大蛇に嫁いだ娘

登録日:2023/10/29 (日曜日) 22:46:00
更新日:2024/08/03 Sat 08:19:37
所要時間:約 5 分で読めます







傷モノの娘だ 丁度良い お似合いだ


そう言われ私は
山の主のもとへ供物として嫁ぐことになった



「来たね」


「お入り」


概要

大蛇に嫁いだ娘とは、pixivコミックで連載中の漫画作品。
作者はフシアシクモ。
既刊は5巻。
タイトル通りの異類婚姻譚であり、ややグロや異種姦もあるので注意。
2023年の電子コミック大賞では男性部門で受賞している。


あらすじ

とある山の麓の村に住む少女ミヨは山の主へ嫁ぐことになった。
山の主は巨大な白蛇大蛇様
その威容に恐怖するミヨだったが、大蛇様は夫婦になれることを心の底から喜んでいた。

人間と大蛇の夫婦生活が始まる…


登場人物

※CVはボイスコミック版より

  • 大蛇様(だいじゃさま)
「ようやく夫婦らしいことができたなあ」

CV:子安武人
山の主である白蛇。2メートル以上ある月輪熊を一方的に締め殺して丸呑みにできる程の巨体とパワーを持つ。
500年は生きているという化け物であり、喋れることもあって付近の村々からは尊敬や畏怖、信仰の対象として奉られている蛇神。
しかしその実態は、孤独を嫌い、山の中に屋敷を構え、人間の妻と夫婦らしいことがしたいなど非常に人間臭い。画風から普段はリアルチックだが、ギャグ調のデフォルメでは非常に可愛らしくなる。
過去のある出来事から僧侶を嫌っているが、敵意を持たずに縄張りを侵さなければ襲ったりはしない。
寒さが苦手だったり、脱皮したり、冬眠したりと、本人曰く「ただでかいだけの蛇」とのことだが、冬眠の時期になると山中の動物が面通しに集う、幾度も転生を繰り返しているなど尋常ではない能力を少なからず所持している。

嫁に来たミヨを非常に溺愛しているが、最初は力加減が分からずに締め殺しそうになったり、強引に迫って拒絶されてショックを受けるなど上手くいっていなかったが、それでも彼女の嫌がる事は決してしなかった。
現在は互いの理解を深めあい、夫婦として仲睦まじく暮らしている。
そして初夜からめちゃくちゃ苦労した*1
蛇だからか嫉妬深く、人間だろうが動物だろうがミヨに近づく男には「私の妻が世話になった」「手を出すなよ」と釘を刺す他、ミヨの家族や子ども達にも強い愛情を向けている。



  • ミヨ
帰りたい…

CV:花守ゆみり
ヒロインであり、大蛇に嫁ぐことになった娘。
画風から勘違いされやすいが、初登場時は18歳くらいの少女である*2
大蛇を奉る麓の村の貧しくも普通の家庭に生まれるが、幼い頃に父親が人殺しの罪に問われて監禁され、脱走後に自殺。母はそれ以降憔悴してほぼ廃人化、頼りの祖父も病気で亡くし、父の悪評により村八分の中で幼い弟を育ててきたという悲惨な過去の持ち主。自身も子どもの頃のいじめで右のおでこに消えない傷痕が刻まれている。
これらの経験から性格は卑屈で悲観的になっていたが、所々で祖父譲りの芯の強い一面を見せることも。

不作続きの村のために供物の体で大蛇様の嫁に抜擢され、父の罪の不問や家族の責任を見るという村長の条件で半ば強引に輿入れ。
大蛇様の巨体やあまりにも異なる生態の違いに当然ながら恐れ慄き、逃げ出したい現状と村に逃げ帰っても居場所はない現実の板挟みに苦しむが、大蛇様の本心や孤独に共感していき次第に態度は軟化。また厳しい山暮らしにより心身共に力強く成長していった。
現在は自他共に認めるオシドリ*3夫婦である。


山の関係者

  • 八兵衛
山に住む。額に三日月状の傷がある。
80年は生きている古狸で喋れるが、長寿の生き物なら当たり前とのこと。昔はかなりの遊び人だったようで、雌狸と何度もつがい、子どもは沢山いるらしい。

退屈を嫌って面白いことを探しており、大蛇の嫁になったミヨに興味半分に近づいたところ、初期の孤独な彼女の話し相手になる羽目に。その後は豊富な知識や経験でミヨの相談役となるが、面白そうだからと状況を引っ掻き回すこともしばしば。
大蛇様のことは「狸をつまみくらいにしか思っていない」と評して姿を見せなかったが、後にミヨの危機を救ったことから彼女の友人として認められた。

  • 慈空
村近くの山に寺を構えている住職。
大蛇様を奉り、縄張りにも入っていないので襲われていない。
後に後述の安憬が寺に住み着き、彼の師匠とも親友だった。
数年後には寺子屋を開いている。

村の関係者

ミヨの弟。11歳。物心ついた時から一家は村八分だったため人見知りで友達もおらず、頼れる身内はミヨだけだったのでお姉ちゃん子。
ミヨが嫁いでいった後はまだ幼いながらも大人に混じって働き、母親の面倒を見ていたが、姉が生存している噂を聞いて大蛇様の元へやってきた。
「姉ちゃんを家に帰してほしい」と土下座して直談判するも、大蛇様は里帰りと勘違いしてあっさりと了承。更に義母への挨拶にと一緒に村へ降りることになった。

  • ミチ
ミヨと渉の母親。
夫の清之助が自殺した後に少しずつ壊れていき、現在はほぼ廃人化して喋ることもない。
村長がミヨを誘いに来た時に清之助の罪を不問とする旨を聞いて彼女を送り出したため、ミヨは複雑な感情を抱いている。

  • 元二
村に住む男性。31歳。独身。少年の頃からミチに片想いをしており、またミヨの初恋の相手でもある。
ミヨ家とは家族ぐるみの付き合いで、兄の喜助と清之助は親友だった。しかしある日喜助が殺され、容疑者として清之助が監禁された末に自殺してしまう。
村では清之助が犯人と断定されるが、元二は二人の仲ゆえそれはないと思っており、村八分のミヨ達に普通に接して収穫した野菜を分けてくれるなど、とても善良な人柄。

  • 徳郎
村長。好々爺だがおっちょこちょいでもある。清之助、喜助とは酒を交わす仲だった。
ミヨを大蛇様の生贄に選んだことに負い目を感じており、ミヨが里帰りして二人きりになった時に「もし逃げたいのなら協力する」と申し出る。

  • ハツミ
徳郎の娘。ミヨとは顔馴染み。本人は忘れているが、小さい頃の度を超えたいじめでミヨの額に傷を付けた張本人。
ミヨの里帰り中に徳郎が失踪したため、代わりに大蛇様を送り返すが、その際に
「…今まで好き勝手にしていたようだが これからはそうはさせない」
「私の家族を不当に扱うことは許さん」
と眼前で威圧され、腰を抜かすほどの恐怖を味わった。

  • 栄作
ハツミの夫。眼鏡を掛けた優男。山を超えた先の村出身で、徳郎が失踪したことから急に縁談が決まり、村長になった。
見た目通りの気弱な性格で、冬眠する大蛇様がミヨ達を村に任せに来た時に対応するも、去った後に最初に会った時の恐怖がぶり返してその場に崩れ落ちてしまった。


その他

  • 安憬(あんけい)
旅の僧侶。21歳。美形の色男で、立ち寄った村々の娘から黄色い歓声が上がるほど。目付きが悪いのは、寝る度に悪夢にうなされるかららしい。
子どもの頃に実父に性的な暴力を振るわれていたが、蒼安という僧侶に助けられて僧侶になった過去を持つ。しかし蒼安は大蛇様に喰われてしまったらしく、恩人の復讐のために大蛇様の山を訪れた。
山中で狼の群れに襲われて行き倒れとなっていた時にミヨに介抱され、彼女を迎えにきた大蛇様と初邂逅。その後は宣戦布告し、前述の寺に世話になりながら大蛇様の命を虎視眈々と狙っている。大蛇様は取るに足らない相手と見定めていずれ食う気でいるが、「ミヨが怒るから」という理由であまり積極的ではない。数年後でも只管大蛇様の命を狙い続けている。
暴力には暴力を以て制す、大蛇様に激昂して刃物を抜くなど粗暴だが、僧侶としての仕事に「私に誰かを弔う資格など…」と自嘲したり、大蛇様の子どもへ「子供に罪はない」と諭すなど、大蛇様の前以外では善良な人物として描かれている。
イナとは奇妙な縁があったが、8年前に兄弟子が倒れたので故郷に帰ってしまった。


余談

  • 大蛇に嫁ぐ
「大蛇に嫁ぐ」という題材は、日本の昔話においてはかなりメジャーなジャンルである。特に東北地方に伝承が多いが、近畿地方や中国地方でもよくある。
本作のように生贄として蛇に嫁がせる話もあれば、個人的な困り事や願い事を叶える代わりに娘を娶るという話も。中には蛇が頼んだわけでもないのに感謝の礼に娘を嫁がせたなんてケースまである。

海外では姑息な悪役として描かれがちな蛇だが、日本では古来より蛇は益虫として崇められており、創作でも蛇は神様、または霊力の強い生き物として描かれることが多い。
これは海外から見ると珍しい文化であるらしい。本作もまた、これら系譜を継いだ『日本らしい作品』のひとつと言えるかもしれない。



追記・修正は大蛇に嫁いでからお願いします



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最終更新:2024年08月03日 08:19

*1 蛇の生殖器は刺々しい上に2本あるため

*2 5巻の描き下ろしでは現在25歳、子供たちが7歳

*3 作中でも言及されているが、オシドリのつがいは卵を産むとすぐに別れるのでずっと一緒にいるわけではない