浪巫謠

登録日:2025/02/04 (火) 17:56:06
更新日:2025/02/08 Sat 07:10:48
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耳を以て邪悪を暴き、喉を以て邪悪を糺す。
すなわち、貴様の敵だ!




浪巫謠(ロウフヨウ)とは、特撮人形劇『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』シリーズの登場人物の一人。
同作の主人公の一人である。



CV:西川貴教東山奈央(幼少期)
キャラクターデザイン:三杜シノヴ
二つ名:弦歌斷邪(ゲンカダンジャ)天籟吟者(テンライギンジャ)





概要


初登場は映画『生死一劍』の「殤不患編」。殤不患を探して、西幽から東離へ鬼歿之地を渡る姿で登場した。

橙色の髪が特徴的な美丈夫で、赤い琵琶を抱えた楽士。
歌を唄うのが上手く、その声は魔性を帯びており、聞く者を皆魅了させる。

感覚が異様に鋭く、他人の気配の察知や、直感で他人の気質を読み取ることに優れている。
作中では、凜雪鴉「言葉も所業も上辺だけの悪」と、彼の本質を瞬時に見抜いていた。
また、目をつぶったままでも聴覚だけで戦いをこなせるほどの腕前を有している。

反面、他人の悪性に敏感であり、邪悪を人一倍憎んでいる、ある種潔癖な性格の持ち主。
ごくわずかな味方にしか心を許しておらず、若干そうした人間に依存気味な危うい面がある。
そうした性格のためか口下手で、喋る琵琶の「聆牙」が彼の気持ちを代弁することがある。

殤不患とは西幽において志を同じくする同志であり、彼の啖劍太歳としての活動を共にしていた。
しかし、ある事件がきっかけで西幽を去った彼を追うため、東離へと渡り歩いてきた。
殤不患には友として仁義を抱いているものの、彼の優しさが時折眩く見えることがあり、歯痒く思っているようだ。



戦闘面


琵琶の聆牙とコンビネーションを組んだ攻撃を得意とする。
聆牙は、音波攻撃だけでなく、剣に変形する機能も有しており、浪巫謠自身も剣術に優れているため、格闘戦、遠距離戦の両方も可能。

詳細は聆牙の個別項目を参照。



過去


西幽の山奥で、盲目の母・咒旬瘖に女手一つで育てられ、俗世から切り離されて少年時代を過ごした。
咒旬瘖は、息子を「天が授けた音楽の天使」と称し、その声を「剣」として、厳しい鍛錬……というより、凄まじい虐待を加えていた。
歌の練習中、ミスをして叩かれるのは日常茶飯事で、目隠ししながらの剣術の訓練を幼いうちから強いられ、浪巫謠自身はそれを「母の愛」だと信じ込んでいた。
そんな中で、彼は自分にだけ聞こえる「言霊」に悩まされる。言霊は、咒旬瘖の「教育」を非難していたのだ。

そしてある日、彼の喉に不調が訪れ、気づいた時には声が低くなっていた。いわゆる「変声期」である。
しかし、その声を聞いた咒旬瘖は「物の怪」と恐怖し、混乱するうちに逃げ惑い、崖から落下し死亡。
結局、天涯孤独となった彼は、母の遺した琵琶を手に、下界に降りなければならなくなった。

街に出た浪巫謠は、立ち寄った酒楼にて代金代わりに歌を唄い、好評を得たので正式に雇われることとなる。
彼の歌は瞬く間に西幽中の噂となり、酒楼には多くの人が押し寄せた。
そんなある日、彼は同じく楽士の睦天命と出会い、彼女と合奏をするうちに心を通わせる。彼女は、「あの店にいたらいずれ酷いことになる」と忠告した。

そして、酒楼は嘯狂狷率いる宮廷の刑部の強制摘発の対象となり、その原因である魔性の声の持ち主だった浪巫謠は逮捕されてしまう。
嘯狂狷は、浪巫謠に恩赦の代わりに宮廷直属の楽士になるよう強要。浪巫謠はそれに従うほかなかった。

宮廷で、彼は皇女・嘲風の悪辣な趣向*1の下で演奏することになるが、それが嘲風の心を掴み、「私の鶯」として大のお気に入りとなり、優れた楽士に贈られる「天籟吟者」の称号を得る。
しかし、嘲風の凄まじい執念と、それに伴う悪辣な行いから、彼の心が安らぐことはなかった。
とはいえ、彼女の想いが愛から発するものであるため、彼女を全否定できずにいた。

だがある日、挑戦者として現れた睦天命と再会し、彼女と演奏合戦をするが、その際に鳳㬢宮が、巷を騒がせる剣ばかりを狙う盗賊「啖劍太歳」の強襲を受け、宮廷で保管された神誨魔械が奪われる事件が発生。
そして、混乱に乗じて睦天命は逃亡し、浪巫謠は彼女の後を追って宮廷を脱走した。

睦天命を問い詰めるうちに、彼女は啖劍太歳こと殤不患の仲間であると判明。
そのまま成り行きで彼らに同行し、彼らが「神誨魔械を悪用する神蝗盟や皇室の野望を阻止するため、それらを回収し、安全に管理する」ことを目的とした義賊であると知る。
西幽皇室の暗部を知り、世界の不条理に苦悩した彼は全てが空しくなるが、睦天命から「あなたのお母様は人の手という柄を与えようとした。それを成し遂げたのは人としてのあなた自身」と励まされる。

そうして、彼は自分の心の声に従い、「世界の邪悪を断つため、自分の声を使う」と決意。
殤不患や睦天命と共に戦い、皇室と敵対を表明する。それを受け、言霊である「聆牙」は琵琶にその命を宿し、彼の相棒として誕生するのだった。

殤不患達と一蓮托生として戦いに身を投じた浪巫謠だったが、宿敵・神蝗盟の猊下である禍世螟蝗との戦いが、彼らの運命を狂わせてしまう。



活躍


本編前


禍世螟蝗相手に殤不患、睦天命と共に戦うもまるで歯が立たず、最終的に睦天命は目を潰され失明。
そのまま逃げ帰るほかなく、睦天命は戦線を離脱してしまう。
それ以来、殤不患は逃げるように彼らの下を去り、東離へと渡ってしまった。
浪巫謠は殤不患の出奔を嘆き、彼を連れ戻すために東離へと向かう。


第2期


仙鎮城に魔剣目録を預けて帰ろうとした殤不患と久々に再会する。
彼に、蝕心毒姫こと蠍瓔珞が東離に来たと警告し、仙鎮城へと戻らせ、魔剣目録を奪いに来た蠍瓔珞と対峙し、殤不患の助力をした。

その後はしばらく殤不患と行動を共にし、彼が蠍瓔珞の毒に侵された時は付き切りで看病をした。
そんな中、殤不患の負傷を聞いて手助けに来た凜雪鴉と対面するが、彼の持ち前の悪性を直感で察知し、彼に対しては最大級に警戒した。
解毒剤の材料として鬼歿之地にて竜の歿王の角を取るために凜雪鴉と協力するも、彼からはいいように利用されて不信感は強まる一方。
角を取り終えたら、速攻で敵対し、彼を「殤不患のためにならない」「世に災いをなす」と判断し、殺そうとするも、寸前で逃げられる。*2

そして、凜雪鴉から聞いた解毒剤の調合方法を使って解毒剤を作り、蠍瓔珞と嘯狂狷に追い詰められていた殤不患に渡して彼を回復させた。
混戦によって蠍瓔珞は逃亡し、殤不患と共に蠍瓔珞の後を追うが、そこで諦空と遭遇。
諦空の本質を邪悪と見抜き、彼を攻撃したが、「まだ悪事を働いたわけじゃない」と殤不患が庇い、結果彼と対立してしまう。

その後、嘯狂狷の動きを知った殤不患と共に蠍瓔珞の元へと向かうが、彼女は魔剣・七殺天凌を使用し、殺戮の限りを尽くす。
蠍瓔珞の逃走と凜雪鴉の横槍によりその場は有耶無耶となったが、浪巫謠は嘯狂狷の抹殺を優先しようとするも、殤不患に止められ、彼を「弱腰」だと非難。これ以降、彼は単独で行動をし始める。

七殺天凌で一般市民を殺戮していた蠍瓔珞の前に現れ、魅了対策として目をつぶったまま戦い、彼女らを圧倒するも、嘯狂狷と凜雪鴉の邪魔が入り、結局逃げられてしまう。
蠍瓔珞を追ううちに、彼女が諦空こと婁震戒に殺され、七殺天凌が奪われたことを知り、彼女を埋葬するが、これを殤不患の甘さが招いたことだと判断した浪巫謠は彼を非難し、「七殺天凌は自分が倒す」と宣言し、決別してしまった。
それらは全て、殤不患の重荷を全て自分が背負うためでもあった。

仙鎮城で婁震戒と相対した彼は、蠍瓔珞の時と同様、目をつぶったまま戦うが、婁震戒の「石を地面に投げて聴覚を撹乱する」戦法により苦戦し、負傷してしまう。
危うく命を落としかけたが、凜雪鴉の八つ当たりによりなんとか命を取り留めた。

その後も単独行動をし続ける中で、喪月之夜を使用し傀儡の軍勢を引き連れた嘯狂狷と遭遇する。
早速彼を倒そうとしたが、傀儡を殺さず気絶させようとする中で嘯狂狷から喪月之夜を渡され、上手く扱えない弱点を突かれ、容赦なく傀儡達を殺していく嘯狂狷から彼らを逃そうとし、徐々に追い詰められていく。
婁震戒から負わされた傷により動けなくなり、殺されかけたが、寸前で駆けつけた殤不患に助けられた。

そのまま凜雪鴉とも合流し、七殺天凌を持った婁震戒との最終決戦に挑む。
決戦では凜雪鴉の幻術との合わせ技で婁震戒を撹乱し、傀儡となった殤不患に喪月之夜を刺す役割を果たした。

その後、東離に残って神誨魔械を巡る戦いに身を投じる殤不患と行動を共にする決意をする。



第3期


魔脊山の谷底に落ちた婁震戒と七殺天凌の捜索のため、殤不患、凜雪鴉、捲殘雲とチームを組む。
捜索する中で、刑亥が作った無界閣に入り込み、彼女や異飄渺ら神蝗盟と戦闘になる。
そして、捲殘雲が逢魔漏に触ったことで空間転移することになり、やがて西幽の鳳㬢宮に思いがけず戻ってきてしまう。
そこで嘲風と再会し、彼女から愛執の想いを寄せられるが、油断により彼女に刺され重傷を負ってしまった。

その後はまともに動けなくなるも、殤不患の提案で、捲殘雲と聆牙が天工詭匠(と睦天命)の隠れ家に薬をもらいに行き、天工詭匠が作った薬でなんとか回復した。
この時、睦天命に会いに行かなかった殤不患を責めており、浪巫謠もまた、禍世螟蝗との戦いで睦天命を負傷させてしまったことで自分を責めていることが発覚する。

そんな中で無界閣に戻った際、神蝗盟に潜入した凜雪鴉からの情報で、「刑亥が七殺天凌と組んで過去へと飛び、照君臨を復活させようとしている」と知る。
逢魔漏を使えば過去への跳躍が可能と知ると、浪巫謠は「過去を変えれば睦天命を助けられる」という願望に取り憑かれる。
それは殤不患により否定されるが、一度刑亥が作った「時間跳躍できる逢魔漏」を手にした時、持ち去ろうとするほど彼は混乱してしまった。

その経過で彼は殤不患と共に魔界に転移されるが、その時響かせた歌が、ある人物の心を動かしたとは、彼は知る由もなかった。

やがて、逢魔漏の欠片を手にした彼は、ローブで顔を隠した謎の人物の手により、殤不患と共に時間の回廊へと送られてしまう。
その果てに、彼は睦天命の負傷の時間へと送られるが、同時に謎の人物から、「睦天命を助けると殤不患が東離に行かなくなり、結果、妖荼黎が復活して世界が滅びる」という因果を知らされ、絶望。
過去の改変を誘惑する謎の人物の手を振り払い、彼は睦天命の運命を受け入れるほかなかった。

そして彼は、更に過去へと飛ばされ、自分の本当の運命を思い知る……。




出生の秘密





ああ。そうとも。我が名は阿爾貝盧法。

改めて、ここに巡り会った運命を祝おうぞ。浪巫謠、我が息子よ……。




浪巫謠を過去へと飛ばした謎の人物の正体、それは魔宮第八位の魔宮貴族・阿爾貝盧法。
時空間を自在に行き来できる彼は、「過去の改変」の行く末を彼に見せつけることで彼の苦悩を弄んでいた。
そして、彼こそは、浪巫謠の実の父親でもあった。

西幽の皇女だった咒旬瘖こと聆莫言を誑かし、その果てに彼女の目を潰し、人生を奪った元凶は自分だと、阿爾貝盧法は暴露する。
かつて穏やかな性格だった聆莫言は、愛する者に裏切られ、皇室を追放された復讐に身を焦がし、息子を道具としか見做せなくなったのだ。
激昂する浪巫謠だったが、阿爾貝盧法はその怒りと憎しみすらも嘲笑い、「次に会う時はこの手で抱きしめてやりたい」と思ってもみないことを言いながら消え、彼を元の時代に送り返す。
真の邪悪を知った浪巫謠は怒りに震え、ある決意を固めるのだった。

なお阿爾貝盧法は、この時過去の改変を拒んだ息子を見て、「万事が思い通りで虚しい人生に生まれた初めての希望」と見做し、彼に執着するようになる。

照君臨率いる魔族との戦いに参加し、終わった後も、彼は平静を保ち続けていたが、殤不患が無界閣の入り口を塞ぐ際に、彼は一同から離れ、無界閣の奥へと消えてしまう。
そうして彼が行き着いたのは、父・阿爾貝盧法と刑亥のいる魔界への門だった。

彼は誓う。自分と母の運命を弄んだ阿爾貝盧法に復讐すると。そのためには、魔族として生きることも辞さないと。

友と決別した彼は、魔界への門を潜っていくのだった。




魔道の果て


阿爾貝盧法に連れられて魔界に入った浪巫謠は、早速、最初の試練として魔獣「悍狡」を倒すよう命じられる。
魔界の瘴気で思うように動けず、最初は苦戦するが、怒りと執念によって魔族の血が目覚め、悍狡を素手で殴り殺すほどの実力を発揮する。

更に、その悍狡の棲家は、魔宮第七位の迦麗の狩場であり、怒った彼女から挑戦を受ける。
魔宮貴族の実力に当初は劣勢となるが、今度は魔性の声を解放させて迦麗の耳を潰し、その上で彼女に打ち勝ち、魔宮印章を得る。

また、阿爾貝盧法の屋敷に殴り込もうとして丁度来ていた凜雪鴉の幻術の力も借りるも、屋敷には誰もおらず、神蝗盟の花無蹤と戦うだけで終わった。

心身ともに疲れ果て、聆牙から地上に戻ろうと説得されるも、彼は「もう帰る場所はない」と悲嘆にくれ、諦めかけていた。
そこへ阿爾貝盧法を邪魔に思う魔宮第四位の安索亞特が現れ、「新たな成長を促す」と唆され、彼の差し出した薬を飲む。
薬を飲んだ彼は口から糸を吐き出して繭に包まれ、中で安索亞特の魔術による悪夢を見せられ苦しむが、そうこうしているうちに安索亞特は魔宮第二位の休德里安により殺される。
しかし、そこへ繭を打ち破り、魔族へと覚醒した浪巫謠が現れ、完全な魔族の力で休德里安を圧倒し、殺害した。

再び繭に包まれるが、現れた阿爾貝盧法によって彼は魔宮へと連れて行かれ、集めた魔宮印章を使い、魔神の器として利用されることとなる。

咒旬瘖に愛の抱擁を受ける夢を見ながら、彼は眠りにつくのだった。









余談


  • 元々、第1期の主題歌を担当した西川貴教氏が出演することになり、彼の当て書きとして生まれたキャラクター。しかし、回を重ねるごとに重要な設定が付与され、シリーズの主人公の一人に出世した。


  • 凜雪鴉や殤不患が「悩まない主人公」であるためか、必然的に「苦悩する主人公」として描かれ、シリーズの「曇らせ要素」を一挙に引き受ける身となってしまった。








最早人の荒らしなど知らぬ。信じるは、己の追記・修正のみ!

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最終更新:2025年02月08日 07:10

*1 兵士に殺されそうになる中で演奏を続けろというもの。彼の他に生き残った者はほぼいなかった。

*2 ちなみに凜雪鴉はこの件について「道理や筋道を無視するなど獣より質が悪い」と呆れている。彼の口から言えたものではない。