SCP-6000

登録日:2021/07/25 Sun 23:52:20
更新日:2021/09/12 Sun 15:30:26
所要時間:約 22 分で読めます





終わるからこそすべては始まる。読み終わった本棚は、死とは同義ではないのだと。



はじめに


2021年、SCP財団本部にて「SCP-6000」コンテストが開催された。
今回のテーマは 「自然」(Nature)であった。

投票時期後半には、候補は2作品に絞られていた。
ひとつはdjkaktus氏の作品、現SCP-6666である「魔性のヘクトールと恐怖のティターニア」
同氏の得意とするクロスリンクをSCP-1000を中心に行った力作である。
そして、もう一つが財団の若手著者、Rounderhouse氏のこの作品であった。

前回のような大差での優勝ではなく、両記事のUV数は大接戦となった。
そして最終日、結果はわずかにこちらの記事が高評価。シリーズⅦの始まりを告げるSCP-6000が誕生したのであった。

このオブジェクトには要注意団体「蛇の手」と彼らが利用する施設「放浪者の図書館」、そして「蛇の手」出身の財団職員ムース管理官が密接にかかわっており、ある程度これらに関する知識が必要である。
また、Rounderhouse氏はSCP Foundationの兄弟サイトである「放浪者の図書館」において管理人を務めていることを念頭においていただきたい。
加えて、SCP-001の一つ、Rounderhouseの提言を前もって読んでおくのもよいかもしれない。
なお、この放浪者の図書館に関しては建て主がこの項目を立てた数日前にようやく日本語版が公開されたばかりであり、日本支部の職員にはややなじみが薄いかもしれない。
もっとも、「蛇の手」に関する基礎的な知識さえあれば十分に楽しめるような記事にはなっている。



それでは前置きはここまでにして、この物語を始めるとしよう。
さあ、物語のはじまりはじまり。



SCP-6000
「蛇、箆鹿、放浪者の図書館」





BY ORDER OF THE OVERSEER COUNCIL

以下のファイルはレベル4/6000に指定されています。許可なきアクセスは禁じられています。

» 網膜ID認証を実行する «








おかえりなさいませ、ムース管理官。



記録情報セキュリティ管理室より通達
以下の二つのファイルは2022年6月25日SCiPnetによりSCP-6000のスロットがプレースホルダーとして自動作成された際に発見されました。ファイルの履歴は残されていませんでした。

その内容及び疑問の残る発見状況に鑑み、O5評議会は当該ファイルを変更せずに残すよう決定しました。以下に記述されるいかなる事象も実際には発生していません。SCP-6000の所在と記述されている座標地点には、特筆すべきものは何もありません。

— マリア・ジョーンズ管理官,RAISA




SCP-6000とは、怪奇創作サイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
オブジェクトクラスはKeter。

特別収容プロトコル


「プロジェクト・フュージレイド」の一環として、SCP-6000の恒久的な収容もしくは破壊方法が発見されるまではこのオブジェクトの隠蔽のために財団の資源は使われる。この隠蔽はあらゆる手段で行われる。
また、許可なき人員が進入禁止区域に侵入した場合は武力を用いて妨害することになっている。

要は「収容できないから徹底して隠蔽しろ!」系のオブジェクトであるということがプロトコルからわかる。
こういうオブジェクトは大半が非常に厄介な性質を持つものであることが多い。
では、このオブジェクトの場合はどうなのだろうか。

説明


SCP-6000はブラジルのアマゾン熱帯雨林に出現した異常空間である。この報告書が書かれた時点での大きさは全長19kmにも及ぶ。
「道」の俗称で知られるクラス-W転移ゲートウェイの一種であり、その大きさは財団が知る限り最大級のものである。
SCP-6000は不定の速度で拡大中であり、さらに周辺の生態系に悪影響を与える能力を持つ。しかもこの影響の度合いは空間の大きさに比例するらしく、絶賛拡大中の状況なので進入禁止区域も徐々に増えているという。

さて、この大規模ゲートウェイ、すなわちSCP-6000が財団世界とつながっている先、それが「放浪者の図書館」と呼ばれる異空間である。
この異常が発生したのは2030年、12月21日のことであった。

異常物体はもう一つある。
SCP-6000-Aは侵入禁止区域内で発見された蛇に似た知生体。人間と蛇が融合した姿をしている。
人間の死体に囲まれた状態で、昏睡状態で発見された。
6000との関係はまだ調査中である。

さて、この報告書はいわゆる「補遺が本編」のオブジェクトである。
これから続く補遺の部分こそがこのSCP-6000という物語の中核となる部分である。

補遺6000.1


ここでそもそも「放浪者の図書館」とは何か?という説明が入る。

「放浪者の図書館」とはNx-01に指定された、奇跡や魔術に関する文献を中心にあらゆる知識を網羅した巨大な図書館の形の異空間。1955年に財団に発見された。
「道」と呼ばれる空間ゲートウェイを利用して転移することができる。

この異空間では、論文やエッセーといったあらゆるメディアを潜在的に無限に収蔵することができる。しかも、放浪者の図書館の本家サイト*1に準拠すると、文章媒体だけでなく絵画や映像メディアでも収蔵可能と思われる。
この施設の維持・管理を行うのは「司書」と呼ばれる改造ヒト型生物であり、業務や防衛に従事する。
この「司書」たちは図書館の規則を破った人物が変化させられ、労働によって罪を償うのだという。
これは財団職員とて例外ではない。

さてこの空間、要注意団体「蛇の手」-あらゆる異常存在に関する知識の開示を要求する集団-と深いかかわりがある。
彼らは集会や会議のために、安全なこの空間を利用しているのである。
財団やGOCは数多く侵入を試みたものの、大半は失敗に終わった。
この図書館のセキュリティは非常に強固であり、許しを得ないものの安全な侵入は不可能と言っていい。

さて、この「放浪者の図書館」をかつて利用していた財団職員がいる。
サイト-19管理官、ティルダ・ムース。
「蛇の手」のメンバーでありながら財団職員となった異例の女性、そして「タイプ・ブルー」と呼ばれる妖術師である。
しかしこのことが原因で、彼女は蛇の手の監視を行う機動部隊シグマ-3のメンバーでありながら、「図書館」には入れなくなってしまった。

このオブジェクトの作者であるRounderhouse氏の001提言では、再び図書館に戻る危険な儀式をおこなおうとしていたあたり、このことはかなり後悔していたのかもしれない。

補遺6000.2


この異常が発生した当初、3名の偵察部隊が状況把握のため送り出されたものの、ある程度の報告の後通信が途絶。
シグマ-3より探索チームが派遣された。
が、偵察部隊の装備、補給品こそ発見できたものの、人員3名は発見されなかった。
なおこの調査中、12の死体によって形成された魔方陣の中でSCP-6000-Aが昏睡状態で発見され、空輸で収容された。

その後、シグマ-3の一班であるシカゴ班とサイト-57に移動していたムース管理官の4名により、遠征調査が実行された。

  • シカゴ-ワン: アダム・マクミラン
  • シカゴ-ツー: ティルダ・ムース
  • シカゴ-スリー: ナイラ・フローレス
  • シカゴ-フォー: エステバン・バーデム


彼らがジャングルを進むと、奇妙な事象を発見した。
空気は油膜のような光沢が含まれ、樹木の幹は本棚のような形に変化しつつあったのだ。
やがて班は図書館のウイング部分に到達するが、珍しくそこには一冊も本がなかった。
シカゴ-ツー、ムースだけが基底現実にとどまって内部の探索を開始する。
不思議なことに、本棚も天井も仕上げられてはいなかった。未完成のような状態になっていたのだ。

すると、アーキビストという名の巨大なヤスデの姿をした「司書」が彼らの前に現れる。
規則を破らない限りは、「司書」は攻撃を実施しない。はずだったのだが…
謎の女性的な声が、「シッ」というのが聞こえた。

不明: 貴方たちの目的はわかっています。立ち去りなさい。

[複数のクラス-3司書が付近の本棚をよじ登って現れる。司書はクモに似た人型実体で、長い胴体と4つの目を持ち、腕が増えている。偵察部隊の制服を着用している。]

シカゴ-ワン: クソっ。おい、俺たちは何も変なことはしていない。規則だって破っていない。これはなんなんだ?

[司書は本棚を降りはじめる。シカゴ班はあとずさり、SCP-6000に近づいていく。]

偵察部隊はすでに司書にされていた。
しかも、彼らはなぜかシカゴ班に明確な敵意を向けてきたのである。
司令部の判断によって撤退を開始するが、司書たちは激しく追跡してくる。
急遽ヘリコプターによる制圧射撃が行われたことでシカゴ-ワンとツーは難を逃れたが、ほかの二名は未帰還となってしまった。

この司書たちの異例な攻撃性の高さに対し、翌日緊急対策会議が実施された。

補遺6000.3


幸い、SCP-6000は僻地であるアマゾン奥地にあるため、脅威そのものは大きくなかった。
が、このような大規模ゲートウェイの潜在的な危険性は非常に高い。
収容のため、「プロジェクト・フュージレイド」発動が監督評議会によって認可された。
同プロジェクトの内容は以下の通り。

  • 施設-57を正式にSCP-6000収容施設に指定。
  • 野生動物や旅行者の侵入を防ぐため、進入禁止区域周囲にフェンスを設置。
  • SCP-6000の長期にわたる研究のためのリソースを要求。
  • GoI-14「蛇の手」の既知のスパイを捕縛。
  • Nx-001との戦闘を含む攻撃的手段による追跡を機動部隊シグマ-3隊員に許可。

同時期、昏睡状態だったSCP-6000-Aが覚醒。
情報を得るため、蛇の手や図書館に関する知識、経験が豊富なムース管理官がインタビューを実行した。

6000-Aは自身が蛇のような姿に変化したのを把握していなかったようだった。
加えてなぜこのような姿になったのかも細かくは覚えていなかったようである。
ただ、「『声』が自分を作り変える、と言っていた」と6000-Aは証言した。
『声』は伝承や神話、財団やGOCに関する物語をずっと6000-Aにささやいていたのだという。

6000-Aにまだ人心があり、比較的協力的だと感じたムース管理官はさらなる情報を聞き出そうとするが、6000-Aは逆に「物語には物語を」と、ムースに彼女に関する話、例えば図書館を追い出されたときの話を聞かせるよう要求した。
6000-Aは図書館に関しての細かいことは覚えていなかったようで、彼女の話を聞けば思い出す手がかりがつかめるかと考えたのである。

6000-Aの要求に従い、ムースは自身の話を始めた。
15年前、世界はどうあるべきか、ということで蛇の手と険悪な関係にあったこと。
図書館には「五つの記録」という、放浪者の図書館の基準においてすら禁じられるレベルの知識を収蔵する部屋があること。
しかしムースは十分な準備を整えて侵入に成功し、そこで得た本や目録を財団による図書館への対抗のため持ち出したこと…

続いて6000-Aは図書館についての説明をムースに求めた。
宇宙の中心ともいえる空間であり、無限に広がっている…とムースは説明したが、6000-Aはそれを否定した。

SCP-6000-A: いや。無限ではない。単に途方もなく巨大なだけだ。

ムース: 同じことでは?

SCP-6000-A: 図書館は新たな物語が書かれ、新たな知識が見つかるとともに永遠に拡大していくのだ。それは死んだ物語、すでに終わった物語を押し広げ、消費し、自らの一部とする。物語は他の物語のための本棚へと変わり、新しいものがそこに収まることができるのだ。

ムース: なるほど。

どうやら図書館は無限というわけではなく、本を入れ替えることで拡大していったようだ。

6000-Aは続いてある物語を語った。
一人の少女が「火を紡ぐ」能力に気づき、その能力で誘拐犯を撃退したこと。
彼女はやがて魔術師と出会い、ありのままでいられる世界、すなわち図書館に導かれたこと。
しかし、短長編問わずあらゆる本を読んだが、あらゆる物語が最終的には終わりを迎えることに気づいたこと…

ムース: その何が問題なのでしょうか?

SCP-6000-A: 問題ではないのだ、実際のところは。しかし少女は物語の終焉と、頭の中で鳴り続ける1つの疑問について考えることをやめられなかった — 終わった後には何が起こるのか? 彼らは終わりに抗うのか、それともそれは安らぎなのか?

6000-Aはムースら財団に対し、蛇の手に関する調査を実施するように提案した。少女を救った彼らなら、情報を得ることができると。

補遺6000.4


この提案とプロジェクト・フュージレイドに基づき、「蛇の手」の既知のすべての隠れ家に対する一斉捜査作戦「オペレーション・ブラックスター」が12月28日に実行された。
結果は成功。57すべての隠れ家から蛇の手の構成員は一掃された。
が、そのうち30の隠れ家には、例のゲートウェイ、またはその跡があった。
彼らはすでに地球を去り、「図書館」に向かったようだ。
なおこの段階でSCP-6000は1キロメートルに拡大。これに関して、O5のためにムースが声明を作成した。

何が図書館側にこのような攻撃的な行動をとらせているのかはわからない。
確実なのは、これまで人類史に影響を与え続けた無限に等しい知識が相手に回れば、恐るべき惨事が引き起こされるということだけだ。


これがハッピー・エンドで終わるようには思えません。


補遺6000.5


翌年1月19日には、施設-5にて対策委員会が設置された。

通常なら「道」は発生後数分経てば消失するはずなのに、いまだに拡大が続いているという。
6000が広がった場所は徐々に「図書館」になりつつあるようだ。植物相だけでなく、動物までも歪に変化しつつある。
このままでは立ち入り禁止区域は広がる一方だ。

財団は収容のため様々な手で6000の無力化、収容を試みる。さて、結果は…

  • 提案
火炎放射器などの熱火器を用い、SCP-6000の影響を受けた木を焼却する。
  • 結果
進入禁止区域内の影響を受けた木は焼かれた部分も即座に再生するため、火器は効果がないと判明しました。

  • 提案
SCP-6000境界に爆発物を大量投下する。
  • 結果
全ての爆発物はNx-001に侵入すると同時に無力化しました。

  • 提案
アトレウス・アレイ(衛星ベースのSRAシステム)をSCP-6000に向けて最大出力で運用する。
  • 結果
SCP-6000および進入禁止区域は何の影響も受けませんでした。

[34のエントリが省略されています]

うん、ダメみたいですね。

ムース管理官と6000-Aの会話1


ムースと6000-Aは再び対話を行っていた。6000-Aは記憶を徐々に取り戻してきたようである。
6000-Aはかつて自分が、韓国支部の要注意団体「赤斑蛇の手」の女性構成員であったことを明かした。
彼女は「蛇の手」の成り立ちを語り始める。

設立当初の「蛇の手」は、図書館を作り出した知識の根源にして学問の精霊、様々な神話の中で語られてきたらしい存在である「原初の蛇」を崇拝するカルト的教団だったという。
その構成員たちたる僧侶は長寿かつ力と知識のある存在だった。が、いずれ命には終わりが来る。
そこで彼らは、論文や文学、そして知識の追求と継承の重要性を記したエッセイをいくつも残した。
それを見つけた後年の人々が作り出した組織こそが「蛇の手」なのだという。
彼女はこのことを「原初の蛇」なる存在から聞いたのだと語る。
原初の蛇は魔方陣の中にいて、図書館を現世に出現させ、今は疲れにより眠っているという。

6000-Aがそれ以外の物語も聞いたと発言すると、ムースは現状を改善するヒントをそこから求めようとした。
が、6000-Aは言い放つ。物語の終焉は決まっているが、終わりなどどうでもいいことなのだと。

SCP-6000-A: 誰がどう見ても、お前の物語はお前が図書館を裏切り財団にやってきたときに終わったように思われた。しかし実際には終わってなどいなかったのだ。お前は存在し続けている。お前は新たな物語に移り、サイト-19の管理官となった。

ムース: 物語ではありません。忌々しいですがこれは私の人生です。

SCP-6000-A: 物語の終わりを話してなかったな? 少女は物語を来る日も来る日も読み耽り、やがてある日、問題はすでにほとんど解けていると気付いた。勿論あらゆる物語は終わりを告げる… しかしそのときは次の物語へ移ればよいのだ。さらなる物語が、常にそこにはあった。次の物語へ移れる以上、もはや避けられない終焉を嘆く意味などなくなった。

ムース: 現実の人生もそのようにできればよいのですが。

SCP-6000-A: ああ。私が財団とともに見てきた物語は世界の終わりへと向かいつつある… 脇には焚書者(蛇の手によるGOCの呼び方)を従えてな。何か言うべきことがあるのだろうな。敵同士だが、想像を超える脅威に抗い手を結ぶ。煙を立てる灰。木々に向けての炎の一斉射撃 。

ムース: 待ってください、一斉射撃(フュージレイド)? なぜそのことを-

SCP-6000-A: 行け。今すぐ。

«記録終了»


補遺6000.6


先の6000-Aの発言に従い、SCP-6000に関する情報をGOC-世界オカルト連合に公開するか否か、という投票がO5評議会によって実施、結果は可決。
ドイツでのGOCとの協議の結果、プロジェクト・フュージレイドを共同での作戦とすることが決定された。
さっそくGOCの物理、精神、天地部門の職員が施設-57に派遣され、作戦に当たった。このころにはSCP-6000の全長はは2kmに拡大していた。
O5評議会とGOC司令部の許可により、GOCの排撃班9482「相応の理由」、コードネーム:ハーバーが急襲作戦を実施した。

ハーバー班は森を移動する途中で司書と出くわすものの、気づかれずに回避。
Nx-001、「図書館」に入り込むことに成功したハーバー班は、数分後、書見台の上に載っている緑革の本に気が付いた。
題名は「In Progress(進行中)」。手に入れようとするハーバー班だが、シカゴ班の時と同じ謎の声が聞こえてくる。
「シッ。」と。声は続く。
違う、お前ではない。

混乱するハーバー班のメンバーに対し、声はこのように告げる。

声: お前たちは暗闇の向こう側のことを知りたかったのだ。案ずるな、好奇心は美徳だ。かつてここに1人のパトロンがいた。
そやつはこの図書館の仕組みについて必死に頭を悩ませていた。無限などということがどのようにしてあり得るのか -
図書館は如何にして、真の意味での無限となるのか? この空間はどこからやってきたのか?

[沈黙。]

声: 当然、物語からだ。図書館は終わった物語を本棚に収め、終わった世界を自らに取り込む。時としてそれは同じことだが
な。

[沈黙、嘆声。]

声: 焚書者だな。しかしお前たちの心は純粋だ。自らの物語に起こることが気に入らない者どもにこき使われる幼子たちよ。
ここでは歓迎される。全員がだ。

[沈黙。]

声: ふさわしいものは生き残る。両名とも。

[通信が切断される。]

ハーバー班との通信の途絶後、事態は急変する。
SCP-6000が急激に拡大を開始したのである。その速度は2時間足らずで全長3キロ、1.5倍に達するほどであった。

補遺6000.7


この作戦の後、先の「オペレーション・ブラックスター」で発見された「道」のすべてから、様々な周波数のラジオ信号が放たれ始めた。音声にはシカゴ、ハーバー班が遭遇した女性的な声、SCP-6000の座標の中心地、「庭こそ蛇の座す場所なり」というフレーズが繰り返されており、瞬く間にメディア、インターネットからの注目を受ける。
財団は必死の隠蔽工作や記憶処理を実行するも、SCP-6000をめぐる運動は活発化し、歯止めがかけられない状態になっていた。
これ以降SCP-6000の巨大化はさらに進行。GOCによって核兵器が使用されることも検討されているほどになった。

さらなる事態が発生する。シカゴ班に参加していた一人で、プロジェクト・フュージレイドのメンバーであったアダム・マクミランが会議に現れなかったのである。
なんと彼は、使い果たされていたと思われていた奇跡論的能力を使用して魔方陣を作り、儀式によって南米のSCP-6000に転移してしまったのだ。彼はなにがあるのかわからない「図書館」に戻ったのであろう。
かれの営舎には、立ち去る前にムース管理官に残していった手紙があった。

申し訳ありません、ティリー。私はかつて図書館の本棚に囲まれて数週間を過ごし、出会ったあらゆるものに目を通してきました。あれはまさに文字通りの意味で「別世界」です。貴方ならわかっていただけると思います。しかし貴方は私と違い、加わることができなかった。貴方は図書館と財団からひとつを選んだ - 私があそこに初めて入った時、それは単なるミッションでした。そこで私は驚くべき体験をし、私が可能だと考えていたこと全てをはるかに超えるものに出会いました。あれだけ偉大なものを目にかけておきながら、それが自分を傷つけるのではないかとばかり考えていたことは恥ずべきことでしかなかったと思いました。

事実はそうではないと今ではわかります。司書が傷つけるのは発展を止めようとする者のみです。私にはそんなつもりはさらさらありません。これこそが物語の終わりです。銀の弾丸をつかんだ我々が全てを丸く収めるなどというものではありません。今の私にできることは、そのことについてどう感じるかを決めることだけです。

私はまたここで、本棚と本棚の間に座り、作り物の星を眺めていたいと思います。

これが私のハッピー・エンドです。

— A.M.


ムースと6000-Aの会話2


物語の推移を知っていた6000-Aが原因で4名の命が失われたのだと糾弾するムース。だが彼女は、「彼らは決して死んだわけではない」のだと言う。そして、これはすべてを解決する銀の弾丸など見つからない話なのだとも。
この先どうなるのかを訪ねるムースだが、6000-Aは取り合わない。そして、「物語は常にエンターテイメントとは限らない」と語った。

6000-Aは先に語っていた「火を紡ぐ少女」こそが自分なのだと思い出したようだった。彼女は自らの終わりを知るために魔方陣、すなわち6000に向かっていたのだとも。彼女はこの世界の物語の終わりを「一室に座って語り合う二人の人間の消滅」だと語った。

ムース: それは深刻ですね。

SCP-6000-A: ある意味では、お前は光栄に思うべきなのだ。

ムース: なぜ私が?

SCP-6000-A: お前は自分の望んだように図書館を去った。そしてお前は誰にも認めようとしないだろうが、顔に書いてあるぞ-また図書館に戻りたいのだろう。

ムース: 冗談じゃありません。あそこは驚くべき場所ですが、誰もがそれを楽園であるかのように語ります。私が図書館を騙すよりずっと前に私の方が騙されていました。

SCP-6000-A: 恨んでも何の意味もないぞ。

ムース: その通りです。私にはやるべきことがありますので。まったくもってくだらない。

補遺6000.8


ヴェール・プロトコルは失敗に終わった。
アマゾン盆地は全域が隔離され、SCP-6000の全長は13キロに達した。しかもまだまだ成長中である。

BM-クラス``壊された虚構シナリオ``がすでに起草された。
いまやSCP-6000の成長は、歯止めがかからない状態になってしまっていたのである。
宇宙の叡智を保存する超空間を前にしては、財団といえど対処はできないのだ。

財団の明日は厳しい。



























SCP-6000とは、怪奇創作サイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
オブジェクトクラスはApollyon


特別収容プロトコル


SCP-6000の収容はすでに失敗している。
地球を去った財団職員及びプロジェクト・フュージレイドの従事者は各サイトHMCL主任にさらなる指示を仰ぐ必要がある。

説明


数週間で西半球全体を覆いつくすほどに成長したSCP-6000に対してはもはや打つ手はなく、財団やGOCの職員すら何もできない。オブジェクトクラスはApollyonに格上げとなった。
SCP-6000の範囲は地表の58%。あと2週間程度で地球全域を覆う見込みだ。
現在、外次元にあるバックアップサイトへのプロジェクト・フュージレイドの人員の移動が進められている。

こうして、突如始まった滅びを前にして、財団は敗北した。
財団の明日はどっちだ…とはアニヲタ支部のセリフだが、もうその「明日」は来てしまったのだ。

補遺6000.1


SCP-6000対策の最前線だった施設-57にも図書館化は迫り、人員は避難を進めていた。
…が、あとである事実が判明した。ムース管理官とSCP-6000-Aは避難ヘリコプターに乗っていなかったのだ。

施設が6000によっておおわれる直前まで、二人の会話は記録されていた。

終わりの時が来るのを待つムースと6000-A。
6000-Aは、これは「自然」なことなのだと語る。常に起きていたことなのだと。
そして、ムースが「6000は世界を食らいつくし、作り変えている」と言うのを否定した。

ムース: 当然でしょう。あれは世界を呑み込み、作り変えているのですから。

SCP-6000-A: そこが違うというのだ。

ムース: はい?

[SCP-6000-Aは煙草に火をつける。]
SCP-6000-A: 分からんのだ、管理官よ。太陽が、理論上はいつか燃え尽きることは知っていよう。お前はこの宇宙にも寿命はあると知りながら、形だけの人生を過ごしてきた。何事にも終わりはある。

ムース: それはそうです、でもそれは-

SCP-6000-A: 自然だというのか? この宇宙がゆっくりと苦しみに満ちた熱的死を迎え、星々はもはや爆発することもできず、光を失っていくのを見守るのが、今の状況よりも自然だと? お前たち財団はいつもそうだ。受け入れることも生き延びることもできない

ムース: そういっても、何も変わりません。

SCP-6000-A: 全てが変わるのだ、ティルダ。我々は何事も永遠には続かぬと知りながら生きてきた。しかし終わりはあると知りつつも、物語を自ら壊すことはしない。そして - ここが重要なところだ。より多くの物語が、常に存在するのだ。

ムース: …よくわかりません。

SCP-6000-A: 図書館は全ての物語だ。かつては財団とその世界の終わりに対する勇気ある撤退の物語が1つしかなかったが、そこには10億の物語、10億の世界が生まれるのだ

[静寂。]

SCP-6000-A: 図書館は単に全ての世界を繋ぐだけではない。それは全ての世界そのものなのだ。全ての世界に物語が、全ての物語に世界があり、あらゆるものが等しく重要なのだ。

そうして6000-Aは、ムースに問う。図書館に戻りたいと思ったことはないか、マクミランがそうであったように、と。
ムースもまた、彼女に質問する。

ムース: では… 私やアダム、その他大勢の誰も、これを止めることはできなかったのでしょうか。無意味なことだったのでしょうか。

SCP-6000-A: [溜息。] 意味というのは、これまでに起こってきたことだ。何もないところに新たな物語を作ること。幸福たれ、ティルダ。お前の物語は永遠に記憶されるであろう。


抽象的かつ分かりにくい話し方の6000-A。それでも彼女が「いくつもの物語」に関しての語りをしているのはわかるかと思う。
この後の、報告書を締め括るムース管理官のセリフは特徴的だ。
分岐しているのだ。

ムース管理官の、あなたの選択は――

+「もし新しい物語など望まなかったら?」
6000-Aは笑う。すべては終わった。物語の終わりを選ぶことはできないのだと。
しかし、それでも、その終わりに何を感じるか、それは自由なのだと。
古き物語の終わりを嘆くのも、笑って次の本棚に手を伸ばすのも自由なのだ。

周囲の風景は、すでに蔵書に覆いつくされた本棚に変化していた。
気が付けば6000-Aも、蛇の刺青をしたアジア系の女性の姿に変化。
彼女は大在の人々を見つける。その中にはアダムも、シカゴ班のメンバーも、プロジェクトの同僚も、果てはO5さえいた。


あらゆる物語は、いずれ終わりを迎える。
それでも、終わりは死ではない。
物語は、どこまでも記憶されていくのだ。
そうして、私たちは新しい物語に向かっていく。

6000-A、いや、蛇のような一人の少女は、灰色のカバーのかけられた本をムースに手渡した。
題は「SCP-6000」
ここを起点に、新しい物語(シリーズⅦ)は刻まれていくのだ。
それはきっと、祝うべきことなのだ。

「これがそうだったのね」

「『そう』とは?」

「私のハッピー・エンド」


+「我々の物語も誰かに読まれると思いますか?」
6000-Aは笑う。すべては終わった。物語の終わりを選ぶことはできないのだと。
しかし、それでも、その終わりに何を感じるか、それは自由なのだと。
古き物語の終わりを嘆くのも、笑って次の本棚に手を伸ばすのも自由なのだ。

周囲の風景は、すでに蔵書に覆いつくされた本棚に変化していた。
気が付けば6000-Aも、蛇の刺青をしたアジア系の女性の姿に変化。
彼女は大在の人々を見つける。その中にはアダムも、シカゴ班のメンバーも、プロジェクトの同僚も、果てはO5さえいた。


あらゆる物語は、いずれ終わりを迎える。
それでも、終わりは死ではない。
読み手が残り続ける限り、物語は、どこまでも記憶されていくのだ。
そうして、私たちは新しい物語に向かっていく。

6000-A、いや、蛇のような一人の少女は、灰色のカバーのかけられた本をムースに手渡した。
題は「SCP-6000」
ここを起点に、新しい物語(シリーズⅦ)は刻まれていくのだ。
それはきっと、祝うべきことなのだ。

「これがそうだったのね」

「『そう』とは?」

「私のハッピー・エンド」



+どちらの選択肢も読んだ方へ
分岐していても、文章の内容に全く変化が生じていないことがお分かりいただけただろう。
決してミスではない。実際の記事を再現したものである。

物語の結末を選ぶことができなくても、その結末から何を思うのか。それは、あなた次第だ。

このオーディオファイルが録音されたのち、両名の反応とも施設-57の生体センサーから消滅しました。数秒後、施設はSCP-6000に覆われました。

















最後までお読みいただき、ありがとうございました。

さあ、この物語はおしまい。


新しい物語の、はじまりはじまり。





SCP-6000
「蛇、箆鹿(moose)、放浪者の図書館」




終わるからこそすべては始まる。

読み終わった本棚は、死とは同義ではないのだと。






















+物語についての物語
実は最後の選択肢の近くには、隠しリンクが仕込まれている。
リンク先にあるのは、Tale「我らが成したことへの回想」。
この物語の結末の、もう一つの形である。

ムースと6000-Aは6000が施設に達した後、図書館ではなく、様々な場所、世界をめぐっていく。


その世界がどうなるかは、傍観者たる存在には変えられはしない。
それでも、次に行くべき場所はちゃんとあるのだ。

さて、二人はどこに向かうのか。


+冒頭部分について
記事の最初の部分、RAISAによって「この報告書は勝手に発見されたよ!実際には何も起きてないよ!」という通達がある。
本家ディスカッションによると、これを読んでいるのは6000が存在しない世界のムース管理官だそうだ。わたしたちは彼女の視点に立って、この報告書を読んでいることになる
彼女は別の世界の終幕の物語、そして自分が迎えた結末に何を思ったのだろうか。

ややメタ的な視点から見ると、「この物語はフィクションです」という言葉に見えなくもない。


+長い!簡潔にまとめろ!
  • 巨大な図書館への巨大な扉です 
  • これが出てきたことは要はこの世界が終わるということです 回避はできません
  • でも終わりが決まっていても、それに何を感じるかはあなた次第です
  • そして物語の終わりは同時に新しい物語の始まりでもあるんですよ
  • そんなわけで今後も財団と図書館をよろしくね!
  • ちなみにこの報告書で書かれてることはこの報告書を見ている世界線の人には関係ありません

追記・修正は新しい物語を待ち望む人がお願いします。


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SCP-6000
The Serpent, the Moose, and the Wanderer's Library
by Rounderhouse 日本語訳 RAY_AFT
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最終更新:2021年09月12日 15:30