるため、高校の日本史は事実上、中学社会科の歴史分野の応用科目なのである。だから、中学の歴史が得意だった人はそのまま高校でも日本史Bを選択すれば得点源にできる可能性が高い。
逆に中学で歴史があまり得意でなかった人は日本史はオススメできない。中学歴史と関連の薄い世界史探求か地理探求のほうがマシである。

ちなみに私立大学文系で入試で地理が使えない大学は結構多いが、世界史や日本史が使えない大学はほぼない。日本史探求を理系の理科で無理やり当てはめるなら物理ポジションだろう(そうなると世界史探求が化学で地理探求が生物か。)。
ただし外国語関係や国際関係の学部だと世界史指定の場合も多いため、国際系を狙う人は注意が必要かも。

世界史探求同様、理系にはオススメできない。

公民科

公民科は公共倫理政治経済の3科目が用意されている。
公共を履修しない場合は、倫理と政治経済の2科目が必須となる。逆に倫理または政治経済のどちらかを履修しない場合は公共が必修となる。

  • 公共(旧:現代社会)
簡単に言ってしまうと、後述の倫理と政治経済が混ざりあってるような科目。但し比率としては倫理:政経=1:3程度。倫理や政治経済のうち、現代の諸課題について扱う科目。

倫理や政治経済に比べると内容が浅く広くということもあり、常識でもある程度点数を取りやすい科目と言われる。ただしその反面、高得点は狙いにくいとされる。

  • 倫理
主に思想や哲学、人間としてのあり方などについて学ぶ科目。大学で心理学を学びたい人にとっては基礎科目となる。

大学受験、特に私立文系では超マイナー科目。ほとんどの大学で使えないので注意が必要。
(もっとも、理系の理科の地学よりはまだマシな扱いかもしれないが…)

  • 政治経済
通称、政経。公共から倫理の部分を除外して、代わりに政治経済分野を膨らませた内容となっている。
大学で法学、政治学、経済学を学びたい人にとっては基礎科目。

私立文系の入試では早稲田の一部の学部学科をはじめとして、地歴の代わりにこの科目を選択科目として認めるところも存在する。
ただし慶應や上智大学などでは使えない。また、早稲田も学部学科によっては政経が使えない(地理探求も使えないので、世界史探求または日本史探求のどちらかを選択)場合がある。

世界史探求や日本史探求に比べると暗記量が圧倒的に少ないため、入試で歴史科目の代わりに政経を選択できる場合はラッキーかもしれない。特に普段から時事問題に関心を持っていると高得点を狙いやすい。
ただし一つ一つの用語自体はそれなりに難しいものもあるので油断は禁物。入試では教科書にないような問題が出ることもあるため、新聞やニュースを見る習慣がない人は厳しいかも。
また、経済分野では計算問題もあるので、数学が苦手だと苦痛かもしれない。
このように高得点を狙いやすい要素と狙いにくい要素が混在するため、得意な人は圧倒的に得意だが苦手な人はとことん苦手という二極化が進みやすい傾向にある。

  • 倫理政経
略称は倫政

近年、センター試験で新たに選択科目として追加された科目。
なぜこの科目が追加されたのか?
実は現代社会、倫理、政治経済それぞれの科目は地歴でいえばA科目と同じ2単位の科目であり、軽量科目である。
そこで地歴のB科目に相当する重量科目である、公民の4単位科目を新設するためにこの科目が用意された。

事実上の現社の上位互換であり、浅く広くの現社と異なり、広くてかつ深いので、暗記量は世界史Bや日本史Bには及ばずとも軽くはない。

旧帝国大学京大東北大など)や一橋大学など難関国立大学ではセンター試験の公民は、地歴のB科目とほぼ同等の扱いであるこの科目しか使えない場合が多いので注意が必要。
先述の通り、東工大は地歴Bと倫政の他に現社が選択可能科目に含まれているが、志望校を変更する際にリスクが大きいためあまりオススメできない。

東大入試でもセンター試験でこの科目は一応使えるが、実際には東大文系受験生で倫政を選ぶ人はほぼいない。
東大は文系の二次試験で地歴2科目が必要な唯一の大学だが、公民は二次試験の科目に含まれていないのである。
なので、東大文系受験生はセンター試験では必然的に地理B、世界史B、日本史Bの中から2科目選ぶことになる。

ちなみにかつてはセンターの地歴公民は地歴から2科目選択することはできず、地歴から1科目、公民(現社、倫理、政経)から1科目それぞれ選択することになっていた。
しかしそれでも東大文系の二次は地歴2科目必要になっていたため、地歴2科目に加えて公民を受験する必要があった。つまり3科目受験になる。
この頃のセンター公民はすべて2単位科目であり、4単位の倫政は存在しなかった。

2024年をもって廃止。

  • 公共倫理・公共政治経済

2025年度入試からは旧倫理政経と同じ立場をとる。
どちらでも旧倫理政経に比べて暗記量が大きく減った。特に公共分野は政経と被る点が多いため、公共政経を選ぶとさらに暗記量が減る。それで旧倫理政経と同じ立場なのでどの大学でも基本使用可能。人によるが、今後の理系受験生はこちらの方が良いかも…?

地理総合・歴史総合・公共

略称は地歴公

2025年からの新設科目。共通テストでは「地理総合・歴史総合・公共」のいずれか2つを回答する。実質的に社会基礎のような枠組み。但し旧帝大など使えない大学もある。また新課程から公民の負担が減った為、これで受験する理系受験生はそこまで多くならないと思われる。

地理、歴史に関する資格

地理や歴史に関する資格として、以下のようなものがある。

歴史能力検定

略称は歴検
実用英語技能検定や日本漢字能力検定、実用数学技能検定と並んで有名な教養系の検定試験で、受験者の歴史に関する知識を測定する目的で実施されている。
主に学生が歴史の授業で習ったことの復習や確認のために受験することが多いが、上のほうの級だと英検などと同様に社会人の受験者も多い。また、漢検のように一度合格しても何回も受験してくるリピーターも少なくない。

ランクは1級2級、3級、準3級、4級、5級がある。
目安としては1級は歴史マニアのレベル、2級は高校上級レベル、3級は高校基礎レベル、4級は中学校レベル、5級は小学校レベルとされている。
3級以上は日本史部門と世界史部門に分かれている。

1級は大学の歴史専攻学科(文学部史学科など)のレベルなので、英検などと同様に非常に難易度が高い。また、論文も課される。
2級は大学受験レベルとされている。ただし、記述問題があるため、センター試験の日本史Bや世界史Bよりは難易度がやや高いと感じるかも。おそらく国公立大学の二次試験や私立大学の個別試験の歴史科目を想定しているものと思われる。
3級は高校レベルとされており、同じ3級でも英検3級(中学校レベル)などよりはずっと難しい。英検で言えば準2級くらいの難易度だろう。中学生で歴検3級に合格できたらかなり優秀である。しかし、2級に比べるとまだまだ基礎レベルなので、大学受験を視野に入れるのであれば少々パンチが足りない。
準3級は元々は無かったのだが、中学生にとっては3級はかなり難しく、4級との差があまりにも大きかったために設置された。準3級は日本史部門のみである。進学校を狙う中学生は、できれば歴検準3級に合格できるくらいの歴史、社会の知識を身につけてもらいたいところ。

一度合格した級を再度受験することも可能である(まあこれは他の検定試験もそうだが)。
日本史1級に3回以上合格すると日本史修士の称号が、5回以上合格すると日本史博士の称号が、10回以上合格すると日本史大博士の称号が与えられる。ここまで来れば正真正銘の歴史マニアの領域であろう。
ちなみに世界史1級にも同じ制度がある。

なお歴検は国家資格(国家試験)ではないのだが、
  • 日本史2級以上の合格者は、高卒認定試験(最終学歴が中学校卒業の人向けの試験)の日本史B科目が免除される。
  • 世界史2級以上の合格者は、高卒認定試験(最終学歴が中学校卒業の人向けの試験)の世界史B科目が免除される。
  • 日本史2級以上の合格者は、全国通訳案内士試験(通訳ガイドのための国家試験)の歴史科目が免除される。
など、なかなか社会的評価の高い民間検定となっている。

しかし、英検や日商簿記検定情報処理技術者試験などと比べると、趣味の要素が強いため、漢検同様、就職活動ではそれほど効果は発揮できないかも…。

世界遺産検定

略称はせかけん。文部科学省後援の検定試験。
世界各国に存在する世界遺産に関する知識を問う検定試験。古都京都の文化財や屋久島など日本の世界遺産についても当然ながら出題される。
世界遺産そのものの基礎知識だけでなく、その世界遺産が持つ歴史的背景・文化的背景についても問われる。

マイスター1級2級、3級、4級の5つのランクがある。1級以上を受験する際は既に下位の級に合格していることが前提条件となる。
どの級でも世界遺産全般の基礎知識(認定基準など)、日本の世界遺産、世界の文化遺産、世界の自然遺産といった幅広い範囲から出題される。
下位級では有名な世界遺産しか取り上げられないが、上位級になるほどマイナーな世界遺産についても扱うようになる。
マイスター以外の級の解答方式は四択のマークシートである。マイスターでは論文課題が課されるためかなりの難関となる。

趣味の検定というイメージが強いが、高校レベル以上の地理や歴史の知識が要求される問題が多いため、意外にも推薦(AO)入試で加点対象とする大学も多い。
ただし、就職活動ではたとえ上位級であっても(旅行業界以外では)あまり評価されない。逆に旅行業界では世界遺産検定の合格者を採用試験で加点する会社もあるらしい。

旅行業務取扱管理者

観光に関する国家資格の代表格。国土交通省の認定資格である。
旅行代理店では各営業所に最低1人以上はこの資格を持っている人を置かなければならない。また、航空会社でも重宝される資格である。

区分としては日本国内のみ取り扱える国内旅行業務取扱管理者と、海外旅行も取り扱える総合旅行業務取扱管理者がある。
総合旅行業務取扱管理者では国内旅行も取り扱えるため、国内旅行業務取扱管理者の完全上位互換である。

国内旅行業務取扱管理者試験では鉄道(JRなど)や飛行機(国内線)の運賃計算、旅館やホテルの規約、旅行業に関する法規、そして日本地理の問題が出題される。
総合旅行業務取扱管理者試験では国内の範囲に加え、海外の地理、飛行機の国際線の運賃計算、出入国管理、英語も問われる。

国内旅行業務取扱管理者の資格を既に持っている人が総合旅行業務取扱管理者試験を受験する場合は、出題範囲の重複する部分(日本地理など)が免除される。

旅行業務取扱管理者試験の地理の問題は、高校であまり触れられない観光関連の内容が中心であるため、注意が必要。

国内旅行業務取扱管理者試験の合格率は例年40%程度であり、国家試験としてはそれほど難易度は高くない。大学生などの合格者も少なくない。他のビジネス系の資格試験と比較すると、情報処理技術者試験でいえばITパスポート試験と同じくらい、日商簿記でいえば3級レベルの難易度と言われている。

しかし総合旅行業務取扱管理者試験は受験者の大部分が既に国内旅行業務取扱管理者試験に合格できるレベルの実力者たちであり、英語の問題もあるため難易度はかなり高くなっている。こちらは(旅行関係の専門学校の学生を除き)学生の合格者はほとんどおらず、社会人が多い。

ちなみに旅行業務取扱管理者の資格を持っている人(総合、国内どちらでもOK)は、全国通訳案内士試験の地理科目が免除される。

全国通訳案内士

通訳ガイドの国家資格。旅行業務取扱管理者と同じ、国土交通省の認定資格。
高度な外国語のスキル(英語なら英検1級レベル)と、日本史や日本地理に関する深い知識(高校レベルを遥かに凌駕する)が要求されるため、超が付くほどの難関資格である。

教員免許

学校の先生になるための免許(国家資格)。
中学校の社会科、高校の地理歴史科、高校の公民科がある。
高校の場合、地歴と公民が別の教科という扱いであるため、地歴の免許を持っていても公民の免許を持っていなければ現代社会などを教えることはできない。しかし、多くの地歴の先生は公民の免許も持っている(理由は後述)。

実はほとんどの文系の大学なら中学社会や高校地歴、高校公民の免許を取得することが可能だったりする。
教育学部のみならず、法学部や経済学部、経営学部、文学部などでも取れたりする。
ただし教育学部以外では専門課程とは別枠で教職課程を履修しなければならないことがほとんどであるため、負担はとても大きい。

こうした理由もあって教員採用試験では、中学社会や高校の地歴、公民の枠は、取得できる大学が限られる英語数学などに比べて、倍率が非常に高くなっている。また、そもそも募集枠自体も英語や数学に比べて小さい。
高校では「地歴と公民の両方の免許を持っていること」を採用の最低条件としていることが多いため、地歴単独あるいは公民単独では非常に不利になるため注意が必要。


追記、修正お願いします。



最終更新:2024年12月21日 18:22

*1 早稲田大学は共通テスト利用入試では地理探求が選択可能。個別学力検査では教育学部を除いて地理は選択不可。慶應義塾大学は商学部のみ選択可能。