波動生命体(ウルトラマンガイア)

登録日:2022/03/15 Tue 11:47:00
更新日:2025/05/08 Thu 00:00:01
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「気に入らねぇのは、その全員が『同じ証言』をしてるってことなんだよなぁ…」

「で、なんて?」

「え?うん…。誰かに、頭ン中覗かれてた気がしたそうだ」


波動生命体とは『ウルトラマンガイア』に登場する怪獣種の総称である。

概要

ガイア世界の人類の宿敵根源的破滅招来体の尖兵で、初めて遭遇した高山我夢「超空間生命体」と呼称した。
金属生命体や精神寄生体、破滅魔人と並ぶ破滅招来体の配下の代表格。
総じて高度な知性と、それに裏打ちされた明確な悪意を持ち、基本的に人々の頭の中(記憶)を覗き、人間の精神を弄び意のままに操る陰湿な搦め手を得意とする。

『ウルトラマンガイア』前半パートの代表的な怪獣で、作中では4度に渡って人類に干渉を行ったが、その陰湿さから登場回がホラー映画チックな展開になる事が多い。
早い話、昭和ウルトラシリーズにおけるヤプール人の平成版といったところ。
結果何度も我夢は彼等と戦う羽目になり、最終的に「人の心を弄ぶお前達は卑劣すぎるぞ!」と評している。


プライマルメザード


別名:波動生命体
全長:40m前後(推定)
体重:計測不能
出身地:時空の狭間

波動生命体の通常形態であり、戦闘をせず普段暗躍するのはこの姿。
外見は空を浮遊する半透明な巨大クラゲ。

メザード種は極めてミクロ的性質と量子の波のような性質の肉体を持つのが最大の特徴。
瞬間移動の様に出たり消えたりを繰り返す為神出鬼没。そしてメザードの体は肉眼で確認することはできるが通常の地球上の物質とは存在する空間が異なり、人間が視認しているのは彼らの影に過ぎない。
よって対抗手段を講じ人間側のマクロな空間に引き摺りこまなければあらゆる攻撃が通用しない。

胴体上部からは時空波を放つことができるがこの状態でも洗脳能力は平然と行使でき、基本は姿を消した状態で各種工作や暗躍を実行する。
ただしこの形態だとあまり戦闘力は高くなく、攻撃を受けるなどして人間世界に実体化を果たすことで怪獣としての下記の様々な形態を得る。
なので、怪獣形態=戦闘形態と考えると分かりやすい。


各個体

メザード


別名:超空間波動怪獣
身長:66m
体重:3万3千t
出身地:超空間

第4話「天空の我夢」に登場した波動生命体のトップバッター。
プライマルメザードがXIGファイターEXのパイロットウェーブとファイターSGのミサイルを浴びて怪獣化した姿。
その姿は幻想的にも見えるプライマルメザードから一転、体表が粘液で覆われ骸骨とクラゲの混ざったような醜悪な怪物。
武器は背中と口から放つエネルギー弾、触手から放つ電撃。振動によって物体を分子崩壊させて砂に変える能力を持つ。

劇中では東京の臨海副都心に出現すると高層ビル群等を次々に風化・崩落させ、出現場所を中心とした半径1㎞を丸ごと砂漠化することで街一つを壊滅させる破壊活動を行っていた。
そしてプライマルメザードの特異な性質から当初は一方的にG.U.A.R.D.と特捜チーム XIGを翻弄した。
G.U.A.R.D.の攻撃後は一時的に活動を停止したが、夕暮れに合わせて活動を再開するもXIGファイターEXのパイロットウェーブとファイターSGのミサイルを浴びてプライマルメザード形態から遂に実体化。
砂漠化したお台場臨海副都心でガイアと戦うも、ガイアのフォトンエッジで爆発炎上する。

後に現れた藤宮博也によれば「人間に興味を抱いたことによる人体実験」の一環だったらしい。
事件に巻き込まれた被害者達こそ死ななかったが、代わりに脳を覗き見たことで人間により興味を抱くようになり、以後直接的な攻撃から人の心に干渉する戦術にシフトした。


サイコメザード


電話だよ。

別名:超空間波動怪獣
身長:66m
体重:3万6千t
出身地:超空間

第13話「マリオネットの夜」に登場した波動生命体2番手。
着ぐるみが使用不能になったのでクラゲっぽい外見から二足歩行の標準的な怪獣チックな風貌になっているがこの形態でも空中を飛ぶことが可能。
以前のメザードのように姿を見せることなく相手の脳に直接干渉することも可能で、その力で相手の記憶を探ることもできる。
加えて知性も高まり、洗脳した人間を操作して肉盾として扱い、手出しできないガイアを嘲笑う狡猾さも見せた。

武器は腹部から放つエネルギー弾と伸縮自在の両腕。両腕から放つ電撃。
最大の特徴は電話の着信音に酷似した音色の「干渉電波」を自在に発生させ、人間の精神を汚染して意のままに操る事。
具体的にはこの電波を電話回線・通信回線経由でばらまくことで電話の着信と同種の現象を引き起こし、携帯・固定の種類を問わずうっかり電話を取って受話器越しに聞いた人間を洗脳下に置いてしまう。
能力を応用してカーナビやテレビをジャックしたり、広範囲に渡って妨害電波を放ち通信を混乱させることもできる。

東京の事件を契機に人間の心に興味を持ったのか、劇中の一か月前にアメリカの小さなリゾート地の住民を洗脳して大規模な暴動事件を引き起こしその町を閉鎖に追い込んでいる。
そして次なる実験として、山梨県の城岩温泉郷を実験場に選び、電話回線を利用してアメリカ同様町の住民をまるごと洗脳する人体実験を敢行。
さながらゾンビ映画のような状況を引き起こすと、最終段階として町の住民全員を殺し合わせようと目論んでいた様子。

町の通信網を妨害した上で唯一洗脳を免れたたかし少年と、取材にやってきたKCBクルー3人を操った町民に襲わせるが、
  • 田端健二と吉井玲子の必死の奮闘
  • 親友の実家があるこの町の地域に発生した微弱なマイクロ波に疑問を抱きファイターEXで調査にやってきた我夢
の要因が合わさり、更に我夢が少年と田端のアピールしたSOSシグナルを把握したことで遂に異変を察知されると、再びEXのパイロットウェーブとサイドワインダーを受けて実体化を果たす。
ガイア相手に真っ向勝負では勝ち目がないと悟り、洗脳した町民を自身の周囲に集めて人質にした卑劣な手段で優位に立とうとしたが、乱入したウルトラマンアグルに一方的にボコボコにされ最後はフォトンクラッシャーの直撃で爆散。
それによって人々の洗脳も解けメザードの実験も失敗した。*1


サイコメザードⅡ


ナレーション「またまたアイツがやってくる!人の心を蝕む死神のようなアイツが!」


別名:超空間波動怪獣
身長:66m
体重:3万6千t
出身地:超空間

第19話「迷宮のリリア」に登場した波動生命体3番手。
サイコメザードの腹部に禍々しい人面が浮かび上がり、より醜悪な風貌となった。
腹部の顔のモチーフは敦子が持っていた西洋人形の顔とのこと。

武器は両腕から放つ電撃だが、サイコメザードとは違い電話回線に頼らず直接人間の心に干渉できるよう能力が変質。
金色に煌めく「幻覚誘発粒子」を広域へと放出する能力を得た。
これは大気中の電磁波と反応して極めて指向性の高い特殊な電気エネルギーを発生、エネルギーの電気刺激により脳のシナプス神経回路を刺激して幻覚を見せることができる代物。
被害者は居眠りするかのような放心状態に陥ったり寝ぼけているかのような行動を取った末に、現実と幻覚の境界が分からなくなり認識と記憶を書き換えられてサイコメザードⅡの意のままに操られてしまう。
即効性は低いが時間をかけてジワジワ思考と記憶を蝕んで操れるのが最大の利点。
おまけに標的に直接粒子に触れさせずとも通信回路経由で幻覚を引き起こせるので隠密性にも優れる。
よって粒子が散布された地域の人間はいつでもサイコメザードⅡの干渉を受ける射程範囲内にいることになる。
更なる応用として粒子で電波を攪乱したり、大量の粒子で目くらましを行うことが可能である。

ただし欠点として、幻覚誘発粒子は特殊な電波信号を発信しているため、逆探知されると潜伏場所を特定されやすい点がある。
隠密性と悪質さはサイコメザードから大幅に高まった反面、精神攻撃に特化した代償なのか素の戦闘力はサイコメザードよりも低い。


劇中ではワームホールに潜伏しながらエリアルベース上空に幻覚誘発粒子を散布してXIGのオペレーター・敦子に干渉。
彼女の幼少期のトラウマを利用して幻覚でゆっくりと精神を蝕んで敦子を追い詰めつつXIGの連携を乱して敦子を孤立させ、リリアに成りすますことで敦子を支配下に置こうと目論んだ。
同時に破壊工作も並行して実行。幻覚により都市の交通や航空機管制を混乱させることで大規模な混乱や事故を誘発させていた。
潜伏場所を特定されると正体を現しガイアと戦うが、敦子がリリアの幻覚から解放されたことで戦力が一気に弱体化。
弱った隙目掛けて放たれたクァンタムストリームを受けて呆気なく爆散した。


リリア


私には、敦子の寂しさがわかる!私だけが、敦子の本当のお友達なんだもん!

演:鴨川寿枝

敦子の幼少期の辛い記憶や不満といったマイナス感情をベースに、敦子が幼少のころに無くした西洋人形をモデルにサイコメザードⅡが生み出した少女の幻覚。
敦子のトラウマや心の隙間を刺激して懐柔し、自身に取り込もうとしたが、説得に反応して敦子が正気を取り戻したことで失敗に終わった。
リリアの幻覚を打ち破った途端サイコメザードⅡが弱体化したことから、サイコメザードⅡの分身の側面もあったと思われる。


クインメザード


またお前を利用できれば面白かったのにね…
でもいいわ。これから私は地球上に増殖し、人間共の憎み合い、滅ぶ様を見届けてやる!……フッ

声:久野真紀子

別名:超空間波動怪獣
身長:66m
体重:3万9千t
出身地:超空間

第37話「悪夢の第四楽章」に登場した劇中最後の波動生命体。
形態はサイコメザードⅡに酷似しているが、黄色い複眼を持つ蛇に似た頭部と鞭状の両手を持つ。
腹部だけでなく背後の襟巻きにも複数の女の人面が浮かんでおり、更にそこから4本の触手が新たに生えた。

明確な自我を見せた個体で、戦闘の最中でも人語を介するなど同種族の中では最も知能と狡猾さに優れる。
一人称は稲森博士の性格をトレースした影響からか「私」
しかし性格は、初期の藤宮のように人類を「癌細胞」と揶揄して見下し、人類に殺された絶滅動物や怪獣たちの怨嗟を大義名分にして自身を正当化する非常に狡猾な性格。
藤宮に言葉巧みにすり寄ったが実際は藤宮への仲間意識は皆無。
総じて人類を弄ぶための道具としか見ておらず、藤宮の心の傷を弄び嘲笑していた。

武器は背中の両脇から伸びた触手から放つ電撃。
サイコメザードと同じ干渉電波を発生させることができるが、規模は大規模な電波干渉によってワームホール一帯の通信を途絶させるほど強力無比。
更に上記の通り人間に擬態したりワームホール内の超空間に実体の有る幻影を投射することも可能。
ただし、援護こそすれ幻影ウルトラマンアグルに戦わせてばかりで最終的に弱体化したので、素の戦闘力はどれほどあったのかはあまり分からずじまいだった。

劇中ではサイコメザードⅡの結果を踏まえたのか再びサイコメザードの時と同じ通信回線を利用した洗脳作戦へと回帰。
サイコメザードと同じ手口を取るが、サイコメザードⅡのようにワームホールに潜みながらKCB本社ビル内の全電話をハッキングして職員を洗脳しKCB本社ビルを極短時間で占拠。
占拠したKCB本社ビルに本体を密かに潜伏させた後は
  • テレビ局の設備を利用して放送電波に干渉電波を乗せて広範囲に拡散させ、大規模な精神汚染を誘発させる
  • 自身の増殖
の2つを計画し、最終的に全人類を殺し合わせて自滅に導くことを目論んでいた。
また37話が始まるまでの数か月の間に各地で動機不明の集団犯罪を頻発させていたともされる。
ダメ押しで既に亡くなった稲森京子の姿に擬態して藤宮に揺さぶりをかけて再度破滅招来体陣営に引き込もうと目論み藤宮に玲子を拳銃で射殺させるように仕向けたが、稲森博士への未練を断ち切った藤宮に反逆され計画は瓦解。
自身も電波回線に潜り込む寸前で我夢に妨害され超空間内でガイアV2と戦いになる。

争え!滅べ!それが地球の意志、人類の運命だ!

当初は幻影ウルトラマンアグルと電撃を駆使して翻弄したが、加えて対ウルトラマンと計画完遂に注力し過ぎてXIGは眼中になかったため、その隙を狙いワームホームに撃ち込まれたXIGの特殊弾*2によって超空間の構成を乱されて幻影ウルトラマンアグルは消滅。
見下していた人間にしっぺ返しを食らったことに気が付かず、超空間が乱れたことに混乱していた隙を狙われガイアV2のリキデイターを受けて絶叫を上げながら爆散した。

私の超空間が、何故!?ギャアアアアアアアッ!!


偽稲森京子


藤宮君には私が必要な筈よ?
貴方の理想…貴方の孤独。その全てを理解できるのは、私しかいないんだもの!

演:久野真紀子

破滅招来体の活動と地球怪獣の活性化により、怪獣排除のため軍拡が進む世界に悩む藤宮を惑わすためのクインメザードの擬態。
一人悩む藤宮の前に姿を現すと「自分こそが藤宮の理解者である」という甘言で言葉巧みに擦り寄り、再び藤宮を人類抹殺の道に歩ませようとした。
藤宮に銃を向けられても尚藤宮に自分は撃てないとタカをくぐっていたが、玲子との交流を経て成長し、葛藤の末に迷いを振り切った藤宮の銃撃によって倒れる。
だが絶命には至らず、「軟弱な奴…いつも肝心な時で…」と冷たく吐き捨てる残酷な本性を露わにし、藤宮を嘲笑いながら姿を消すと作戦を最終段階に運ぼうとした。


幻影ウルトラマンアグル

ガイアV2との戦いでクインメザードが作り出した実体を有する偽のアグル。
幻影であるが同時に本物のアグルと互角の戦闘力を以てガイアを終始苦しめた。
詳細は個別項目を参照。


余談

『ガイア』本編で製作された着ぐるみのうち、第4話登場のメザードは作中の演出として実際にスーツが燃やされるという形で失われている。

第4話の脚本を担当した長谷川圭一氏によると「根源的破滅招来体の諜報部門」「人間を調査することによってもともと人間が内在する暴力性や破壊性を攻撃方法として利用している人間のネガ」と位置づけたらしい。

長谷川圭一氏の手掛けた小説作品『超時空のアドベンチャー』では、物語終盤にチャリジャがマルチバースからかき集めてきた怪獣軍団の一体としてサイコメザードが登場する。


追記・修正よろしくお願いします。

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最終更新:2025年05月08日 00:00

*1 なお飛び散ったサイコメザードの破片はガイアが身を挺して盾となったことで町民に当たることはなく、怪我人もゼロに終わった。

*2 長谷川氏曰く、稲盛博士が開発したパーセルの応用とのこと。つまり偽物の稲森博士を本物の遺したパーセルが撃ち破る展開であったとのこと。