SCP-8999

登録日:2024/12/10 (Tue) 21:28:18
更新日:2025/04/26 Sat 20:46:39
所要時間:約 18 分で読めます




SCP-8999とは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。

項目名は「Feeding the Trolls(トロールに餌やり)」。
アノマリー分類システムを採用しており
オブジェクトクラスは「Euclid」。
クリアランスレベルは「レベル3」で錯乱クラスは「EKHI」、
リスククラスは「DANGER」となっている。
『アノマリー分類システムの意味なんて一々覚えてられるかよ!』となっている人に向けて後半3項目をざっくりまとめると
「サイト上層部クラス以上の職員が知れる情報で、影響は一国レベルの広範囲。あっ近づいたら死ぬからね。」
ということ。


説明

SCP-8999とはスウェーデンにある「カルマルの福音ルーテル教会」という教会の地下35 mに存在する超広大な地下空洞で生活していると思われる生物である。

『思われる』と表記した理由は、彼らが自らの姿を写真や映像に撮られることを忌避し撮影機器を使うと隠れてしまい、詳しい姿や状態が分からない為。
後述の絵から推測するに、長い鼻の生物か、カバかワニに似た姿らしい。

SCP-8999は知能を持っており、記号や象形文字(というか子供の描いたような絵)を用いた文書によるコミュニケーションが取れるため、財団は地下空間と地上をつなぐ改造小型昇降機で物資やコミュニケーション用の紙と筆記用具を送り、SCP-8999達と接触・実験している。

ちなみに食に関するコミュニケーション以外はしてくれないらしい。食いしん坊なのだろうか。

これだけなら地下空洞に住んでいる未発見の高知能生物というだけで済んだのだが、SCP-8999にはもう一つ異常性がある。

それは周囲一帯の地震活動をある程度制御するという能力。
家鳴りみたいなものだったらまだ可愛かったのだが、悲しきかなその最大威力は観測記録上でマグニチュード7.0。
シャレにならない威力である。
SCP-8999は専らこの能力を「不満の表現」として扱っている。(地団駄にしては威力が高すぎるが。)


というわけで特別収容プロトコルは大別して

①「カルマルの福音ルーテル教会」と周辺地域は財団が買収するよ。

②SCP-8999と文書交流する際は研究チームに相談してね。

③機嫌損ねて地震起こさせちゃったら標準の隠蔽プロトコルで対処してね。

の3つとなっている。


発見過程

コイツらの第一発見者は大空洞の上にある教会で牧師を勤めていたザカリアス・エーベルグさん。
故人なので実際にインタビューしたわけでは無いが、手記によると地震により教会の地下に断層ができた際、その穴からSCP-8999達の生活音が聞こえてきたのが発見の経緯らしい。

発見当時ザカリアスさんは彼らを断層により地下に閉じ込められた人間達だと思い、滑車を用いて食料品や生活必需品を送ったが、SCP-8999達は食料品だけを回収し、その他の物には手をつけず返却。
このやり取りを数回繰り返した後ザカリアスさんは紙とペンを用いたコミュニケーション方法を確立し、地下の住人達が人ならざる者であると認識した模様。

ザカリアスさんはSCP-8999を地下に住む妖精として『トロール』と呼ぶことにした。
ザカリアスさんは余生をSCP-8999達との交流に費やし頻繁に餌を与えた他、専用の昇降機を(恐らく自力で)作成し、よりコミュニケーションを取りやすいようにした。
(人外とのコミュニケーションだの専用昇降機だの何でもできるなこの牧師様)
その後ザカリアスさんはSCP-8999達の世話を甥のエミール・エルバーグさんに託し2013年9月18日に自然死した。
その際残した手紙には

  • SCP-8999と熱心に交流したのは彼らもまた神に創造された存在であるから
  • 聖書の一節を読み聞かせると彼らの心が静まるのを感じとれた
  • 彼らは食欲旺盛でこだわりが強い。秘伝のレシピを残しておいたからそれに従って作ってあげてね。野菜や果物多めで!

と書かれていた。飼育方法まで書き残しているなんてつくづく有能な牧師様である。


コレで『めでたしめでたし』といけば良かったのだが、何も起こらなければそもそも財団が関わる訳がなかった。

ザカリアスさんの死から数日後、カルマルを長期にわたる激しい地震が襲った。原因はもちろんSCP-8999である。

なんとエミールさんはザカリアスさんが残した秘密のレシピの在り処が分からなかったのだ。途方に暮れたエミールさんはとりあえずケバブピザと酒を少々送ってみた。
結果は……………












↓コレであった。

...不評だったらしい。
その後果物を送ったりしてみたがそれも駄目。そうこうしてる内にSCP-8999がキレた結果が先述の地震である。
インタビュー後エミールさんには記憶処理を施し、教会一帯の土地は財団が買収した。

というわけでここからは財団の出番である。



コミュニケーション記録

SCP-8999の対処法として、一番簡単なのは秘伝のレシピ料理を送って彼らを満足させてしまうことである。
というわけで財団は彼らとコミュニケーションをしてみた。

財団からSCP-8999への画像(↓)


SCP-8999から財団への画像(↓)


財団からSCP-8999への画像(↓)

どうやら彼らは食べる物が欲しいらしい。何が欲しいのか聞いてみた結果が……













SCP-8999から財団への画像(↓)

ナス?イモ??それともタコスか?この長芋のシルエットみたいな奴が何なのか分からなかった(そりゃそうだ)財団は、SCP-8999に聞くことにした。

財団からSCP-8999への画像(↓)


SCP-8999から財団への画像(↓)

SCP-8999「この長芋みたいな奴は長芋みたいな奴だ。それ以上でもそれ以下でもない。」
と言わんばかりのまったく同じ返答。こんなことされたら財団としても打つ手が無い。議論の結果、研究チームはこれをナスであると断定。昇降機を用いてナスを大量に送った。

...数時間後大量のナスが地上に送り返され小規模の地震が起こった。
どうやらお気に召さなかったらしい。


コミュニケーション記録 その2

財団はめげなかった。
ナスを大量に送って地震を起こされた日から日数を空けて、
再び実験開始。
財団からSCP-8999への画像(↓)


SCP-8999から財団への画像(↓)

SCP-8999「シェフを!ザカリアス牧師を呼べ!」
とでも言いたいのだろうか、恐らく牧師と思われるイラスト。

財団からSCP-8999への画像(↓)


SCP-8999から財団への画像(↓)


財団からSCP-8999への画像(↓)


SCP-8999から財団への画像(↓)


財団からSCP-8999への画像(↓)


どうやら「ザカリアス牧師の死」というものは理解してくれたらしい。目が✕印=行動不能というのもザカリアス牧師が教えたのだろうか。
神父はきっとSCP-8999達のよい友であったのだろう...


SCP-8999から財団への画像(↓)


財団からSCP-8999への画像(↓)


SCP-8999から財団への画像(↓)

かと思ったらまた飯の催促である。あの…コイツらに聖書の一節を聞いて心を安らかにする情緒なんてあるんですか…?

コミュニケーション記録 その3

財団からSCP-8999への画像(↓)


SCP-8999から財団への画像(↓)

色々面倒くさくなってきたのか色付きの様々な食べ物を見せて選んで貰うことにしたがSCP-8999の返答は相変わらず長芋モドキ。
???「聞かれた質問に応じた答え方をしろーっ!!要求を通す時はひたすら同じ返答をし続けろと牧師は教えているのか?」…と言いたくなる所だが、とりあえず財団は絵に描いた物全部を大皿に載せて提供してみる事に。

が、いずれもSCP-8999は拒否。
間もなくして地震が起こった。(クレーム感覚で地震を起こすな)


再び、やり取りを見ていこう。
財団はもう一度、具体的に何が欲しいのか聞いてみることにした。
財団からSCP-8999への画像(↓)


SCP-8999から財団への画像(↓)


財団からSCP-8999への画像(↓)


SCP-8999から財団への画像(↓)


財団からSCP-8999への画像(↓)


SCP-8999から財団への画像(↓)

分かんねぇよ。

一応このやり取りを文章にするとこういう事だろう。

財団「長細い楕円形の食べ物ですか?そんなものウチにはないよ…」
SCP-8999「(´・ω・`)そんなー」
財団「君たちが欲しいモノについて他の言い方なんか無いの?」
SCP-8999「四角いモノ…」

これ以上コミュニケーションをとっていても埒が明かないと判断した財団はコミュニケーションを中断。
このあと数週間かけて様々な食べ物を送ったがいずれも拒否し地震を起こすSCP-8999。
更に1ヶ月後、初めてSCP-8999の方から接触を図ってきた。

SCP-8999から財団への画像(↓)


財団からSCP-8999への画像(↓)



SCP-8999から財団への画像(↓)


何か食べたいのだろう、口の中に入れるような絵である。
それが分からないのだが…とにかくもう一度聞いてみる事に。
財団からSCP-8999への画像(↓)


SCP-8999から財団への画像(↓)


財団からSCP-8999への画像(↓)

なんだろう…根本的に話が噛み合ってない気がする。
ザカリアスさんは良くこんなのとコミュニケーションを築けたものである。
お手上げ状態になった財団はもう形とか関係なく様々な食べ物の描かれた画像を送り、その中から選んで貰うことにしたがSCP-8999は無回答で画像を送り返し、マグニチュードを増して地震を起こすばかり。
これ以上有効な策も無かったのだろう、財団はSCP-8999のことをひとまず無視することにした。


コミュニケーション記録 その4

SCP-8999から財団への画像(↓)


SCP-8999から財団への画像(↓)


SCP-8999から財団への画像(↓)


SCP-8999から財団への画像(↓)


SCP-8999から財団への画像(↓)

記録:
以降553回にわたる同一のコミュニケーションを削除






SCP-8999から財団への画像(↓)

あまりにも無視された事でついにキレたのか、SCP-8999は大規模な地震を起こし始めた。

これには財団も対応を迫られ、SCP-8999の研究責任者であったペトリ博士は直接地下に乗り込んでSCP-8999のコミュニケーション能力を向上させる取り組みを発案。
財団も連続する大地震の後処理にかかるコストが馬鹿にならず、
要求物の判明ができるに越したことは無いということでこれを承認。
通信装置を持った上でペトリ博士は地下へと潜って行った...の、だが。


下降後、程なくしてペトリ博士との通信が切断され、SCP-8999は地震活動を停止して3日間コミュニケーションを中断。その後コミュニケーションを再開した。
さて、気になる反応はと言うと。


コミュニケーション記録 その5

SCP-8999から財団への画像(↓)


笑っていた。とてもいい笑顔である。
不思議に思った財団は理由を尋ねてみた。
財団からSCP-8999への画像(↓)


SCP-8999から財団への画像(↓)

...もはや不気味なまでの笑顔である。
先ほどまでの不機嫌は何処へやら。なにやらご機嫌のご様子だが、ペトリ博士はどうなったのだろうか。


SCP-8999から財団への画像(↓)


SCP-8999から財団への画像(↓)


SCP-8999から財団への画像(↓)


SCP-8999から財団への画像(↓)


SCP-8999から財団への画像(↓)







.........喰われたなペトリ博士。
SCP-8999が人間を新たな餌として認め、歓迎していることは文字など無くとも分かるであろう。
どうやらSCP-8999にとって人間こそが満足に足る食材だったようだ。SCP-8999の報告書は最後に送られてきた口を指し示す画像で締め括られている。
結局ザカリアス牧師が提供していた物は何だったのであろうか*1、レシピは何処へ消えたのか、財団はこれからSCP-8999とどう付き合っていくのか、全てにおいて説明無し。
あるのは「定期的に人身御供しないと地震を起こす変な生き物がいます」という事実のみ。
晴れてSCP-8999の機嫌の取り方が分かった財団はDクラス職員でも放り込んでそれとな〜く上手くやっていくだろう。




余談

この作品はSCP-8000コンテスト『幻想(Fantasy)』において見事準優勝を果たした作品である。えっ ついこの間7000コンテストやってた気がするんだけど…
まさしくファンタジーな世界感の妖精「トロール」を主軸に、絵によるコミュニケーション、餌を要求する地底人と御伽噺のような要素を散りばめつつも、財団の思うようにいかないストーリーや地震を起こすという現実味のある攻撃、突如人食いモンスターの本性を現すラストなどしっかりホラー的な要素も持ち合わせた傑作である。

ちなみにTrollは英語のネット用語で"荒らし"という意味がある。
項目名は「荒らしに構う」という意味の英語のネットスラングで、文字通りの「トロールに餌やり」との掛け言葉になっている。

追記・修正は昇降機で食べ物を送りながらお願いします。


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最終更新:2025年04月26日 20:46

*1 様々な形状や人を食料とみなした点から糞、要はうんちでは無いかという考察もある