登録日:2024/02/04 Sun 23:57:36
更新日:2025/03/08 Sat 02:07:04
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聴覚障がいのある女の子・雪と世界を旅する大学の先輩・逸臣のピュアラブストーリーがはじまる。
『
ゆびさきと恋々』は森下suuによる漫画作品。
「
デザート」(講談社)にて2019年から連載されている少女漫画作品である。
既刊10巻
累計発行部数は380万部(電子版含む)
【概要】
聴覚障害を抱えた主人公によるピュアラブストーリー。
主人公の雪は耳が不自由なため、基本的なコミュニケーションは筆談や相手の口の動き(口話)、そして手話がベースとなっている。
普段扱わないコミュニケーションで接するからこそ、相手の気持ちをどう伝えるのか、伝わるときのうれしさ、広がる視野や心の成長が心地よい作品である。
そして、こうしたコミュニケーションが漫画の世界の中で「当たり前」、「自然なもの」になっていき、あくまで1つの伝達の方法として自然と認知されていくところまで描き切っているところに、1つの清々しさを感じるところも特徴的である。
これが出来ていることとして、主人公の雪は確かに聴覚障害を抱えているが、基本的には「1人の女の子」として描かれているところが大きい。彼女の好みや言動、来ている服装や気持ちの描写などが「年頃の女の子」らしく描かれており、可愛さや共感を得やすい作風になっているからであると思われる。
なお、手話を表現するにあたって作者は、手話協力者にセリフに当てはまる手話を教えてもらい、メモを取ったうえで手話の動画を撮り、そこから使う単語を漫画に落とし込むという丁寧な作業で執筆しているとのこと。手話描写に対するこだわりが見て取れる。
同じ聴覚障碍者をメインキャラクターとして描いたものとして、同じ講談社から出版された『
聲の形』(
週刊少年マガジン)がある。こちらは聴覚障碍者に対して陰湿ともとれる虐め描写や障碍者差別といった踏み込んだ描写で有名となった。一方でこちらは聴覚にハンデを抱えているからこそ違う価値観を持っていることに対して登場人物は(主に逸臣は)もっと知りたい、新しい価値観を知りたいという、どちらかと言えばポジティブな心理描写がなされており、爽やかさと温かさをきめ細やかに描いている。
両者を比較するのも面白いと言えるだろう。
少女漫画作品らしく、恋する女性の心理描写も欠かせない。
主人公の雪は言葉で伝えることが出来ないため、手話や身振り手振りなどで気持ちを伝えようとする、なかなか伝わらない言葉や気持ちをどう相手に伝えていくかを追っていくことで、雪への共感の気持ちが生まれてくるのが見所であると言える。
併せて雪を中心とする登場人物の心情の変化、時には嫉妬や寂しさ、不安を丁寧に描き出しているのも特徴である。
メディアミックス展開としては2021年に下北沢にてミュージカルが上演。
2024年1月よりテレビアニメが放送されている。
【あらすじ】
生まれつき聴覚に障がいを持ち、“音のない世界”を生きる雪。いつも通り、様々な音が飛び交う電車の中で、スマホでSNSを見たり、可愛い洋服のことを考えたりしていた。そんなとき、ガイドブックを手にした外国人に声を掛けられる。手話が通じず焦る雪。動揺する彼女を助けてくれたのは、同じ大学の先輩・逸臣だった。
【キャラクター】
糸瀬雪
CV:
諸星すみれ
本作の主人公。
生まれつき聴覚障がいのある女子大生。補聴器をつけているが、音の存在は認知できる一方で、どの音がどこから聞こえてくるのか分からない模様。
コミュニケーションの仕方は上述のように手話や口話、筆談、メッセージアプリなどを使っている。
耳が聴こえないことに動じることなく自然に接し、自よく笑う明るくて元気な性格。
可愛い物が好きで服装もそれに影響している。小動物のような可愛さがあると周囲から評されている。
一方で素直すぎるため、誰かに騙されることがないか、親しい友人から心配されることがある。
海外を旅して、自分に様々な「新しい」物や価値観を授けてくれる逸臣に想いを寄せるようになる。
波岐逸臣
CV:宮崎遊
雪と同じ大学に通う先輩。
銀色の髪、長身でがっしりとした体型の
イケメン。右手の中指に太陽と月をモチーフにしたタトウーが確認できる。
バックパッカーでよく海外を旅しており、以前家族でドイツに暮らしていたことがあり、
日本語のほかに英語と
ドイツ語が話せるトリリンガル。
いとこの京弥が営むカフェバーでバイトしている。
聴覚障害者である雪と出会い、手話で話す彼女を見て、手話に興味を持ち、交流を深めることになる。興味を持つがあまり、頭を撫でるなど割と大胆なアプローチも見られる。
芦沖桜志
CV:大塚剛志
雪の幼馴染。手話が使えるので、雪と会話をする場合は手話によるものが多い。
雪に何かと突っかかり、トゲトゲした言葉をぶつけがち。
しかしこれは、聴覚にハンデを持っている中で、何かと純粋な雪に何か起こらないようにするための心配の感情と素直になれない自身の感情の表れであると言える。
男のツンデレはあんまし需要ないから自重した方がいいと思うが。
雪と急に親しくなり始めた逸臣に対し、不信の目を向ける。
これは上述の雪を心配するがあまりの不安と雪を逸臣に持っていかれたくない嫉妬の感情の表れであることは言うまでもない。
波岐京弥
CV:
逢坂良太
逸臣のいとこ。バー「ロッキンロビン」の店長を勤めており、逸臣はその店でバイトをしている。
とてもフレンドリーで気さくな性格。
恋愛事をはじめ、様々な相談事に乗ることが多いが、自身のことになると消極的になってしまう。
藤白りん
CV:
本渡楓
雪の友人。雪と同じ大学に通っている。逸臣とはサークル仲間。
雪が授業を受けるときは
パソコンを使い、彼女をサポートしている。
明るく気さくな雪のよき友人。雪の逸臣に対する気持ちに気づき、恋愛面についても雪をサポートしてあげようとするなど面倒見がよい。
反面、自身の恋愛事になると奥手になってしまう。京弥に想いを寄せているが、どうしても積極的になれない自分がいる。
中園エマ
CV:
東山奈央
逸臣の高校時代の同級生。
ウェーブヘアで雪からは「女優みたい」と目を奪われるほどに魅力的な容姿を持つ女性。
逸臣に好意を寄せており、抱きついたり家に押しかけたりと積極的に行動するも、逸臣に軽くいなされがち。
雪に対しても焦りのあまりマウントを取ることもあるが、なかなかうまく行かない。
伊柳心
CV:畠中裕
逸臣・エマの高校からの友人。
高校卒業後は美容師として働いている。
逸臣との関係においてなかなか進展しないエマの恋の悩みを聞いている。実はエマに恋心を抱いているが、当の彼女は逸臣にアプローチをし続けていることからなかなか言い出せずにいる。
【テレビアニメ版】
2024年1月よりTOKYO MXなどで放送中。
アニメーション制作は亜細亜堂。
雪が通っている大学は同志社大学を参考にデザインされている。
作中で使用している手話は「日本手話」と「日本対応手話」が使われている。本篇で使用されているのは後者で、スタッフも制作の際にはチェックを重ねるほどこだわりを入れている模様。
他にも聴覚にハンデのある雪のコミュニケーションに関する描写に臨場感を持たせられるように作画面などで工夫が見られている。こうした丁寧な作風の描写は視聴者からも好意的に受け止められており、評判はいい。
主題歌
OP:「雪の音」
Novelbrightによつ
オープニングテーマ曲。
雪の持つ価値観、逸臣の持つ価値観が線引きされることも、わけ隔てられることもない様を描いた曲である。
ED:「snowspring」
チョーキューメイによる
エンディングテーマ曲。
逸臣の優しさに触れた雪の気持ちが変わっていく恋模様を歌った歌詞が特徴的。
追記・修正はどんなハンデをものともしない、新しい価値観を知りたいと思う方にお願いします。
- 少女漫画で聴覚障害のヒロインの前例としては「君の手がささやいている」という作品があるけど項目作成者さんそっちは知らない感じか。ドラマ化もされた作品だけど自分も読んでない見てないだから比較追記もできないけど。 -- 名無しさん (2024-02-05 00:58:42)
- 聲の形と比較すると、雪はかなり恵まれた環境で育ったんだなぁと感じる。この作品では明確な障害者差別はないがバイト先がみつけられなかったり、雪が聴覚障害者だとわかるとやや距離取られる描写はある -- 名無しさん (2024-08-02 23:29:54)
- 集英社マーガレットで連載していた頃から追っているけど、作品のメディアミックス化は作者が1番嬉しかっただろうな。アニメ12話には森下suuファンなら喜ぶスペシャルサプライズあります。 -- 名無しさん (2024-08-02 23:32:39)
- 最新刊を読んで、雪が『たくさん声がヘンだと言われて、いつ言われた時のことか分からない』『どうヘンなのか分からない』のような感じの台詞があった。テーマ的に差別を重たく描く作品じゃないし、恵まれた環境だったのかもしれないけど。 -- 名無しさん (2025-03-08 01:59:51)
- ↑追記、もはや強く印象に残らないほど日常的で、他とは価値観が違うことを小学生で悟らせる環境だったことは読み取れた -- 名無しさん (2025-03-08 02:07:04)
最終更新:2025年03月08日 02:07