ズィロ・ザ・ハット

登録日:2023/12/16 Sat 18:00:00
更新日:2024/01/20 Sat 16:49:57
所要時間:約 15 分で読めます





「ア・リ・ガ・ト♡ ドゥークー伯爵! お互い実り多い同盟を結べたわね!」


ズィロ・ザ・ハット(Ziro the Hutt)とは、スターウォーズ・シリーズの登場人物。
本名はズィロ・デシリジク・ティウレ(Ziro Desilijic Tiure)。
種族はもちろんハット。
母親はママ・ザ・ハット。父親の名前は不明(故人)。
兄弟は多く、ジリアク・デシリジク・ティオン、ゾルバ・デシリジク・ティウレ、エボル、パズダ、といった者たちがいる*1
そのゾルバの子があのジャバ・ザ・ハットなので、ズィロはジャバの叔父になる。
銀河共和国末期には七つの星系を支配していた犯罪王であり、ハット一族でもかなりの有力者であった。
声は原語版はコーリー・バートン、日本語吹き替えはあの中尾隆聖氏が担当した。


【人物】

◆外観

ベイン「しかしアレだな。ムショ暮らしでやつれているかと思ったが。前よりもまた、太ってないか?」
「ウソよウソ! とても口にできないほど、それは恐ろしい目に遭ったんだから……恐怖の日々よ! しばらくは立ち直れそうもないわぁ……」

基本的な姿は一般的なハットらしくカエルの上半身とナメクジの下半身といった風情だが、彼は全身にタトゥーや頭飾りを施して派手に身を飾っていた。顔も整形で整えたりしている。
体の上半分を紫色に塗装し、蛍光グリーンのラインを織り交ぜたズィロの姿はなかなか強烈で、他のハットと並んでも一発で目につく。
また、腹部には犯罪組織ブラックサンの太陽のマークを彫り込んでいる。

ファッションにも気を遣っており、腕や指や尻尾の先にリングを装着したり、羽根飾りのついた帽子を被ったりと、派手好みなようだ。


◆性格

「皆さあん! 皆さん! 晴れて自由の身となったこのめでたい日に、刺ァすような視線を感じるのは気のせいかしら!!」

一般的なハットの例にもれず、強欲で残忍、凶暴で邪悪。
ズィロの場合はそれにくわえて自己顕示欲も強く、放っておくと際限なくしゃべり続ける。そしてオネエ口調。
暗黒街の大物にふさわしく豪胆であり、たとえ恩義があろうと恩に感じたりはしない。それどころか(相手が同族かつ同類だからだが)逆に脅迫しようとするなど、ふてぶてしくて図々しい
しおらしいことを言えば母親からさえ一瞬で否定されるレベル。

当然、ジャバに服する一ハットで終わるつもりもなく、デシリジク一族のみならずハットクラン全体の支配権を奪おうと画策していた。


ハットには珍しく、ズィロはベーシック言語を流暢に話し、ハット同士の会話でもほとんどハッティーズ語を使わない(忘れたわけではなく、ジャバにハット語で弁明するシーンはあった)。
また、他のハットがナル・ハッタやタトゥイーンなど辺境に住むのに対して、彼は首都惑星コルサントで「ズィロの宮殿」というクラブを拠点としていたのも異なる点。


一方、変に純情なところがあり、元愛人のサイ・スヌートルズにいつまでも惚れていた。
ある時期彼女をコルサントから放逐したのだが、後年再会した彼女には必要がなくなってからも同伴させており、彼女から憎まれていたと悟った際にも取り乱していた。

また妙におしゃべりで騒がしく、言動がいちいち大げさで演技掛かっているのも印象的。
後述する脱獄成功時には「こんな強い日光を浴びたらお肌に悪いわ!」などと言い出して、たまたま見ていたクローントルーパーから「なんだコイツ……」とドン引きされていた。
ただ、芝居がかったしゃべり方はやはり演技らしく、たまに演技が外れて素に近い口調に変わる時がある。

「だって親子じゃない! たまにはママの顔を見たいなって」
ママ「思わないね、お前は絶対」
「ママには叶わないわ!(素)」

ちなみにオネエ口調だが、女性のサイ・スヌートルズにデレデレだったので、ズィロの性自認は男性である模様。


【経歴】

◆前歴

「ママには、パパが愛想を尽かして逃げ出したことは秘密にしてあるの。死んだこともね。知らない方が幸せってこともあるでしょ?」

惑星スルヘイロンの出身。
当初は母星にて高利貸しとして事業を始め、勢力を得ると銀河一の都会にして暗黒街であるコルサントへと移住、ハット固有の寿命や強欲さ、悪辣さを活かして暗黒街の大物となった。
しかも彼はハット族の組織を駆使する一方、犯罪組織ブラックサンの幹部にもなっていた。彼が腹部に太陽の紋章を刻んでいるのはそのためである。
やがて歓楽街でタワーを買い取り「ズィロの宮殿」という名のバーを経営し、そこを拠点として暗殺などのさまざまな悪事に関わってきた。
ブラックサン内部の権力闘争にIG-86を派遣したことも描かれている。

時期は不明ながら、ハット評議会がこれまで積み重ねてきた犯罪を記録したホロ・ダイアリーを盗み取って隠しており、それを脅迫材料としてハットクランを黙らせ、足場も築き上げていた。
逆に言うと、ズィロの行動はハット評議会すら眉を顰めるものがあったということだろう。


◆ジャバへの挑戦

「では甥っ子誘拐作戦は大成功ということね」

クローン大戦が勃発すると、ズィロはこの戦争を利用し、デシリジク一族の長ジャバ・ザ・ハットに取って代わろうとした。
そのために独立星系連合の指導者ドゥークー伯爵と共謀し、ジャバの幼児ロッタを誘拐。惑星テスのボマー修道院に監禁した。
ロッタ誘拐犯をジェダイと見せかければ、ジャバは共和国に敵対する。そして共和国軍がジャバを倒せば、ズィロが後釜に座れるという考えだ。
一方、ハットクランでも飛びぬけた実力を誇るジャバが共和国と戦えば、勝っても共和国も衰える。それは独立連合の望むところだ。
連合は新型バトルドロイドマグナガードやドゥークーの愛弟子アサージ・ヴェントレス、そしてドゥークー伯爵本人まで投入してズィロの作戦を支援した。

しかし、ロッタ救出はアナキン・スカイウォーカーと、今回彼のパダワンに任命されたアソーカ・タノのジェダイ師弟が果たし、
ズィロ本人も共和国の元老院議員パドメ・アミダラによって陰謀を暴かれ、逮捕・収監という憂き目にあった。
もちろんジャバにも「犯人はズィロ」という報告がなされ、ジャバは一族の長として、私情を込みでズィロの処罰を誓った。

ちなみに、ズィロの陰謀とジャバに知られた場面では、ズィロがハッティーズ語を使って弁明する貴重な場面がある。


◆獄中のズィロ

「どこが素敵な別荘よこんな豚小屋! それも、これも! みんなあの忌々しい女議員のせいなんだから! アタシをこんなところに閉じ込めた女には、死の制裁がふさわしいわ!!」

ところが、その後ズィロはずっと獄中生活を続けており、ジャバには引き渡されなかった。
ジャバの性格を考えるとこの手で始末したかったはずだが、犯罪組織の大物ということもあって、共和国は意地でも渡さなかったようだ。
それもあってか、共和国に対するジャバの支援は最低限に終わっている。

また、ズィロの権力は依然として衰えていなかったようで、どこをどうやったのか獄中にいながら賞金稼ぎオーラ・シングを雇い、収監のきっかけとなったパドメ・アミダラ議員の暗殺を依頼するという離れ業を見せた。

結局、暗殺は失敗に終わりオーラも逮捕。
しかも、獄中の彼を訪ねたアソーカに「アンタの差し金だって、オーラ・シングが全て白状したわよ」とブラフを掛けたところ、まんまと乗ってしまったズィロは動揺と腹立ち紛れに、
「ウソ、ウソよ! 彼女が喋ったの!? な、なんで喋ったの!? 信じらんない!! もっと確かなのを雇えば良かったわ……あっ、いやだ……」
と自白同然の言葉を発してしまう。

アナキンとアソーカに敗北を突き付けられたズィロはふてぶてしくも事態を認め、刑期延長となったが、問題は獄中にいながら組織を操れるズィロの実力であり、ハットの組織力であった。


◆堂々たる脱獄

「いやアん! 日焼けしたらシミになっちゃう! なんで夜にしなかったのよ! それなら……」
「なんだコイツは……」

そうした懸念はやがて現実のものとなる。ジャバを含むハット評議会が、ズィロの脱獄に動いたのである。

もともとズィロは、ハット評議会が長年関与してきた無数の犯罪記録をひとつのデータパッドに保存し、隠し持っていた。ハット評議会はそれを血眼になって探していたが、ついに見つからなかった。どこにあるのか知っているのはズィロだけである。
もしズィロが、あの情報を引き渡すことを条件に共和国と和解すれば一大事である。下手をすると、ズィロが率いるクローントルーパーが攻め込んでくるかもしれない。そしてズィロがハットクランを支配する。ありそうなことだ。
懸念を抱いた評議会は、ズィロを奪い返すとともに、可能なら例のデータを奪おうとした。

逆に言うと、ズィロの生命線はあのデータパッドだけだ。彼は意地でも守り通そうとするだろう。
実際に彼は、もし自分が殺されれば、パッドが共和国に伝わるように手配していた。
評議会の懸念は現実だったのだ。

ついにハットはズィロ脱獄計画を練り上げ、練達の賞金稼ぎキャド・ベインに依頼。
ベインは想像以上の活躍を見せ、元老院ビルの見取り図の窃盗、潜入しての元老院の制圧、議員の人質、とあらゆる難題をチームの能力と己が頭脳ですべて達成。
(ちなみにベイン一味のメンバーに逮捕されたはずのオーラ・シングがいるが、彼女はズィロ関連の証言と引き換えに投獄を免れたらしい)
パルパティーン最高議長に人質と囚人の交換を訴え、ズィロの堂々たる脱獄を達成させた。


◆ハットの争い

「あら。そんな幻想なんて抱いてないわよ。ワタシを助けたのは、ワタシが貴重な情報を隠し持ってるせいでしょ!? この評議会が、これまでやってきた極悪非道な行為の記録よぉ?」
「ワタシを殺せば記録は元老院の手に渡るわ。ワタシがこの大事な大事な記録を握っている限り、アナタたちはワタシに手を出せない。それが悲しい現実よ……♡」

しかし、ハットたちがズィロをわざわざ助け出したのは、なにも同族の誼ではない。
ハット一族の犯罪記録を保存したデータパッド。あれが評議会を脅していたのだ。
もちろん、脅されて唯々諾々と従うだけのハット大評議会ではない。ナル・ハッタに帰還したズィロを、ハットの長老たちはガーデュラ・ザ・ハットの宮殿に監禁して厳しい尋問を加えた。
しかしズィロにとっても、あのデータは唯一の命綱であり最大の武器でもある。手放すつもりはない。
自分を殺せばデータは共和国の手に渡ると居直るズィロに、ハットの長老衆は彼を投獄することで長期戦の構えを取った。

そんなズィロの前に、かつて恋人だったサイ・スヌートルズが現れる。
彼女は元カレに甘い言葉で接触し、知恵を巡らせてズィロを脱獄させた。
ズィロも彼女のことは愛していたようで、脱獄に成功して彼女の助けが必要なくなってからも行動を共にしている。

一方、共和国も今度こそズィロを討伐するべく、ジェダイマスターのオビ=ワン・ケノービとクインラン・ヴォスを派遣していた。
二人はまずナル・ハッタに赴き、いたるところで悶着を起こしつつ(主にクインランが)、脱獄していたズィロを追跡。
同じく脱獄に驚いたハット評議会も、さっそくキャド・ベインに改めてズィロの逮捕を依頼した。むろん、データパッドを奪えたなら殺していい。


脱出したズィロは、まず母であるママ・ザ・ハットを訪ね、彼女の宇宙船をもらうとナル・ハッタを脱出。
スヌートルズを伴い、例のデータパッドが隠してある、辺境の惑星テスへと向かった。
この星には秘密の霊廟があり、彼の父親が埋葬されていた。しかしこの父親、ママ・ザ・ハットから逃げたことも、その先で死んだことも、ここで埋葬されたことも、ズィロのほかは誰も知らなかった。完全に行方不明者だったのだ。
ズィロはそれに目をつけ、父のミイラの腕にデータパッドを置いていた。

到着したズィロは父の棺を引き出し、隠していたデータパッドを、スヌートルズが拾い上げて中身を確認した。

確認を終えると、彼女は空いた手でブラスターを抜いた。

彼女は、ズィロに捨てられてコルサントを放逐されたことを、ずっと恨んでいたのである。
捨てられた女の恨みは深い。しかも彼女は暗黒街の女優であった。自分の感情を隠して演技をするのは、まさに本領だったのである。
愛する女性に裏切られる――犯罪王としては甘すぎる最期を突き付けられたズィロは、胸を撃ち抜かれてもなお自分の末路を信じられないままであった。

「何でよ、なんで……」

ズィロの死後、ハット一族の犯罪記録を納めたデータパットはスヌートルズからジャバ・ザ・ハットの手に渡っていた。そうスヌートルズは初めからジャバ・ザ・ハットから賞金のためにズィロ暗殺の仕事を請け負っていたのだ。

自身を出し抜こうとしたズィロへの復讐だけでなく、ハット一族最大の弱点とも云える犯罪記録を手に入れるという一石二鳥を得たジャバこそまさに真の犯罪王であったのだ。


【余談】

ズィロは「ベーシック言語を普段使いにする珍しいハット」という設定である。
しかし『クローンウォーズ』製作初期の時点では、ズィロもハッティーズ語だけで喋り、字幕で何を喋っているのかを示す、という予定だったらしい。
しかし「字幕だけだと視聴者には分かりにくいのでは?」という意見が出て、「ズィロだけはベーシック言語を使う」という風になった。
『クローンウォーズ』に登場したグリードも、映画本編ではハッティーズ語だけを使っていたのに、『クローンウォーズ』では何故かベーシック言語を使っていたが、それも同じ理由からであろう。
もっとも、ジャバやガーデュラ、および他のハットたちもズィロのような対処をされたキャラクターはおらず、ズィロとその母親だけやや浮いた存在になってしまった。


製作スタッフとしては動かしやすいキャラとして、気に入られていたという。
最初は映画の登場のみで終わる予定だったが、テレビシリーズとして続くに当たって抜擢されたのもそれが理由とのこと。




「お見事♡ 素晴らしい追記・修正ぶりで大感激よ、賞金稼ぎさん♡」
「カネを忘れないでくれズィロ。タダ働きはごめんだぜ」
「アア……(素)」

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最終更新:2024年01月20日 16:49

*1 このうちジリアクとゾルバの存在はカノン設定には引き継がれた様子がない