ビースト(X-MEN)

登録日:2024/04/17 Wed 10:11:31
更新日:2024/06/20 Thu 00:55:59
所要時間:約 11 分で読めます




ビースト(Beast)は、米国MARVEL社のヒーローコミックス『X-MEN』の登場人物。
X-MENの栄光ある初代メンバーである“ファーストファイブ”の一人。

演:ケルシー・グラマー(X-MEN:ファイナル・ディシジョン)
  ニコラス・ホルト(新X-MEN四部作)
吹替:千葉繁(テレビ東京版)
   有本欽隆(X-MEN:ファイナル・ディシジョン(劇場公開))
   壤晴彦(X-MEN:ファイナル・ディシジョン(テレビ朝日「日曜洋画劇場」))
   浅沼晋太郎(新X-MEN四部作)
   沢木郁也(マーベルズ)
   田中秀幸(マッドハウス版)
   楠見尚己(ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ)

【概要】

本名はヘンリー(ハンク*1)・フィリップ・マッコイ。

その名のように“野獣(ビースト)”の外見をしていながらも、実際には天才的な頭脳を持つ科学者、医師であると同時に優れた戦略家でもある……等、何気に万能な才能の持ち主。
また、それでいて優れた芸術家としての才能をも持ち合わせ、非常にウイットに富んだ語彙力とコミュニケーション能力を持つ一流の紳士でもある。
それでいて、ミュータントとしては決して突出する程に強力なパワーを持つわけではないものの、流石に長年に渡りX-MENやアベンジャーズ、ディフェンダーズといったヒーローチームを渡り歩いて来たほどの実力の持ち主とあってか戦士としても一流でありオメガレッドを巡る任務にて潜入行動した際には、ガンビットやサイロック、ローグを差し置いてサイクロップス共々に“一軍”と評されていた程。

上述のように、X-MENに於いてはチームの頭脳、参謀として活躍。
……後に、色々と倫理的にアレなことをやらかして追放されたりもしたという、MARVELの科学者キャラにありがちなことになってるが、後述の“ダークビースト”の仕業となる可能性もあるので、それはそれ。


【人物】

父親はノートン・マッコイ。母親はエドナ・マッコイ。
両親は平凡な人達なのだが、父ノートンは若い頃に原子力発電所に勤務していた過去があり、それがハンクがミュータントとして生まれた遠因なのではないかとの説もある。

ハンクは幼い頃から極めて優秀な子供であったが、彼の体格は常人のそれとかけ離れた類人猿を思わせるものであり、からかいやいじめの対象となった。
しかし、交通事故に遭った際に優れた身体能力により無傷で回避。
このことがきっかけで自らの才能(特異な能力)に気づいたハンクは勉学やスポーツに打ち込み優秀な成績を収めるようになるが、周囲からのやっかみが強まると共に、更に彼の容姿に対する中傷が烈しくなっていき、アメフトの試合にてユニフォームに収まらない程の巨大な四肢に(アメフト選手という常人離れした連中の中ですら目立つ)明らかに人間の範疇を越えた能力に世間も注目し出したことで行き場を無くしかけた所で、ハンクがミュータントだと確信したチャールズ・エグゼビアことプロフェッサーXの誘いを受けて「恵まれし子らの学園」に転入することになる。

同じく特異な能力を持っていた、スコット・サマーズ(サイクロップス)、ウォーレン・ワージントンⅢ(エンジェル)、ボビー・ドレイク(アイスマン)、ジーン・グレイを学友としたハンクは伸び伸びと勉学に励むようになる。
彼等と共に“X-MEN”としても活動するも、本質的には研究家肌であり、学園を出てブランド・コーポレーションに就職した。
ここで、研究アシスタントとして付けられたリンダ・ドナルドソンと恋仲となり、普通の人間に戻るための研究を進めていたのだが、反対に一般人をミュータントに変える血清を開発してしまうことに。
程なくして、研究所にて血清を狙ったスパイ騒動が発生。
スパイの目を欺くためにも自ら血清を使用し、ミュータント化を進行させたハンクだったが、そのことで体内機能が強化された結果、血清の効果を薄れさせる為の処置の限界となる時間が予想より早くなっており、そのせいで元の体格に加えて全身に生えた体毛に発達した牙や爪と五感に以前以上の運動能力……と、もはや半人半獣としか呼べない姿となってしまった。
その後、スパイは共産主義者の指令を受けた工作員だったリンダの仕業であることが判明。
普通の社会に戻る夢も恋人も無くしたハンクは失意の中で「恵まれし子らの学園」に戻る。
その後、X-MENとして任務をこなす中で“生きた島”と形容される大怪獣クラコアと遭遇。
囚われの身となるが、サイクロップスに率いられたウルヴァリンを初めとするX-MENの追加メンバーに救われ、彼等と入れ替わる形でX-MENを卒業した。

卒業後はアベンジャーズに誘われ中核メンバーとなり、ワンダーマンと友情を育む。
一方で、アベンジャーズの一員でありながらも度々にX-MENの危機を救うべく独断で駆け付けることも少なくなく、後に正式に脱退。

その後は、エンジェルとアイスマンと共に再編されたディフェンダーズに参加して、しかもチームリーダーも務めていた。

そんな中で、復活した本物のジーン・グレイに触発される形で各々に別の道に進んでいたファーストファイブが再合流。
当時のX-MEN本隊が宿敵である筈の磁界王マグニートーの指揮下にあったことを知り、無闇に接触を図るのではなく先ずは独立独歩の形で別チーム“X-FACTOR”として活動を開始したのであった。
誤解が解けた後もX-MEN本隊とは簡単には合流せずに独自でアポカリプスと戦ったりしていたのだが、ジェノーシャでの戦いを経て改めてのXファミリーの合流→チームの再編成となった。(ファーストファイブは全員がX-MEN本隊に戻ることに。)

以降は、他のファーストファイブや年齢の上めのメンバーと同様にチーム全体の重鎮、事実上の幹部級として働きつつ先生役もこなすという日々を過ごすことになる。
有名リポーターのトリッシュ・ティルビーは成人してからの恋人なのだが、互いの立場もあってか好きあってからの期間は長いものの付かず離れずの関係といった所。

尚、X-MENの重鎮である一方で、ミュータントによっては見た目だけで迫害される可能性の高い異常な容姿の持ち主……ということで、FFのザ・シング等と同様に普段の明るい態度の裏側では自らがミュータントてあることに悩み続けている一人でもある。
コミックスでは前述の複雑な経緯を経て現在の獣のような姿になったというのも大概だが、アニメや実写映画では最初から獣の様な姿で生まれついたという設定となっており、それに纏わる悲劇が題材となったりもしている。
尚、コミックスの方では人前に出るときには“イメージインデューサー”と呼ばれる特殊な装置により普通の人間に偽装している。

また、ビースト最大の功績と呼べるのがストライフが現代に解き放ったミュータントを死滅させるレガシーウィルスの撲滅で、一度はその仕事の困難さからX-MENが最も憎むべき仇敵であるMr.シニスターの知識に助けを求める等して倫理的にアウトなこと をしたこともあったものの、最終的には撲滅に成功している。


【ダークビースト】

暗黒のパラレルワールドである「エイジ・オブ・アポカリプス(AOA)」でのビーストは、世界の支配者となった魔神アポカリプスの配下となっており、同じく配下でありつつも生まれた環境の違いが問題なだけで中身は変わっていないサイクロップスとは違い、全くの素でノリノリでマッドサイエンティストをやっていた
……この、小物なのだが強烈なキャラクターがライターか編集部か読者にウケたのかは解らないが、AOA世界の崩壊と共に正史世界に転生。
正史世界のビーストに襲いかかり入れ替わるという事件を引き起こした。

……さて、この通称“ダークビースト”だが邪悪さにかけては本物が及ぶところではないが、才能面に於いてはボロ負けにも程があるレベルで、入れ替わったはいいものの全く代わりになれるような器ではなかった。
そんなポンコツなら、流石に普段から本物のビーストに接している他のX-MENや、況してや学生時代から共に過ごしてきたファーストファイブなら直ぐに解るだろう……てなもんなのだが、タイミングの悪い(いい)ことに、この時のプロフェッサーXことチャールズ・エグゼビアは主人格をオンスロートに乗っ取られかけており、ダークビーストの侵入を知ったオンスロートはジーン・グレイにすら察知されないレベルの強力な精神防御を張ってX-MEN達にビーストがおかしくなっていることを悟らせないようにしていたのだった。

そして、それから間もなくして完全にエグゼビアの精神を乗っ取ったオンスロートはX-MENを壊滅状態に追い込んで外へと飛び出していった訳だが、その際にダークビーストもまた腹心として追随して出ていったのであった。

尚、後の設定の追加によりAOA世界からの転移は単に次元を移動したのみならず、正史世界ではX-MENが結成されてすらいない20年ほど前だったということになり、モーロックス(地下世界を根城とする無法ミュータント集団)を生み出したのはダークビーストだったということになった。


【能力】

ミュータントパワーは、その類人猿のような外見からも解る通りの人間離れした驚異的な身体能力や怪力。
ただし、肉体構造基準なので他の“怪力キャラ”のような常識外れな“属性”ではなく、遺伝子情報から抜き出された先祖返りのようなものなので、文字通りに“ゴリラ並”の肉体を持った人間といった所。
その運動能力を活かしたアクロバティックが得意技で、ミサイルを爆発させずに優しく掴んだ後で反転させて投げ返すなんて芸当も可能。
後述のように獣化が進んでからは、その恐ろしい見た目を利用した威嚇も武器となった。
尚、獣化が進んでも決して爪や牙を利用した殺戮はしないようにしていたのだが、カサンドラ・ノヴァに人間性を封印された時などには、その恐るべき獣性で被害を与えている。

前述のように、当初は類人猿の骨格を持つ少年(青年)といった風情だったのだが、後に前述の自身の実験の失敗を皮切りに幾度か外的要因により大きな肉体変化が起きており、その度に類人猿的な骨格に加えて猫科の大型獣のような攻撃性を併せ持つ“怪物”へと変化している。

現在では更に“セカンドミューテーション”を引き起こしたことにより、更に“(ビースト)”としての肉体的特性が強化。
骨格も類人猿から人間的な特徴を持つ獣といったレベルにまで変化している。

尚、こうした肉体的な特徴から実は天才的な頭脳もミュータントパワーによるもの=生物の限界を究めた能力によるものなのでは?という説も。
実際に、ミュータントパワーが暴走気味に増大していた時にはフェロモンまで操れるようになって女性陣をメロメロにする等、反則的な能力を発揮していた。


【性格面にて】

基本的には陽気な性格で豊富な知識と語彙力によるジョークや蘊蓄で周囲を和ませたり、重い雰囲気や窮地を打破する助けになるという参謀タイプで、前述のように他に人手がない場合にはリーダーの役目もこなせる度量も人望もある。

戦闘中にはジョークや皮肉に故事成語(自作含む)を欠かさない為にサイクロップスやウルヴァリンから「うるさい毛玉野郎」とたしなめられることも少なくない。

ファーストファイブでは最も年長(ただし、サイクロップスとエンジェルは同い年とされることが多い。)だが、最も年少のボビー(アイスマン)とはコンビ的な関係で、能力的な組み合わせの相性もあってか共に行動することが多い*2
……まぁ、実際の所は内面に孤独を抱えるアイスマンが敢えてトラブルメーカー的な行動をとっても深い度量で許してくれるビーストに甘えているだけ、とも言えるのだが、実はビーストも内面では自分の姿にコンプレックスを抱き続けているが故に本心を隠している部分があるので“同類相求む”的な感覚だったのかもしれない。
後には、アークエンジェルに改造されてしまったウォーレンと改めて地味に関係が深まったのも同じ悩みを抱えるようになったのが原因とも分析される。

00年代以降は割と暗めだったりモラル的にアレなエピソードも多くなったが、ビーストのそうした隠されたネクラ的な側面が描かれることもあった。
実写映画から逆輸入されたミュータントを“治療”する薬である“キュア”が登場した時には思わず服用を考えたもののウルヴァリンに“X-MENたる者が使うことで云々”と説得されて使用を取り止めている(そして、その後に“キュア”が非超人的な実験により生み出されていたことを知り撲滅に尽力した )。


【実写映画】

初代X-MENの一員として当初は第一作から登場予定であったが役割をジーン・グレイと統合されたりなど先送りされて、初期三部作では最終作の『X-MEN:ファイナル ディシジョン』にてやっとこさ登場。演じたのはケルシー・グラマー。
ミュータント治療薬“キュア”を巡り、元X-MENとしての使命と自身のミュータントとしての呪われた運命を絡めた重要な役どころであった。
X-MEN2』?知らんな。
その後はマーベル・シネマティック・ユニバースの2023年の映画『マーベルズ』のミッドクレジットシーンに登場。原作寄りにデザインが変更されている。

そして、シリーズ再始動後の『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』にて、若きプロフェッサーXの同志として登場。こちらで演じたのはニコラス・ホルト。
少し設定に齟齬があるが実写映画は実現までが難しいから気にしない。
青繋がりでミスティークと因縁が作られた。




追記修正を望むものは己の中の獣と向き合え。
欲求を解き放て、然して制御せよ。
さすれば栄光は訪れる……。

引用か?

いいや、今作った。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2024年06月20日 00:55

*1 ハンクはヘンリーの代表的な略称であり愛称。

*2 アイスマンは周囲を凍りつかせながら高速移動というはた迷惑な特技を持つのだが、それを利用して一緒に動けるのはビースト位のもので、更にはアイスマンの能力を戦略的にどう活かすかの指示も与えられる。