醜男

登録日:2024/10/15 Tue 16:03:37
更新日:2024/10/18 Fri 10:40:20
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「ぶおとこ」。要はブサイクな男であるお前らのことである。
終わり。

























ごめん、嘘。











醜 男(しこお)




【真なる概要】

醜男(しこお)とは、「強くて逞しい男性」を意味する単語である。
要は「益荒男(ますらお)」「偉丈夫(いじょうぶ)」等と同じような意味の単語である。 (´^ω^`)おっ 嘘じゃないお
決して、ただシコシコしてるだけの男ではないのである。


《古代日本において》

古くは古事記において(オオ)穴牟遅(ナムチ)(ノミコト)(のちの大国主神(オオクニヌシノミコト))が葦原の中つ国から、須佐之男命(スサノオノミコト)が治める()堅州国(かたすくに)を訪れた場面。
娘である須勢理毘売(スセリビメ)が、父に誰かと問うた際に「此は葦原(アシハラ)()色許男(シコヲ)と謂ふ」と答えたという。
つまり、葦原中国の屈強な男だと答えたわけである。
また、根の堅州国と葦原の中つ国は文字通り世界が異なる訳で、単に強いのではなく「この世ならざる強さ」レベルである。


《そもそもシコとは…》

色許(シコ)(シコ)で字が違うじゃねーか、という人もいるかもしれないが、この場合大事なのは音である。
それに、神代紀第八段一書第六にも大国主神の別名として、「葦原醜男」と挙げられているため、けして間違いではない。
要は「シコ」という音に「力強い・逞しい」という意味があり、それに「(しこ)」という字を充てたものと考えられる。

余談だが、相撲の力士が土俵を踏み固めるような動作である「四股(しこ)」。
これは元々その動作を醜足(しこあし)と呼び、大地を力強く踏みしめることで、悪霊を踏みしだき、邪を払う儀式の意味合いがあった。
それが略して「しこ」と呼ばれ、いつしか「四股」の字が充てられる様になったのである。

「醜にはもう一つの意味もあり」「「力強さ」や「頑丈さ」を表す言葉でもあります」
「故に――――力強く大地を蹴る 踏む」「この動作を「醜足」と称する」

「踏むことで土地に棲む邪気を払い――――――魂を土中深く沈め込む」
と語っていたのは、決して板垣センセーの創作などではないのだ。
なので「四股名」も、元来は「醜名(しこな)*1である。


《現代での醜男》

ただ、現代ではフィクション作品などでも、この用法 ―ことに“醜男(しこお)”― が出てくることは、極めて稀。
漫画版「風の谷のナウシカ」の6巻で「(ナウシカの護衛として)蟲使いの全支族からひとりずつ醜男がよりすぐられたのだ」というセリフがあるくらいか。
そのシーンでは、欄外に「醜男…逞しい男のこと(古語)」と注釈がある。


【余談】

もちろん、「醜」には「みにくい」という意味での用法もある。
ただ、これも類稀なる力強さの表現であった「しこ」が、同時に付随するこの世ならざる恐ろしさから、みにくさやいまいましさを言い表す…と転じたものと推測されている。

男女を逆にした「醜女(しこめ)」という単語も存在する。
古事記で伊邪那美命(イザナミノミコト)を黄泉の国から追った泉津醜女(ヨモツシコメ)が有名であろうか。
ただ、こちらに関しては(少なくとも現代社会においては)「力強い・逞しい」といった用法はまったくなく、「醜い女性」の意味でしか使われない。
最近だとこの娘が言われたのが記憶に新しいか。勿論意味合いは上記の通りなので、もれなく長男の怒りを買っている。


ただ、現代社会ではやはりこの単語は、醜男(ぶおとこ)と読まれてしまうことの方が圧倒的多数である。
口頭で言われたのならともかく、文字で「醜男」と言われても喜ばないようにしよう。




追記修正は、自他ともに認める醜男の皆さんにお願いいたします。

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最終更新:2024年10月18日 10:40

*1 「しゅうめい」と読んではいけない。それでは「悪評」や「汚名」の意味になる