板垣恵介

登録日:2020/07/11 (土) 12:14:39
更新日:2020/07/24 Fri 14:47:56
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板垣恵介(いたがき けいすけ)は日本の漫画家である。
本名は板垣博之(いたがき ひろゆき)。既婚者で三女の父親だが、三女も板垣巴留という漫画家である。


●目次

【プロフィール】

生年月日:1957年4月
出身地:北海道釧路市

【概要】

ジャンプマガジンサンデーに並ぶ少年漫画雑誌である週刊少年チャンピオンを代表する漫画家の1人。

主に格闘漫画を得意とし、代表作は『グラップラー刃牙』から始まるバキシリーズ
バキシリーズの知名度が強いために格闘漫画のみを描いていると思われがちだが、格闘漫画以外のジャンルも執筆している。

◇参考文献

  • 週刊少年チャンピオン 各インタビュー
  • ほぼ日刊イトイ新聞 インタビュー
  • 激レアさんを連れてきた。
  • 檄!
  • その他、各メディアインタビュー記事から抜粋

【来歴】

◇少年時代

少年時代から様々な格闘技を観戦しており、強さに対する憧れの強い少年だった…が、実は身体を動かすのは好きではないインドア派だった。
父親の仕事が製紙工場だった関係で自宅には常時ザラ紙が1000枚単位で置かれていた影響で、自宅で絵を描いて過ごしていた。
身体能力は高くない子供だったが、梶原一騎のデビュー作『チャンピオン太』を初めとした格闘漫画の影響を受け続けていた。

5歳離れた兄がいたが、逆らうことが出来ずに悔しさを抱く中で強さへの意欲が芽生える。
そして格闘技のスターだった力道山、大鵬、ファイティング原田の雄姿を見たことで、その気持ちは強まっていった。

◇高校時代~自衛隊時代

高校時代には少林寺拳法を学び、横尾という新卒の数学の先生と部を創設した。板垣にとって横尾は一生の恩師となる。
陸上部顧問の先生を少林寺拳法のグローブをつけた練習で倒すなど実力を付けていた。

高校卒業後は地元就職するが、隙あらば身体を鍛えていた事を上司から叱られたので即退職するなど、一般企業では馴染めない状況だった。
山篭りをして牛との戦いにも挑むが、牛の頭を触った時に勝ち目がない事を実感して不戦敗に終わる。
やがて身体を鍛えていても怒られない職場として20歳の時に自衛隊に入隊し、第1空挺団に配置された。

自衛隊では厳しい訓練や恐ろしい人間関係に囲まれた地獄の日々を送り、この時の経験は板垣の人生に大きな影響を与え、後に自身の漫画のネタとなる。
ボクシング部にも所属して、初日にパンチで備品を壊すなどの暴れっぷりを見せ、国民体育大会にも出場した。

自衛隊でキャリアを積んでボクシングで王者でも目指そうと思い始めた矢先、献血で重度のB型肝炎が発覚してドクターストップを受けてしまい、24歳で自衛隊を除隊する。
退職手続きを出す時に「えらいこと、やっちゃってる」と考えながらのリタイアとなり、1年間の入院生活を送る。
そして絵で食べることを考えていたある日、「講談社フェマーススクールズ」に漫画家の講師が来た事で漫画家になろうと決意する。

◇漫画家の道へ

25歳から漫画家の道を目指すことになった板垣は、衝撃的なデビューを飾って業界の寵児になることを企んだ。
しかし、本人の意欲とは裏腹に全く成果を残すことが出来ず、アシスタントになることもないままネームだけ溜める日々を続けた。

何もすることなく30歳になった時に自身の努力不足と危機感を感じていた板垣は、偶然雑誌で「小池一夫劇画村塾」の募集の広告を見つける。
劇画村塾に頼ることを苦々しく決意した板垣は妻にラストチャンスを懇願した後、友人から18万円の学費を借金して第6期生として入塾を果たした。
この養成塾での出来事は板垣の人生に大きな影響を与え、自身の実力への自信を得ながら小池から数多くの漫画論を学ぶことになる。

所帯を養いながら借金を800万円まで膨らませていたが小池との学びを心の支えとし、1989年に『メイキャッパー』でデビュー。
1991年に『グラップラー刃牙』を連載すると大ヒットを飛ばし、チャンピオンの看板として格闘漫画史にその存在を刻むこととなった。
以降も刃牙の続編を連載し続けてシリーズとして確立させ、現在もチャンピオンを中心に漫画の執筆活動を続けている。

【作風】

格闘漫画を多く手掛けており、自身の経験や知識を生かした格闘描写を得意としている。

重厚な筋肉やバトル描写の評判が高く、『グラップラー刃牙』の終盤から人体の描写は独特に進化していった。
豪快で細かく描かれたステーキなどの食事シーンにも定評があり、一部のファンからは「板垣は格闘漫画よりも食事漫画を描け」と言われることも。

意味不明すぎて一周して説得力のある謎理論やありそうでなさそうな造語(例:マックシング、最筋力姿勢)を作る事も有名。
あまりにも描写が吹っ飛びすぎていてギャグ扱いされることもあるが、本人は同業者やネット上の評判を聞いてこれは周知している。
ただし、ギャグをする際には「笑わせようじゃなくて笑われた方が勝ち」という事で狙わないようにしている。

基本的に次の話の展開は考えずに執筆しており、打ち合わせもしていないことを公言している程のライブ感の塊。
このスタイルを象徴するかのような『範馬刃牙』連載時の担当コメント「先生、打ち合わせと違うじゃないですかァァ~!!!」は、チャンピオン屈指の迷言として知られる。
この話作りの姿勢が影響してか、漫画内の伏線っぽい描写が結果的に機能しないことも多々ある。
一応格闘漫画の勝敗だけは決めているとの事だが、『バキ』におけるマホメド・アライJr.ジャック・ハンマーの戦いは信念を曲げてひっくり返してしまったらしい。

漫画に対しては「駄菓子またはジェットコースター」という考え方を持っている。
これは「栄養にはならない、目的地には近づけない、だけど食べている時、乗っている時は純粋に楽しませる。漫画はそれでいい」とのこと。

【人物】

◇格闘技への執着と強さへの憧れ

上述した経歴を見れば分かるように、多くの格闘技や身体を使った職業に勤しんで生きていた。
その自信からか、「漫画家で一番汗流して、痛い目に遭い苦しんできた自負がある」と自身を評している。
知名度や収入などの金銭欲・名誉欲も強く、かなりの負けず嫌いでもある。

バキシリーズで「強さとは何だ」ということを描き続けた中で、最終的に強さとは「ワガママを通す力」「自分の意志を通す力」だと結論付ける。
実はこの板垣の強さへの価値観は、バキシリーズでもある場面でとあるキャラがそのまんまな事を語る場面がある。

◇ギャンブル

ギャンブルでは負けたことがなく、競馬では100万以上勝ち、海外では旅費以上に儲かったこともあると語っている。
それでもギャンブル自体は好きではないらしく、続けようという意欲は持てないらしい。
そもそも公務員の道を捨てて漫画家に挑んだこと自体が博打行為であると実感しており、こんな思いをするような博打は二度としたくないとのこと。

◇不自然主義

「不自然」という言葉を好み、「自然にね」とか「自分らしく」という言葉は「都合の良い駆け込み寺」として嫌う。
「余程の天才であるピカソとかビートルズは自然に動ける例外だが、普通の人間は不自然に行動しなければいけない(要約)」との理論。
不自然な準備をしていかなければ大望を実現できず、自分らしくないやりかたや本来の自分では絶対にやらないようなことに踏みこんでいく事に美徳を感じている。

◇編集者やアシスタントとの関係

アシスタントに編集が軽率に接することを嫌っており、編集に対してはアシスタントに対して一番下っ端の気持ちで接しろと忠告するのが定番。
これは板垣は「漫画家になりたいはずのアシスタントは個人的な屈折や過敏な一面がある」と解釈しているため。
板垣の言いつけを守れなかった編集は多いらしく、何人も板垣の仕事場から出禁となっている模様。

◇交友関係

◯漫画家

  • 小池一夫
劇画村塾で出会い、板垣の漫画理論を作り上げる原因となった師匠であり塾頭。
塾生としていつも自慢話を聞いていたが、その自慢話には漫画の技術的な話も含まれていたこともあって板垣は楽しんでいた。
板垣は小池から人間的な面では学んだことはなかったとしているが、親子関係に近い愛情を強く小池に感じているとのこと。

板垣の漫画家のペンネームも、小池の作品である『傷追い人』の主人公・茨城圭介と妻の名前を組み合わせて完成させている。
ちなみに、小池から軽井沢の別荘を譲られかけるが、維持できないとして断ったという逸話も。

漫画家を志望している人間に対しては「色々やっても無駄だから、黙って小池一夫に学べ」との評。

  • 板垣巴留
デビュー当初から親子関係であるという噂はあったが、後に親子関係であることが公言される。
巴留は父親の代表作である刃牙と『ちゃお』の連載漫画によって漫画家としての感性を作り上げた。
父からは娘というよりも凄い新人だと解釈され、『BEASTARS』のレゴシを見た時は「お前多分このオオカミに一生食わせてもらえるぞ」と絶賛した。

一応漫画作りの技法もアドバイスされているのだが、父親はアドバイスを送ったことを忘れていた。
また「巴留」というペンネームも父親考案なのだが、当人がどうやってその名前を考えたのかを覚えていなかったので、由来は永遠の謎となっている。
ペンネームを考えるに当たって「姓名判断的に売れる名前が良い」と思ったところまでは覚えているとの事で、その一点に関しては確かに当たっていたと言える。

  • 立原あゆみ
自分との漫画に対する流儀の違いから、自分が見落としていたようなことを知ってるのではないかと考え、表敬訪問の際に学ばせてもらおうと頼み込む。
そこで連載に関して「42.195kmのフルマラソンだ」という立原の思想を聞くが、板垣は逆に「電信柱一本ずつのダッシュだ」と考えていたため、漫画観の違いを痛感する結果になる。

  • 笠原倫
かつては20年以上の交友関係を築いていた。笠原が廃業を考えていたのを見てネタを提案し、合作として『どげせん』を作り上げる。
『どげせん』はヒットを飛ばすが、そんな最中に「土下座観の違い」によってタッグを解消し、板垣は週刊漫画ゴラクで『謝男』として別の漫画を執筆するという騒動が発生。
板垣は後にこの「土下座観の違い」は雑誌の柔らかい表現であり、実際は仕事観で対立を起こした事を認めている。
発端はネームに対するチェックから互いに対立を起こすようにより、「ならば俺は別の土下座漫画を始めるから、どっちが面白いのかは読者に委ねよう」と板垣が提案して決別する。

  • さいとうなおき
ポケモンカードのイラストレーターなどで有名な人物。
板垣のカラー原稿の着彩を担当しており、バキシリーズのスピンオフ『バキどもえ』も執筆している。
原稿着彩で大幅な修正をした際に「この修正は仕事じゃない!貴方への愛故の修正作業だッッ」にさいとうのコメントに対し、板垣は「俺も愛している」と返した。
さいとうの着彩の完成度に満足した板垣が一発で報酬を5万円を引き上げた逸話もある。

  • 佐藤タカヒロ
柔道、相撲といった格闘競技の漫画を執筆していた同誌の人気作家。決して交友が深いわけではなかったようだが、相撲漫画バチバチ後半での筆致の神懸かりに中てられたのか、刃牙シリーズの新シリーズは相撲を題材にルールの中での強さを描こうとしていたが、佐藤タカヒロ氏はまるでその筆致が正に魂を捧げた物だったかのように若くして逝去。追悼コメントではその死を惜しみ、新シリーズでの刃牙で描いた相撲を見せたかったとの事。

  • 島袋光年
島袋が不祥事を起こして『世紀末リーダー伝たけし!』が連載打ち切りとなった際、集英社への批判を行う。
後に板垣は島袋と酒の席を共にすると彼の人間性を称賛し、深い関係となった。
不祥事後に島袋が執筆した『トリコ』の作風は、板垣の影響を受けているのではないかという説もある。

  • 浜岡賢次
同じくチャンピオンを支えている漫画家だが、板垣は浜岡を「浜岡ほど板垣恵介とバキシリーズを理解してくれている人はいない」と称賛している。
『浦安鉄筋家族』シリーズではバキシリーズのパロディがよく描かれ、板垣自身もパロディにされている程。
しかも浦安でのパロディキャラのギャグ描写(俺のチョキは石をも砕く)を、板垣がバキシリーズに輸入するという逆転現象が起きた。

  • 山口貴由
同じ劇画村塾出身の漫画家だが、板垣は6期生として入塾する際には5期生だった山口は板垣の噂を聞いていた。
山口は板垣の第一印象を「顔に『億』と書いているように見えた」「矢沢永吉をベースにした人で漫画家っぽくない」と評する。
板垣は山口のことを高く評価しており、「チャンピオンは曽田正人と山口貴由に帰ってきてもらわないとダメだ」「山口が相撲を描いたらすげえと思う」と述べている。

  • 福本伸行
チャンピオンの板垣の20周年企画の際にコメントを寄せており、「まだまだオレ達は抜群に面白いですよ」とのこと。
番組『ナカイの窓』で共演した際には、福本がカイジ風の範馬刃牙を執筆。

  • ジョージ秋山
追悼コメントを出しており、師匠の小池がジョージ秋山に対して「アイツは天才だからなァ…」とお手上げだったと振り返っている。
板垣はジョージ秋山について「メガヒットを出さぬまま、何本もの「話題作」を出したことか…。」と評している。

  • 漫☆画太郎
板垣曰く、ギャグ漫画家として同業者呼ばわりをされたらしい。

板垣の絵柄に影響を与えた漫画家達。
鳥山のクラブでの豪快な金遣いに関する話題が増田との会話のネタになったらしい。

◯漫画以外の関係者

  • 矢沢永吉
板垣が国分寺に暮らしていた友人の家に訪問した際に、面白いから読めと言われて矢沢の著書である『成り上がり』を読んだことが、人生観を決定づけた。
後に食事をすることになるが、その時に矢沢がかつて東京に向かう際の心境を聞くことになる。

  • 夢枕獏
板垣が強く影響を受けた人物でもあり、後に『餓狼伝』のコミカライズを担当することに。
夢枕獏の方も、バキのアニメ化に伴った依頼を受けてバキシリーズの外伝小説『バキ外伝 ゆうえんち』を執筆を担当した。
ゆうえんちの執筆の際の板垣の「刃牙、勇次郎、花山以外はどのように使ってもいい」という指示に面白さを覚えるが、ファンへの配慮と本編への影響を考慮して最凶死刑囚の一人である柳龍光を扱うことに決める。

  • 増田俊也
板垣の友人であり、増田の著書である『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』が板垣に影響を与えた。
増田のTwitterでも定期的に板垣との会話のやり取りが明かされている。

  • おおた慶文
女性的な顔が描けずに苦戦していた板垣は、おおたの女性の絵を参考にしたようだ。
自身の代表作である『グラップラー刃牙』の主人公のデザインは、おおたの影響を受けている。

  • 那須川天心
バキシリーズを愛読書としており、板垣もコラボイラストで応援を寄せるなど親交が深い。
那須川はアニメ版バキのOP映像において、モーションキャプチャを担当する形で刃牙を演じている。
板垣は那須川の試合を度々観戦しており、あの伝説のメイウェザーとの一戦でも観戦している様子がファンに発見されていた。なお結果
朝倉カンナとの対談で板垣はメイウェザーとの一件について、「なかなかあんな酷い目には合えない」「あんな日を経験したからには絶対に強くならなきゃダメ」と批評した。

  • 島田道男
板垣は取材という形で島田の道場に入り込むが、島田との対戦の展開となった末にボコボコにされてしまう。
板垣にとってはこの一件は衝撃的な出来事となるが、島田の方はあまり覚えていない模様。

  • 塩田剛三
かつて板垣は合気道や中国拳法に胡散臭さを覚えていたが、そんな時に塩田の内弟子である三枝誠と自衛隊時代に友人だった縁から対面を果たす。
板垣は塩田の雰囲気に狂気を感じ、島田との一件について塩田に語った際の態度から塩田による道場破りへの警告だと察する。
塩田に影響を受けた板垣は、後に『グラップラー刃牙』で塩田をモデルにしたキャラクター・渋川剛気を作った。

  • 白鵬
宮城野部屋を板垣が訪れ、白鵬が使用する着流しに鳳凰をデザインしてプレゼントする。
板垣は相撲に強い関心を抱いているが、白鵬は史上最強の横綱かもしれないと感じており、板垣の話にも名前がたまに出ることも。
そして『バキ道』では、白鵬をモチーフにしたと思われるキャラクター・零鵬が登場した。

【主な作品】

◆連載作品

  • メイキャッパー
  • グラップラー刃牙
  • グラップラー刃牙外伝
  • バキ
  • 禁断の書バキ特別編 SAGA
  • 範馬刃牙
  • ピクル
  • 刃牙道
  • バキ道
  • 餓狼伝 (作画)
  • 餓狼伝BOY (作画)
  • 濁ジョータロー (原作)
  • 謝男 シャーマン

◆読み切り作品

  • グラップラーアギトー
  • 化粧師-メイカー-
  • 蹴人シュート
  • マリア
  • メイカー
  • 習志野第一空挺団シリーズ

◆その他

  • どげせん (企画など全面協力)





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最終更新:2020年07月24日 14:47