無線呼び出し/ポケットベル

登録日:2025/03/15 Sat 11:37:00
更新日:2025/03/16 Sun 20:27:10
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 TELクダサイ          
 95/03/01 09:00<< 
                  


無線呼び出しとは、無線を介して受信機に合図を送る機能を持った道具のこと。
日本では日本電信電話(NTT)が命名した「ポケットベル」、通称「ポケベル」「ベル」の名で呼ばれることも多い。

初期は通知音が鳴るだけだったが、1980年代後半にはディスプレイを搭載することで番号通知も可能になり、特定の番号を表示する機能も搭載したことで通知に留まらない交流手段として使うことができるようになる。
なお、電子メールやショートメッセージサービス(SMS)、チャット等と異なり、あくまでも受信専用なので、送信側が無事に届いたか確認する術が無い。

ポケットベルは和製英語であり、実際の英語では"Pager"や"Beeper"と呼ぶ。

歴史

1948年にカナダ出身の技術者アル・グロスによって医療用に開発され、受信機に割り振られた電話番号を電話で掛けると相手に通知が受け取れる仕組みとなっていた。

個人所有のアマチュア無線には免許が必須だが、この無線呼び出しはコンパクトかつ無免許で使える点を歓迎され、1950年に米国で商用サービスとして法人向けに広まる。

日本では1968年にNTTが導入。事業所から営業担当者への連絡用に手軽に使える数少ない無線通信機器として重宝されていた。
1970年代後半から携帯電話も登場するが当時は非常に高価だったためポケベルは依然使われ続けていた。
NTT民営化・通信自由化が行われた1980年代後半では、地域密着型のテレメッセージ各社が新規参入したことで通信も高速化。
電話番号を文字として送る機能を実装し、低価格化が進んだ1990年代に入ると若年層の間で、

860 → Hello
8181 → Bye Bye
0906 → 遅れる
49106 → 至急TEL

の様に、数字だけで交流できることが受け、個人契約者が爆発的に増加。*1
1994年にはカタカナ・アルファベット表示できるようになったことで人気は拡大しつづけ、全盛期の1996年には1000万人を超える契約者を抱えるようになった。
同時期に連載されていた「金田一少年の事件簿」ではとある事件でポケベル入力を使って真犯人をあぶりだすというギミックが使われた点でも、当時の普及ぶりが伺えよう。

しかし、ポケベルが全盛期を迎える同時期に登場した「PHS」の登場でその栄華に翳りがみえる。

PHSは高価だった携帯電話を補う存在として当初から低価格を売りにしていた。
当初は利用範囲の狭さからポケベルと併用されていたが、1996年に日本でも送受信が可能なSMSサービスが開始されたことで、返す手段がないポケベルよりもPHS*2に若年層が移動するようになった。
携帯電話もPHSの登場を受けて低価格が進行したため、法人はボケベルから切り替えが進んでいった。
その結果、1998年には2年前の半分まで契約者数が低下してしまった。
インターネットの普及した2000年代に入るとEメールやチャット、携帯通信事業者が学割を充実させたことが向かい風となり、携帯電話を持ちづらかった中高生にも普及していったことで、さらに利用者が減少。

2007年には元祖のNTT docomoがサービス終了。最後まで提供を続けていた東京テレメッセージも2019年にサービス終了
2025年現在、ポケベルで使われていた帯域は防災無線用に活用されている。これは音声通信より感度が高く信頼できるため。音声告知も職員が打ち込んだ内容を機械音声での読み上げが対応できることが理由で、東京テレメッセージも事業として各自治体に営業を行っている。

その他

  • 日本の公衆電話の台数が一番多い時期はポケベル全盛期と重なっており、当時の学校の公衆電話には休み時間になると列ができていた。
    どちらも携帯電話に需要が奪われる形で一気に縮小していった。
  • 1990年代以降は単なる通知音に留まらない着信音機能が搭載され始めた。
    また意思疎通の円滑化を目的に世界初の絵文字機能も実装され、これらはそのまま以降の携帯端末に引き継がれた。
  • Androidでは2タッチ入力(ポケベル打ち)で文字入力できるキーボードが配信されている。



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最終更新:2025年03月16日 20:27

*1 「予め相互に意味を決めておかないと何を言ってるのか理解できない」「語呂合わせの方言差が激しく他地域だと通じない」問題もあった。

*2 1995年には米国で双方向式ポケベルも登場したが普及しなかった。