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更新日:2025/02/06 Thu 13:33:28
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”Romulan.It's pronounced Romulan”
「ロミュラン」です。「ロミュラン」と発音するのです
”Romulans.They're so predictably treacherous!”
ロミュランか、やはり油断ならない連中だ
ロミュラン人(Romulan)とはアメリカ合衆国制作のSFドラマ、
スター・トレックシリーズに登場する架空の異星人である。
初出はスター・トレック(邦題「宇宙大作戦」、以下TOS)、S1 Ep14「宇宙基地SOS(Balance of Terror)」。
概要
初代スター・トレックより登場する、惑星連邦と長らく敵対する知的種族であり、アルファ宇宙域でも屈指の強国であるロミュラン星間帝国(Romulan Star Empire)を構成している異星人である。
初期には「ロムラン人」との呼び方もあったが、現在では「ロミュラン人」に落ち着いた。当項目では以下「ロミュラン」と記載する。
母星は惑星ロミュラス。これはロミュラン星系の第2惑星であり、第3惑星のレムスは二級市民の母星として帝国に領有されている。帝国領はベータ宇宙域にも広がるほど広大であるが、母星ロミュラスがアルファ・ベータいずれの宇宙域に存在するかは明言されていない。
全てのシリーズで度々登場し、惑星連邦に対してあらゆる策謀を巡らせ暗躍する、いわゆる敵役として、クリンゴンと並んで設定された種族である。
クリンゴンが当時の東西冷戦下におけるソビエト連邦をモデルとした種族とするならば、ロミュランは第三世界としての中華人民共和国がモデルであるとも言われている。
生態
地球人とよく似た風貌であるが、外見上の特徴として上方に尖った耳を持ち、多くのロミュランが前髪を切りそろえた直毛の黒髪である。
無論、帝国領の外で暮らすロミュランには、多様な髪型や装束が見られる。
新スター・トレック(TNG)以降では皮膚の色がやや緑がかった色調になり、額にはV字の隆起ができた。クリンゴンと同じく特殊メイク技術の向上に伴い変更された要素であるが、ロミュランの変更には長く理由付けがされていなかった。
だがスタートレック:ピカード(PIC)において、新旧二種類のメイクのロミュランが相対し、TOS型メイクのラリスが、TNG型に近いロミュランに対し「北部出身の頑固者」と蔑む場面があり、容姿の差が出身地に由来するものという示唆がなされた。
また血液の主成分に銅が含まれており、出血した際に緑色の血液が見られる。
先述したように、尖った耳や髪型はある種族と共通点が多い。
バルカン人である。
バルカンとは祖先を同じくする近似種であり、地球でいう5世紀頃にバルカンから離脱した一派の末裔である。
生理学的にも共通点が多いが、細かい点での相違も多く、宇宙艦隊の医療士官でも処置に難儀する場面が多い。
地球人との混血はバルカン同様に問題なく可能。
バルカンでは4世紀頃に「目覚めの時代」を迎え、それまでの感情的かつ暴力的な性質から脱し、絶え間ない戦争に終止符が打たれた。哲学者スラクによって提唱された【IDIC】によって
バルカン人は論理による平静を長い時間をかけ獲得したが、「猛禽の翼の下を往く者」と呼ばれるグループはこれに反発、内乱の最終局面でスラクを殺害した。その後に彼らはバルカンを離れ、さらに分裂を繰り返しながら現在のロミュラン帝国を建国した。
惑星連邦(地球)とはかつて核戦争にまで至った(後述)関係であるが、これらの生態どころかその容姿まで長く把握していなかった。
文化
種族を通じて非常に猜疑心が強く、権謀術数を弄して搦め手によって敵を下す手段を好む。同時に効率姓を重視し、必要であれば同胞や部下を切り捨てることも厭わない冷徹さを備えている。
戦闘においても、最初の一手は相手側に撃たせ、後に徹底的に報復行為に出て正当性を主張する、という手段をよく用いる。またそれを誘発する為の示威行動や陰謀などを度々弄し、領域を接する惑星連邦やクリンゴンとは緊張状態が続いている。
領域の拡大の為、遠縁のバルカン、アンドリア、クリンゴンや地球人とは絶えず対立し、大抵の種族からは信用されていない。
帝国の諜報部である「タル・シアー(後述)」は国家国民を厳しく監視しており、高位の官吏や軍人であっても、言行一つで失脚したり抹殺されることが往々にしてある。
その為か、公式の場においてのロミュランの発言は虚実入り混じっていることが当たり前で、惑星連邦側も、高官との会見や交渉には強い警戒をもってあたっている。
多くのロミュランにはタル・シアーの監視や密告を懸念してか、聞かれていないことや必要でないことについては、自発的に発言しないという習慣が根付いているらしい。
クリンゴンとは当然ながら相性が悪い。対面すると大抵はクリンゴンが食って掛かり、するとロミュランが嫌味っぽく嘲笑し、激高したクリンゴンがダグタフを抜き払い……という具合に、仲裁が入るまでエスカレートし続けるというのが定番である。
食文化についてもよくわかっていないことが多く、連邦の施設や宇宙艦において合成された食事や飲料に不満を漏らす場面がよく見られる。
生食やある種の毒物を趣向するクリンゴン料理に忌避感を示していることから、それよりは地球人寄りの食性らしいが、ピカードがロミュラスに潜入した際に食した、ドロッとした
スープは美味とは言えなかった様子。
だが「
ロミュラン・エール」という酒はよく知られており、鮮やかな青色をした非常に強い酒である。「ブラッド・ワイン」や「ソーリアン・ブランデー」と並んでスタートレックにはお馴染みの酒である。
ちなみにロミュラン・エールは惑星連邦において、ドミニオン戦争時に同盟を締結した時期を除いて、禁輸品として規制されている……のだが、艦隊士官ですら度々愛飲する描写があり、密かに流通しているのは暗黙の了解であるらしい。
艦隊のウィリアム・ロス中将ですら「真面目に規制を守って飲まなかったのは同期では私くらい」と自嘲しているし、それどころか艦隊を代表する艦であるエンタープライズE就き上級士官の結婚披露宴でも提供されている。少なくとも24世紀後期においては、大して強い規制ではないらしい。
他にも「カリ・ファル」という強い酒が知られており、不完全ながら連邦のレプリケーターでも生成できる。
装束は灰色を基調としたものが多い。24世紀以降の衣服はやたらと肩が張っており、特徴的なパターンが全体に施されている。
反対に上院議会の議員らは、日本の和服によく似た着物を着ていた。
ロミュラスでは他にもあらゆるものが灰色を基調として構成されているらしく、真偽は不明だが
カーデシア人のガラック曰く、「心臓すらも灰色」などと称されている。
とはいえ、首都の議会建屋は古代ローマ建築を思わせる、優美な造形と色彩が特徴的。他にも壮大な景観の「ジュラの谷」や「ガルガソンの火の滝」、美しき「アペニクス海」など、豊かな自然も多く残されている。
国政・外交関係
帝政ではあるが現在皇帝は在位しておらず、国政の首班は「プラエトル」と呼ばれる政務長官が務める。これがロミュラン上院と永続委員会の議長を兼務する場合もある。
ロミュランの政治はその民族性や外交関係から安定せず、度々政変が起きては、指導者層が丸ごとすげ代わるのも珍しくない。
各選区から選出された議員、正副の両総督、そして上院議長によって上院は召集され、ロミュラン最高の立法機関として機能している。
外交的には鎖国傾向が強いが、国交を有する種族とは大使を交換している。
帝国の経済も閉鎖的な、いわゆるアウタルキー体制で、貿易のほとんどは領内でのみ交わされている。
この国政の流動性や秘匿性から、惑星連邦でも詳細な内情は把握できていない。
司法制度は恣意的かつ抑圧的なもので、被告人には弁護の機会がほとんど認められていない。せいぜい最後に弁明の機会が設けられているくらいで、場合によってはそれすらも認められずに抹殺されることが往々にしてある。尋問には記憶を強制的に走査される処置や拷問が当然のように含まれ、囚人や捕虜の扱いは極めて劣悪。
第3惑星のレムスも支配領域内にあり、レムス人を二級市民として支配している。
レムスにはワープ航法に不可欠である重要資源、「ダイリチウム」を豊富に埋蔵する惑星でもあり、帝国領の拡大と維持に大きく寄与している。
またレムスは公転周期と自転周期が同期している為、惑星上の昼夜が固定されているという過酷な環境である。そのせいか皮膚は色味がない灰色をしており、暗い環境に慣らされた為に強い光に弱い。レムス人は夜の面でしか居住できず、多くがダイリチウム鉱山で強制労働に従事させられている。強力なテレパシー能力も備えており、同じくテレパスであるベタゾイドのディアナ・トロイの精神に遠距離から接触している。
だがレムス人の技術力は高度なもので、22世紀の頃には帝国軍の無人艦を建造し、24世紀には強力な戦艦である「シミター」を就役させ
エンタープライズEやヴァルドア級ウォーバードと交戦、これに大きな損害を与えた。
レムス人はロミュラン軍における尖兵でもあり、最前線に真っ先に投入される。ドミニオン戦争においても最前線においてその勇猛さを示したようだ。
外交史
ファーストコンタクト【ENT】
地球とロミュランの接触は、公式には2152年とされる。
宇宙艦隊の
エンタープライズ(NX-01)は、とあるMクラス惑星の探査の際、軌道上で機雷に接触し、ロミュラン帝国軍のバード・オブ・プレイに探知された。
音声通信のみで接触した謎の異星人は、トゥポル副長によってロミュランであると確認され、同時に領域からの撤退を要求した。
この当時、ロミュランについてはバルカンでも「遠い昔に祖を同じくした種族」ということ以外わかっていないことが多く、以後地球は容姿すら知れない種族との緊張を激化させていくことになる。
2154年、バルカン・アンドリア・テラライトの各種族の関係には緊迫したものがあり、ロミュラン帝国はこの緊張状態をさらに不安定なものにすべく、数々の工作を行っている。
この工作によってバルカン・アンドリア間に短期間ではあるが武力衝突が生じ、後にテラライトも含んだ大規模な紛争に発展するが、ロミュランの陰謀が発覚すると逆に彼らは同盟を結成し、対ロミュランの姿勢を固めていく。
ロミュランの暗躍とは裏腹に、これらの種族は後に惑星連邦を結成するまでに関係を改善させ、ロミュラン帝国はさらなる孤立を深めていく。
この対立は2156年開戦の
地球・ロミュラン戦争へと発展し、互いの容姿を確認しないままに核戦争にまで至っている。これは原始的な核兵器の応酬によって戦われ、両国が敵艦の拿捕や捕虜の獲得を一切考慮しなかった為に、非常に凄惨な戦いに至っている。
「シャロンの戦い」にてロミュラン帝国の劣勢が確定した2160年、平和条約が調印された。両国の国境線と中立地帯が策定され、同時に「越境行為が相手国への宣戦を意味すること」を確認しあったが、この時ですら両国は音声通信のみで交渉を終えている。
以後、ロミュランは100年以上の長きにわたり惑星連邦の前に姿を見せず、地球人や
バルカン人の間にも得体のしれない種族として僅かに記憶されるのみになった。
連邦との再接触【TOS,TNG】
地球との再度の接触は2266年にまで時代が進み、帝国は宿敵の力量を図るべく活動を活発化させた。ロミュランは地球との戦争での屈辱的停戦を、1世紀もの間忘れることなく雌伏の日々を過ごしていた。
中立地帯の連邦の基地を次々と破壊したバード・オブ・プレイと、カーク船長指揮のエンタープライズが接触。ロミュランの容姿がバルカンに酷似することが発覚した。
この時の交戦によって、惑星連邦はロミュラン帝国の強大な軍事力を、ロミュラン帝国は連邦宇宙艦隊の予想外の組織力を痛感し、両国は新たな緊張状態に至る。
2260年代にごく短期間であるがクリンゴン帝国とは軍事同盟を締結しており、この際に両国で技術交換があった。
ロミュラン帝国は遮蔽装置(後述)を、クリンゴン帝国はD7型ウォーバードをそれぞれ提供している。
だが民族性やドクトリンの差から、この同盟は数年で瓦解している。
2293年、クリンゴン帝国領の資源衛星プラクシスの爆発によって、これまで対立関係にあった連邦・クリンゴンの和平が実現したが、ここでも帝国は暗躍している。
2311年勃発の「トメド事件」において帝国は連邦と大規模な武力衝突に発展し、数千人もの犠牲者が生じた。
詳しい経緯は不明だが、これを機にアルジェロン条約が締結され、連邦の遮蔽装置の開発・保有を禁止している。
以降60年以上、連邦とは再び接触を断つことになる。
2344年と2346年の二つの年には歴史上の大きな転換点があり、これにロミュラン帝国は深く関与した。
2344年、ロミュラン帝国は突如、ナレンドラ3のクリンゴン帝国軍前哨基地を攻撃し、多くのクリンゴン人を虐殺した。これに惑星連邦宇宙艦隊の
エンタープライズCが単艦で救援に駆け付け、ロミュランによって撃沈される。
キトマー会議以来、この時期には連邦との関係が悪化していたクリンゴン帝国であったが、エンタープライズCの犠牲は「名誉ある行為」としてクリンゴンに深い感銘をもたらし、連邦との強固な同盟関係を築く契機となった。
2346年、「キトマーの大虐殺」が生起。ロミュラン帝国はクリンゴンのデュラス家と共謀し、キトマーの前哨基地を攻撃した。
ロミュランの2度の攻撃によって、半ば形骸化していたクリンゴンとの同盟は完全に破綻し、以降互いに激しい敵対関係に至る。
これ以後、ロミュラン帝国は鎖国政策から、連邦・クリンゴン間の同盟破棄を目標とした暗躍を本格化させていく。
クリンゴン内戦への介入、スポック大使が推進するバルカンとの再統一運動を利用したバルカンへの侵攻など、要所要所でロミュラン帝国は連邦に暗い影を伸ばし続けている。
ドミニオン戦争【DS9】
2370年、ガンマ宇宙域の
ドミニオンがベイジョー・ワームホールを通じてアルファ宇宙域と接触した。
当初帝国はこれに強い警戒心を抱き、これに限っては惑星連邦と協力体制を築くことにした。
アルジェロン条約を改正し、ガンマ宇宙域に限定して遮蔽装置の使用を連邦に認めたのである。
これまで「公式には」ロミュラン、クリンゴンといった強国しか運用していなかった遮蔽技術を、連邦にも認めるという、これまでのロミュランからすれば相当の譲歩を見せたことになる。
あくまで連邦を矢面に立たせることで帝国の領域の保全を図った、というところだろうが、2371年にはタル・シアーが
オブシディアン・オーダーと結託し独自にドミニオンに侵攻。しかしこれは完全な失敗に終わり、タル・シアーの権勢は一時的に弱体化している。
ロミュラン帝国軍も、差し迫るドミニオンのアルファ宇宙域侵攻に対処すべく、また示威行為も兼ねて艦隊を派遣し共同戦線を構築した。
だがドミニオンの卓越した外交戦略は、アルファ宇宙域における連邦の勢力圏を着実に侵し始めていた。
多くの星系がドミニオンに加盟、または恭順する中、連邦を劣勢と見限ったロミュラン帝国は相互不可侵条約を締結。
連邦・ドミニオン戦争を静観し、アルファ宇宙域の他の強国を疲弊させる方針に転換した。
だが2374年、外交任務の途上にあったロミュラン上院議員のヴリーナック議員が搭乗するシャトルが爆破された。
ロミュラン帝国はシャトルの残骸からカーデシア製の光分解データ・ロッドを回収。そこにはドミニオンによるロミュラン侵攻計画の会議の模様が記録されていた。
データは不完全ではあったが、これは1回しか記録できない改竄不能の媒体であり、ヴリーナックの死と合わせ、ロミュランはこれをドミニオンによる謀殺であると断定。
ロミュラン帝国は不可侵条約を破棄、正式に宣戦を布告した。
即日、ロミュラン艦隊はドミニオンの15の基地に攻勢を仕掛け、連邦・クリンゴン同盟への参戦を決定した。
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真相 |
ドミニオンの攻勢に対して連邦・クリンゴンは有効な手段を打てず、日々増強されるドミニオン軍に圧倒されつつあった。
ロミュラン帝国の外交姿勢はドミニオン戦争の趨勢を左右する。最前線であるディープ・スペース・ナイン(DS9)の司令官、ベンジャミン・シスコ大佐はこの点を痛感しており、独自にヴリーナックと接触した。
ヴリーナックはドミニオンとの不可侵条約締結を推し進めた議員であり、タル・シアーの副議長も務める、ロミュラン政界の重要人物である。彼は戦争については不干渉の立場を崩していなかった。
シスコはヴリーナックに対し、戦後のドミニオンは連邦・クリンゴンを降した矛先を、次いでロミュラン帝国に向けるであろうことを指摘したが、ヴリーナックは憶測にすぎないと一蹴し、証拠の提示を求めた。
シスコは先述のデータ・ロッドを渡した。だがヴリーナックがこれを精密に検査した結果、記録は捏造されたものであることが発覚。
激怒したヴリーナックはこの偽造工作を告発すると宣言して会談を打ち切ったが、この2日後にヴリーナックの訃報が伝えられた。
データはカーデシア人のガラックが手引きした技師によって作成され、これは極めて精巧に作られたものであった。だが、それでも精細な検査には耐えないことを危惧したガラックは、事前にシャトルに爆弾を仕掛けた。
会談が失敗に終わったことを知ったガラックは、ヴリーナックをシャトルごと爆殺し、技師も暗殺。
データの不備は爆発による損傷と判断され、ロミュランは偽造された侵攻計画を真実と見做した。
シスコ大佐とガラックしか真相を知らないこの偽造工作は個人記録からも削除され、歴史の闇に葬られた。
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ドミニオンはロミュラン星系から撤退し、国境付近の警戒に多くの艦艇を割く必要に迫られた。
その結果、前線の一部に間隙が生じた。チントカ星系である。
連合軍はこの星系に攻勢をかけ、多大な犠牲を払いながらも奪還、惑星を占領した。(第一次チントカ星系の戦い)
開戦後初めての連合軍の戦略的勝利であり、宇宙艦隊の士気向上に大きく寄与した。
だがこれに対抗してドミニオンはアルファ宇宙域の強国、「ブリーン連合」と軍事同盟を締結。ブリーンの加盟によって戦況は一変した。
惑星連邦の首都、地球のサンフランシスコが奇襲され、多大な犠牲者を出す。
チントカ星系は再度ドミニオンの手に落ち、第二次チントカ星系の戦いで連合軍は大敗。
ブリーンのドミニオンにおける存在感はいや増して高まった。連合とドミニオンの戦争は、アルファ宇宙域とガンマ宇宙域の総力戦であると同時に、「惑星連邦・クリンゴン・ロミュラン」対「カーデシア・ブリーン」の構図を示していた。
だが日を追うごと冷遇され、ブリーンに軍事的主導権を奪われたカーデシアの内部には不平が蓄積されていった。カーデシア軍のダマール司令はドミニオン支配を脱するべく「カーデシア解放戦線」を結成し、ドミニオンを離反した。
ドミニオンはガンマ宇宙域からの増援が到着し、軍を再編するまでは戦線を縮小することを余儀なくされ、カーデシア・プライムの星系に防衛線を構築した。
この頃のロミュラン帝国軍は度重なる会戦に消耗しており、カーデシアへの攻勢には消極的であった。だが連邦とクリンゴンはドミニオン軍の再編を待たずに攻撃する必要性を主張し、カーデシア侵攻を決定した。
この頃、ドミニオンの指導者である「創設者」の集団に未知の感染症が蔓延し、種の結束に綻びが生じていた。
カーデシアの内部崩壊と連合の攻勢によって、ドミニオンはカーデシア・プライムにおいて降伏したが、同時にロミュラン帝国軍は甚大な被害を被り、その権勢は大きく弱体化した。
シンゾンの政変【S.T.X】
ドミニオン戦争後、その力を大きく削がれていた軍部は、2379年に上院議員達を暗殺しクーデターを実行する。帝国と連邦の融和が進むのと反比例して、日々弱まる影響力に危機感を抱いた軍部は、本来支配される存在だったレムス人のシンゾンを担ぎ出し、連邦への侵攻を再開するよう画策した。
シンゾンはかつて帝国軍が生成した、
ジャン・リュック・ピカードのクローン体であった。連邦への秘密工作の一環として生成されたシンゾンであったが、作戦は中止されシンゾンは惑星レムスに流されていた。
シンゾンはタローラ議員に命じて、セラロン
放射線を用いハイレン政務長官を含めたロミュラン上院議員全員を暗殺させた。シンゾンは崩壊したハイレン政権に代わって、自らを政務長官に就任させ、和平に向けた会談と称して連邦と接触した。
会談の相手としてピカードを指名したシンゾンは、パッセン断層で新型戦艦シミターを指揮して
エンタープライズEに宣戦した。
レムス人の優れた技術力によって、シミターは遮蔽したままに攻撃を行える強力な戦艦として完成しており、宇宙艦隊屈指の戦闘力を誇るソヴェリン級宇宙艦であるエンタープライズEですら苦戦を強いられた。
シミター内部に潜入したピカードとデータ少佐の破壊工作によって、シミターの爆破には成功し、シンゾンも戦死した。クーデターに加担した軍高官は失脚し、新政権は短命のままに終わった。
このパッセン断層の戦いには、シンゾンを危険視したロミュラン帝国軍のドナトラ司令が参戦し、ウォルドア級ウォーバード2隻を指揮してピカードを援護した。
この共同戦線は両者の間に深い感銘をもって記憶され、ロミュランを蛇蝎の如く嫌うクリンゴンのウォーフ少佐をして、「名誉ある戦い」と称賛するものだった。
この政治的混乱によって、かえって惑星連邦とロミュラン帝国は友好関係を志向し始め、中立地帯での和平交渉が本格化する契機となった。これにはUSSタイタンの艦長に就任した、ライカー大佐が派遣されることとなった。
ロミュラン星系の消滅【STAR TREK(2009),PIC】
2387年、ロミュラスを擁するロミュラン星系の主星(太陽)は、超新星爆発の危機にあった。
ロミュラン帝国は惑星連邦に支援と救助を要請し、連邦はこれを承諾した。
だがロミュランを危険視する14の種族は、連邦からの脱退をちらつかせてこの救援に反対した。
和平はこの時点でも実現していなかったようで、未だ敵国と認識するロミュランの救援には、連邦も消極的であった。
ピカード提督(当時)はロミュランとの友好を信じ、可能な限りのロミュランを避難させるべく救助船の艦隊を指揮するはずだった。だが艦隊の拠点である火星のユートピア・プラニティア造船所において、人工生命体の叛乱が勃発。
暴走した人工生命体は火星を攻撃し、惑星の可燃性蒸気に引火したことで植民地は壊滅、92,143名の犠牲者を出した。
連邦はこの一件以来、領内における人工生命体を違法とした。
救援艦隊が壊滅したことを受けたピカードは、連邦領にある退役し保管されている艦艇をかき集めて、救援を続行するよう宇宙艦隊に要請したが、この事態に及び腰となっていた連邦は作戦の破棄を決定。
失望したピカードは辞表を叩きつけ、艦隊に救援の再開を迫った。
だが宇宙艦隊はピカードの辞職を受け入れ、多くのロミュランは見捨てられることとなる。
この件にはロミュランの秘密組織「ジャット・ヴァッシュ(後述)」が関与しており、未だ宇宙艦隊の中枢にロミュランの手が深く伸びていることが露呈した。
ほぼ同時期、バルカンのスポック大使もこの事態に行動を起こした。
バルカン科学アカデミーにおいて合成された「赤色物質」は、高圧の環境下に置かれると炸裂し、特異点を発生させる。すなわちブラックホールを生み出す物質であり、これを用いて超新星爆発を吸収させようと試みた。だがアカデミーで建造された最も早い宇宙船をもってしても、ロミュラスの太陽の爆発への赤色物質の投下は間に合わなかった。惑星ロミュラスは破壊され、残っていた数百万の市民が犠牲となった。
スポック大使は周辺星系への被害を食い止めるべく、遅れながらも赤色物質を投下し、爆発を収束させることには成功した。
しかしロミュランの鉱山作業員の「ネロ」は、ロミュラスの破壊に絶望し、自らが指揮する資源採掘船でスポックを襲撃。発生したばかりのブラックホールに吸い込まれた両者は、23世紀にタイムスリップし、異なる時間軸のケルヴィン・タイムラインの発生に関わることになる。
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ネロの復讐とケルヴィン・タイムラインの分岐 |
ブラックホールに呑まれたネロ船長指揮の採掘船「ナラーダ」は、2387年から2233年まで、およそ150年の時間を遡行した。ネロは直後に遭遇した連邦宇宙艦「USS ケルヴィン」を攻撃。ナラーダは全長10kmを超える巨大な採掘船であり、改装されているとはいえ純粋な戦闘艦などではない。だが150年に及ぶ技術差によってケルヴィンを圧倒し、船長のロバウ大佐を交渉と称して呼び出す。
ナラーダの副長のアイエルは、ロバウにスポック大使の所在を訪ねたが、この時代ではまだ艦隊に所属もしていないスポックをロバウが知るよしもなかった。この反応を不審に思ったアイエルは宇宙歴を確認し、これによって自分たちが滅亡した故郷はおろか、年代すらも遠く離れた処に飛ばされたことを悟った。
激昂したネロはロバウを殺害、ケルヴィンへの攻撃を再開した。ケルヴィンの副長だったジョージ・カークは、ロバウ船長に代わってケルヴィンを指揮した。彼が指揮した時間は僅か12分間であったが、この間にシャトルで脱出させた乗員は800名を超えた。その中には妻であるウィノナ・カークと、シャトル内で生を受けた息子のジェームズ・T・カークも含まれていた。
ケルヴィンの特攻によってナラーダは行動不能に陥り、その後クリンゴン帝国に拿捕される。
ネロ達はクリンゴンの資源惑星であり流刑地であるルラ・ペンテへ収監され、強制労働を強いられながら25年程を過ごす。
スポックの時間遡行はネロよりも短く、2258年に飛ばされていた。
同じ頃、ナラーダを奪い返したネロはルラ・ペンテを脱出し、タイムスリップしたばかりのスポックを待ち受けていた。スポックが所有していた赤色物質を得たネロは、スポックへの復讐として生きたまま惑星バルカンの破壊を目撃させ、次いで地球をターゲットにした。
だが地球の破壊は23世紀のスポックとカークの活躍によって阻止され、ナラーダは破壊された。
歴史へのネロの介入によって、影響を受けた人物に起因した歴史改変は無論のこと、ナラーダをスキャンしたことで得られた数々の技術情報は、これ以降の連邦の科学技術を飛躍的に進歩させ、正史では実現しなかった高度なテクノロジーが開発されている。
ワープ速度も明らかに向上しており、地球から発進したエンタープライズは最大ワープ速度到達からバルカンまでを、どう長く見積もっても10分程度で跳躍している。
またロミュランとの再接触が早まり、容姿も既知となったことでロミュランとバルカンの差異も一般的に周知されるようになっている。
なおナラーダを拿捕したクリンゴンも同様に技術を吸収した為、連邦と決定的な技術差が生じることはなかった。
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母星を失ったロミュランの一部は、連邦の手引きによってベータ宇宙域の惑星ヴァシュティに新たな生活の拠点を築きあげた。
ヴァシュティは開発途上にある惑星で、未だ支援と警備を必要としていた。連邦との国境にあった旧中立地帯や、宗主国を失くした旧帝国領も治安が急速に悪化しており、これらの領域の治安維持にはフェンリス・レンジャーなる自警団があたった。
ヴァシュティの秩序は「クワト・ミラット(後述)」によって保たれ、この運動は後のバルカン・ロミュランの再統一にも深く関わることになる。
ロミュラン自由国【PIC】
帝国の崩壊後に成立した後継国であり、タル・シアーの支援によって成立し維持されていた。遺棄されたボーグ・テクノロジーを収奪して利益をあげており、中には非人道的な実験も含まれる。
旧帝国に比べてややリベラルな傾向があるが、諜報組織としてのタル・シアーの権威は依然として強く根付いている。
再統一【DIS】
遠い未来の31世紀までに、ロミュランはバルカンへの統合を果たし、結果的に惑星連邦に加盟した。惑星バルカンはニヴァー(Ni'Var)と名を変え、ロミュランの新たな母星ともなった。だが両者の対立は根強く残っていた。
この頃の銀河系では、ワープ航法に欠かせない資源であるダイリチウムが枯渇しかかっており、代替手段としての新しい超光速航法の開発が各星系で進められていた時勢であった。
ニヴァーのバルカンとロミュランは最も有望視された新型の航法である「SB-19」を研究していたが、これは非常に危険なテクノロジーであるとしてバルカンは開発中止を要請していた。だが連邦はこれを拒否し、開発を続行させた。
そして3069年に銀河中のダイリチウムが突如として不活性化、制御不能に陥った数千のワープコアの
反物質が爆発した。これは「大火(The burn)」と呼ばれ、銀河中に甚大な被害をもたらした災厄として記憶された。
SB-19が「大火」の原因であると信じたバルカンは、20年後に連邦から脱退するが、ロミュランはこれに反対し、残留を主張した。
科学・軍事
非常に精強な宇宙軍を配備しており、惑星連邦やクリンゴン帝国とは度々衝突しながらも、連邦・ロミュラン戦争以来、DS9でのドミニオン戦争参戦まではその強大な軍備を維持し続けていた。
代表的な艦種にバード・オブ・プレイやロミュラン・ウォーバードがあり、総じて猛禽類の意匠を艦の形状やペイントに取り入れている。
その戦闘力は強力で、プラズマ魚雷やディスラプターキャノン等で武装され、連邦宇宙艦隊と度々戦闘を演じては、苦戦を強いられる強敵として描かれる。
例えば23世紀後期において、ロディニウムと呼ばれる、既知の中では最大の強度を誇る装甲で防御された連邦の前哨基地を、プラズマ魚雷で一撃に破壊している。
24世紀後期では主機(メインエンジンの動力源)に人工の特異点、すなわち極小の
ブラックホールを用いており、活動限界が事実上存在しない。だが同時に、一度主機を立ち上げたあとは二度と停止ができない為、特異点が制御不能に陥った場合には艦そのものを放棄するしかない。
スキャン技術も高度で、敵艦からのスキャンは全く受け付けないステルス性を確保しながらも、エンタープライズ(NX-01)の船体状況の詳細はおろか、乗員数まで正確に把握できるだけのスキャン性能を見せつけた。
24世紀末に存在した分子復元法と呼ばれるスキャン技術によれば、残留した粒子からその空間の過去の状況を詳細に再現することが可能で、存在していた人物を特定するほど精度が高い。連邦はこの鑑識法を不確実なものとして法律で規制していたが、それすらもロミュランが「そう思わせておいた」ということらしい。
反対にワープ・テクノロジーや転送装置は地球製のものとよく似ており、連邦の転送装置と同期させることもできる。
ディスラプターは連邦のフェイザーよりも強力なエネルギー兵器であり、配備はロミュランやクリンゴン等に限られている。
セラロン
放射線の研究も連邦より進んでおり、これに被曝した有機体は短時間に細胞を崩壊させ、灰のように肉体が朽ちて死亡する。
アルファ宇宙域でも屈指の科学力を誇り、その多くは軍事技術に見られているが、その中で最も代表的な技術といえば、「
遮蔽装置(Cloaking Device)」であろう。
例えるならば
光学迷彩というべきもので、文字通り搭載した物体を光学的・電磁的に遮蔽できる高度な技術である。
主にロミュラン製の艦艇に搭載され、その原理や形態は年代によって大きく異なるが、概ね共通しているのは「通常の手段では見破られない」「兵器や防御シールドとの併用が難しい」「莫大な動力を消費する」という点にある。
23世紀中期:逆移送電磁波方式
TOSの初期に用いられていた方式で、入射する可視光線や赤外線などの電磁波を、位相を反転した電磁波を発して相殺する方式。
高出力の
放射線以外を遮蔽できるが、エネルギー消費が激しいために展開中は一切の攻撃が不可能になり、防御か逃走に徹するしかなくなる。
航行に伴い僅かな
放射線が漏出するため、エンタープライズによって存在と移動は察知されてしまった。
装置そのものは50cm程の球状の光る物体で、大人一人で抱えられる程度の重量と大きさでしかない。しかもカークがバード・オブ・プレイから奪取した装置は、エンタープライズでも短時間の調整のみで使用できた。
23世紀後期以降:重力レンズ方式
以降の遮蔽装置の主流となる方式で、展開した重力波によって電磁波や可視光線を偏向し、反対方向へ受け流すことでセンサーをかわす方式。
その原理上、展開したフィールド内は自ら発する電磁波によって常時加熱され、放熱が不可能になるという問題があった。この問題は艦体を特殊な塗料で塗装することで、高効率な輻射放熱によって艦の温度を少しずつ下げるという力業で解決され、その為にこのタイプの遮蔽装置の搭載を前提とした艦は、緑色の艦体がスタンダードになった。
初期のモデルは目視によって背景の僅かな歪みを捉えられるケースがあったが、改良が進められるとこれは解消され、さらに艦体の表面に沿ってフィールドを展開することが可能になったり、展開までの速度も向上する等していった。
2260年頃に短期間同盟国であったクリンゴン帝国にも供与され、同盟破棄後も同国で独自の進化を遂げる。
2371年、連邦宇宙艦隊に就役したUSSディファイアントに、ロミュラン製の遮蔽装置が1基提供され、ガンマ宇宙域に限定しての運用が認められた。(ドミニオン戦争の激化に伴い、後にアルファ宇宙域での使用も解禁)
2375年頃にクリンゴンで運用されていた装置が登場したが、この時には
フェレンギ人男性二人で抱えてやっと運べる程重く、また異なる艦で使用するには複雑な調整を必要とした。
24世紀後期:位相遮蔽方式
各勢力で開発が進められていた遮蔽技術で、物質波の波長を量子力学的に変調させることで、他の物質や電磁波をすり抜けさせる方式。
すなわち起動させている間は、敵の砲弾も一切当たることなく艦体を通過してしまうというチート装置である。
クリンゴン帝国は実験の初期段階で事故が多発した為に研究を放棄、ロミュラン帝国でも実験的な運用を進めており、限定的ではあるが位相遮蔽が実現していた。
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極秘 |
2358年、連邦もUSSペガサスにおいて極秘裏に実験。
一定の成果を見たが、実験の失敗で機関室で爆発が生じ、多数の死者をもたらした。多くのクルーは、アルジェロン条約違反である上に、ロミュラン帝国との緊張を激化させかねない実験の中止を求め、艦長に対し叛乱を起こした。艦長以下数名の生存者の脱出後、ペガサスは消失したが、2370年に発見される。
回収任務に携わったエンタープライズD艦長のピカードの判断で、このことはロミュラン帝国にも通達され、当時開発を進めていたプレスマン提督(当時大佐)は告発されることとなった。
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多くの場合はタキオン粒子や反陽子を広範囲に放出する、あるいは漏出するテトリオン粒子や亜空間の乱れを検出するなどして遮蔽を破ることが可能だが、この他にも試験的に運用されたモデルは多く存在し、以前は通用した探知技術が対策されたり、あるいは遮蔽状態で攻撃が可能になったりと、各勢力で改良が日々続けられている。
宇宙艦隊が最初に遮蔽装置と接触したのは2151年(スタートレック:エンタープライズ(ENT)での出来事)であったが、これは29世紀において開発されたより高性能な遮蔽装置で、
タイムスリップした先の22世紀においてスリバン人が運用していたモデルであり、後発(ややこしいが技術史的には先発、ということになる)の遮蔽装置とは原理が異なる。
科学分野においていくつかの単位系が言及されており、温度を示す単位をオンキアン、圧力を示すそれはメラコルと設定されている。
組織
タル・シアー
アルファ・ベータ宇宙域で特に恐れられる、ロミュラン帝国の諜報機関である。
ロミュラン帝国の敵に対する諜報や防諜といった、国家の安全保障を担う組織であり、その卓越した手腕と冷酷さは内外に広く知れ渡っている。
政府や軍部は勿論、国民すら厳しい監視下におき、国家に対する叛逆的思考を僅かでも確認すれば、その者は直ちに逮捕され、処刑される運命にある。
その為、多くのロミュランはタル・シアーの監視を恐れて不用意な言行を控える傾向にあり、それが互いを相互監視する文化となって帝国全体に浸透している。
ロミュラン上院はタル・シアーの行動には不干渉であり、場合によっては上層部の意向を、上院を通さず直截的に国政や軍事に反映するためにタル・シアーは暗躍することがある。当然その権威は軍部にまで発揮され、ロミュラン艦内において最高の指揮権をもつ艦長を差し置いて、艦の指揮権を奪取できるだけの権限を有している。
無論、その行動の結果として帝国に不利益が生じた場合には、タル・シアー構成員であっても処罰は免れない。
独自の艦隊を保有しており、ドミニオン戦争の初期には
カーデシアのオブシディアン・オーダーと連合艦隊を組織してドミニオンへの攻勢を画策したが、これは創設者に筒抜けであり、タル・シアーに潜入した創設者の工作によって艦隊は壊滅状態に追い込まれている。
オブシディアン・オーダーはこれを機にカーデシアにおける影響力を喪失したが、タル・シアーはその後再建を果たし、アルファ、ベータ宇宙域での暗躍を続けることになる。
ジャット・ヴァッシュ
タル・シアー内に結成されている秘密組織で、その歴史は数千年に渡る。
ロミュランでは「ジャット・ヴァッシュ」は死者を意味する表現として用いられることすらある。死者は黙して語らず、決して秘密を洩らさないことから、それほどに秘密を守りぬく存在として知られている。その目的は人工生命(シンス【synth】)の根絶にあり、惑星連邦において存在感を増すアンドロイド等の人工生命体の絶滅を画策した。遠い昔、人工生命体によって崩壊した古代文明が、8重連星系の惑星アイアに遺した「記憶の保管庫」から、その文明の破滅の記録が発見されたことで結成された。その記録を垣間見ることは多大な精神的苦痛を伴い、アクセスした者の多くは発狂してその場で自害するが、その中にあって正気を保った者だけがジャット・ヴァッシュへの加入を認められる。
彼らは人工生命を恐怖し、憎悪し続け、ロミュラン帝国で永く暗躍を続けた結果、帝国ではアンドロイドや人工知能(AI)が全く研究されず、コンピューターも学習機能を制限した、単純な演算装置としてしか用いられない。
クワト・ミラット
「無垢なる在り方」を教義とする戦士修道女の集団。タル・シアーとは対立関係にある。これまでのロミュラン文化とは反対に、思考と言葉を包み隠さずに表現する率直さを教義とする。
卓越した戦士でもあるが、金で雇われる傭兵では決してなく、請うた者の「大義」に価値を認めたときに限って、契りを交わす。大義の価値は「勝ち目がないこと」、すなわち弱者や既になにかを喪った者が抱く目的に対して認められ、その者の為に剣を振るう。これは「カランクカイ」と呼ばれ、多くの者がヴァシュティの平和維持に貢献している。
敵と対した際、可能であれば相手に撤退の機会を与えることがあり、「生きることを選べ」といった表現で再考を促す。
この点でもこれまでのロミュラン像とは精神性が大きく異なる。
再統一運動にも大きな役割を果たし、彼女達は32世紀においても存在し続けていた。
ロミュラス崩壊の危機に際してはピカードに協力し、ピカードとロミュランの関係が険悪化した後も友諠を保ち続けた。
主なロミュラン
ウォーバードの艦長【TOS,SNW】
2266年に連邦との中立地帯に潜入し、新型のプラズマ魚雷の
テストを兼ねて連邦の前哨基地を攻撃した司令官。
任務には忠実で指揮の手腕も確かなものだが、帝国の好戦的な政策と、その犠牲となる自分達の境遇に暗澹たる思いを抱いている。
連邦との開戦を招きかねない中立地帯侵攻には内心反対であったが、やむなく任務に就きカーク船長指揮のエンタープライズとの見えない追撃戦を演じた。
初めて登場したロミュランの一人だが、その名前は未だに明らかにされていない。
「スタートレック:ストレンジ・ニュー・ワールド」のS1 Ep10にも同じポジションの人物が登場。異なる時間軸において基地とUSSファラガットを破壊した後、クリストファー・パイクとの交渉に応じた。
しかし、こちらは額にV字のある北部民族のためおそらく別人。
メンデック【TNG】
連邦との外交交渉の為に中立地帯に派遣されたロミュラン軍の提督。ピカード大佐指揮のエンタープライズDは、高名なバルカンの大使であるトゥペルを伴ってメンデックとの交渉に臨んだ。
だがトゥペルはウォーバードへの転送の際に事故死、メンデックは連邦の策略を指弾し、交渉を打ち切り中立地帯から撤収した。
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真相 |
転送事故はロミュランによる偽装工作であり、エンタープライズD側に残されたトゥペル大使の遺体は複製されたものだった。
ピカードはトゥペルの拉致を阻止すべく中立地帯へ急行、メンデック提督のウォーバードを追跡した。
転送事故の真相を突き付けられたメンデックは、ブリッジに「大使」を呼び寄せた。
トゥペルはバルカンの大使ではなく、ロミュラン軍のセロック副指令であった。
セロックは長年大使として連邦に奉仕し、極秘情報への高度なアクセスコードを得て、数々の機密情報を帝国に流していたのである。
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セラ【TNG】
2360年代後半、連邦とクリンゴンの同盟を破綻させるべく暗躍した司令官。ピカードに強い敵意を抱いている。
かつてエンタープライズDに乗務していたナターシャ・ヤー中尉とよく似ているが……
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正体 |
2366年、エンタープライズDの前方に生じた次元の裂け目から、2344年に撃沈されたエンタープライズCが時間を遡行し出現した。
エンタープライズCはロミュラン軍との戦闘中にタイムスリップに巻き込まれ、異なる時間軸の生成を引き起こした。
新たな時間軸では連邦とクリンゴンは戦争状態にあり、これを修正するためにはエンタープライズCは次元の裂け目を再度通り抜け、ナレンドラ3においてロミュラン軍によって撃沈される必要があった。
この決死の宿命にナターシャ・ヤー中尉が志願し、エンタープライズCに異動を申し出た。中尉は既知の時間軸における自らの「無意味な」死を知り、ナレンドラ3での歴史的な戦闘への参加を志願したのである。
エンタープライズCはロミュラン軍によって撃沈されたが、数名のクルーは生き残り、中尉はその一人であった。
捕虜となった艦隊士官は大抵処刑される運命にあったが、ロミュランの高官に気に入られた中尉はやがて一人の娘を身ごもった。まさにセラはヤーの娘であり、2367年までにロミュラン軍において司令官の地位に達し、連邦への工作を指揮した。
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トモロク【TNG】
ピカードの前に度々現れたロミュラン軍司令。ロミュランらしく詐術に長け、エンタープライズDをつけ狙って策謀を巡らせる。
後に大使に就任しており、ドラマシリーズ以外の外伝でもロミュラン中枢でかなりの高位を務めているが、いくつかの作品の記述では後に失脚する描写がある。
クレタク【DS9】
ロミュラン上院の女性議員。ドミニオン戦争時には帝国の代表として連邦との同盟関係の交渉に就いた。
連邦・クリンゴンとの共同戦線の構築には積極的であったが、あくまで帝国の利害を優先する姿勢を、ある組織に危険視される。
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Sec 31 |
惑星連邦の秘密組織である「セクション31」は、情報提供者であったコヴァルを次期永続委員会の席に就かせるため、対立候補であったクレタク議員を失脚させるべく暗躍した。
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ドナトラ【S.T.X】
シンゾンの政変時のロミュラン軍司令。当初は軍部のクーデターに与してシンゾンに接近を試みたが、シンゾンの異常性に気づきピカードを支援すべくパッセン断層の戦いに駆け付ける。
その戦いぶりはウォーフをして勇敢と称したほど果敢なもので、圧倒的な戦闘力を誇るシミターとの交戦にも退くことなくエンタープライズEを支えた。
大破したエンタープライズEに救援を送り、今後の連邦との融和を予感させた。
いくつかの外伝でもその後の去就が描かれ、統一されたロミュラスで女帝に即位するものまである。
ネロ【STAR TREK(2009)】
24世紀末でダイリチウム採掘に従事していた男性。巨大な採掘船ナラーダ号の船長。誠実な労働者であり、妻とまもなく産まれる子供の為に働いていた、ごく普通のロミュランであったが、超新星爆発によるロミュラス滅亡の危機で、人生を一変させた。
ロミュラスの破壊をその目で目撃し、約束を果たせなかったスポックと、結果的に帝国を見捨てた連邦を激しく憎悪し復讐を誓う。
スポック共々23世紀に
タイムスリップし、この時代のバルカンと地球の破壊を目論んだ。
ナレク、ナリッサ【PIC】
ナレクはジャット・ヴァッシュの命を受け、ロミュラン自由国が保有するボーグキューブに潜入し、人工生命体のソージと接触した。
ナリッサはその姉で、ジャット・ヴァッシュの工作員にして「八人会議」のメンバー。
「ある人物」の指令を受け、人工生命の殲滅を目論んで暗躍しているが……
エルノア【PIC】
クワト・ミラットに育てられたロミュランの青年。ピカードとは幼少期から親交があり、深い尊敬を抱き、後にピカードの「カランクカイ」となって剣を振るう。
シーズン2では宇宙艦隊アカデミーに入学し、初のロミュラン人士官候補生となる。
あなたが読んだ項目は終わりを告げた。修正することを選べ
- ターシャ中尉とセーラのくだりの尊厳凌辱っぷりがヤバすぎる。降板したからってこの扱い -- 名無しさん (2024-06-09 09:31:18)
- 位相遮蔽装置を宇宙艦隊が最初に試験したのは、USSペガサスだったような。中尉時代のライカーが関係するエピソード。ディファイアントに導入したのはロミュラン式の遮蔽装置のはず。知らない間に設定変更が行われたのだろうか。 -- 名無しさん (2024-06-10 07:48:45)
- ↑エピソードを観なおしたところ、ご指摘の通りでしたので修正しました -- 名無しさん (2024-08-06 18:33:36)
最終更新:2025年02月06日 13:33