ボーグ(スタートレック)

登録日:2022/02/15 Tue 16:42:24
更新日:2025/04/13 Sun 10:52:39
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我々はボーグだ(We are the Borg.)

シールドを下ろし降伏せよ(Lower your shields and surrender your ships.)

お前達の生物的特徴及び科学技術を我々と同化する(We will add your biological and technological distinctiveness to our own.)

お前達の文明は我々の一部となる(Your culture will adapt to service us.)

抵抗は無意味だ(Resistance is futile.)

概要

ボーグ(Borg)はSFドラマ「スタートレック」に登場する架空の種族。
名前から察した人もいるだろうが、スウェーデン人 バイオニックゾンビサイボーグ(Cyborg)の集団である。
この種族に「個性」という概念は存在せず、すべての構成員が1つの意志となって行動する。
ゆえに一人称に「私」など1人を現す呼称ではなく、「我々」という多数を現す呼称(原語では「We」などの複数代名詞を用いている)を基本的に用いる。
一応、各個人に識別番号のようなものは割り振られており、個人を名乗る場合「(番号)オブ(番号) ユニマトリックス(番号)の第(番号)付属物」と名乗る。
一応リーダーと呼べる人物は存在し、「ボーグ・クイーン」と呼称される。
このため、ヒューマノイドでありながらその生態は社会性昆虫のそれに酷似する
普段は「アルコーブ」と呼ばれる待機所で立った状態で休眠待機しており作業時や戦闘時などに覚醒させられ起動する。
主にデルタ宇宙域に拠点を置いて活動しているが、後述の技術により、銀河系のどこにでもボーグは存在すると判断していい。
他種族のことを「生命体(番号)」で識別している。
ボーグの起源はデルタ宇宙域のどこかから発祥して勢力を拡大していったということ以外は一切不明である。

同化

ボーグを語る上で外せないのが「同化」だろう。
この種族の最大の特徴は、侵略目的が領土でも資源でも金でもなく「文化」と「技術」であるという点だろう。
ある種族の技術を調べ上げ、それを取り込むだけの価値があると判断すれば、冒頭の口上の後に力ずくで同化しようとする。
ボーグの目的として、完全性を求めており*1、それ故に、ある程度文明の発達した種族を見境なく同化しようとする。
同化は手首あたりにある機械からチューブが射出され、それが対象に突き刺さり彼等の機械パーツの基本部品である「ナノプローブ」を注入する事で行われる。
同化した対象がまだ幼かった場合、成人するまで生体チャンバーに入れられる。
同化された場合、時間経過と共に「個性」は完全に失われ、集合体の「声」に安堵を感じるようになる。
一応、強靭な自我を持つ人や予防措置を施すことによって「個性」を短期間保つことはできるが、長期間は保てない。
同化された人を集合体から切り離すことは可能と言えば可能である。が、先述の「声」による安堵感を断ち切られることから精神的なリハビリを必要とする。
一応、同化の是非にもボーグなりの基準はあるようで、かつて奴隷となった種族が反乱を起こし、それからは他の種族を襲い、
物資や技術を奪っていく盗賊のような種族、ケイゾン人(ボーグでは生命体329と分類される)に関しては「同化する価値がない」とバッサリ見放されている。
また、今の所隣のガンマ宇宙域の主勢力である「創設者」こと「可変種(流動体生物)」に対して同化が通じるのかは不明。

更に同化の最大の弱点として「同化する技術の選択・排除はできず、全て丸呑みにしてしまう」というものがあり、その弱点を衝かれたせいで壊滅状態に追い込まれた。


主な技術・建造物


個と言う概念がないため文化や娯楽も存在せず、あくまでも機能性に特化した結果シンプルな外形と工場のような内装を特徴とする。

  • ボーグ・キューブ
ボーグの所有する艦船の中で(タクティカル系など特殊なものを除いて)最も強力な形状の艦船。
一辺が2km以上もある立方体の形をしており、内部には万単位のボーグ・ドローンが存在している。
どでかいながら耐久力も化け物クラスであり、ジェネレーターなどの重要部位をいくつも分散して作っているため、
船体の78%がダメージを受けても航行機能に支障はない、というチート染みたしぶとさも持っている。
しかもこれはワンオフではなく、量産型であり、一度に15隻のボーグ・キューブを確認したり、過去に何百隻ものキューブに母星を囲まれて同化されたという種族もいる。
武装もシールド無効化装置や切断ビームなど、強力な物を揃えている。
対宇宙艦隊のキルレシオは1:40以上。これ一隻で40倍の艦隊を一蹴する。
内部には球体上の艦船であるボーグ・スフィアを1隻格納できる。

  • ナノプローブ
要はナノマシン。同化の要であり、兵器ではないがこれこそがボーグ最大の武器
対象の身体に突き刺して注入するだけで自己増殖し、体内から改造・同化する。
インプラントの大半はこれで生成できるが、最終工程では外科的処置で外装を装着される様子。

  • トランスワープ
ワープ技術の一つで、惑星連邦の持つワープ技術以上の移動速度を持っている*2
惑星連邦もこの研究を開発中だが、実用化には至っていない。
ボーグの使うトランスワープは設置型と艦載型の2種類あるが、艦載型は設備に負担がかかるため、設置型を主に使う。

  • トランスワープ・ハブ
先ほどの設置型トランスワープの集合体。
ボーグにとって重要拠点の一つであり、ここを破壊することで、ボーグの活動に大打撃を与えることができる。

あまたの種族を同化しては文化・情報を丸ごと取り込んできただけあって、その技術力は総じて高い。そのため、ボーグの技術・パーツを悪用しようとする者は絶えない。
その筆頭が悪魔艦長。彼女が死亡した世界線では、彼女の部下がボーグのパーツを奪取・悪用し彼女が生還するように歴史改変したことまである。

戦闘能力

ドローンの単純な力だけでも凄まじく、あの戦闘民族クリンゴン相手に互角以上に渡り合うことができる。
そして技術力だけでも他の種族を凌駕しているのは明らかである。
さらにボーグは、一度喰らった攻撃に対して防御策を施し、再び通用しないようにする適応能力も持ち合わせている。
このため、ボーグの脅威は全銀河中に響き渡っており、ほぼ全種族にとって最大の敵であることには間違いない。
惑星連邦にとっても、「ロキュータス」という同化されたピカードの乗る1隻のキューブ相手に40隻の惑星連邦の艦艇が迎撃するも、
1隻を残して全滅、約11000人の被害が出てしまうなど、その戦闘能力は最大の脅威とみなされている。
しかし、ボーグはその対応能力を同化に依存しているため「同化しないと知識が得られない」という欠点がある。
他、彼らのシールドはほとんどのビーム兵器を無効化するが、物理攻撃までは防げないため実体剣や実体弾式のマシンガンで倒されるシーンもある。

本編での活躍

TOSには登場せず、TNGから本格的な登場となる。


  • TNG
初登場は「無限の大宇宙(Q Who)」。
クルーに加えてくれるよう頼むも拒否されたQによって未知の宙域に飛ばされ、そこでボーグと遭遇する。
ピカードが奮戦するもなすすべなく18人の犠牲を出し、Qに敗北を認めて戻してもらった。
「浮遊機械都市ボーグ(The Best of Both Worlds)」ではピカードが拉致され「ロキュータス(locutus)*3」としてボーグの手先とされる。
惑星連邦はウォルフ359の宙域にて40隻の連邦艦で立ち向かったものの、1隻を残して全滅という大敗に終わる。
どうにかしてピカードを連れ戻したものの、ピカードはこのことが大きなトラウマとして残った。
「ボーグ“ナンバー・スリー”(I, Borg)」では集合体から切り離されたドローンに「ブルー」と名前を付け、交流したが、
ブルーの方は集合体に戻ると決断した。このドローンにウィルスを仕込み、送り返すことで多数のドローンを潰すことができるが、
ブルーを自我が芽生えた「個人」と判断し、尊重するとしてウィルスを仕込むことはなかった。
これが「ボーグ変質の謎(Descent)」にて多数のボーグが自我に芽生えることとなり、一騒動起こすこととなる。

映画『ファーストコンタクト』では第二次地球侵攻を行う。迎撃に出た宇宙艦隊と丸一日かけて戦闘を続け地球圏に到達。タイムトラベルで過去の地球へ行って支配しようとしたが、ピカード率いるエンタープライズEによって阻止された。

  • DS9
直接の登場は第一話アバン以外無し。主人公のベンジャミン・シスコ司令の妻はウォルフ359の戦いで死亡している。
第3シーズンから登場するUSSディファイアント及びディファイアント級は、対ボーグ戦闘を主眼において開発された戦闘艦である。
この艦にはロミュランから提供された「遮蔽装置」が搭載・採用されているがこれはロミュランの方もボーグに対しては惑星連邦同様脅威と判断し
対ボーグに対してはある程度共同体制を採る事にした為である。

  • VOY
迷い込んだのがデルタ宇宙域であるため、本格的に登場することとなる。
生命体8472によって壊滅状態にまで追い込まれたボーグにヴォイジャーが手を組もうと一時的な協力関係に入ったり、
再び敵対関係に入ったらヴォイジャー(というか悪魔艦長ことキャスリン・ジェインウェイ)にことごとく痛い目にあわされたりと散々な目に遭ってしまう。
一方で集合体から切り離されたボーグ・ドローンをヴォイジャーが保護したり、ある事故によって、
ヴォイジャー内で29世紀に存在するだろうボーグ・ドローンを誕生させてしまったりと、ボーグ集合体が関わらなくても何かとボーグの話題が出てくる。

  • ENT
22世紀を描いている*5が、一度だけ登場した。地球に墜落していた一団が科学調査によって発掘され再起動する。手始めに調査団を同化し、宇宙船を奪いデルタ宙域へ戻ろうとする。
この時の集団は、『ファーストコンタクト』においてエンタープライズEに撃破されたボーグの生き残りである事がにおわされている。

  • PIC
どうやら相対的な脅威は低くなっている模様。悪魔艦長によってボコボコにされたせいであろう
また、ボーグ・テクノロジーの技術の高さはやはり魅力であり、密猟かの如く部品が高値で取引される。
また、シーズン2では新たなボーグ・クイーン自らが惑星連邦に出向いて惑星連邦への加盟を要請しに来る。

著名な個体


  • ボーグ・クイーン
上述の通り、一応のリーダー…なのだが、ぶっちゃけ女王蜂というべきか。
集合体においてほぼ唯一の一人称を使う個体で、明らかに感情や自我を持っている異質な存在。
複数回登場し何度か倒されてもおり、肉体を超えた存在であることを示唆するセリフがある一方で、「もとは生命体125だった」とも語っていてそれらが同一人物なのかそれとも集団ごとにいるのかは不明。

ドローン同様全身サイボーグで、胸から上を本体から切り離すことができる。



第一次太陽系侵攻時に惑星連邦とのメッセンジャーとして改造されたドローン。
「原始的な文化は権威を重んずる」との理由から地位や影響力のあるピカード大佐が素体となり、かつメッセンジャーとしての役割のためにあえて本来の人格を破壊せず深層意識に残しており、例外的に一人称を使うほか救出後のピカードに多大なトラウマを残した。
なお、最終的にピカードは外見・人格とも元に戻ったが、体内にはまだインプラントが残っているらしく後年の第二次太陽系侵攻時には集合体の声が聞こえていた。
また、現在もボーグからはロキュータスとして認識されている様子。
ボーグから見て明らかにチャチなはずの人工心臓はアップグレードされなかった模様
後に一度死亡してアンドロイドの体で生き返ったため、それによりインプラントもなくなりボーグの声は聞こえなくなった模様(相手がボーグなのかわざわざセブンに確認している)。

  • サード・オブ・ファイブ/ブルー(原語ではヒュー)
事故で一時的に集合体から切り離されたドローン。
偶然エンタープライズに保護され、ラ・フォージ少佐ら乗組員と交流するうちに個人としての自我を獲得した。
その後救援が来たため送り返された*6が、再接続に伴い彼の所属する集団のドローン全体に「個人」という概念が”伝染”して大混乱に陥った
さらには邪悪な性格のアンドロイド・ローアに集団の多くを掌握される羽目になったが、エンタープライズとの再会を経てローアの支配からも脱する。

後年、ロミュラン自由政府が管理する機能停止したボーグ・キューブで自分と同じく集合体から離れたドローンの再生を指揮していたが、あるアンドロイドをめぐる事件の中で殺害された。

  • セブン・オブ・ナイン/アニカ・ハンセン
後述の生命体8472に対抗する際、USSヴォイジャーに使者として送られたドローン。
生命体8472を退けた後、ジェインウェイ艦長の策略により集合体から切り離されクルーとして迎えられ、新たに人間性を得ていった。
エンタープライズが接触する以前に独自にボーグについて調査していた両親と共に同化され、アニカとしての人格は失われている。

元ボーグ・ドローンという経歴を危険視されたためか艦隊への正式な入隊を認められず、*7治安が悪化した宙域で結成された自警団に加わっていた。
息子同然の元ドローン・イチェブ大尉を拉致してインプラントを抜き出し死に追いやった*8犯人を追う中であるアンドロイドをめぐる事件を追うピカードらと合流し、事態の解決に協力した。その後も折に触れてピカードと行動を共にし、その際の功績で艦隊への入隊が認められている。2401年では中佐としてUSSタイタンNCC-80102‐Aの副長を務めているが、艦長であるショー大佐との相性が悪く苦労している様子。

ボーグにとって注目に値する強敵


  • 生命体8472
ボーグにとっての強敵どころか天敵と言っても過言ではない種族。
元々この宇宙の存在ではなく、流動空間という別次元の存在であり、ナノプローブによる同化が全く通用しない
ボーグが同化を試みようとした結果、返り討ちに遭い、逆に壊滅状態にまで追い込まれた。
その強さたるやボーグ・キューブを一撃で完全に破壊してしまうほどの攻撃力の艦をホイホイ量産してしまう程である。
ボーグの知識をもってしても生命体8472に対応することはできず、上記の通り「同化しないと知識が得られない」性質のため、反撃もままならなかった。
そこで悪魔にすがるジェインウェイ艦長率いるUSSヴォイジャーがボーグと交渉、生命体8472に対抗する技術を渡され、生命体8472に対抗することが可能となった。

なお、彼らにとってはあくまで自衛目的の戦闘であり、好戦的な種族というわけではない。
むしろ彼等は自分達の住む流動体空間に引き籠っている様な状態であり基本的に通常空間の存在を見下している部分が有る為である。
しかしボーグと一時的に組んで自分達に歯向かった事で脅威となった地球人を知るために地球に似せた環境を用意し
模倣する訓練をしていたが、その訓練を通じた上で融和派(先述の通り元々彼等は閉鎖・排他的傾向が強いので外交派というべきか)も出ているようである。


  • 生命体5618をはじめとする惑星連邦
生命体5618とは我々地球人のことである。
地球人の属する惑星連邦は多くの種族からなる連合であるため、テクノロジーや統率力などで著しく劣る物の画一化された対応が採り難い。
ボーグへの対抗手段となる技術も続々開発されており、さらにボーグに対する外交態度も積極的攻撃傾向にあるため、
完全敗北を喫している生命体8472を除けば、ボーグが最もてこずる相手だと言ってもいいだろう。
しかし、惑星連邦にとってもボーグは決して楽な相手ではなく、一進一退の攻防を繰り広げている。

なお、一応ボーグのみを殺戮するウィルスはすでに開発出来てはいるのだが、上記の通り、人道的観点から現状使われていない。

  • キャスリン・ジェインウェイ
「スタートレック:ヴォイジャー」の主人公にしてUSSヴォイジャーの悪魔艦長。
ゴタゴタによってデルタ宇宙域に飛ばされ、さまよっているとき、上記の通り生命体8472の攻撃に晒されているボーグと接触。
弱みに付け込んで技術の譲与と引き換えに領域の安全な通過を要求。
交渉は成立し、のちに反故。ボーグはヴォイジャーを同化しようとしたが、予測していた艦長の策略に嵌り、セブン・オブ・ナインが集合体から切り離される。
その後も艦長はたびたびボーグに関わってきてはそのたびに痛い目に遭わせており、最終的には未来から来たジェインウェイに忍ばせていた神経溶解ウィルスまで同化したことによってクイーンが死亡、
トランスワープ・ハブは完全に破壊され、ボーグは壊滅的被害を被った。




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最終更新:2025年04月13日 10:52

*1 「スタートレック」に登場する「オメガ分子」は、莫大なエネルギーを持つ一方で不安定なうえ、爆発したらあたり一帯が消し飛ぶ上、爆発地点付近がワープできなくなる、として惑星連邦が「艦隊の誓い」を無視してまで徹底的に排除しようとする一方、ボーグにとって「オメガ分子」は完全で理想的な物質の一つと認識している。

*2 トランスワープというのは「従来のワープ航法を超える航行技術」の総称である

*3 ラテン語の「語る」を意味するloquorの過去分詞形locutus。代弁者としての名前だろう。

*4 余談だが、スタッフはロキュータス/ピカード役のパトリック・スチュワートを工房に呼んで「見てくれ、君のせいだぞ!」と言ってこれらの模型を見せるイタズラをしたとか。

*5 TOSより前の時代

*6 個性を得たドローンを接続させることで集合体に変化をもたらそうという意図もあった

*7 悪魔提督ことジェインウェイ提督は激しく抗議したが、セブンはジェインウェイに迷惑をかけることを望まず身を引いたらしい

*8 直接的にはセブンが安楽死させた