異世界サムライ

登録日:2023/06/13 Tue 21:38:26
更新日:2025/02/12 Wed 16:12:01
所要時間:約 4 分で読めます





死にざまを
美しく飾りたいと願うのは
ヒトの性である

彼らにとってそれはもはや美徳であり
「生きざま」だった

異世界サムライとは、KADOKAWAの漫画配信サイト「コミックウォーカー」にて連載されている漫画作品である。*1
作者は齋藤勁吾氏。



あらすじ

武士の生き方に憧れる女性剣士「月鍔(つきつば)ギンコ」。
念願叶って関ヶ原の合戦に参加するが、彼女は生き残ってしまう。
周囲に広がる亡骸は、すべて武士の死にざまを体現した美しいものばかりに映り、死に場所を失ったギンコは慟哭の声を上げる。

その後平和な世の中となってもギンコは武士を相手に死合いを挑む日々を送り、剣鬼と呼ばれるほどとなる。
やがて百の剣客を切り殺し、その墓を作り終えたギンコはいよいよ絶望する。
そして、仏門に帰依するために「転生寺」という寺を訪れ、仏に頭を下げる。
だが、ギンコが思った事は許しではなく、さらなる敵のいる地獄を求める願いだった。

「赦しはいらぬ。敵が欲しい。」

「私が鬼なら、悪鬼羅刹のはびこる地獄の世へ、いっそ……」

「いいよ。」

突然の仏の声に驚き顔を上げたギンコの前には、逃げ惑う人々と異形の怪物があった。

「は!?」

こうして、ギンコの異世界での生活が始まったのである。


異世界

文字通り、仏によってギンコが転移させられた異世界。
9話時点で世界自体の名称などは不明だが、「キケン森」「ミツクビ山」など、読者とギンコに優しいネーミングセンスをしているようである。
いわゆる中世ファンタジー風の時代設定だが、ガムやダンボールなど現代的なアイテム*2も存在している不思議な世界。
人類を脅かす災厄である「魔物」と、それと戦う力を持った「勇者」が存在している。
魔物が人類(エルフ、ドワーフなどを含む)の共通の敵である為か、人類同士での争いとは無縁であり、人が人を殺す事は最大の禁忌であるとされている。


勇者

この異世界における名のある冒険者の総称。
それぞれの武器や種族から「⚪︎⚪︎の勇者」と呼ばれる。


主な登場人物

月鍔ギンコ

本作の主人公。一人称は「(それがし)」。
赤い着物と大きなリボン、顔に入った横一線の傷が特徴。また、単行本カバー下では肩や足にもいくつかの傷が残っている様子。この化け物に傷を入れられる奴がいたのか。
顔の傷は「お前は器量が良い娘なのだから女として生きてもいいのではないか」と問いかけた父親への返答として自らつけた傷であり、「女を捨て、サムライとして生きて死にたい」という彼女なりの意思表示。
なお、彼女の言う「侍として生きる」というのは死力を尽くした戦の中で殺されることであり、強くなること・勝ち続けること・生き残ることではない。
身も蓋もない言い方をしてしまえば、一種の自殺願望である。
ただ、死に場所こそ求めているが死にたがりではなく、高所から落とされて生き延びた際には人並みに安堵するような場面もある。
自分の価値観は他人も共通と思っている危険な傾向があり、魔物に人質に取られた勇者がいても「戦士なら討ち死にを望むはずなので殺して結構」と人質を無視して動いたり、魔物が最後まで反撃せず逃げようとした時には失望したような表情を浮かべることもある。
その精神性は、ドラクロからは「傲慢」と指摘された。

念願叶って関ヶ原の合戦にて西軍として戦うが、鉢金に銃弾を受けて意識を失い、気付いた時には戦が終わっていた。
ちなみに、死体だと思われたのか、それ以外に外傷もなく、敵も味方も撤収してしまっていた。
その後は落武者として斬り合いの日々を過ごしていたが、ある時訪れた寺で仏の粋な計らいにより、中世ファンタジー風の異世界に飛ばされてしまう。
異世界に着いたギンコは当初こそ驚きはしたが、魔物と戦う人々を見て「混ざりたい!」と目を輝かせ、存分に剣を振るうことで異世界生活をエンジョイしている。

を持たず剣一本で合戦を生き延びる程の剣の達人であり、大の男を縦に一刀両断できるほどの使い手。
魔物相手でも一瞬でオークやトレントを輪切りにしたり*3、三つ首のバジリスクを戦闘描写なしであっさり倒すなど、ずば抜けた戦闘能力を持っている。
また、あくまでメインウエポンが刀であるだけで、ギンコ自身は武芸百般を自負しており、大の男でもまともに引けないような大弓を正確に扱う事もできた。
持っている刀は「銀横綱」「銀大関」と名付けているが、関ヶ原の戦いで拾っただけの無銘の刀である。
戦闘に関する勘も冴えており、遠く離れた洞窟に封じられた魔物もあっさり見つける事ができるが、その反面平穏な場所は苦手。

ミコ

森でトレントに襲われているところをギンコが救った子ども。一人称はぼく。
可愛らしい風貌だが「お姉ちゃん」と言われてショックを受けているあたり、男の子だと思われる。ついててお得。
文字通り花やその種を用いる「花魔法」の使い手で、花畑へワープしたり魔力で植物を品種改良したり、一粒で拳大のひまわりの種を射出する魔法を扱う。
勇者になる事を夢見ており、戦闘用の魔法も勉強中。
上記の種発射魔法は爆発する品種を用いるなど研究・改良を進めているが、手負いのグレムリンには傷一つ与えられなかった。
頭が良く洞察力も優れており、店主の身なりから密かに取引をしていた魔法本の存在を見抜いたほど。

ギブリール=ルー

孤児院を営むシスターであり、ミコの育ての親。愛称は「ルゥ」で一人称は私。
シスター服で隠しきれないでっかいものが特徴。下着もやたら大胆な本作のセクシー担当。
また、60年以上生きているが実はエルフであるためまだまだ美貌は衰えていない。
普段は明るい姉御肌な性格だが、ミコに対しては少々過保護気味。
初対面のギンコを「ドブ川みたいに血の匂いのするヤロー」がミコの側にいたという理由で殺しかけ、ミコの知り合いと分かった途端明るく接する豹変ぶりは、ギンコからさえ「狂人」とまで言われたほど。

かつては腕の立つ「槍の勇者」だったが、魔物に襲われ親を亡くした子供達を放って置けず、親代わりとなるためシスターとして孤児院「愛の家」を建てた。
なお、多くの子どもたちの面倒を見てきたが、現在孤児院にいるのはミコ一人。
現在も槍の使い手として魔物退治をしているようだが、三ツ首のバジリスク*4相手に呪いを受け、体が石化しつつあった。
バジリスクも洞窟に封じていたため緩やかに石化が進行するという状態で、どちらが先に死ぬかの根比べをしていたのだが、ギンコによってバジリスクが倒されて呪いが解け、ギンコとも打ち解けるようになる。
しかし、ギンコに染み付いた血の匂い=大量殺人者であることに警戒は解いておらず、勇者ギルドの「法の勇者」に裁定を委ねる。
シスターをやってるおかげか回復の魔法も操れるが、使えても2回が限界で、1回使うだけでも死にそうなほど疲弊してぶっ倒れる(そして吐く)など、魔法を使う事には向いていない。

かつて彼女はエルフ特有の「エルフ病」に苦しんでいたが、キルケにより救われた。
その後、どういう経緯かキルケによって魔族(十中八九サキュバス)に変えられ、彼女の下で使役される事になる。
だが意識だけは人間として残っており、キルケの非道に心を痛める。
そして、キルケの支配を脱するために魔力の源である「魔腎臓」を潰したという過去がある。
現在魔法が使えないのもそれが原因である。


グルニカ

「火の勇者」と呼ばれる勇者の一人。
金にうるさい性格で、人々の無事より獲物と報酬を横取りされた事に苛立ちを隠そうともしないで兵士に当たり散らす困った人物。
大きな三角帽子に杖を持った分かりやすい魔法使いであり、指パッチン一つで巨大な火柱を発生させる事ができる。
ワープ直後にギンコの放った流れ矢*5によって頭を射抜かれ落下、頭が原型を留めないほどの無惨な落下死体となるも、直後に何事もなかったかのように復活。
「死者の蘇生は不可能」「肉体の欠損は治せない」というこの世界の魔法の原則すら超えるほどの魔法使いであると言える。

ヴォルス

「斧の勇者」と呼ばれる勇者の一人。
バイキング風のカブトに小柄な体、豊かなヒゲの、分かりやすいドワーフ。
爆破の魔法と大斧の一撃を組み合わせた爆斧の破壊(アクスボカン)が必殺技で、竜さえ砕く事ができると豪語する。
ただし、一撃の破壊力こそあるものの大勢を相手にするには向いていない。

ドラクロ

「法の勇者」と呼ばれる勇者の一人にして、裁判官。
一見上品そうな老人男性だが、出会い頭に「魔物の中でもひときわ根性の腐ったカス野郎と決めつけて宜しいか」と煽るなど、敵には容赦がない。
魔力で動く魔力人形(マナニア)『ジャッジ』を呼び出し、相手の記憶を読み取って即座に判決、有罪と見れば裁きを下す
巨大な木槌(ガベル)や細身の(テミス)を操る。

シレーヌ

王都アヴァロンの王族の少女。
フルネームは「アーサー・シレーヌ・アルトリウス・フォン・アヴァロン」。
体力こそ無いが、戦闘用の魔法人形を操る魔法を持っており、王都の外にまで配備している。
当然それだけの魔法人形を操っているため魔力の消耗も激しく、魔力の超過で吐血をしてしまうこともある。
自国の民を愛し、民を守るためなら限界を超えて魔法を使うことも厭わない献身的な少女。
ただし、その慈愛の精神は自国の民に対してのみのもの。
余所者に対しては一切の情もなく、知らずに守ってしまった際には「守って損した」と本人の前で言い放つほど。
「我が民以外はクソどうでもいい」「よそ者はアヴァロンから出ていけ」など、王族としてアウトな発言をバンバン垂れ流す、多分公的な場に出しちゃいけない危険人物。
数多の勇者が魔物の犠牲になる事に心を痛めており、その元凶である魔王の討伐をギンコに依頼する。

キルケ

魔族を生み出す謎の魔女。
常にへらへらと人を食ったような態度をしており、仲間からも疎まれている。

ギンコの父

文字通りギンコの親。
既に故人であり、ギンコの回想でのみ登場する。
彼もまた侍であり、ギンコを侍として育てる。
そして、最後の稽古としてギンコと真剣勝負の末、その命を落とした。
つまりはギンコを修羅として育てた張本人であり、この物語の元凶とも言える。
ただし、強要・洗脳のようなことはしておらず、せっかく器量がいいのだから女として生きてはどうかと問うてもいる。
また、「未熟な者が戦場に出るのは敵にも味方にも無礼」「命の覚悟がない者には傷一つつけない、もしやってしまったら速やかに自害する」など、高潔な精神の持ち主でもある。
侍狂いとでもいうべき彼女の気質は本人のものであり、強いていうなら関ヶ原で戦死できる程度の強さに止めておかなかったという意味では確かに元凶である。

ギンコの母

文字通りギンコの母で、ギンコの父の妻。
ギンコを心優しいサイコ才女に育てようと考えており、武士道は頭がおかしいものと考えてる真人間。
ただ、腕っぷしは強いのか無神経な発言をする旦那の頭を軽率に引っ叩いたり、耳を引っ張ったらうっかり千切ってしまったりと、やはりギンコの母であると認識できる(物理的に)強い女性。



「赦しはいらぬ。追記修正が欲しい。」

「私が鬼なら、wiki篭りのはびこる地獄の世へ、いっそ……」

「いいよ。」

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最終更新:2025年02月12日 16:12

*1 アプリ「ニコニコ漫画」でも、コミックウォーカーの公式配信枠「異世界コミック」にて同時に連載中。

*2 ガム自体の起源は西暦300年ごろ、ダンボールの素材も1800年代には生み出されたようなので、あり得ないとも言い切れない。

*3 漫画版では、直立状態の居合=腕の振りだけでオークを輪切りにしている。

*4 通常のバジリスクの首は一本だけで、こいつは突然変異と思われる。なお、漫画版で最初にその姿を見せた時は首が一本だけに見えるが、影にもう2本あることが分かる。

*5 外れ矢と言う訳でもなくグレムリンを撃ち抜いた後に威力を残したまま飛んでった先に偶然ワープした形。よってギンコ込みでその場にいた全員が一切予測しておらずぶち抜いた直後は全員ドン引きしている