僧侶

登録日:2018/08/26 Sun 19:06:59
更新日:2024/02/08 Thu 15:59:13
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【概要】

僧侶とは、出家して仏門に入った者を指す。
もう少し平たく言うとお坊さんである。

【仏教の僧侶】

もともとは「修行者の集団」を示す「サンガ」というサンスクリット語を、中国人がそのまま音だけ訳した「僧伽」に由来する言葉。
つまり、この文字を選んだことには大した意味はない。行ってしまうと当て字
こういうのは仏教、というか漢字世界にはよくあること。*1

その「サンガ」は「修行者の集まり」を意味する言葉なので、そのまま中国にも伝わり、「仏道を学ぶために修行する人たち」のことを「僧侶」というようになった。
(「侶」は「仲間」や「相方」という意味)
仏教では僧侶は「三宝」の一つに数えられる。残る二つは「仏」と「法」。

そもそも仏教とは、仏法を学び、それに則った生き方をすることを目的とする宗教なので(宗派によって違うが……)、
  • 仏法を学び尽くした、修行者や人々の師範となるべき成道者 = 「仏」
  • 仏が学び、そして修行者がこれから学ぶべき真理 = 「法」
とともに、
  • これから仏法を学び、真理を身につけるべく修行する求道者、仏法の実践者 = 「僧」
が「三宝」の一つに挙げられるのである。
すでに学び尽くしたか、学んでいる途中か、という区別はあっても、ともに「法を学んでいる」という意味で、「仏と僧は同じく尊い」というわけだ。

出家してさえいれば僧侶であるため、悟空、八戒(悟能)、悟浄の三蔵法師のお供三人組もあの見た目であるが僧侶である。
水滸伝の凶暴凶悪破戒僧・魯智深も大人気のキャラクター。

お坊さんというと頭を剃っていると考えがちで、実際に出家の際には髪を剃る(剃髪)のだが、現代の日本でもそう決まっている訳ではないし、それ以前でも山伏などのように例外はある。

※言うまでもないが、この解説はあくまでも基礎の基礎的なものです
仏教も非常に幅広い宗教なので、説く宗派・宗旨はおろか個々人でさえ大幅に異なります。
より本格的に知りたいという人は、大量に出回っている入門書や専門書を読み、あるいは縁のあるお寺さんにでも聞いてみるのがいいでしょう。


上記の説明より、仏教以外の人は厳密には僧侶とは呼ばないのだが、解説書などで他の宗教の聖職者を「僧侶」と呼ぶことがある。
それはいいのだが、ガチガチのヨーロッパを舞台とした小説(特に翻訳モノ)でキリスト教の教会を舞台としているのに「僧侶」なんて書かれると割と混乱する。

現実で僧侶になる道は国や地域、宗派により様々な道がある。
現在の日本の大手仏教宗派だと、「親が住職で跡を継ぐ」王道コースの他に一般人の子弟から僧侶を志す者もいる。
宗派ごとに「得度」の規定は違いがあり、各宗派や所属寺院の公式サイトに書いてあるので見てみよう。
師匠についての数年の内弟子生活や研修施設での修行が必要になる場合も多い。

僧侶を辞めるのは「還俗」という。
また、各宗派の規定により不祥事を起こした僧侶には僧籍剥奪処分が降ることがある。


【ファンタジー系の作品における僧侶】

ファンタジー系の作品における僧侶は、基本的に回復魔法を専門に扱う魔法使い系クラスのことを指す。
その職責は非常に重く、パーティーの大黒柱の一角。
僧侶系の職業が倒れるとその瞬間パーティーが瓦解すると言っても過言ではない。
というより、あまりにも存在感が大きすぎてパーティの自由度を狭めるという側面すらあるため、ゲームによっては僧侶系抜きでもクリアできるような調整をしていたり、回復魔法そのものを排除するという大胆なゲームデザインをとっているケースも見られる。
また、回復系の魔法だけでなくバフ系の魔法も得意とする場合がある。

反面、攻撃性能に関してはかなり低い。
一応純粋な魔法使いタイプに比べるとそれなりに肉弾戦をこなせることも多いのだが、それでも戦士などの専門職には打撃力で劣る。
攻撃魔法も一部の限定されたものしか使えず、味方が傷付かない限り手持ち無沙汰になりがち。
特に「アクションしないと経験値が貯まらない」作品の場合、味方が強くなればなるほど僧侶の活躍の場が狭まり余計に成長が遅れる悪循環になる。

武器に関しては魔法使い系御用達のだけでなく、比較的重量のある鈍器も装備できることが多い。
特にメイス系の武器は僧侶の専門とされることもある。
これは「戒律により刃物の所持が禁じられているため」と説明されることが多い。撲殺するのはいいのか、は禁句*2

日本において、このような聖職者キャラクターを「僧侶」と呼ぶことが広まったのは
FCゲームドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…』の僧侶(DQⅢ)あたりからであろうか。

キャラクターとしては、やはり「戒律に厳しい委員長タイプ」として描かれることが多いだろう。
そのイメージを逆手に取った破戒僧タイプもそれなりに多くいるが。
上にも挙がっているが、中国ではそれこそ孫悟空や魯智深のような凶暴・乱暴で鬼のように強いハイパー肉弾僧侶も割と歴史が長く、かつ人気が高い。

敵として出てくる場合は、上述の委員長タイプが悪い方向に進化して、戒律以外の一切を認めない超石頭タイプか、
神の教えを曲解し、残虐な行為を救済と称して躊躇わず行う狂人タイプが印象深い。
中には「私の言葉は神の言葉」と権威をかさに着て好き放題する悪代官タイプも。
史実でも比叡山などの大寺院は大河ドラマ「平清盛」などでも描かれていたように、仏教の権威をかさにきて事実上の治外法権として機能したり時の権力に要求を押し通させたりとやりたい放題していた山賊同然のものだったらしい。それゆえ足利義教や織田信長による焼き討ちにあったのはご存じの通り。

上級職としては回復だけでなく攻撃魔法も使えるようになるパターン(司祭など)、回復だけでなく近接戦闘能力も得るパターン(聖騎士など)がある。

また、パーティーのみならず教会や神殿などの拠点へ行けば死者蘇生までも可能となることも多い。

【いろいろな僧侶】

・クレリック

一番よく登場するタイプの僧侶。
基本が一番。最も格下として出てくることも多い。
なお実際のクレリックは、ある程度以上の格上の僧侶を意味する。

・プリースト/プリーステス

神に仕える者。神官。キリスト教では元々唯一神以外の神は居ないという事になっていたため、神官=キリスト教の聖職者だった。
今は他教の神官は宗教の名前や仕える神+プリーストと呼ばれる。例えば神道の神官なら Shinto priest である。「神官」の英訳もこれ。
プリーストが男、プリーステスが女。
ちなみにカトリックでは女性司祭(プリーステス)は禁止。
クレリックとの境目は曖昧だが、「タクティクスオウガ」などのオウガバトルサーガシリーズではクレリックが下位でプリーストが上位職となっている。なぜか女性しか就けないのにプリーストである

・司教/ビショップ/僧正/大僧正

修行を積んだ格上の僧侶。豊富な経験により、高位の回復魔法も行使できる。
ファンタジー作品ではこの職業そのものではなくチェス斜め方向に無制限に動ける駒になぞらえてこの名が付けられることもあるので注意。

・ハイプリースト/ハイプリーステス

上記のチェスの駒と混同する為か、またはビショップあたりから結構な権威を持ち始める事から、ゲーム等でよく出てくるプリーストの上位職。
特に権力のような物は無く、ただ能力が高くなったプリースト、という扱いを受けることが多い。

・聖者/聖人/セイント

司祭/ビショップより更に上位の称号。鋼のような強靭な精神力を持つ聖職者。
その反面、宗教裁判によって処刑されたり道を踏み外して闇堕ちする等、悲惨な末路を迎える事も多い。
カトリックには「列聖」という死者を顕彰する制度があり、サンタクロースとして知られるミラのニコラオスやジャンヌ・ダルクは今ではこの称号を獲得する。

・枢機卿/カーディナル

キリスト教の教えの中では教皇の顧問としてトップクラスの権力を持つ聖職者。
どちらかというと、あまり「僧侶の上位クラス」という見方はされず、政治家として描かれることが多い。
フランス史の中で、またデュマの三銃士にも登場する「リシュリュー枢機卿」ことアルマン・ジャン・デュ・プレシー・ド・リシュリューあたりは聞いたことがある方も多いだろう。
余談だが、深紅色を「カーディナル」と呼ぶのは彼らが身に着けている法衣の色に由来する。

・教皇/ポープ

キリスト教のカトリックの中では最上位となる存在。フィクション内の架空の宗教でも登場する頻度は多い。
やはりこちらも実戦で戦うよりは政治家的なニュアンスが強い。
ちなみに、キリスト教のうち「プロテスタント」や「正教(オーソドクス)」には「教皇」は存在しない。
プロテスタントの各組織はルターのような宗教家などがカトリックと反発・対立して独自に設立したものなので、組織や教団ごとのトップは存在するが「プロテスタント」というカテゴリにはトップ自体が存在しない。
正教には宗教的なトップとして、儀礼上の序列を除くとそれぞれが対等とされる9人の総主教(パトリアルヒス)が存在する。*3

・侍祭/侍者/アコライト

キリスト教のミサにおいて司教を補佐する役職。
聖職者ではないのだが、下位の聖職者として認められる場合もある。
フィクションでの目立った出番は少ないが、職業として登場するゲームも存在している。

・神父

ドラクエのセーブ係でおなじみカトリックの聖職者。「奇跡を起こす」というイメージが弱いためか、牧師はあまり出てこない。

シスター

修道女。ファイヤーエムブレムの杖使いでおなじみ。

・エクソシスト

僧侶系クラスの中でも実戦特化の悪魔祓いの専門家。同名の映画でおなじみ。
僧兵、モンクと並ぶ武闘派な僧侶。
効果を発揮するのが悪魔や死霊のみという余りにピンポイントな対象な為、プリーストの特技や特殊能力、キャラクタービルドの一つとして扱われる事が多い。

・モンク

宗教家の中で禁欲的な生活・修行をしている者を呼ぶ。実は元々キリスト教のシスターやブラザーを指す言葉。
海外のファンタジーで単に「僧侶」と言ったらむしろこっち。
イメージとしては少林寺系の修行僧。完全な肉弾特化の武闘家であり、回復魔法は一切使えないケースがある。
一方で肉体派であっても教えに通じることに変わりはないためか、後衛までとはいかずともある程度なら回復魔法を使えることもちらほら。
ゲーム等では「神託的な奇跡の行使」であるプリーストに対し「自己研磨によって自分自身が仏となる」事を目的とする仏教系僧侶は自らの気功やチャクラ的なものを活性化させる……といった医療術や自己補助に長けていることも。

・僧兵

平安時代に誕生した、武装して他の権力に対抗し、寺院の権益を守るために存在する僧侶。平家物語に興福寺の僧兵などが出てくる他、比叡山延暦寺や根来衆(こちらは忍者のイメージが強いが)などが有名。
形式的には僧侶だが、実態は完全な戦士、武士である。

・聖騎士

こちらは聖職者にして騎士。テンプル騎士団・ドイツ騎士団・マルタ騎士団などの騎士修道会が有名。
ファンタジー作品では、魔法は使えないタイプ、僧侶系魔法をある程度使えるタイプ、どちらも多い。
ちなみに聖騎士の訳として「パラディン」が当てられる事が多いが、パラディンは宮廷に仕える高位の騎士であって、別に聖職者ではない。(もっとも、その頃になると王朝と教会はズブズブの関係になっており、無関係とは言い切れない)

聖職者かつ騎士なので、僧侶が鈍器しか使えなかったのに対し、聖騎士は剣を使えることが多い。
「聖職者は戒律により鈍器しか使えない」という設定の作品もあるが、騎士になると聖職者のまま振るえるようになるのはいったいどういう戒律になっているのだろうか…

・破戒僧

獣肉を食うなど俗世への未練を断ち切れず戒律を破ったはぐれ者の僧侶。生臭坊主ともいう。
日本的な作品では豪放磊落な自由奔放キャラや信仰或いは目の前の人を救うために「あえて」戒律を破っており、性根は真面目なキャラとして描かれたりと肯定的に扱われることが多い。
天狗のキャラに元は破戒僧だったので六道から外れた魔道(天狗道)に堕ちたという背景がある場合も。
その一方で欧米作品だと「神に背いた背教者」ということで悪役の典型例であり、本来仕えていた神に由来する奇跡が起こせなくなったり、場合によっては悪魔や邪神に由来する力を行使したりする。
ちなみにTRPGなどだと、僧侶系のキャラが仕える神の戒律を意図的に無視し続けるような場合はGM権限でそのキャラの奇跡行使能力を取り上げてもよい、とされていることは珍しくない。

神主巫女

神道系僧侶。和風ファンタジーにおける貴重な魔術枠。
神仏混合で僧侶・陰陽師とごっちゃになっている節がある。
符術による魔術師タイプ・奉納刀や破魔弓で戦う魔法戦士タイプ等戦い方は幅広い。刀で戦うタイプはやたら火力が高い場合が多い。
PT入りするのは大体巫女である。これは女キャラの方が喜ばれると同時に神主と言うと神社の最高責任者である宮司をイメージする場合が多く、「神主が神社離れていいの?」という違和感があるためと思われる。実際現代日本では一人の神主が複数の神社の宮司を掛け持つ事が多いほどに神職が不足している。*4

・僧侶(仏僧)・

和風の仏教系僧侶。戦国時代風だと出番が比較的多め。
というより、自ら剃髪して仏門に入った戦国武将は数多くいる。有名どころなら北条早雲・武田信玄上杉謙信だろう。
プレイアブルキャラになった場合、武田信玄の影響で「風林火山(+陰雷)」にちなんだ技やバフを扱う事が多い。

・山伏・修験者

山の中で修行をしている僧侶。純粋な職業としてはあまり登場頻度は多くない。

・シャーマン

より自然的な宗教の概念に基づいた僧侶。超自然的な者と交信したり自らに宿らせたりする事で力を発揮する。
人格神ではなく自然から力を借りる、というイメージが強い。実際には彼らなりの「神」が存在するのだが彼らと接触したキリスト教信者的には良くて「精霊」レベルの物として扱われていたようだ。
主なものとしては沖縄のユタやケルト神話のドルイドなど。

・白魔法使い

「神による奇跡」ではなく、魔法の一分野として回復魔法を行使するタイプの魔法使い。FFでおなじみ。
この場合黒魔法との違いは単なる目的意識の差であり、原理そのものに差異はない。

・性職者

エロイことをする聖職者のこと。長い金髪にグラマラスな身体で悩む青少年や魔法使い寸前の男性を性的に癒すシスターや「儀式」と称して乱交する田舎巫女はもはや1ジャンルと化しており、男でも神仏の名を借りて好き放題するエロ坊主などそのテのゲームには引っ張りだこである。
ファンタジーの中だけの存在……かと思いきや現実にも結構いる。
中世近世のヨーロッパでは聖職者がこっそり作った子供を「甥・姪」と言い張った(そしてついでに地位だとかを世襲させた)。
日本でも坊さんのウホッな案件は歴史的にもお約束で「空海と共に男色は伝えられた」とか昔から言われる始末だし、親鸞のように妻帯した僧侶もいる。それどころか有名な一休宗純に至っては子供はいるわ酒は飲むは肉は食うわと完全な破戒僧であったとも伝えられる。いいのかそれで。
但し、世界に数あるシャーマン達の中にはそういった「儀式」は子孫繁栄の為に必要であったり、巫女は前述の通り特に制約がなく、修行の為の行脚の旅費稼ぎに売春していたりする。これらは特に神仏をないがしろにしているわけではない。
そこの君!どちらも昔の話なので変な夢を見ないように。
と、言いたいところだが、カトリックでは今でも聖職者による未成年の性的暴行事件・スキャンダルが後を絶たないという


追記・修正は僧侶なしでRPGをクリアしてからお願いします。

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最終更新:2024年02月08日 15:59

*1 例えば「釈迦牟尼」「弥勒」「菩提」「卒塔婆」などは、いずれも意味ではなく音だけを再現した字である。

*2 一説によればこれは、イングランド王ウィリアム1世の異父弟バイユー司教オドという人物がヘイスティングズの戦いで杖を振るって軍を指揮したという伝記が「杖で敵兵を殴っていた」と誤解され、後世の伝説で戒律の話がこじつけられたのが由来とも

*3 古代の5大総主教座からローマを除いたコンスタンティノープル、アレクサンドリア、アンティオキア、エルサレムと、後に成立したモスクワ、グルジア、セルビア、ルーマニア、ブルガリア

*4 巫女は特に資格等がいらず、例えバイトの女子高生でも宮司に認められていれば立派な「巫女」である