ウミヘビ(魚)

登録日:2025/03/25 Tue 22:20:00
更新日:2025/04/12 Sat 04:54:13
所要時間:約 5 分で読めます




ウミヘビとはウナギ目ウミヘビ科に属する魚の仲間である。

…あれ?ウミヘビって爬虫類では?と思ったそこのアニヲタ諸兄、
実はウミヘビという名の魚も実在するのである。

これから当項目で説明するのは魚類の方のウミヘビである。

英語ではsnake eel と呼ぶ。


概要

ウナギ目に共通して長い体の体型だが、アナゴやウツボ等の同じウナギ目の魚に比べて細い傾向にあり、
どこか蛇を思わせる体型をしているのが名前の由来となっている。

極地を除くあらゆる海域に生息してるが、ウツボ同様に比較的温暖な海域を好む傾向にある。
環境としては全般的に海底の砂地を好んでおり、気付かずに近づいてきた魚などに噛み付いて
引きずり込む待ち伏せ型の狩りを行う。

この仲間に属す種は全てが肉食性で鋭い歯を備えていて
ウナギ系の魚の例に漏れず、獲物に噛み付くとデスロールする習性もあるのだが、
ウツボと比較すると噛む力自体はそれほど強くなく、その歯も「噛み千切る」よりは
「噛み付いた獲物を逃がさない」杭としての側面が強く、丸呑みにする傾向にある。

その為、大きな魚に食らいついて飲み込もうとしたものの、あまりに大きな魚故に飲み込むこともできず、
しかも喉に引っかかって吐き出すこともできなかった為に窒息して共倒れになってしまったと思わしき事例も報告されている。


全般的に地味な種が多いが、モヨウモンガラドオシのように派手な模様をしている種もいないわけではない。

元々ウナギやアナゴ系の魚は小骨が多い魚であるが、ウミヘビは特に小骨が多い上、
それが非常に硬い傾向にあるようであまり食用にはされない。
しかし味そのものは悪いわけではないのでその気になれば食用にすることも不可能ではない。
実際に比較的安価な回転寿司などでアナゴの代用としてウミヘビの一種のマルアナゴという魚が使われている事もある程である。


他の近縁種との見分け方

種によるが顔つきもウツボやアナゴ、ハモら近縁種に似ている事が多いのでこれらの種に間違われてしまう事も珍しくない。
しかしよく見ると異なる特徴もある。
以下は海に生息するウナギ目の代表であろう三種を例に共通点・異なる点両方を挙げていく。

特徴等 ウミヘビ ウツボ アナゴ
鋭い 鋭い 尖っていない
好む環境 砂底 岩場 砂底
体型 細長い 太い 太い
三白眼 普通 黒目がち
胸鰭 ある(ただし例外あり) ない ある
尾鰭 ない ある ある

このようによく見ればウミヘビが他の二種と違う点もある一方で、どれだけそっくりな所があるかもおわかりいただけただろうか?
上で述べた特徴の中でも一番わかりやすい特徴である「尾鰭がない」という特徴に関してであるが
これは砂底に潜る際にアナゴやウナギのように頭部からではなく尻尾から潜る為であり、掘り進むために邪魔な尾鰭を退化させたからである。
目に関しても他の二種に比べると黒目が小さい所謂三白眼気味な点も異なる。


釣りにおけるウミヘビ

さて、ウミヘビの仲間だが釣りとも縁が深い魚である。
とは言っても悪い意味で、であるのだが…

中でも報告されがちなのはホタテウミヘビとダイナンウミヘビの二種であり、
特にアナゴ釣りやキス釣りにおける外道として迷惑がられてしまう。
何故なら釣りあげられると暴れ回って釣り糸を絡まった状態にしてしまう上、歯も鋭いのでうかつに触ると
噛みつかれて流血沙汰になりかねないからである。
しかもダイナンウミヘビの場合上で述べたように持って帰って食用にしようにも小骨が多い上にそれが硬い、味が薄いの二拍子なので釣れてもすぐにリリースされることが多い。
が、味が薄いという事は逆に言えばどうとでも味付けできるという事であり、
実際にうまく小骨を処理し、尚且つ身を骨からそぎ落としてつみれなどに料理したら
美味しく食べられたなんて報告もないわけではない。

しかしながらリリースされがちなのも上で述べた厄介な点に加え、
食べられるように調理する労力をかける位なら…というのもあると思われ。
残念な話である。


主な種類

ダイナンウミヘビ

細長い顎と鋭い歯を備えたウミヘビ科の代表種であろう種にして、
大きくなると2mを超える最大種。
温暖な地域を好む傾向にあるウミヘビの仲間にしては生息範囲は広い方で
日本においては太平洋側は勿論、日本海側にも生息している。
上述した釣りでの外道としてかかる二種のうちの一種でハモと間違われる事もあるが、
体型が細長い事、目が三白眼気味な点で区別可能。

ホタテウミヘビ

主に沿岸部の泥や砂のある浅い海域に生息しているウミヘビ。
ウナギやアナゴに似ているが、鼻先がややしゃくれている点やダイナンウミヘビ同様三白眼気味の目で区別可能。
こちらもダイナンウミヘビと同じく外道としてかかる種であるが、
ダイナンウミヘビと違い、味自体は美味しいという。
名前は背びれが他の種に比べて大きく、帆を思わせるため。
全長は1m前後。

ゴマホタテウミヘビ

上述のホタテウミヘビの近縁種。
ぱっと見はわかりにくいが歯の形で判別できるとされている。
ホタテウミヘビに比べて温暖な環境を好み、また水質の適応範囲が広いのか
ウナギのように海だけでなく河口付近の汽水域や完全な淡水域といったあらゆる水質の水域に生息できるようで
水田や用水路で発見される事もあるという。

英語ではrice paddy eelと呼ぶがこれは上述の通り水田で発見される事も多い為で
ウナギとは逆に淡水域で繁殖する繁殖サイクルを持っているようだ。

日本ではあまり食用にされないが、中国南部やベトナムでは重要な食用魚の一つとされ、
中国語では『土龍』と書くと本種を指すらしい。

こちらも全長は1m前後。



モヨウモンガラドオシ

ウミヘビには地味な種が多いと書いたがその中において、淡い斑模様のあるウミヘビの中の異端児。
その目を引く斑模様からか水族館で展示されることがある他、ペットとしてたまに飼育されることもある。
かつてはゴイシウミヘビという近縁種がいるとされたが、後に色彩変異に過ぎないことが判明、
一つにまとめられたという経歴がある。

カワウミヘビ

初見だと矛盾した名前を持ったウミヘビ。
名前の通り淡水域に生息するウミヘビの仲間であり、
かつては日本には生息していない種とされ、和名もなかったのだが
2017年に沖縄に旅行に来た京都の親子が
捕獲した魚を持ち帰ったものの見慣れない見た目だった為、
沖縄ちゅら島財団総合研究センターに飼育方法などを問い合わせたところ
それが日本初の記録にしてこれまでに知られた生息域の北限である事が判明、
更に和名としてカワウミヘビと名付けられたという経歴がある。
レアな種らしく、詳しい生態などはわかっていないようだが40㎝前後になるようで
近年はペットとしてもたまに出回っている。


ウミヘビをモチーフにしたもの等について

モチーフにしたキャラ等もいないわけではないが、
同名の爬虫類の方のウミヘビがいる為かキャラのモチーフとしてもよく使われる近縁のウナギやウツボに比べるとかなり少ない。
しかしその混同されがちなイメージをあえて利用しているケースもないわけではない。クウガゴ・ベミウ・ギとか。

ヤザン「海ヘビを味わいな!」
アニメ機動戦士Ζガンダムの作中では、ハンブラビを始めとするティターンズ製MSが所持する携帯型電撃ワイヤーの名称として用いられている。
ただし正規の媒体では一度もウミヘビが語源である事には触れられた事は無く、武装の外見や使用方法から共通点は中々に見いだせない。まして連携技は蜘蛛の巣と呼ばれるので、ますます関係性が疑われる。




追記・修正は砂に潜ってお願いします。



この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • アニヲタ水族館
  • ウミヘビ
  • 魚類
  • ウナギ目
  • 海蛇
  • 海蛇男
  • ゴ・ベミウ・ギ
  • 細長い
  • アニヲタ動物図鑑
最終更新:2025年04月12日 04:54