日曜洋画劇場

登録日:2022/05/18(水) 19:59:22
更新日:2022/06/30 Thu 20:52:12
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ハイ皆さん、こんばんは。
さあ今夜はお待ちかねの「メイデンのアナル」をお送り致します。
これはですね、全編にわたってくり広げられる穴が見どころですねえ。
怖いですねえ、恐ろしいですねえ。



日曜洋画劇場とは、かつてNETテレビ→テレビ朝日系で放送されていた映画番組である。


概要

その名の通り洋画を放送する番組で、1966年に放送を開始。
当初は土曜夜に放送されており番組名も『土曜洋画劇場』だった。
翌1967年に日曜へ移転し定着することに*1
金曜ロードショー』(日本テレビ)と並ぶ映画番組として知られていた。

放送される作品は劇場公開の大作は無論、日本での公開がスルーされたB級作品や
特攻野郎Aチーム」「ナイトライダー」といった海外ドラマ、稀に邦画も放送されたが、アニメ作品は殆ど放送されなかった。
これは放送時間が日曜21時台のため、子供の夜更かしを促すような番組編成が難しかったことが理由とされる。

また、他局の映画番組と比較すると、地味に放送枠延長にシビア。地上波初放送の作品でも通常枠(本編約95分)はザラであった。たとえ作品としても名作であっても10分~15分延長枠(本編約105分)が多かったため、実はノーカット放送された例は少ない。
一応、作品によってはそれがプラスに働いたこともあり、「風とライオン」ではあの黒澤明が「劇場で観た時より良くなってた」と評したエピソードが残っている。それでも「スーパーマン」「アマデウス」といった大作を流す際にはきっちりノーカットで流していた。

また、他局に比べて放送時間の関係でカットされる場面が異様に細かいことで有名。長台詞の一部がすっぱ抜かれるのは日常茶飯事。このためHD映像に音声を載せ替える吹替マニア泣かせの番組である。

日本語吹替

洋画における日本語吹替を一般化し、吹き替え声優の固定化(フィックス化)を進めた番組と言われており、
洋画吹替=本作」をイメージする人も数多い。
後年に洋画がDVD・Blu-ray化される際、本番組での吹替音源が収録される事が度々あり、人気の高さがうかがえる。

しかし、前述の通り放送枠にシビアだったためノーカット音源でないことが多く、DVD収録時に日本語音声のない部分が字幕対応になることも多い。例を挙げれば、「吹替の帝王」レーベルで収録されるほどの人気を誇る「ダイ・ハード」「スピード」「ロボコップ」でさえノーカット音源ではない。
もっと言うと、カット箇所が細かいことにより、作品によっては字幕・吹替の場面が入り乱れる事態となっており非常に見辛くなっている。良くも悪くも、テレビ番組としての吹替版制作に特化していたといえよう。

また、特定の国家を「某国」とぼかすなど、政治的配慮から単語を差し替えた例も多く、オリジナルのエッセンスが失われていると批判されることもある。

その一方で、いわゆるタレント吹替はほとんど存在しなかった(山口百恵・三浦友和の『ある愛の詩』など他局が作ったタレント吹替を流すことはあった)。
2010年代に入ると、邦画の放送の増加や吹替音源のオフィシャル化などの影響で新吹替版の制作本数は明らかに減少する中、それでも散発的に制作を続けていた。また、タレント吹替ありの劇場公開・ソフト版で放送される事も何度かあった。

淀川さんの解説

本作を語るのに欠かせないのは、何といっても映画評論家・淀川長治氏(1909~1998)による解説であろう。
もともと同局で放送されていた海外ドラマ「ララミー牧場」の解説で高い評価を得ていたため起用に至った。

若い頃から映画記者、および映画配給会社のスタッフとして映画に関与し続けた氏の解説は
柔らかい語り口で親しまれ*2、当人も「劇場で映画を見に行くようにさせるための手引き」という意識で解説していたという。
どんな映画にも必ず一つは見所がある」を持論としており、セリフ回しや足の動き、監督や俳優の経歴など本編とは無関係or一般視聴者ではまず気づかない箇所を褒めることも多かった。裏を返せばそういう映画は間違いなく駄作であるという目印でもあった。
このスタイルは各局に影響を与え、他局の映画番組でも解説者を起用することが多くなり、コメディアン小松政夫の物真似ネタとしてもおなじみだった。

尤も解説の挿入および枠の都合から映画本編がバッサリカットされることも多く、そこに不満を持つ視聴者も少なくなかったのだが。

映画解説の最後は「それでは次週を御期待(お楽しみ)下さい。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ...」で締めていた。
元々サヨナラの回数は決まっていなかったが、ある時「小学生がサヨナラの回数で賭け*3をやっている」という話を聞いて、教育上の懸念から3回で終わることに決めたのだという。

なお、邦画については原則解説を行わず、解説不在の特別企画名義で放送された。
これは配給会社との癒着を嫌がった淀川の意向が反映されたもので、解説をした作品は
「戦場のメリークリスマス」「アナザー・ウェイ ―D機関情報―」「夢」の3本のみ。
このうち「夢」は淀川と長年の友人であった黒澤明監督作品で、追悼企画として放送されたものだった。

没後も今なお淀川さんの解説は人気が高く、後年番組の解説だけを集めたDVDが発売されたほか、
日本テレビ系の動画配信サービス・HuluのCMにも自前の水野晴郎を差し置いてポリゴンキャラクターとして登場していた時期がある。

淀川の死去から終了まで

こうして解説者の絶大な人気と硬軟織り交ぜた多彩なラインナップで人気を博していた同番組だが、1998年11月に淀川氏が89歳で死去。
最後の解説は「ラストマン・スタンディング」で、収録翌日に息を引き取った。当日の放送は冒頭30分に追悼企画が急遽編成された。

番組は以降解説は設けず、自身も吹替で出演していた大塚明夫氏によるナレーションを解説代わりに置くこととなった。

しかし、2000年代以降は裏番組である『行列のできる法律相談所*4』や『日曜劇場』に視聴率を奪われ苦戦を強いられることになる。
また、この時期になるとレンタルDVDや衛星放送、動画配信の普及により映画番組自体の需要が減少し、民放各局の映画番組が軒並み終了に追い込まれることに。

これに伴いそれまで比較的タブー視されていた邦画の放送も行うようになり、
特にテレ朝が制作に関与した「相棒」劇場版は視聴率はよかったものの抜本的な改善には至らず、2012年以降はテレビドラマやバラエティ等特番を編成して休止することが増え、不定期放送へと移行した。
その洋画も末期は「パイレーツ・オブ・カリビアン」と「バイオハザード」のローテーションと化しており、編成に問題があったとも言えなくはない。

2016年には番組開始50周年を記念して、歴代のOPを編集・ミックスし、最後には淀川長治が登場する特別OPが制作されたが、このオープニング映像はたったの2回しか使われず、翌2017年2月をもって番組は終了。
洋画の放送は2016年12月のやっぱりバイオハザードⅣ アフターライフ」が最後となり、長寿番組であったにも関わらず、あまりにも寂しい幕切れとなってしまった。

終了の原因としては低視聴率が続いた以外にも、『金曜ロードショー』におけるジブリのような鉄板・独占放送可能な作品が少なかったことが理由に挙げられる。
同局は「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」という超鉄板作を保有しているが、映画作品は前述の理由から本枠では編成されず別時間帯での放送となっていた。
両作関係で放送されたのは対象年齢が高めに設定された「STAND BY ME ドラえもん」および「BALLAD 名もなき恋のうた」のみ。

また、テレビ朝日側は「洋画ヒット作の不在」を理由に挙げており、実際日本における洋画の興行収入は2006年以降邦画に逆転され、以降邦画の優勢状態が続いている。そのため番組末期はもはや日曜邦画劇場状態だった
淀川の死後、番組は日本における洋画を取り巻く環境の変化に翻弄され終了に至ったと言ってもいいだろう。

主な放送作品


・コマンドー
日曜洋画劇場といえばこれを思い浮かべる人がほとんどという、言わずと知れた筋肉モリモリマッチョマンの変態だ!
詳細は当該項目参照。

この他にもアーノルド・シュワルツェネッガー主演作は数多く放映されており、1989年の「コナン・ザ・グレート」で初起用された玄田哲章による吹替版(通称「玄田シュワ」)の人気を決定づけ、「デーヴ」ではちょい役のカメオ出演ながら、玄田シュワを実現させた(ソフト版では古田信幸)。

・スーパーマン
スーパーマンの誕生と活躍を描く不朽の名作。
日曜洋画劇場の歴代視聴率第1位(32.1%)を記録。マーゴット・キダーに中原理恵を起用するというタレント吹替だったが、続編でも続投されることから分かるように演技も含めて(主に同時期の日テレ放送のあっちと比較される形で)好評を博した。また、ジョー=エル役にアニメ・ドラマ版でスーパーマンを演じた大平透を配する粋な計らいもあった。再放送も挟みながら3作目まで放送された。

バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズ
ご存じ歴史改変SFの金字塔。
本番組で起用されたマーティ=三ツ矢雄二、ドク=穂積隆信のコンビは本作の吹替の中で人気が高く、後年他局でもこのバージョンがオンエアされている。

ダイ・ハードシリーズ
世界一不幸で不死身な刑事の戦いの記録。
40周年・45周年記念企画でも放送され、シリーズ全5作が同枠で放送されている。
シリーズの吹き替えの中でも本番組で制作されたマクレーン=野沢那智版の人気は高く、第4作の劇場公開版の吹き替えに野沢氏が起用される程の影響を与えた。
野沢氏の没後に制作された第5作の公開時も、弟子筋に当たる中村秀利がマクレーンに起用され、その息子役には野沢那智の実子の野沢聡を抜擢した。

・アマデウス
映画番組では珍しい芸術大作であり、ノーカット放送された。
サリエリとモーツァルトの愛憎劇を描く。
三ツ矢雄二・日下武史の熱演、タレント吹替に該当する宮崎美子の健闘、抜かりない脇のキャスト、額田やえ子によるハイクオリティ翻訳(某デスマスク部分は誤訳していた)により、今なお吹替ファンから絶大な評価を得ている。長らくソフト化に恵まれなかったが「吹替の力」レーベルから発売。ディレクターズカット版の追加シーンも当時のキャストを可能な限り再起用して新録され、宮崎女史も参加を果たしている。

・海外ドラマ
特攻野郎Aチーム」「ナイトライダー」「X-ファイル」といった、テレビ朝日でレギュラー放送されていた作品のスペシャル版(初回)が放送されていた。
とりわけ人気が高かったのが「特攻野郎Aチーム」で、主演のジョージ・ペパード逝去時には追悼企画として放送されている。

バイオハザードシリーズ
ミラ・ジョヴォヴィッチ主演の人気シリーズ。番組末期に放送される洋画は殆どこれだった。2014年11月に放送された第5作が番組最後の新録吹き替えとなった。

パイレーツ・オブ・カリビアンシリーズ
ジョニー・デップ主演のご存じカリブの海賊。末期の(ry








ハイ、いかがでしたか?
日曜洋画劇場は終了して久しいですが、今でもこうして親しまれているのがわかりましたね。
この記事の充実はアニヲタの追記・修正にかかっているわけですねえ。
それでは次週をご期待下さい。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ...

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最終更新:2022年06月30日 20:52

*1 映画枠自体は解説者を変更したうえで1977年まで残されている。

*2 ただし、氏の映画評論そのものは非常に硬派で、舌鋒の鋭さが目立っていたという。

*3 といっても金銭の生じないお遊び程度のものだったとか。

*4 現・行列のできる相談所