FN FNC

登録日: 2012/03/30(金) 16:53:06
更新日:2025/08/03 Sun 17:07:36
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性能

全長:995mm(775m)
重量:3700g
使用弾:5.56mmNATO弾
装弾数:30+1
作動方式:ロングストロークガスピストン ターンロックボルト



概要

ベルギーのFNハースタル社が1979年より製造していた突撃銃。FNCは FNのカービン銃 とそのままの意味。
ベトナム戦争でのM16の活躍を受け、1963年より名作FALをダウンサイジングしたCAL(Carabine Automatique Légère/軽量自動カービン)を開発する。
しかしG3を意識しプレス加工を交えて低コスト化した事(それでも並よりは高級路線)や閉鎖機構の変更など単純なダウンサイジングではなかったことから耐久性が不足。選考で事故を起こしたため製造を中止した。
その後、改良と生産性向上を目指して新規設計を行い1976年に専用弾SS109とともに発表した。



特徴

FAL/CALで行き過ぎていた配慮を抑える代わりに堅実なつくりとしたかたちのそつのない優良な突撃銃といえる。

操作

ボルトハンドルは排莢口にあるレシプロ式。AKなどで問題となる後端開口部はバネで動くダストカバーが搭載され対策されている。
自動ボルトキャッチは非搭載だが、マガジンはM16と互換性がある。
ライフルグレネードや弱装弾に対応するためのガスレギュレーターも完備。欧州ではライフルグレネードが主流なので合致している。
トレンドだった3点バーストモードも搭載。フルオートと共存している。セレクターの位置はCAL/FAL譲り。
標準でプラスチックコーティングされた金属製折り畳み式ストックとなっており、閉所や運搬時の取り回しを向上させている*1

材質

アッパーレシーバーはスチールプレス、ロアレシーバーはアルミ合金の削り出しで製造。
ボルトハンドル部分の開口部が右に移ったのでCALよりも開口部が減っている。
人の触れる個所は樹脂を使用しており熱を伝えにくい。
SS109弾は米軍のM193よりも弾頭が重く威力に優れる。


配備

こんなにいい銃ならきっとベストセラーに…とはならなかった。制式採用はベルギー、スウェーデン、インドネシアだけにとどまり、他にはイタリアなどで少数が配備されただけである。
堅実すぎてM16等と比べて没個性な面は否めないが、なぜ優良な本銃がFALのような大成功を収められなかったのか。

一番の理由として挙げられるのが「時期の悪さ」と「FALが強すぎた」こと。
FALは黎明期の1951年とかなり早く、需要を満たすモデルが他になかった。
しかしCAL(1963年~)でしくじって再設計を行ったため微妙に登場が遅れた。
各国もベトナム戦争を注視しており、軽量高速弾への知見収集と自国生産できる暇を与えてしまった。
「自国の事情に合致した銃があと数年で完成するからFALorG3で食いつなぐぞ」という国が多く、競合を打ち破ることができなかった(それができるほどFALが優秀だった)。
現在FNCはカタログ落ちしており、FN社は代わりにM4カービンを生産している*2
FNC自体は満足のいく結果とはならなかったが、専用弾「SS109」は5.56mmNATO弾(米軍ではM855)として採用され、世界各国で使用されている。こちらは一矢報いた形になったといえよう。

後継にはSCARシリーズがある。SCARはGen1のころはロアレシーバーにFNCっぽさがあったりと後継機であることを思われる部分がある(外も中もほとんど別物だけども)。


参考:各国の2000年までの5.56x45mm弾使用銃は以下の通り(一例)。2000代以降はこれらの再転換も含まれてくる。
1960年:M16(アメリカ)
1963年:AR-18(アメリカ)/ストーナー63(アメリカ)/SG530(スイス)/CAL(ベルギー)
1965年:RK 62(フィンランド)
1968年:HK33(ドイツ)
1971年:SG540(スイス)
1972年:AR70 223(イタリア)/ガリル(イスラエル)
1976年:FNC(ベルギー)/T65(台湾)
1977年:AUG(オーストリア)/FA-MAS(フランス)
1981年:K1(韓国)
1983年:SG550(スイス)
1985年:SA80(イギリス)/K2(韓国)/インベル MD(ブラジル)
1987年:セトメ モデルL(スペイン)
1989年:89式小銃(日本)
1990年:INSAS(インド)/AR70 90(イタリア)/M4カービン(アメリカ)
1996年:G36(ドイツ)/ベリル(ポーランド)



バリエーション

FNCのグリップと固定式ストックを使用したM2とその改良型のM3があった。
空挺部隊用のカービンモデルに該当するFNC-Para、安定性を重視した固定式ストックモデル、警察向けのセミオート限定モデルが販売されていた。

スウェーデン軍仕様の Ak-5 では凍結防止の為、ハンドガードの滑り止めの模様と機関部の表面処理を変更している。2024年よりAk24(サコーM23)への転換が開始されている。
インドネシア軍仕様の PINDAD SS1/SS2 はハンドガードの形状変更と銃身の延長を施している。こちらはSS1が予備役、SS2が主力として現役。



フィクション

  • うぽって!!…作者の愛が深きゆえに、擬人化され主人公としてTバックで頑張っている。(一番上の画像はこの子)
  • ヨルムンガンド…部隊の銃がMASADAに統一されるまで主人公、ヨナの相棒を務めた。
  • ヒート…アル・パチーノ扮する刑事がセミオートオンリー、ショートバレルのFNCを使用している



余談

日本ではマイナー寄りなので89式と間違われることがある。
89式は少なからずFNCかSG550の影響を受けていると思われるので、ある意味では勘が鋭いのかもしれない。




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最終更新:2025年08月03日 17:07

*1 ポリアミド製固定ストックも存在

*2 コルト社の破産と前後して米軍への製造、納入権を取得している