スイープトウショウ(競走馬)

登録日:2023/08/08 Tue 06:58:23
更新日:2025/04/20 Sun 23:26:17
所要時間:約 8 分で読めます




スイープトウショウ(Sweep Tosho)とは日本の元競走馬

メディアミックス作品『ウマ娘 プリティーダービー』にも登場しているが、そちらでの扱いは当該項目参照。
スイープトウショウ(ウマ娘 プリティーダービー)


目次

【データ】

誕生:2001年5月9日
死亡:2020年12月5日
享年:19歳
父:エンドスウィープ
母:タバサトウショウ
母父:ダンシングブレーヴ
調教師:鶴留明雄 (栗東)
主戦騎手:池添謙一
馬主:トウショウ産業
生産者:トウショウ牧場
産地:静内町
セリ取引価格:-
獲得賞金:7億4,482万円 (中央)
通算成績:24戦8勝 [8-4-2-10]
主な勝鞍:04'秋華賞、05'宝塚記念・エリザベス女王杯

【誕生】

2001年5月9日生まれの鹿毛の牝馬。父はエンドスウィープ、母はタバサトウショウ。
名前の由来は母母サマンサトウショウ、母タバサトウショウと続く魔女ネーミング*1と父エンドスウィープに引っ掛けた「魔女の箒」である。
半弟に17歳年下のサウジダービー馬ピンクカメハメハ(父リオンディーズ)がいるが、サウジ遠征から4か月後の2021年6月レース中に急死してしまった。

生産者はトウショウ牧場
アメリカの繫殖牝馬・ソシアルバターフライを擁し、「TTG*2」の一角・「天馬」トウショウボーイ*3を始めとした数々の優駿を輩出した名門のオーナーブリーダー*4である。
が、そのソシアルバターフライの牝系にこだわった結果、血統が偏り過ぎて生産馬の活力が失われてしまい、牝系が時代遅れのものとなるにつれて成績が低迷。
唯一牧場に残されたシラオキ系繫殖牝馬コーニストウショウとトウショウボーイの間に生まれたシスタートウショウ*5が活躍したことで一息ついたものの、相も変わらずソシアルバターフライ系にこだわり続けた結果再び低迷してしまう。
結局、トウショウ牧場は方針を転換。牧場の環境改善に加え、繫殖牝馬の整理を行ったりソシアルバターフライ系へのこだわりを捨てたりなどの改革を行った。
スイープトウショウもソシアルバターフライの血こそ入ってはいるものの、全体的にはトウショウ牧場では非主流というべきチャイナトウショウ系の馬である。

【戦歴】

祖母のサマンサトウショウや母のタバサトウショウも所属していた渡辺栄調教師の厩舎に2歳で入舎。
2歳の10月に京都競馬場の新馬戦でデビュー。
デビュー戦で角田晃一騎手を背に早速勝利をあげると、直後に挑んだG3のKBSファンタジーステークスで早々に重賞馬の栄光を勝ち取る。
初のG1である阪神ジュベナイルフィリーズで5着に入り、翌年初戦の紅梅ステークスを勝利。その後、渡辺調教師の定年引退により、鶴留明雄調教師のもとへ転厩し、同厩舎の主戦であった池添謙一騎手に乗り変わり。池添騎手とはその後最後までペアを組むことになるのだが、コンビ初戦のチューリップ賞で早速勝利をあげた。
牝馬三冠路線では桜花賞優駿牝馬(オークス)の勝利こそ逃すものの、3つ目の秋華賞では、桜花賞馬ダンスインザムードを下して見事勝利。これが初のGⅠ制覇だった。

その後は安田記念→宝塚記念という中2週でG1連戦のハードスケジュールで2着→1着(1966年のエイトクラウン以来39年ぶり史上2頭目となる牝馬の宝塚記念勝利)を記録したり、
エリザベス女王杯や京都大賞典で更なる重賞勝利を重ねるなど活躍を続けていった。
そして2007年、三度目のエリザベス女王杯でダイワスカーレット、フサイチパンドラ(前年のエリ女覇者で、九冠馬アーモンドアイの母)に次ぐ3着に入ったのを最後に引退した。

生涯戦績は24戦8勝(8-4-2-10)、獲得賞金は7億4482万円。
8勝の内の6勝が重賞で、更にG1が3つ含まれるなど凄まじい競走能力を秘めた牝馬であった。

【引退後】

引退後は繁殖入り。2015年まではトウショウ牧場、トウショウ牧場が2015年10月に閉鎖されて以降はノーザンファームで静養されていた。
そのポテンシャルとは裏腹に産駒成績は振るっていないが、初仔であるジュエルトウショウの父親はアグネスタキオンだったり、
キタサンブラックとの間にも9番仔ピエドラデルーナが産まれていたりする。
また牝の仔5頭が全員繁殖入りしている他、5番仔スイーズドリームス(父ディープインパクト)もヴェルサイユリゾートファームでプライベート種牡馬となっている。
同じ池添騎手のお手馬でもあるオルフェーヴルとの間にも仔を儲けているが(スイープトウショウの2015・牡)、気性難同士の交配が災いしたのか、超気性難で競走馬としてのデビューもままならず、2023年現在は消息が不明である。
また、ドゥラメンテとの間に産まれた娘のクリーンスイープは、やはり気性の激しさゆえに調教やレースで馬場入りを嫌がる素振りを見せることが多く、「これではレースで使うことが難しい」と、担当だった名伯楽の国枝栄調教師*6に匙を投げられて早期引退し繁殖入りというアクシデントもあった。

しかし、スイープトウショウは2020年12月5日、スワーヴリチャードの仔を宿して過ごしていた最中に腸捻転を発症。19歳でその命を落とすことになり、11番目となるはずだった宿していた仔もまた母体と運命を共にしてしまった。
その突然の訃報については主戦騎手であった池添も、その死を惜しむコメントを残している。

それからしばらく経った2024年、2番仔で繫殖入りしたビジュートウショウ*7の仔、すなわちスイープトウショウの孫に当たるスウィープフィートがチューリップ賞を制覇。孫世代から重賞馬を輩出することに成功した。
なお、スウィープフィートの父は奇しくもスイープトウショウ最後の仔の父でもあったスワーヴリチャード。勝ち方も祖母を思わせるような末脚を発揮しての差し切り勝ちだった。

ちなみにラストクロップとなったスイープアワーズは奇しくもディープインパクトのラストクロップの一頭でもあり(スイーズドリームスと同じ馬主が所有)、注目を集めている。

【創作作品での登場】


基本的には気が強く我儘放題な文字通りのじゃじゃ馬娘だが、初登場回では引退間近の担当調教師に阪神JF勝利を捧げるべくファンタジーSに挑んでいる。
その際動機を「金と男のため」(金はG1出走のため必要な「収得賞金」の事)と称したため、ツルマルシスターに男に貢いでいると誤解されたが。
また秋華賞は最晩年のノーザンテーストの視点から、「日静」の物量作戦に出遅れという名の長過ぎる準備で抗う若き「東商」の才女として描かれ、
宝塚記念編で名前ネタから掃除のおばちゃんの恰好で登場して以降、エリザベス女王杯編等時々清掃員のコスプレを持ちネタにしている。

名前が名前だけに、「魔法」が使えたという祖母に憧れる魔女っ子キャラなウマ娘。
2022年6月に育成キャラとして実装。
すると「パパ」への対応がどう見ても史実の池添にかましたそれ、父親の好物が完全に池添ネタ*8であった事から池添の娘説がトレーナーの間で囁かれる事となり、
池添本人がそれを把握して完全に父親目線でのツイートを行う事態にまで発展している。というよりスイープ本人も池添に引っ張られてる性格してるような

でも池添本人に凸って池添本人にスイープピックアップを引くまでガチャらせた某youtuber芸人はやりすぎだと思う…まあ池添騎手もその後石を使い切らせたのでおあいこ

【余談】

池添「いやーきついでしょ」

ここまで読んでもらえばわかる通り、スイープトウショウは競走馬時代に名牝と呼んで差し支えない活躍をした。だがその一方でチーム池添*9の例に漏れずとんでもない気性難としても有名だった。


気性難の馬というと、掛かり癖が酷かったり、人や他の馬に噛みつこうとしたり、レースで騎手を振り落とそうとしたりという、暴れて周りを困らせたり、怪我をさせたりしまうようなケースが多いが、この馬の場合は少し異なり、レース中はむしろ素直で扱いやすかったと池添騎手は証言している。
では、彼女にあった気性の問題は何だったのかというとレース以外でちょっとでも機嫌を損ねると、すぐに立ち止まって動かなくなることが多々あったのである。
返し馬で池添が乗ったことで機嫌を損ねてスターティングゲートまでの誘導ができず、騎手だけを歩いてゲートに向わせたり、
ゲートの前についたはいいが、今度はゲートの中に意地でも入ろうとしなかったり、とその手のエピソードは枚挙に暇がない。

調教も一筋縄ではいかず、雪の日に調教場所から全く動こうとせず、そのせいで乗っていた池添騎手に雪が降り積もったこともあったという。そのため、事前に予定した内容の半分をこなせればいい方という有様だったようで、
挙げ句の果てには調教を嫌がってまともに調整ができず、目標レースを回避せざるを得なくなったこともあった。

そのため、「もっと真面目にレースに挑んでいたら更に活躍できたはず」なんて具合に嘆かれることもあったとか。実際、池添騎手も調教の量が全く足りない状態でいつもレースに出ていたことを認めており、それが後述する競馬サイトのインタビューに繋がっている。
逆に言えば、それだけのワガママ暴君っぷりでもGⅠ3勝を挙げられた文句なしのスターホースではあるのだが。

機嫌が悪いときは、池添があげたエサの人参を拒否し、口にしたと思ったら目の前で吐き捨てたことも。

テレビ番組でスイープトウショウが取り上げられ、番組内で池添騎手に「(スイープトウショウを)彼女にしたいですか?」とインタビュアーが質問を投げかけたシーンがあるのだが、その際の池添の返答が、上記の一言である。

そりゃ池添じゃなくても(彼女にするには)きついでしょとも言いたくなるだろうが。


スイープトウショウと池添騎手のこのやり取りはネタとして広く浸透しているが、池添騎手自身はその後にこうも述べていることも覚えていただきたい。

振り回されっぱなしになると思いますよ。手のひらで転がされるというか…並の馬じゃないと思ってるんで、G1でね、良い結果出せるように頑張りたいと思っているんですけどね。
プライドがめちゃくちゃ高いけど、めちゃくちゃ綺麗な女性なんじゃないですか。

しかしその後、2022年11月にある有名競馬情報サイトにて、池添騎手が癖馬を語る企画動画が何本かアップロードされ、そこでスイープトウショウが話題になった回があった。
ここで、池添騎手はスイープトウショウが能力は高いが扱いに苦労する馬であることを転厩前から知っていたが、転厩後にまさか自分が乗ることになるとは全く思っていなかったと話し、それが決まった際には「正直嫌だった」とハッキリ口にしている。
その後、上記の気性難ゆえの苦労話を交えつつ15年ぶりの「彼女にしたいですか?」の質問に対しては

「彼女は嫌ですね」

と遂に断言されてしまう羽目に。*10
しかし、インタビュー内で「しっかり調教ができていれば、あと5~6つはG1を取れたと思う」と能力の高さを褒める内容*11もしっかり語っており、池添騎手にとって思い入れが強い馬であることも間違いないのだが、やはり気性難ゆえの苦労が絶えず、その時の印象も相変わらず強いようである。

追記・修正は、雪が積もっても根気強く馬に寄り添える方がお願いします。

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最終更新:2025年04月20日 23:26

*1 70年代にアメリカで放送されたドラマ「奥さまは魔女」の主人公がサマンサという魔女で、サマンサの娘がタバサである。

*2 1970年代後半の日本競馬において幾度も対戦した3頭の競走馬、トウショウボーイ・テンポイント・グリーングラスの総称。3頭ともいずれも年度代表馬に選出され、また揃ったレースではこの3頭で1着から3着までを独占するなど、同世代の競走馬と比較して並外れた能力を持っていた。

*3 1976年皐月賞・有馬記念及び1977年宝塚記念優勝馬・1976年優駿賞(現JRA賞)年度代表馬。種牡馬入り後はウマ娘化もされた三冠馬ミスターシービーを筆頭に数多くのGⅠ・重賞勝利馬を輩出して成功を収め、種付け料が安い一方で非常に勝ち上がり率が高かったことから中小の競走馬生産者から「お助けボーイ」のあだ名で呼ばれた。

*4 「馬主兼生産者」の意味で、牧場で生産した競走馬をそのまま所有し走らせる生産者を指す用語。トウショウ牧場の場合はオーナーや「トウショウ産業」名義で走らせており、スイープもその例に漏れずトウショウ産業名義だった。ちなみにウマ娘関連で有名なオーナーブリーダーではメジロ牧場やシンボリ牧場など。

*5 1991年桜花賞優勝馬・同年度JRA賞最優秀4歳牝馬(現:最優秀3歳牝馬)。種牡馬としての晩年のトウショウボーイの傑作と称される。

*6 関東の優秀調教師賞を5度獲得している美浦のトップトレーナー。アパパネ・アーモンドアイという2頭の三冠牝馬をはじめ、特に牝馬のG1ホースを数多く輩出したことから「牝馬の国枝」の異名を取っているが、そんな彼でもクリーンスイープを御す事は出来なかった。

*7 父ディープスカイ

*8 あんみつが好みとの描写があるが、池添には「スタッフ全員に一切気付かれずに一般人として視聴者参加型番組に参加した経験があり、そのお題があんみつだった」と言うネタがある。

*9 池添騎手が主戦を務めた競走馬たちの総称。その代表的な実力馬に気性難持ちが非常に多く、代表例としてはデュランダル、スイープトウショウ、ドリームジャーニー・オルフェーヴル兄弟、メイケイエールなどが挙げられる。尤も気性難持ちでない馬ももちろんおり、そのパターンの場合はカレンチャンやソングラインがいる。

*10 理由に関しては「絶対に振り回されっぱなしになる。」と過去のインタビューと同じ理由を口にしていた。ちなみに「メイケイエールは彼女ならいいけど、嫁は難しい」「嫁にするならカレンチャンがいい」と、他のお手馬を評価していたりもする。

*11 スイープトウショウはG1 3勝だった為+5~6勝と言う事は8~9勝。同じ牝馬と考えるとちゃんと調教さえ出来ていればアーモンドアイに匹敵する日本史上最強牝馬になれた可能性もあると考えていると言う事である