DUNE/デューン 砂の惑星

登録日:2025/02/06 Thu 02:26:51
更新日:2025/02/16 Sun 19:03:59
所要時間:約 35 分で読めます





全宇宙から命を狙われる
ひとりの青年に、
未来は託された━━。



宇宙の未来を賭けた
復讐戦。





DUNE

『DUNE/デューン 砂の惑星(原題:DUNE/DUNE:Part One)』は、2021年9月から公開された米国のSF映画。
アーサー・C・クラークやロバート・A・ハインラインといったSF小説界の巨匠に絶賛され、『STARWARS』や『風の谷のナウシカ』の誕生にも影響を与えたと言われる、フランク・ハーバート原作の叙事詩的大河SF小説の、現代のVFXを駆使しての実写映像化作品である。

尚、製作は米国なのだが、Part1は公開当時の新型コロナ禍に伴う影響からか、北米地域よりも欧州と日本での公開の方が先になった。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品。
主演はティモシー・シャラメ。
他の共演者はレベッカ・ファーガソン、ゼンデイヤ、ジョシュ・ブローリン、ジェイソン・モモア、オスカー・アイザック、ステラン・スカルスガルド、デイヴ・バウティスタ、オースティン・バトラー、ハビエル・バルデム、シャーロット・ランプリング、フローレンス・ピュー…etc,

壮大な原作のボリュームもあってか、当初の構想では別にシリーズ化されるとは発表されていなかったものの、ヴィルヌーヴ監督は「原作のボリュームを考えたら二部作は必要」と明言。
実際に、Part1として公開された映画は原作小説の前半部分で終了してしまっていたものの、コロナ禍で苦戦しつつもヒット作となり続編企画がスタート。
2024年3月に続編にして一先ずの完結編となる『デューン 砂の惑星 PART2(原題:DUNE Part Two)』が公開された。

尚、Part2までで1984年公開のデヴィッド・リンチ版『砂の惑星』と等しい部分までのシナリオは消化されているのだが、ヴィルヌーヴ版は原作同様にここで全ての戦いが終わったとはしておらず、映画のヒットを受けてか、現在は3作目となる続編『Dune: Messiah』の製作が発表されている。
また、ヴィルヌーヴ版の世界観を元にした前日譚が描かれることが予告されていたが、2024年11月に『デューン 預言(原題:DUNE PROPHECY)』のタイトルで全6話のドラマシリーズとして早くも公開された。

この前日譚は、リンチ版とヴィルヌーヴ版が元にしているフランク・ハーバートのオリジナル版ではなく、
フランク・ハーバートの死後に、彼の遺した創作メモを元に実息のブライアン・ハーバートと作家のケヴィン・J・アンダーソンが手を組んで執筆している、過去を題材とした新シリーズ『DUNE』の一つである『SISTERHOOD OF DUNE』を元にしており、
ヴィルヌーヴ版がリンチ版の当時よりさらに広がりを見せていた原作小説の世界観の映像化に挑もうとしている企画なのが解る。
ドラマでは、映画本編に於いて暗躍するとともに邪悪さを感じる集団として描写されていたベネ・ゲセリット教団が誕生するまでの経緯を描いている。
ドラマ版の監督はアンナ・J・フォースター。

本項目では、現時点で公開されているヴィルヌーヴ版の映画本編の内、前後編となるPart2までの情報を纏めて紹介する。


【概要】

1965年に発表されたフランク・ハーバートの叙事詩的長編SF大作の5度目の映像化作品。
……というよりは、デヴィッド・リンチの手掛けた『砂の惑星』以来の2度目の映画化作品という認識で構わないだろう。

というわけで映画版『砂の惑星』と云えば、長らく悪い意味で有名な世界的な大コケ映画として記憶されたリンチ版『砂の惑星』があった訳だが、
現在ではあまりにも強烈な個性からカルト映画として再評価されるようになっていたリンチ版の存在からも悪い意味と良い意味の両面から不安がられていた部分もあったものの、
ヴィルヌーヴ監督らしい原作の悲劇性を盛り込んだ正統派で丁寧な作り込みと期待通りのスケール感で世界的な評価を得た。
ぶっちゃけ、Part1の時点では堅実な分だけ地味な印象があり、とにかく個性的なリンチ版に比べて物足りないとの声も挙がっていた。どうして“モジュール”*1出さなかったんだよぉ!アレさえあれば完璧なのに!!……というマニアが嘆いているような感じのがジョーク的なものを含めても殆どだが(笑)
しかし、いよいよと物語が大きく動き出すクライマックス部分が描かれるPart2が公開されると、流石にリンチ版ではあっさりと流され過ぎていた重要シーンがじっくりと描かれたことにより大きな賞賛を受けると共にコロナ禍から抜け出していたこともあってかPart1を遥かに上回る世界的な大ヒットを記録。
数々の著名人や専門誌からも称賛を受けた。
2作を合わせて3億ドル以上もの製作費がかけられているが、世界的な興行収入は製作費を余裕で上回っている程。

同じシナリオを2時間程度にまとめられてしまったリンチ版に対して、時代の変化で映画の上映方式と売り方が変化して本編の上映時間が2時間どころか3時間近い映画が増加した現代に制作されたヴィルヌーヴ版は、Part1とPart2を合わせて約5時間20分程のボリュームになっている。
とはいえ、今から鑑賞するのならば絶対に続けて観るべし。


【主な設定・用語解説】

※ヴィルヌーヴ版では目立たないか無視されているが、原作・リンチ版では言及されている要素も含む。

■アラキス/デューン

物語の主な舞台であり、タイトルともなっているカノープスの第3惑星のこと。
現地人には「砂丘(デューン)」と呼ばれており、その名のように地表には一滴の雨すらも降ることがなく、原作に於いては“肉を骨から剥がし巨大な宇宙船すら破壊する”と説明される大嵐も吹き荒れている━━という人類の生存環境としては極めて厳しくも美しい砂漠の惑星。
衛星として、2つの月が浮かんでいる。
かつては、大規模なテラフォーミングにより豊かな自然のある惑星に変えるという計画もあったのだが、吸引した者に絶大な効果を齎す香料(スパイス)“メランジ”が全宇宙で只の一か所━━アラキスの砂漠でのみ採取できることが知れ渡ったことから、現地人の願いを無視して乾いた砂漠の星として放置されることになった。
更に、その後は銀河帝国の指揮の下で代々の外からやって来た為政者により現地人は奴隷のように扱われつつメランジの採掘に従事させられている。
また、砂漠の奥地には“フレメン”と呼ばれる、現地人の中でも特に砂漠の生活に特化した民族が隠れ住んでいるのだが、彼等は為政者と基本的に接触しようとしないばかりかゲリラ的な活動すら起こしてメランジの採掘の阻止をしようとするなど、帝国と敵対している。
そして、砂漠の地表部分には基本的には僅かな生物や植物が存在するのみなのだが、広大な砂の下には“砂虫(サンドウォーム)”と呼ばれる危険で強大な体節生物が生息している。
劇中ではハルコンネン男爵家からアトレイデス公爵家に支配権が移動しているが、これ自体が皇帝その人の思惑も含む邪な企みの実行の契機であった。

砂虫(サンドワーム)産砂(うぶすな)/シャイ・フルード

アラキスの砂漠に潜む、砂漠の生態系の頂点に立つ巨大な体節生物。
最小の幼体でも数メートル、歳を重ねて巨大化した長老級に至っては数百メートルもの巨体を誇る驚異的な生命体。
更には、巨体に見合った圧倒的な破壊力と生命力をも誇っており、大きなものは人間が使う程度の兵器では通用しない程である。
目の類は無く、長大な体に大きな口がぽっかりと空いているだけという見た目なのだが、その口内にはヤツメウナギか粉砕機を思わせる形状の無数の鋭い牙が体内に向けてひしめき合っており、
その大きな口で、全翼機だろうが巨大なスパイス採掘用の重機だろうが呑み込めるものならば何でも呑み込んで破壊してしまう。
目が無い替わりに非常に音に敏感であり、その音に反応して獲物を捉えている。
特に、規則的な音(獲物の足音)に引き寄せられる(感知する)習性を持つために、メランジの採掘現場は常に砂虫の襲撃に怯えなくてはならないという極めて危険な環境に晒されており、常日頃から警戒されている大型の物が出現した場合には採掘現場そのものが壊滅させられることもある。
砂漠と共に生きるフレメンからは“シャイ・フルード”と呼ばれて畏れられると共に崇拝されており、彼等の使用する武器であり神聖な道具であるクリスナイフは砂虫の牙である。
また、フレメン達の“砂漠の教母”が知識を継承するための秘儀に使用する“命の水”の正体もまた、毒性のある砂虫の体液である。
フレメンには砂虫を手なづけて乗りこなすという技術が伝えられおり、砂虫を乗りこなす者は勇者として認められる。
ポールは、自身の挑戦の際に長老級の巨大なウォームを呼び寄せて乗りこなして預言を成就させ、さらに“クイサッツ・ハデラック”として覚醒した後には、多数の巨大ウォームを従えて大嵐と共に戦力とした。
実は、砂虫はメランジの精製とアラキスの乾燥に深い関わりを持つ。
ヴィルヌーヴ版では円筒形の体に口だけが開いているというシンプルな外見だったが、リンチ版では頭部が細長く口が開く時には三つ股に展開するという造形がインパクト大で、その後の“このテのモンスター”のデザインに大きな影響を与えたことで知られる。

■メランジ

作中においても最も重要視されている極めて特殊な“香料(スパイス)”━━。
要は、強力な作用を持つ麻薬のようなものなのだが其の効果が凄まじく、抗老化を目的に流通しているが資質のある者には超能力の発現すら引き起こし、未来を見せて宇宙と空間すら折り曲げて移動(テレポート)することすら出来るようになる。
超常の力を柱とするベネ・ゲセリット教団やスペースギルドにとっても、自分達の存在と地位を維持するためにも必要不可欠な物資であり、その精製が止められることは死活問題となるために、銀河帝国への働きかけはもちろんのこと、アラキスの独立やテラフォーミング、クイサッツ・ハデラックの誕生は重大な懸念事案であった。
前述のように全宇宙でもアラキスの砂漠でしか採掘されることがなく、その秘密が砂虫にあることを知るのが物語に於ける重要な要素となっている。

■銀河帝国

一万年以上もの長きに渡り宇宙を支配する人類の統一政体。
皇家(大王皇帝家)を筆頭として、恒星系か惑星を統治する公家(貴族階級)による統治が敷かれるという封建的な階級社会となっている。 

■コリノ皇家

銀河帝国を支配する皇家だが、その地位は狂信的な近衛兵団(親衛隊)であるサーダカーの圧倒的な武力により維持されている面もある。
ハルコンネンからアトレイデスへの攻撃の際には、裏取引としてサーダカーも手を貸しており、その事実が明るみに出ることは現皇帝シャッダム4世にとっても命取りになる程のスキャンダルである。

■領主連合(大公家連合)

帝国内の有力な公家の当主達によって構成されている。
名目上は皇家の下位に位置するが、帝国でも有力な公家の合同会派ともあってか、その存在は皇帝ですら無視することが出来ず、また公家の中には皇帝の地位を狙う領主もいるために決して油断のならない力関係にある。
また、領主達は万が一に他の公家に攻撃された場合の為に大量の核兵器による自動報復装置を等しく備えている。
物語開始当初のアトレイデス家当主のレト公爵は、この領主連合にて圧倒的な人気と支持を受けていたことから皇帝の不興を買い謀殺されるのみならず一族郎党が皆殺しとされることになった。


■アトレイデス公爵家

主人公のポールが生まれた、帝国でも有力な大公家(ハウスメジャー)
本来の支配地域は豊かな海に囲まれた水の惑星カラダンだが、ハルコンネンに代わってアラキスの統治を命じられて一族郎党で移住してきた。
正義と高潔さを持った血統としても知られ、ハルコンネンとは永い確執の歴史を持つ。
レト公爵の下に送られたベネ・ゲセリットのレディ・ジェシカが言いつけに逆らって男児(ポール)を生んだことで大きな運命の発端の火種となる。

■ハルコンネン男爵家

古くから存在する有力な公家だが悪徳と暴虐で知られ、忌み嫌われると共に恐れられている。
本来の支配地域は惑星ジエディ・プライムだが、近い距離にあるアラキスも皇帝の命で準領土として与えられ、メランジの採掘と精製の指揮を執っていた。
しかし、その統治は圧政そのものであり、
現地住民や労働階級を奴隷のように扱い、抵抗するフレメンを害獣の如く駆除するものであったので、外界から来る人間に対する深い禍根と疑念をアラキスの人間に残すことになった。
リンチ版では、奴隷の身に至るまで強制的な肉体改造を施す狂気的な一族として描き、
ヴィルヌーヴ版では、末端までの全員が頭髪を剃り落として黒い衣に身を包むという、独裁国家を思わせる徹底した統率を重んじる一族として描いている。
実は、現当主ウラディミールは自らか後継者が皇位に就くことを目論んでいるものの、コリノ皇家とは初代が皇位に就く以前からの盟友にして皇位に就くことを後押ししてきた関係にあり、永らく帝国の謀略面を担当してきた。
アトレイデス家とは永い確執の歴史があり、現皇帝の思惑もあってか遂に攻め滅ぼすことになった……と思われていたのだが。

■ベネ・ゲセリット

一万年前のブトレリアン・ジハド(思考機械(AI)と人類との戦争)を機に誕生した、女性でのみ構成された秘密結社(女子修道会)。
メンバーとなるには修道会に通い、師となるベネ・ゲセリットから教えを学ぶ必要がある。
機械との聖戦を制し、テクノロジーから思考機械(人工知能)を捨てる替わりに、後の人類に共通して紡がれることになった特異な精神文明の究極の姿である、超人“クイサッツ・ハデラック”の誕生を目指しているが、
その理想は一万年間の中で繰り返されてきた幾度もの失敗と、教団自体が何時しか自分達の優位性の維持を第一と考えるようになった為に当初の方向性からは大きく違えている。
メンバーはメランジの吸引を伴う特殊な訓練により超能力とも呼べる特異な知覚力(テレパシーなど)と驚嘆すべき身体能力をも有し、特に“ボイス”と呼ばれる他者を瞬間的に支配してしまう術などから“魔女”として恐れられている。
ベネ・ゲセリットは皇帝家や公家にメンバーを相談役として送り込むと共に、場合によっては肉体を差し出させて公家の血統を得ることまでをしており、恐るべき執拗さと狡猾さで永年に渡り銀河帝国の行く末をコントロールしてきたと誇りを以て自負する程に認識が歪んでいる。
事実“、救世主とも呼ばれる“クイサッツ・ハデラック”は男からしか生まれないと理解しているにも関わらず、現在の教団はメンバーに女児しか産むことを許していない=教団の維持にしか目的を向けていない。
ドラマシリーズ『デューン 預言』では、教団の誕生が描かれており、ハルコンネン家に連なる策謀を操る姉妹により拓かれたことが描かれている。

■教母

命を脅かす程の多量のメランジを吸引する秘儀(香料苦悶(メランジ・アゴニー))を乗り越えたメンバーのみが到達できる上級ベネ・ゲセリットのこと。
謂わば、ベネ・ゲセリットの中枢であり、現在の指導者はガイウス・ヘレネ・モヒアム。
母系の先祖の記憶をそっくりと引き継ぐが、それが後代での教団の硬直化を招く原因となっていた面も否めない。
尚、女では如何に深奥まで潜ろうとも到達できない領域があルト語られており、その深奥は“クイサッツ・ハデラック”となる男ならば覗き見ることが出来るとも伝えられている。

クイサッツ・ハデラック(道の短縮)

ベネ・ゲセリット教団が結成以来の誕生を目指している“超人”のこと。
誕生のさせ方自体は“教母”と同じ方法なのだが、母系の記憶のみを継承する“教母”に対して、父系と母系の両方の記憶=人類凡ての記憶を継承するとされ、その超能力は時間と空間をも折り曲げる(短縮させる)とすらされる現人神である。
ベネ・ゲセリットでは持てない父系の記憶という要素からも解るように“超人”と成り得るのは男のみなのだが、過去には如何に準備しようとも儀式に挑んだ男達は全員が死んでしまったことから、教団としても殆ど誕生を諦める境地に至り、替わりに自分達の威勢と優位性を保つという目的のために動くようになっていた。

■宇宙協会(スペースギルド/スペーシングギルド)

ベネ・ゲセリットとはまた別の形で、メランジの過剰な摂取により特異な超能力を得た者達により築かれた勢力。
その中枢となるのは“航宙士(ナビゲーター)”と呼ばれる、メランジを燃やした煙の中に長期間に渡り身を晒すことで人としての形すら無くした悍ましいミュータントである。
前述のように、この世界では思考機械(人工知能)の技術が一万年前の聖戦を経て捨てられているために、広大な宇宙を航行するためにはギルドの“航海士”の超能力を利用した、空間と時間を超越した予測が必要不可欠となる。
それ故にスペースギルドの権力は皇帝すらも凌ぎ、その地位の維持の為にもメランジが必要不可欠となるためにメランジの精製を止める可能性のある要素━━特に、特異な姿となるまでにメランジを必要としないのに自分達の域を越える力を持つ“クイサッツ・ハデラック”の誕生と、その可能性を持つポールを恐れる。
リンチ版ではしっかりとその存在と目的が語られていたが、ヴィルヌーヴ版では復讐戦に絞って物語を描いていたためか、ギルドの存在に言及されるに留まった。

■フレメン

砂漠の民。
アラキスの現地住民の中でも敢えて砂漠の奥深くに住み、砂虫ことシャイイ・フルードを信仰する謎多い種族。
その実態は、長年に渡りアラキスに圧政を敷き、フレメンを弾圧して“ネズミ”と呼んできたハルコンネンですら把握していなかった程。
一人一人が戦士であることに誇りを持ち、彼等が戦士の証として持つ“クリスナイフ”とはシャイ・フルードの牙から作られる神聖な武器である。
アラキスの地表と大気に含まれるメランジの影響から瞳の色が白目をも含めて青く輝いているのが特徴。
砂漠では水を何よりも大切にすることから、その貴重な水分を体内に出す“唾を吐く”行為が最も礼儀を重んじた挨拶であるなど、他の自然の豊かな星からやって来た人間から見ると奇異な文化も持つ。

■砂漠の教母

フレメン達がベネ・ゲセリットの教えを伝授された後に一族の行く末を見る存在として据えるようになった、予知能力などを備えた女性のこと。
奇しくも、アラキスの大気と砂には“メランジ”が含まれていることから自然発生的に誕生した、ベネ・ゲセリットの“教母”と等しい存在である。
教えを元に、フレメンの“砂漠の教母”もまた“命の水”を用いて後継者に記憶の引き継ぎを行ってきた。

リサーン・アル=ガイブ(外界からの声)

ベネ・ゲセリットの教えを伝えられた後のフレメン達が、長年に渡り到来を待ち構えている救世主。
前述の“クイサッツ・ハデラック”とは別の概念の存在なのだが、ポールは両方の伝説を叶える存在として預言を叶えていき、リサーン・アル=ガイブにしてクイサッツ・ハデラックとなる。

■シールド

この世界では“シールド”と呼ばれるバリアー技術が発展しており、最大では居住区レベル、最小では個人レベルで強固な防御壁を展開させることが出来るようになっている。
しかし、バリアーにも弱点はあり、その弱点とは瞬間的な速い攻撃は弾くが、じっくりと時間をかけて侵入させる動きについては防御を突破されてしまうということ。
なので、ミサイルやレーザーといった重火器類で攻撃される大きな物を守る場合には強いが、ナイフを以て行う個人での戦いのように小さな物を守っている場合には、手練れ程にその隙を突いてくる可能性があることは留意せねばならない。
なお、張ってしまえば自分達の攻撃も弾かれるので反撃をする際にはいちいち解かねばならなかったり、強固である分だけ劇中のよう一部が破られたり、隙が生じた場合には一転して無防備になってしまうことになる。

■スティルスーツ

過酷なアラキスで用いられている、砂漠での生存に必要不可欠な高性能な生命維持用の全身スーツ。
自身の汗や小便、その他の排出された水分を濾過・蒸留して蓄えて再利用することが出来る。

【物語】

※以下はネタバレ含む。

人類が恒星間を跨ぐ銀河帝国を築いてから1万と191年━━。

銀河皇帝シャッダム4世は、息子のように愛していたはずの公爵を謀殺することを決意。
元々の領地である惑星カラダンに替わり、宇宙で最も重要視されるスパイスである“メランジ”が採れる唯一の惑星━━砂漠の惑星アラキスの統治を命じた。

しかし、それは皇帝その人の━━そして、銀河帝国の行く末を陰から操らんとするベネ・ゲセリット教団の企ての始まりだった。
元々、アラキスを統治していたのはアトレイデス家と因縁のあるハルコンネン家。
アラキスの統治=メランジ採掘による利権を奪われて息り立つ家臣をハルコンネン男爵は静かに諌めるが、邪悪さで知られる男爵の意外なまでの余裕は、皇帝とベネ・ゲセリットによるアトレイデスへの侵攻の手筈を整えられていたが故の余裕からであった。

しかし、レト公爵さえ始末できればいいと考えている皇帝と男爵とは違い、ベネ・ゲセリットにはアトレイデスを滅ぼす決定をしつつも生き残って貰わねばならない2人の人間が居た。
一人はレディ・ジェシカ……元々はベネ・ゲセリットの一員ながら教団に背きアトレイデスの跡取りとなる男児を生んだ公爵の愛妾。
そして、もう一人がそのアトレイデスの王子であるポール。
男子でありながらベネ・ゲセリットとしての素養を持つ、忌まわしき禁断の子。

……そう、ポール・アトレイデス━━彼こそは、レト公爵とベネ・ゲセリット教団に背信したレディ・ジェシカの間に生まれた禁断の息子であり、超人“クイサッツ・ハデラック”となる可能性を秘める青年。

そして、ポールのアラキスへの到着により、もう一つの伝説もまた目を覚まそうとしていた。
それは、砂漠の民フレメン達に伝わる救世主の伝説。
外界からやって来る、生まれた時より砂漠の民としての資質を秘め砂漠に緑を取り戻す“リサーン・アル=ガイブ”の到来の伝説。

邪なる皇帝の援護を受けてハルコネンは確かにレト公爵を殺してアトレイデスを滅ぼすが、その横暴を焚き付けたベネ・ゲセリットの思惑によりポールとジェシカは生きたまま砂漠へと放り出される。

しかし、その状況の中でも僅かな助けと導きによりフレメンに助けられる中でポールは戦士に、ジェシカは“砂漠の教母”の智慧を引き継ぐ道を選ぶ。
そして、その中で“命の水”で運命を見たジェシカは、ポールを生き残らせるために本当に息子をフレメンの言う“リサーン・アル=ガイブ”に……そして、自分達ベネ・ゲセリットが望みながらも誕生を畏れてきた“クイサッツ・ハデラック”とする道を選ぶ。

フレメンの戦士としての腕を磨く中で、恋人となったフレメンの娘チャニへの愛情もあってか、他でもない己かわ争いに来る以前より垣間見てきた予知夢を否定してまでベネ・ゲセリットである母の導きを受け入れようとしなかったポールだったが、謙虚であろうとしてもポールが新たに得た名である“ムアドディブ”の下にフレメンは団結を強め、
やがてはその影響力はハルコンネンを脅かすまでになってゆく。
自分は本当に“救世主”の役目を請け負うべきなのか……ポールはなおも躊躇しチャニも止めるが、戦争の激化と共に、その期待は高まり続けていた。

答えは、大嵐に閉ざされたアラキスの南に━━。

遂に、決意したポールは“命の水”を飲み、
母が、どうしてアトレイデスに嫁がされたか(●●●●●●)の理由を知る。
それは、ジェシカすらも知らなかったベネ・ゲセリットの企んだ血統の操作の証拠。

凡てを悟ったポールは、遂に自らが“リサーン・アル=ガイブ”であると宣言。
不安がるチャニを残し、フレメンの全勢力をまとめ上げるとハルコネンを打倒して皇帝その人をも自身の目の前に引き摺り出さんとするのであった。

━━果たして、銀河の命運を握る戦いと救世主伝説の行方とは。

【主要登場人物】


《アトレイデス公爵家》

■ポール・アトレイデス/“ウースル”ポール・ムアドディブ

演:ティモシー・シャラメ/吹替:入野自由
本作の主人公。
アトレイデス家の跡取りとなる王子。
レト公爵とベネ・ゲセリットとして派遣された愛妾・レディ・ジェシカの間に生まれた息子。
男子でありながら女系の血筋によりのみ引き継がれてきた筈のベネ・ゲセリットとしての素養を持ち、それはアラキスに降り立つ以前より予知夢として顯れ、ジェシカからは“ボイス”の手ほどきまでも受けていた。
教母ヘレネが課した、男には耐えられない筈の試練を乗り越えたことで“クイサッツ・ハデラック”としての可能性を(ジェシカには「そうではない」「傲慢」と釘を刺していたが)見出されることになり、ジェシカと共にアトレイデスが滅びた後も生かされる判断を降されることとはなる。
しかし、直接的には殺されなかっただけでハルコネンによりジェシカと共に砂漠に捨てられるが、裏切り者となる道を選ばざるを得なかったとはいえ、最後の忠誠見せたDr.ユエの遺していた装備により生き延び、更に自らの予知夢の通りにフレメンに救われることで生き残る。
その後は、夢で見続けていたチャニと恋仲となると共に、フレメンとしての生き方と流儀を急速に学ぶ中で“ウースル(柱の礎)”として信頼を寄せられたのに伴い、フレメンとしての名である“ムアドディブ(砂漠ネズミ)”を名乗るようになる。
チャニとの関係もあってか、急速に自分を“リサーン・アル=ガイブ”としようとする母親への反発から、あくまでも一人のフレメンの戦士として生きようとするも、自分の為に狂信的に命を捧げようとする仲間までもが現れることになりポールは自らの影響力の大きさに戸惑っていく。
そして、拠点としていた北の居住区が壊滅させられたことから救世主信仰が強い南へと移らざるを得なくなり、チャニにも相談せずにジェシカが挑むようにと勧めていた“命の水”を飲む儀式に挑み、ベネ・ゲセリットにより仕組まれていた母と自分の血統の秘密を知ることになり、自ら救世主の名を利用して立ち上がることを決意する。

■レディ・ジェシカ(アトレイデス)

演:レベッカ・ファーガソン/吹替:皆川純子
ポールの母。
本作のもう一人の主人公。
元々は、アトレイデス家に送り込まれたベネ・ゲセリットの若き修道女であった。
しかし、レト公爵と本気の恋に落ちた末に、厳命されていた(次世代のベネ・ゲセリットとして使うつもりだった)女児ではなく、男児にしてアトレイデスの正統にして唯一の跡取りとなるポールを生んだことで教団の思惑に背くこととなり、現在では修道女としての強い力を維持しつつも教団からは距離を置いている。
ベネ・ゲセリットであったことから正式な婚姻関係を結ぶことはなかったものの、修道女である以上にレトの妻とポールの母であることを第一に考えていることから家臣達からも信頼されている。
フレメンの“リサーン・アル=ガイブ”の伝説に於いては聖母の存在も重要視されており、救世主の到来を自らの目で確かめにきたシャダウトより彼女のクリスナイフを受け取ることになる。
息子であるポールが“クイサッツ・ハデラック”であるか否かについては可能性を感じつつも基本的には否定していたものの、それでもポールをベネ・ゲセリットとして鍛え、予知夢のことでも相談を受けていた。
アトレイデスの落城後にポールと共に砂漠に放り出されるが、自身の力をスティルガーに示すことでフレメンに助けられる。
そして、自らの居場所を得るために新しい“砂漠の聖母”となることを受け入れて“命の水”を飲むが、その体験を経て今度はポールを真に救世主とするべく性急な行動をとるようになりポールにすら警戒されるが、それは息子を守りたいジェシカと“命の水”の影響で生まれ落ちる以前からの“教母”となったアリアの思惑に沿った行動からであった。
“命の水”を飲むことでベネ・ゲセリットにより仕組まれていた自身の出世の秘密を知るが、ポールと同様に忌まわしいその事実がジェシカにも覚悟を決めさせた可能性が高い(ポールにも“命の水”を飲むことを強要したり、当初は反対していたポールの復讐計画を救世主伝説の実現と絡めつつ事実的に認めるようになっていることから)。

■レト・アトレイデス公爵

演:オスカー・アイザック/吹替:森川智之
ポールの父。
物語の開始時点でのアトレイデス公爵。
皇帝や領主連合からの信頼も篤い徳の高さで知られる統治者だったが、それ故にベネ・ゲセリットに嫌われ、狭量な心根に漬け込まれて焚き付けられた皇帝その人の思惑もあってか謀殺されてしまうことになる。
ハルコネンの侵攻の直前に重鎮であるDr.ユエに裏切られて全く動くことが出来ない状態とされて身柄を引き渡されることになるが、朦朧とした意識の中でDr.ユエが最後の忠誠として仕込んでいた義歯の中に仕込まれた毒ガスによりハルコネン男爵と刺し違えようとしたものの、その場に居た家臣達の多数を殺すことに留まった。
また、Dr.ユエからはポールとジェシカの命のみは必ず助けると聞かされており、それを最期の希望として果てていった。

■アリア・アトレイデス

演:アニャ・テイラー・ジョイ(ノンクレジット)/吹替:花澤香菜
『PART2』で登場。
ジェシカの胎内に宿る、レト公爵の忘れ形見でポールの妹。
落城の直前までは妊娠の疑いはあるが母胎であるジェシカ自身もあやふやという状態だったのだが、ポールのみは誕生を確信していた。
そして、アリアが胎内に宿った状態でジェシカは“命の水”の儀式に挑んだ訳だが、その影響により成長が促進されると共に、アリアはこの世に生まれる以前からの“教母”となる。
リンチ版では幼いながらも誕生した姿をみせていたが、ヴィルヌーヴ版では成長が促進されたとはいえ時期的にも未だ誕生はしておらず、替わりに成長した姿でポールの夢の中に現れて“クイサッツ・ハデラック”となることを受け入れるようにと諭す。

■スフィル・ハワト

演:スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン/吹替:浦山迅
アトレイデスの重鎮の一人。
レト公爵に仕えるメンタート(人間コンピューター)

■Dr.ウェリントン・ユエ

演:チャン・チェン/吹替:津田健次郎
アトレイデスの重鎮の一人。
レト公爵に仕える御典医。
……だが、最愛の妻がハルコネンの虜となっており、その命と引き換えにアトレイデスがアラキスに移住した後の、ハルコネン侵攻のための手引きをすることを強要される。
そうして、言いつけられていた通りに居城のシールド防御の無効化とレト公爵の身柄の確保を実行するが、真に憎んでいるのはハルコネンであり、最後の忠誠としてレト公爵にはハルコネン男爵を刺し違えることの出来る仕掛けを授けつつ、ポールとジェシカが砂漠に放逐された後にも生きられるようにとスティルスーツをはじめとする装備と、何よりもハルコネンの手に渡らないためにもレト公爵の指から公爵の印章を抜き取りポールに引き継がれるようにしていた。
結局、ハルコネンの侵攻の立役者とはなったものの、既に妻が拷問の末に殺されていたとして「妻の所に行かせてやる」としてほうけなく殺されてしまうが、後の運命を考えるとDr.ユエの果たした仕事が如何に大きかったのかが解る。

■ガーニィ・ハレック

演:ジョシュ・ブローリン/吹替:大塚芳忠
アトレイデスの重鎮の一人。
レト公爵に仕える武術指南役で、ダンカンが別任務で離れることが多くなったためにポールの指導役も担うようになっていた。
何かしら感じる物があったのか、アラキスへの移転前にポールにスパルタ指導を施しつつシールド防御の弱点を伝えていた。
アトレイデスの落城後は隙を突かれた上に数の暴力で押し切られて生死不明となっていたが実は生き延びており、メランジの密輸採掘業者に身を窶しつつハルコネンへの復讐の機会を窺っていた所でフレメンの襲撃を受けた所で、そのフレメンを率いていたポールと再会することになる。
ポールと再会後は同じくフレメンに身を寄せることになるが、ポールにアトレイデス公爵として立ち上がり復讐に挑むようにと進言したことからチャニの不評を買うが、矢張り卓越した戦士としての技量と、何よりもはガーニィ自身が隠蔽に携わっていた表向きには破棄したとされていたアトレイデス家の所有する核兵器は後の反抗作戦の大きな力となった。
ポールが救世主として立ち上がる決意を示した後には、副官として新たなるアトレイデス公爵を支える。

■ダンカン・アイダホ

演:ジェイソン・モモア/安元洋貴
アトレイデスの重鎮の一人。
レト公爵に仕える武術指南役で、元々ポールの指導はガーニィより若いダンカンが担当していた。
ポールとは王子と家臣という立場ながら善き兄貴分としての関係を築いている。
レト公爵の命を受けてアラキスに移住前にフレメンの実態調査に向かうなど別任務に就いており、このこともまた後のポールの運命にて大きな役割を果たすことになる。
ハルコネンの侵攻時には果敢に戦い抜くも、矢張り多勢に無勢ではどうしようもない上に守るべきレト公爵もポールもジェシカの姿もなかったために一人で全翼機で逃げる羽目となったものの、保護したカインズ博士と共に砂漠に放逐されていたポールとジェシカを見つけて合流。
その際には、昨日まで軽口を叩いていたポールに頭を垂れて「公爵陛下」と呼びかけている。
その後、カインズ博士の手引きでフレメンの居住区に逃れるも追手に見つかり、ポールとジェシカを逃がすために自らを犠牲に戦い抜き、ポールが予知夢で見ていた通りに討ち死にする。

《フレメン》


■スティルガー

演:ハビエル・バルデム/吹替:大塚明夫
フレメンの部族長の一人。
フレメンの流儀を越えて交渉を持ちかけてきたダンカンを受け入れ、レト公爵の前に現れた時点で、初対面のポールに「お前を知っている」と意味深な言葉をかけていた。
後に、砂漠に放逐されたポールとジェシカが自分達の居住区にやって来た際に出迎え、ポールは迎えるがジェシカは追い出すと言っていたものの、ベネ・ゲセリットとしての異常な能力を見せたジェシカに制圧され、正体を悟るとともに自分達の“家”に連れ帰ることを約束した。
ポールには端からツンデレな態度を見せていたが、実は現在の活動地域である北ではなく救世主信仰の根強い南の出身であり、初対面の時点でポールこそが伝承に語られていた“リサーン・アル=ガイブ”だと確信していた。
ポールが優れた戦士、リーダーとしての資質を見せ始めると多少の反対の声を押し切り、彼を立てるようになり、謙虚な態度を見せるポールを伝承通りだと言いつつも「それでも俺は信じているんだ」とまで言い切った。
ガーニィも合流し、後の戦いで負傷した後は部族長の立場をポールに譲る。

■チャニ

演:ゼンデイヤ/吹替:内田真礼
本作のヒロイン。
ポールが直に出会う遥か以前より夢の中で見ていたフレメンの娘。
余所者のポールに反発したり、疑念を抱く仲間も居る中でポールの戦士としての高い資質を素直に認めてフレメンの生き方を教授し、急速にポールが力を付ける中で自然に恋仲となっていく。
一方で、ポールからは夢のことを聞かされていなかったとはいえヴィルヌーヴ版では非常に現実的な性格の持ち主として描かれており、ポールが一人のフレメンとして生きることについては喜ぶが、ポールを救世主に仕立て上げようとしていると感じるジェシカやスティルガー、ガーニィには激しく反発していた。

■ジャミス

演:バブス・オルサンモクン/吹替:高木渉
スティルガーの配下の一人。
救世主の伝説に疑念を抱いており、ポールとジェシカを助けた際にスティルガーがポールに“リサーン・アル=ガイブ”としての夢を重ねていることを見抜いて反発しポールに決闘を挑むが敗れてポールが最初に殺した人間となる。
後に“命の水”を飲んで生死の境を旅するポールの前に現れて視界を拓き、ポールが覚醒する手助けをする。

■シシャクリ

演:スエイラ・ヤコーブ/吹替:Lynn
『PART2』で登場。
フレメンの女戦士。
チャニの親友。
後のハルコネンの大攻勢の際に捕らえられた後にフェイドに殺害される。

■リエト・カインズ博士

演:シャロン・ダンカン=ブルースター/吹替:本田貴子
銀河帝国から監察官として派遣されている生態学者。
名目上は“メランジ”の採掘と精製に於いて不正や作業員への不当な扱いや不明な諸々の資金の流れが無いか━━等を確認する役目なのだが、元々の領有権を所持していたのがハルコネンだったり、そもそも“メランジ”に依存している帝国では流通を脅かす行為そのものが糾弾され、意見は無視されることになるので別の戦い方をしてきた信念の人。
フレメンでは無いものの、20年もアラキスで生きてきたことからフレメンと同じく青い瞳を持つ。
……事実、博士は表向きは否定したものの心情的には自分をフレメンだと認識しており“救世主”の伝説も信じている。
ハルコネンには実態を隠すことでフレメンを保護してきたが、アトレイデスの落城後の動きから裏切り者としてサルダウカーに殺害されることになる。
尚、原作とリンチ版では男性で更にチャニの父親という重要な立ち位置なのだが、ヴィルヌーヴ版では女性に変えられておりチャニとの関係にも特に言及されていない。
しかし、ポールが見抜いたことによれば夫と呼べるパートナーはフレメンだったとのことで、続編にて母子であるとされる余地は残したと言える。

《ハルコネン男爵家》


■ウラディミール・ハルコンネン男爵

演:ステラン・スカルスガルド/吹替:勝部演之
ハルコネン家の当代男爵。
極度の肥満体であり、移動には常に個人用の飛行ユニットを使用している。
アラキスの領有権を巡る争いを口実に、皇帝とベネ・ゲセリットの後ろ盾を得て政敵であったアトレイデス家に侵攻して滅亡させたと思っていたが、そのことが後に自身の破滅を呼び込むことになるとは想像もしていなかったりと、本作最大のヴィランと呼べる人物ながらも、末路にて所詮は駒であり小物でしかなったと露呈するのはヴィルヌーヴ版でも変わらない。
後継者候補が直系ではなく甥だったことにはベネ・ゲセリットの思惑が働いていたようなのだが、男爵自身は自分の()が誰なのかも知らされていなかったようで、最期にどんなに望んでも届かなかった皇帝の椅子に手を伸ばしていた所を()に殺されたことで余計に滑稽さと憐れさが際立つ。

■ラッバーン・ハルコンネン

演:デイヴ・バウティスタ/吹替:立木文彦
ハルコネン男爵の甥。
直系の息子がいないハルコンネンにとっては跡取りにして次期男爵候補の一人。
まだ若いフェイド=ラウサと違って、既に叔父の片腕としてアラキスの統治やアトレイデスへの侵攻の際にも前線で指揮を執っており、アラキスの再統治後には総督として就任するも“ムアドディブ”の名でフレメンを率いるようになったポールに追い詰められた末に次期男爵の座も総督の座もフェイド=ラウサに奪われることになる。
原作とリンチ版ではラッバーン(ラバン)は姓でハルコンネンとは名乗っていないのだがヴィルヌーヴ版では名前と設定が変えられている。
また、Part2にて原作同様にアトレイデス落城の際にガーニィの顎に傷を付けた相手とされ、反抗作戦の際に決闘を挑まれて殺害されているのだが、そもそも映画ではガーニィに傷を付ける場面がカットされているので観客としてはワケワカメなことになってしまっていたのは上記の通り。

■フェイド=ラウサ・ハルコンネン

演:オースティン・バトラー/演:木村昴
『PART2』で登場。
ハルコネン男爵の甥。
ヴィルヌーヴ版では兄という設定らしいラッバーン同様に直系の息子のいないハルコンネンにとっての後継者にして次期男爵候補であり、失敗続きで不評を買っていたラッバーンを追い落としてアラキスの新総督となる。
劇中にて成人を迎えた程に若いが、既にハルコンネンとしての残虐な性は内外に知られているようで殺人を好み、イルーランもケダモノと称している。
ベネ・ゲセリットにとっては、ポールと並ぶ超人“クイサッツ・ハデラック”に至れる可能性を持つ手駒の一つであったようで、異常性は抜きにしてもフェイドの高い能力もまた何かしらの血統の操作を受けていた可能性がある。
最期は、追い詰められた皇帝の代理としてポールと闘うが……。

■パイター・ド・ヴリース

演:デヴィッド・ダストマルチャン/吹替:上田燿司
ハルコネン家の重鎮。
男爵に仕えていたメンタート。

《コリノ皇帝家》


■銀河皇帝シャッダム4世

演:クリストファー・ウォーケン/吹替:池田秀一
『PART2』で登場。
銀河帝国の支配者だが、ベネ・ゲセリットの働きかけもあってか非常に狭量で猜疑心の強い性格であり、遂には息子のように思っていたと言われていたレト公爵の謀殺にも加担。
表向きには無関係を気取っていたが、アラキスにてフレメンの反乱を起こした“ムアディブ”が生きていたポール・アトレイデスだと知るに至り、アトレイデス家の滅亡には自身の思惑が深く絡んでいたことが露呈させられると恐れた余りに引き摺り出されることになる。

■皇女イルーラン

演:フローレンス・ピュー/吹替:早見沙織
『PART2』で登場。
シャッダム4世の一人娘にしてベネ・ゲセリットの修道女。
しかし、ベネ・ゲセリットの教えを受けながらも本来の純真で正義を愛する心と真実を見抜く力から、アトレイデス家の滅亡からフレメンの反乱に至る混乱の中でベネ・ゲセリットと父親である皇帝の邪悪な企みを知ることになる。

《ベネ・ゲセリット教団》


■ガイウス・ヘレネ・モヒアム

演:シャーロット・ランプリング/吹替:野沢由香里
現在のベネ・ゲセリット教団のトップを務める教母であり、古から引き継がれた教義(野望)を抜きにしても、彼女自身の統治下に於いても長年に渡り銀河帝国の中で暗躍してきたハルコンネンや皇帝以上の事件の黒幕である。
ジェシカやイルーランの師ではあるが、フレメンの下に身を寄せた後に“砂漠の教母”となり覚醒して自らの出世の秘密を知ったジェシカと、一連の怪しい動きの中で真実を悟った姫には見限られた感がある。
しかし、ジェシカとの最後の会話ではジェシカを「若き教母」と呼んでいることからベネ・ゲセリットを預けるとも取れるために、傍から見ると自分達の野心を叶えるためにしか見えない数々の行いも、あくまでもベネ・ゲセリットが行き着いた大きな視点でのバランスを取るための計画だったのでは、とも思わせる。

■レディ・マーゴット・フェンリング

演:レア・セドゥ/吹替:藤井ゆきよ
ハルコネン家に派遣されていたベネ・ゲセリットの修道女。
フェイドがポールに対抗する手駒、そして覚醒したとしてコントロール出来るのかを確かめるのと、ハルコネンの血統を遺すために肉体を与えてフェイドの種を得る(霊能力からか既に妊娠は確実で女児が生まれることが確定されていた)。

【余談】

  • Part2にて、Part1でスフィル・ハワトを演じていたスティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソンの再登場シーンと、役柄不明だがティム・ブレイク・ネルソンの出演シーンがカットされてしまったらしく、両名は出演こそしていないものの特別協力としてクレジットされている。

  • がーニィ役のジョシュ・ブローリンは本作を相当に気に入っているようで、Part1にてヴィルヌーヴ監督を監督賞にノミネートしなかったアカデミー賞を批判。
    更に良くなっていたPart2の出演を経て、今度も同じことが起こったら役者を辞めてやるとまで語ったことについて、ヴィルヌーヴ監督が恐縮しつつも賞とは関係なく良いものもを作っていきたいとするコメントを出すという一幕があった。

  • 前述の通りで、予め計画されていたシリーズではないためかVODサービスではシリーズの配信先が公開時期を抜きにしてもタイトル毎にバラバラな状況である。……何とかしてくれんか。



追記修正は砂虫を乗りこなしてからお願い致します。


この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 映画
  • 洋画
  • SF
  • SF映画
  • デューン
  • DUNE
  • サンドウォーム
  • ドゥニ・ヴィルヌーヴ
  • 砂の惑星
  • ティモシー・シャラメ
  • レベッカ・ファーガソン
  • ゼンデイヤ
  • フランク・ハーバート
  • 豪華俳優陣
  • IMAX
  • 難解
  • アシッド・ムービー
  • 壮大
  • 砂漠
  • 吹替のレベルが異様に高い
  • 超大作
  • 叙事詩
  • 英雄譚
  • 貴種流離譚
  • ワーナー・ブラザース
  • 4D
  • ScreenX
  • Dolby Cinema
  • Filmed for IMAX
  • 豪華声優陣
  • デューン/砂の惑星
  • 豪華吹き替え
  • 4DX
  • 映画秘宝
  • 幻想的
  • サイケデリック
  • 惑星大戦争
  • 神作
  • 神映画
  • 2021年
  • 所要時間30分以上の項目
最終更新:2025年02月16日 19:03

*1 原作にてポール達の大きな武器となる強力な音波兵器。リンチ版にて凄まじいインパクトを残したことで有名。ネタ臭く見えるが格好いいんだって!