マグプル MASADA

登録日:2011/12/24(土) 11:40:46
更新日:2025/07/28 Mon 21:53:28
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性能(14.5インチ銃身の標準モデル)

全長:828mm
重量:3175g
口径:5.56×45mm/6.8x43mmレミントンSPC 等
装弾数:30+1



概要

マグプル社がコンセプトモデルを開発、2007年に発表し、ブッシュマスター社・レミントン社が製造していた突撃銃
名称はローマ帝国時代のマサダ包囲戦からとられている。
未来の次世代小銃のifとしてゲームやアニメにて取り上げられることが多くフィクションでの人気は高かった。


マグプル社とは

Magpul Industries Corporationは1999年に元米海兵隊のRichard M. Fitzpatrick氏が創業した銃器周辺機器メーカー。
名前の由来はAR-15用STANAGマガジンに取り付けるMAGPULゴム製ストラップ*1を最初期から製造している点に由来する。
その後もAR-15向けの周辺機器を中心にポリマー性の周辺機器を数多く製造しており、特にM-LOK規格*2やポリマーマガジンPMAG*3、MBUSバックアップサイト*4は高い人気と実績を誇る。

2008年ころには3社に分割され、周辺機器(Magpul Industries)/遊戯銃(PTS)/タクティカルトレーニング(Magpul Dynamics)に分かれた。
PTSがMagpul Industriesから完全に分かれるまでは銃の設計やコンセプトモデルの遊戯銃を販売するなどしていた。
銃自体の製造はほぼ行っておらず、大抵他社にライセンス権を売る形をとっている。
本銃もその中の一つである*5



特徴

Fitzpatrick氏曰く「軍に頼まれたわけでもなく、ただ理想のライフルを造ろうと思い造っただけ」とのことで、プロトタイプは完成までわずか4ヶ月と超スピード。

基本的には既存の銃器のいいトコどりな構成である。
  • 機関部はショートストロークガスピストン(AR18など)
  • ボルトキャリア、トリガーユニットはM16
  • セレクター操作はH&K G3で切り替えに必要な操作量が少ない
  • コッキングハンドルはAUG等(左面搭載。手動操作時のみレシプロとなりボルトの前進を行える。)
  • トレンドになりつつあったアンビ対応
  • 金属製アッパーレシーバーとポリマー製ロアの組み合わせはFN SCAR及びその強豪のXCR(当時の実質的な競合になりうる銃であり真似た可能性あり)
  • ハンドガードは同時期に発表していたMOEに対応しスリムながら拡張性も十分に確保されている

当時の各突撃銃は個性豊かであった半面その点が欠点となることもあったが、本銃はそれらの欠点を埋めるようにしていると見て取れる。

それだけでなく、構成パーツ(ストック、ハンドガード、バレル、ロアレシーバー、ボルト)をモジュール化することにより、工具いらずで様々な用途*6・口径に対応できる。
「Adaptive Combat Rifle」と銘打ったシステムで、ストーナー63やSCAR、XM8等でもみられた特徴である。
銃身まで工具なしを謳っているようにその点が過剰、弱点といえるが*7
モジュールとして代表的なものは以下の通り。
  • バレル:8.25/9.5/10.5/12.5/14.5/16.5/18/18.5インチ
  • ロアレシーバー:通常版(5.56x45mm対応*8)、7.62x39mm対応(アフターマーケット製、AKのマガジンに対応)
  • ハンドガード:ポリマーロング、ポリマーショート、アルミレール付き
  • ストック:固定式伸縮ストック、折りたたみ式伸縮ストック、PRSストック

また、7.62x51mm版のマスード(Massoud)/FOX-42も発表されていたが、こちらは発売されていない。



完成後

マグプル社からは発表のみで販売されることはなかった。H&K HK416やFN SCARらがすでに内定をもらいかけている時期であったり、周辺機器の会社がいきなり大量生産して殴りこめるほど甘くなかったりとハイリスクであった点は言うまでもない。
結局レミントン社とその子会社ブッシュマスター社に販売権を売り、2010年から前者がフルオート可の軍用モデル「レミントンACR」を、後者が民生用のセミオートモデル「ブッシュマスターACR」を販売することになった。それぞれで多少の変更や改修が行われている。
発売直後にリコール*9があったものの、2020年までは販売されていた。しかしレミントン社の経営破綻により供給は停止。ブッシュマスター側は2021年に独立、再興したものの、2024年をもって絶版となってしまった。

しかしながら、同時に開発されたPMAGマガジンは前述の通りかなりのベストセラーとなった。周辺機器メーカーとしては良い着地点を見つけた、というところだろうか。
ストックも一時期ブームになりいろんな銃に生やされていた

SCARに始まりHK443、ベレッタARX170、SIG SAUER MCX(Spear)、Cz805ブレン、ラドム MSBS、豊和HR556/20式小銃など…近年の各軍の小銃は収斂進化の如く類似した形状を取りつつあるが、MASADAはまさしくその未来を示す存在だったのかもしれない。



フィクション


エアガンは正規モデルが上記PTSブランドから販売されていた。



余談

自衛隊にて20式小銃採用以前に研究されていたACIES(先進装具システム)にて、先進軽量化小銃として89式小銃の改良例が示されていた。
しかし2012年のACIESのデモンストレーションにて、サンプルが間に合わなかったのかMASADAの電動ガンを使用していたらしく日本のミリオタがざわついた。
ストックだけはその後も引き続き流用されており、20式への影響などについて推測されることがある。



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最終更新:2025年07月28日 21:53

*1 マガジンポーチからマガジンを引き抜く際に指を入れて素早く引き抜ける

*2 アタッチメントを取り付けられる溝で、拡張性と非装着時にかさばらないコンパクトさが売り

*3 米軍、英軍、自衛隊などで採用実績あり。ポリマー製マガジンはここかランサータクティカルしか勝たんと言われるほど。

*4 クリスベクターの開発協力の後にそこから派生して生まれたアイアンサイト。折りたたみが可能かつロックを外すとバネでフリップアップするので即時使用可能。

*5 他にはマグプルPDRやFMG-9など

*6 マークスマンライフル、フルレングス、ショートカービン+α

*7 本来はロックタイトを使用し、専用レンチ等で締め上げる。そもそも兵站も戦場もすぐに交換できる環境ではない。

*8 マガジンに互換性があれば6.8x43mmレミントンSPC弾のほかにも.300 AACブラックアウト弾や.450ブッシュマスター弾なども可能

*9 民間仕様でフルオートになってしまう

*10 経営破綻時に流出した資料から事実と判明