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更新日:2026/08/19 Wed 14:58:19NEW!
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アクアリウム(Aquarium)とは、
1. 水族館を意味する英単語。
2. 魚類や甲殻類、水草などの水生生物を飼育栽培する装置。及びその構築や管理を楽しむ趣味。
当項目では2及び2で飼育栽培される生物に就いて解説する。
因みに、
爬虫類や
奇蟲、一部の観葉植物などの陸生生物の飼育栽培装置は
テラリウム(
Terrarium:陸槽)と言い、アクアリウムとテラリウムを併せて
ビバリウム(
Vivarium)と言う。
目次
★概要:背景と歴史
陸上生物たる
人類にとって、歩行や呼吸一つ儘ならない水中の世界は異界であり魔界でもある。水害の恐ろしさは言わずもがな、大陸発祥の
キリスト教や
イスラム教の一部の宗派には、外洋を中心とした水辺を禁制領域と定め、親水を戒める教義さえあると言う。
その一方で、水辺や水中は淡水海水を問わず資源の宝庫でもある。
人類は古代から狩猟採集の一環として、魚類や貝類などの水産物を食用や宝飾品として利用し、後に川岸を拠点として灌漑農業を始め、巨大な
船を浮かべ、物流の拠点たる港を開いて社会を発展させてきた。水辺は畏怖の対象であると同時に、生活の糧を得る場として親しまれるという、相反する認識がなされていたのだった。
必然、水の生き物についても、
タコや
イカのように悪魔の眷属の如く扱われるものもいれば、魚や貝、エビやカニのように子孫繁栄や金運財運、不老長寿の象徴として愛されたものもあり、美醜併せて観賞するアクアリウムに繋がる文化の萌芽は思いのほか古いものである。
信仰対象や食用も含めれば、どうやら紀元前2500年頃にバビロニア文明のシュメール人が
コイを飼育していたらしい。
確実に観賞目的だと確定しているものに限っても、470年頃の中国では金魚の先祖に当たるヒブナが飼われていた。
他には、紀元から間もないローマ帝国では地中海から引き込んだ海水のプールで
ウツボが飼育されており、多くは食用だったものの、一部装飾を着けられて寵愛(?)されたウツボが存在した記録も残っている。
これよりも更に300年以上昔の古代エジプトでは
モルミルスが食用以外にも愛玩ないしは信仰対象として扱われていた可能性が壁画から示唆されており、斯様に「最古の観賞魚」を決めるのが難しいほど、人類は水生生物に対して並々ならぬ興味を抱いていたようである。
日本に於いても室町時代に明代の中国から金魚が伝来して以来、年月を重ねながら品種改良が続けられ、その過程で出目金や琉金など奇抜な形の品種や鰭が長く伸びる品種が誕生した。
江戸時代になると、元禄年間には
淀屋辰五郎と言う金魚狂で知られることになる上方の豪商が現れ、
屋敷の天井をギヤマン(ガラス)張りにして金魚を飼い、上見ならぬ逆見を楽しんだという逸話さえ残っている。
化政文化期になると金魚は庶民でも手が届くほど身近なものになり、タナゴやドジョウを飼う町民も少なからずいたらしく、
メダカに至っては既に緋メダカが固定されていた。
また、本場の中国でも品種改良は盛んに行われ、少なくとも清代後期には頂天眼や水泡眼などが存在したとされる。
時代は更に降るが、
ラストエンペラーである愛新覚羅溥儀は波乱の生涯の中でも観賞魚に興味を持ち、金魚を愛育したと言う。
同じく江戸時代には大陸から齎されたコイの変異個体が越後国、即ち現在の
新潟県で発見されたのを皮切りに観賞魚として養殖が始まり、大正時代に二種、昭和初期に一種が品種として固定され、現在まで続く錦鯉飼育文化が誕生して今に至る。
一方の西洋では、文芸復興と大航海時代の到来により探検家が世界各地の産物を集め、貴族や王族がそれを買い集めた収蔵展示室を「
驚異の部屋」と称して公開
と言う自慢合戦したことで大博物学時代が到来した。
産業革命も相俟って、博物学先進国に躍り出たイギリスでは標本コレクションの決定版として1753年の
大英博物館が開館、薬用動植物の飼育栽培の拠点として1759年にキュー植物園が開園し、
生きた動植物を大衆に向けて展示するという試みが開始された。
1830年頃、外科医の
Nathaniel Bagshaw Wardがガラス張りで持ち運び可能なシダ植物の栽培容器「
ウォードの箱(
Wardian case)」を開発し、貴族のみならず一般市民の間でも流行し、今日のテラリウムの礎となった。
更にそこから着想を得た博物学者の
Philip Henry Gosseが、水生生物の飼育栽培装置を考案し、1853年に自らが上梓した書籍と共に、当項目名と同じ「
The Aquarium」と名付けた。
島国であるイギリスの土地柄か、Gosseが製作したのはイソギンチャクやエビ、ヤドカリやハゼなどと海藻を組み合わせて飼育する海水アクアリウムだった。底砂を何層も敷いて水の汚れを沈殿させ、メインタンクの上に吊るしたサブタンクから海水を滴下させることで溶存酸素を増やそうとするなど、この装置には初歩的ながら今日の飼育技術に繋がる工夫が見られた。
一方、ドイツでは動物学者の
Emil Adolf Roßmäßlerが1857年に「淡水アクアリウムー作成と維持管理方法」という小冊子を発表した。題名通り、海水の入手が難しい内陸部でも楽しめるアクアリウムの作成マニュアルであり、この時代に金魚はヨーロッパの広い地域で既に飼われていたため、川魚や淡水貝類、
イモリなどの淡水生物の飼育も受け入れられ易かった。その後も発展型として湿地性の植物と組みわせて管理する方法が考案され、更には水槽の上部に鳥籠を組み合わせたものや、蒸気圧を利用した給気装置や循環装置を兼ね備えたものなど、複雑な構造のアクアリウムが何種類も存在したようである。
先の博物学ブームの余韻も相俟って、身近な海岸や湿地にも珍奇で美麗な数々の生物が住まうことを知った人々の間でアクアリウムブームが勃発し、やがてヨーロッパ全土、更には大西洋を渡ったアメリカ合衆国にまで及ぶ規模となっていく。
1853年のロンドンにはフィッシュ・ハウスというアクアリウム専門の展示施設がオープンし、1867年のパリ万博のパビリオン、1869年のベルリンの王立アクアリウムなどの類似施設が次々と設けられた。この時点で
建物本体と一体化した巨大なアクアリウムも建造されており、今日の水族館の原型となった。
この頃には、自国の生物の飼育だけでは飽き足らぬようになり、1868年にフランスの養魚業者の
Paul Carbonnierが中国南部産のタイワンキンギョ(パラダイスフィッシュ)Macropodus opercularisを輸入したことを皮切りに、アジアや中南米から熱帯魚の輸入が開始された。代表的な熱帯魚の一つであるグッピーPoecilia reticulataは、この少し前の1859年に記載されており19世紀末には観賞魚として流通するようになった。
再び日本に立ち帰ると、明治時代に欧化政策の一環として、1882年2月に恩賜上野動物園が開館し、半年後の8月に「
観魚室」と言う名称の施設が園内にオープンしたのが、日本初のアクアリウムとされている。
この施設ではコイやボラ類、クサガメMauremys reevesiiやオオサンショウウオAndrias japonicusなどを止水環境で飼育すると言うシンプルなものであったが好評を博し、1885年の浅草には海水魚を扱った浅草水族館、1897年の神戸には電気式の循環装置を用いた和楽園水族館などが開館した。
また、1903年に大阪で開催された第5回内国勧業博覧会では、附属施設として堺水族館をオープンしたが、この施設では台湾から輸入したタイワンキンギョや
コウタイや
タウナギなどを展示しており、日本での熱帯魚の飼育例としては最初期のものと考えられている。
大正時代に入ると、個人で構築・管理出来る程度にまでダウンサイズしたアクアリウムが華族や資本家などの上流階級で流行し出した。
1925年には園芸家で博物学者であった
広瀬巨海がアメリカからグッピーやソードテールXiphophorus helleriiを生きたまま輸入して、自らの手で増殖分譲したのが日本に於ける最初の熱帯魚の販売だとされる。
やがて、昭和時代に入ると、日本で最初の熱帯魚ブームが生じた。
火付け役となったのは先の広瀬氏や、華族出身で後に堺水族館の館長を務めることになる養魚家の
鷹司信敬である。
1933年に「実際園芸」と言う雑誌で熱帯魚の特集が組まれたのが、個人向け飼育マニュアルの嚆矢とされる。主に輸入されていたのはゼブラダニオDanio rerioや
キノボリウオなどの東南アジア産の種だが、フレームテトラHyphessobrycon flammeusやコリドラスCorydoras spp.、エンゼルフィッシュPterophyllum scalareなどの南米産の種も一部では知られていた。
この時代の最大の課題は保温方法で、基本的には熱帯植物の栽培に用いられたガラス温室を流用した上で、電熱線やアルコールランプ、防水加工した白熱電球を用いて補助的に水温を上げると言う方式が採用された。しかし、この方式は個人向けでも基本設備が複雑且つ莫大な費用を要するものであり、その上で加温装置の故障も多く、更に、熱帯魚自体が高価であったため、熱帯魚飼育という趣味は社会的ステータスを間接的に反映する高嶺の花でもあった。
その後、太平洋戦争開戦によって日本の熱帯魚飼育の命脈は途絶えた…かに見えたが、このような状況でも、筋金入りの熱帯魚狂であり、戦後のアクアリウム復興で活躍する実業家の
広海貫一はガラス温室で熱帯魚を飼い続け、
防空法の一環で温室の撤去を求める憲兵の前でも一切怯まず啖呵を切って追い返し、敗戦のその日もエンゼルフィッシュを産卵させていた。
戦後の1950年代になると、朝鮮特需から始まる好景気と高度経済成長に伴う工業の発展により、一般市民にも余暇を楽しむだけの経済力と、それを支える工業製品が開発されるようになる。
アクアリウム関連では、石英管を用いた電熱式ヒーターやバイメタル式サーモスタット、小型化したエアポンプなどが開発され、ステンレス枠のガラス水槽が市販されるようになったのもこの時代である。
1960年代になると二度目の熱帯魚ブームが巻き起こることとなった。戦前から流通していた種に加えて、ポストフィッシュBarbodes lateristrigaやメチニスMetynnis hypsauchenやキッシンググラミーHelostoma temminckiなどが輸入及び国産化され、常時100種以上の熱帯魚が流通するようになった。特に大きいのはそれまでは洋書でしかその姿が知られていなかったネオンテトラParacheirodon innesiが輸入され、国内で繁殖に成功して入手し易くなったことである。
ネオンテトラの繁殖を手掛けた生花店経営者の牧野信司は、戦後間も無い頃に空襲の焼け跡から鉄骨と溶けたアスファルトを拾い、割れずに残った窓ガラスを組み合わせて水槽を作って魚を飼っていたと言う生粋の生き物好きだった。戦後に広瀬氏や広海氏から指南を受けて本格的に熱帯魚に傾倒することとなり、日本熱帯魚研究所を設立し、数々の熱帯魚の飼育繁殖を手掛け、飼育マニュアルや図鑑の執筆、テレビやラジオにも出演したり、ドラマや映画の小道具としてのアクアリウム監修を行うなど、文化人的な活動も積極的に行った。
この時代には後に東京水産大学名誉教授となる多紀保彦や江ノ島水族館初代館長となる雨宮育作らが飼育技術の開発や普及を行なっており、海水魚に就ても、溥儀の観賞魚アドバイザーを務めた柴田清や、鳥羽市水産研究所の初代所長である石川貞ニがその先鞭を付けた。
1965年7月、出版社の緑書房は中国や東南アジアの淡水魚に精通した魚類学者である木村重を総監修に迎え入れて、観賞魚総合雑誌の「月刊フィッシュマガジン」を刊行した。このようにして、アクアリウムという趣味は完全に市民権を得たのであった。
1970年代にはオイルショックによる光熱費高騰という逆風も吹いたが、全体的には日本経済の好調により、熱帯魚産業も緩やかな成長を続けていた。経済成長の悪しき副産物として公害問題が連日報道されるようになり、失われつつある身近な生態系のへ接触の代償行為としてアクアリウムの価値が高くなったと見積もる識者もいる。
この時代から水槽のフレームはプラスチック製のものが主体となり、濾過器もエアリフト式のものから電動揚水ポンプを用いた上部式濾過器が主役となった。
60年代後半からは、それまで日本では殆ど知られていなかったアフリカの熱帯魚が輸入されるようになり、サカサナマズ Synodontis nigriventrisや
デンキナマズ、各種アフリカンシクリッドや
ポリプテルスなどが紹介された。環境破壊によって稀少性が高まった影響か、日本産淡水魚(略称は日淡)を専門的に収集するマニアが現れ始めたのもこの頃である。
また、「
ダッチアクアリウム」というオランダ庭園の造園理論を応用した水草が主役のアクアリウムが日本に紹介され、水草の収集や栽培に本格的に取り組み始めたマニアもいた。
人物では牧野氏の他、グッピーの品種改良に熱を入れた
和泉克雄や、
アジアアロワナや
ガーの繁殖を後に成功させる
東博司が躍進した。
特に東氏は1978年に
当時新種記載されたばかりで生態情報が全く無いインパイクティス・ケリーInpaichthys kerriの繁殖を宮内庁生物学研究所から直接依頼され、見事に成功させたと言う逸話もある超一流の熱帯魚研究家に登り詰めた。
水草関連では世界各国でフィールドワークを行い、様々な水草を紹介した
山崎美津夫が業界での知名度が高まり始めた。
また、1979年には2026年現在まで唯一発行が途切れていない熱帯魚雑誌である「
月刊アクアライフ」が創刊した。
1980年代になると、90㎝以上の大型水槽も市販されるようになり、相対的に価格も下がった。濾過器も従来の様式に加えてオーバーフロータイプの大容量型のものを個人で所有するマニアも増えつつあった。
70年代後半頃からドイツ系アメリカ人のJack WattleyがディスカスSymphysodon aequifasciatusの改良品種を大々的に発表し、1981年に日本に輸入されたワットレイターコイズは業界に多大なセンセーションを巻き起こした。
また、これと同時期には百貨店で「アマゾンの怪魚展」などと称したイベントが夏場を中心に興行されることになる。この催事は小説家の開高健によるアマゾン川の釣行録「オーパ!」が話題となったことが契機とされる。これらのイベントの多くで熱帯魚を手配したのは松坂實である。
松坂氏は本職がトラック運転手のアマチュアアクアリストだったが、これまでアクアリウム業界ではあまり顧みられなかったナマズ類に傾倒して、南米やアフリカなどの地域を放浪し、自らが欲する魚を入手するために採集代行業や輸入・卸売などを開始して業界入りした。「月刊アクアライフ」の創刊に立ち会う他、「怪魚」「牙魚」と言う単語を広げて、アクアリウムのジャンルとして定着させた。松坂氏を中心にプレコやコリドラス、モルミルスなどは毎月のように未知の種が採集・輸入され、80年代後半には、ゼブラキャットBrachyplatystoma tigrinumやインペリアルゼブラプレコHypancistrus zebraやポルカドットスティングレイPotamotrygon leopoldiなど、アマゾン川の支流であるマデイラ川やシングー川に産する珍種稀種が日本に上陸した。アロワナも非常に人気が高かったが、日本のワシントン条約批准に伴いアジアアロワナScleropages formosusの商業取引は規制され、価格の高騰や密輸の横行など、業界に陰を落としたのも事実である。
この頃になると、日本で流通歴のある魚種は1000種を軽く超えており、ディスカスと大型魚と言う二大ムーブメントを軸に、「小型カラシン専門」「卵生メダカ専門」「アフリカシクリッド専門」のようにマニアの細分化が進んだ。
1990年代にはバブル経済の余波により、第三次の熱帯魚ブームが到来した。1994年の1400億円が日本の観賞魚市場規模としては最大であった。
大型水槽の売れ行きも好評だったが、水槽メーカーのニッソーが開発した「ルームメイト」を筆頭に、濾過器や照明まで水槽と一体化したコンパクトタイプの水槽が飛ぶように売れた。また、曲げガラスを用いた水槽やフレームレスの総ガラス水槽、スケルトンタイプの濾過器や照明器具など、飼育用品そのものに高いインテリア性を有するものが現れた。
必然、小型魚への人気が再燃し、グッピーやアピストグラマ、ラスボラやダニオなどのマニアが激増した。志藤範行や筒井良樹、吉野敏など幼少期を第二次熱帯魚ブームの最中で過ごしたネイティヴ・アクアリウムマニアというべき世代が台頭し始めたのもこの頃である。
水草の栽培技術も飛躍的に進歩すると同時に、新たなウェーブが業界を席巻した。
仕掛け人は天野尚。元競輪選手という異色の経歴を持つ新潟県の一熱帯魚店主であったが、器具自体にインテリア性を持たせた器具メーカーの「ADA(アクアデザインアマノ)」を創業し、デリケートな水草に対応した底床材である「ソイルサンド(商品名:アクアソイル)」を開発した。これが徐々にマニアの耳目を集め、好調な売れ行きを達成した。更に、レイアウトコンセプトとして、それまでのダッチアクアリウムに対して、流木や石など水草以外の素材との調和を図った景観美を重視した「ネイチャーアクアリウム」を提唱した。この様式は日本の水草レイアウトの主流となり、もう少し後の時代になるが、公立の水族館でもこの様式のレイアウトが採用されるようになり、当然ながら天野氏はその監修を行うこととなる。
海水魚の飼育も流行し、従来の大容量濾過器と大量換水型の飼育スタイルから、「ナチュラルシステム」と呼ばれる科学知識や理論で補強したアクアリウムの原点回帰を図る時代となった。ナチュアラルシステムについては後述する。
アクアリウムそのものではないが、この時代の水槽写真の技術は今日の目で見ても非常にレベルが高く、小林道信や森文俊のような水槽写真専門のカメラマンが活躍した時代でもあった。
2000年代は再びの安定期となり、常時流通する魚種は2000種近くになった。
前半で人気が出たのは意外にもエビであった。特に水槽内繁殖が可能なビーシュリンプとその改良品種であるレッドビーシュリンプであった。1991年に寿司店店主でアマチュアアクアリストの
鈴木久康が偶然に突然変異個体を得たことで品種改良が進み、「クリスタルレッドシュリンプ」という商標で売り出した。
後半ではメダカの改良品種が業界を牽引するほどの勢力を持った。これについては後述する。
新着の魚種としては、2002年にアフリカ産淡水魚研究家である
五十嵐利明が、ポリプテルス属の基準種であるポリプテルス・ビキール・ビキールPolypterus bichir bichirを日本初輸入させ、往年のマニアを驚かせた。
また、1992年に数匹のみ輸入された
バトラクスキャットが、2005年にまとまった数で再入荷した。
一方で明るいニュースばかりではなく、多摩川や琵琶湖で捨てられた熱帯魚が釣り上げられるなどの外来種問題に対し、環境省は2005年から
外来生物法が施行された。これにより、ビーシュリンプと同時期に流行の兆しがあった外国産ザリガニの飼育がほぼ継続不能となり、北米やヨーロッパ、中国産の温帯魚の輸入にも陰りが見え始めた。
2010年代はアクアリウムにとって逆風の時代であった。
2011年の東日本大震災を筆頭に、2016年の熊本地震、2018年の西日本豪雨などの大型災害が多発したため、特に大型水槽は人気が低迷した。
また、2013年には月刊フィッシュマガジンが休刊し、2018年にはガーの全種が特定外来生物に指定されてしまい、観賞魚として新規入手不可能となった。
一方で、新しいウェーブとしては水草から派生した熱帯・亜熱帯の湿性植物を育てるパルダリウムが流行した。パルダリウムに就いては後述する。
2020年代突入直後の新型コロナウイルス感染症によって外出自粛が叫ばれた際には、爬虫類と同じく少ないスペースで飼育でき、尚且つ鳴いたり匂いを出さない魚類が注目されることになり、第4次のアクアリウムブームの兆しではないかという見解もある。
◎アクアリウムを始めるのに必要なモノとコト
アクアリウムである以上、
水を確保しないことには話にならない。
如何せん、水生生物とって水槽の水は生活の場であると同時に、呼吸の媒介と飲料水、その上に
トイレといったライフラインも兼ねることになるからだ。
なお、盛大に誤解する人がいるが、我々がいつも蛇口から使っている「水道水」は、生物が住む水には全く向かない。
と言っても「そのままでは使えない」だけなのでご安心を。簡単な方法で解決できるので、諸々の理由も含めて解説していく。
基本中の基本として、
の4つを理解することが重要である。
最初に「水温」。
熱帯魚のように温暖な地域に生息している魚は、真冬の水では冷た過ぎて凍死してしまい、逆にサケ科やカジカ科などの冷水魚であれば、灼熱の日本の夏場では水温が上がり過ぎると茹だってしまう。各々、水槽用ヒーター或いはクーラーを付けて温度管理する必要があるだろう。
その点で神経質にならなくて済むのは、金魚やメダカ、日本の川魚などの温帯魚である。
日本の四季を想像すれば判り易いが、夏と冬とでは空気中では30℃以上、温度が比較的安定している水中でも20℃以上の差はある。そのような環境に棲む温帯域の生物は生育可能な温度の幅が広いのが普通である。このようなものは室温に任せても問題ない。
但し、1時間前まで猛暑日だったのが今は氷点下などという極端な温度の変化には、流石の温帯魚でも参ってしまい、病気になったり最悪ショック死してしまうこともある。
所謂「ヒートショック」と呼ばれる事態である。
水質の項目でも述べるが、あくまで変化は緩やかであることが重要である。
猶、殆どの熱帯魚は沸騰する湯は勿論のこと、お風呂のお湯程度の水温にも耐えられない。
当たり前だろ、と思われるかもしれないが、水温を感知してヒーター電源のオンオフを行う
サーモスタットを掃除した際に、
水槽に戻し忘れてしまい、その結果ヒーターが延々と作動して煮魚になりかける、もしくはなってしまったという事故は、ベテランのアクアリストでもやらかしかねない失敗である…。
最近はサーモスタット一体型のヒーターも多く販売されており、価格も安価であるため、この事故については少ないかもしれない。
但し、一体型のヒーターは温度固定式であるものが多く、微妙な水温調節が難しいこと、どちらかが故障したら一括で交換する必要があること、故障状況によってヒーターの電源が入りっぱなしになってしまえば結末は同じであるため、却って使い勝手が悪いかも知れない。
某漫画のあるキャラクターがやらかしたという「アクアリウムを勝手に弄って魚が全部白茹で」は恐らく似たようなことをして水温設定を出鱈目にしたものと思われる
次に
「水質」。
温度調整したら早速水槽に移して…はまだ早い。
水道水にはご存知の通り殺菌用の塩素(カルキ)が含まれており、人や動物には大したことのない量だが
魚を筆頭に鰓呼吸する生物にとっては十分有害。
故に、
水道水を飼育水に用いる場合は、必ずカルキ抜き剤を使って事前に塩素を中和しておくのが必要がある。
金魚やメダカを飼った経験のある人なら「
ハイポ(
チオ硫酸ナトリウム結晶)」という透明の錠剤を入れたり、一日汲み置きして使うという話は聞いたことがあるだろう。
昔ながらのハイポは今でも販売されているが、即効性があり計量もしやすい液体型の薬剤の方が、熱帯魚店やペットショップでは入手し易い。
この薬剤自体も入れ過ぎると魚に悪影響を及ぼすため、きちんと計量して規定量で使用すること。
水槽の数が多くなったり、大型水槽を管理するならば観賞魚用の浄水器を使うも良いだろう。
アクアリウムでの水質は、水素イオン濃度指数であるpHの観点から大きく分けて、pH5.5〜6.5辺りの「弱酸性」、pH7.5〜8.5辺りの「弱アルカリ性」、pH6.5〜7.5辺りの「中性」の三種類に大別され、生物の種によってそれぞれ好む水質がある。
それを考慮しないで水槽に放り込んでしまうと、体調を崩して病気になったり、最悪ショック死してしまうこともある。
所謂「pHショック」と呼ばれる事態である。
日本の水道水は中性の場合が多いので、ここから酸性寄りにしたい場合は植物性の有機酸を含む流木やピートモスを、アルカリ性寄りにしたい場合はミネラル分を含むサンゴ砂や貝殻を入れて調整する。
カルキ抜き剤同様に、それぞれの水質調整剤も販売されているので、用量を守った上でそれを使う方のも手軽である。
但し、水槽の水は飼育生物の老廃物やバクテリアの分泌物、水草の破片や底砂の溶解などでごく僅かずつ常に変化しているため、調整剤だけに頼るのも良くない。
魚や水草の状態を確かめつつ、pH試薬や測定器でアクアリウムの水質の変化傾向を把握しておくことも重要である。
多くの淡水魚は中性から弱酸性の水質を好むが、弱アルカリ性を好むものもいる。
その代表はアフリカのタンガニーカ湖やマラウィ湖に産するシクリッドを中心とした魚類。
ここの水質は淡水ながらpH8以上の超えるアルカリ性を示す。商業ブリードされて日本の水に馴染んだものはまだしも、偶に流通する野生採集個体を飼育する場合、水槽本体や濾過器にサンゴの骨格やサンゴ砂、カキ殻や石灰岩を入れるなどで意識してアルカリ性に傾ける必要があるのだ。
他にもミャンマーのインレー湖やインドネシアのスラウェシ島のマタノ湖やトウティ湖などに産する種には弱アルカリ性の水質を好むものがおり、更に魚類ではないが、外骨格や殻に炭酸カルシウムを主としたミネラル分を多く含む甲殻類や貝類は、総じてアルカリ寄りの水質の方が調子良く飼える。
猶、海水はpH7.8〜8.5程度の弱アルカリ性である。
そんなこんなで、水質と水温を合わせ、今度こそ魚を水槽に放す時。
……ちょっと待った。本当に焦らして済まないが、最後にもう一つだけ。
店舗で購入するなり自家採集で入手するなり、連れて帰ってきた水生生物は、大抵の場合元々いた場所の水と一緒にいるはず。先に水質を調整していても、元の場所の水と水槽の水のごく微妙な誤差で魚がショックを受けてしまうこともあるのだ。輸送のストレスや採集の際の僅かな傷なども、大したことがないようで、後々にこれが原因となって状態が一気に悪化することもあるのだ。
まあ、物物しい書き方はしたが、この対処も別に難しいことはない。
セットした水槽に連れ帰った魚をすぐに入れるのではなく、まずは魚が入ったビニール袋を、そのまま水槽に暫く浮かせて温度を合わせて、それから袋を開けて、袋の中の水と水槽の中の水が急に混ざらないように時間を掛けて移せば良い。
或いは。特別デリケートな種である場合や採集場所からバケツでそのまま運んできた場合は、予備の水槽やプラケースに移し替えた後で、エアチューブを用いて点滴のように水槽の水を少しずつ加えて水質を合わせていく方法もある。これなら生物も疲労しにくく、同時に検疫や病気の発見も容易に行える。
これは「水合わせ」と呼ばれるアクアリストの恒例作業の一つである。
これで魚を放し終えたら、ショックを受けていないか暫し観察し、大丈夫なら今度こそ導入完了である。本当にお疲れ様でした。
三つ目の「環境」に関しては、飼育生物の生態や修正に応じたレイアウトを水槽内に施すことである。
例えば、ナマズやウツボなどのように岩陰や流木の下に隠れることを好んだり、カレイやキスのように砂の中に潜る習性を持つものがいる。
そうした生物を飼育する場合は、隠れる場所である「シェルター」を用意することでストレスが減り、寿命を長く伸ばせたり、野生下と同じ行動を取って観察する楽しみが増えたり、繁殖に繋がることになるなどと利点も多い。
といえ、シェルターを多く用意し過ぎると、今度は隠れっぱなしで姿が見えなくなったり、水槽内の通水が悪くなって水質が悪化したりと本末転倒な事態が発生することもあるので程々にしたい。
特に底砂に潜る種は要注意で、深く砂を敷き過ぎると溜まった老廃物によって自家中毒を起こすことがある。種にもよるが、底砂に潜る種の場合、体表の一定面積に砂が触れているということがストレスの緩和になるとされているので、砂の絶対量はそこまで重要ではないことが多い。
逆に、游泳性の強い魚を飼う場合は、下手に物を入れるすると游泳空間を狭めてしまうため、シンプルなレイアウトで飼育するというのも重要。
とは言うものの、外洋のような本当に物らしい物が殆どないような環境に棲む種でない限り、多少のレイアウトを施すのが普通であろう。水槽のガラス面に沿って多少の水草を植えるだけでも、水槽に激突する可能性を低減させ、混泳飼育の場合は緊急の避難場所になることもある。
人間だって、スケルトンハウスで一生暮らすのは中々落ち着かないのだから。
最後に「水槽サイズ」だが、実はこれこそ4つの要素の中でも初心者なら特に気をつけたい部分である。
初めてのアクアリウムだから、まずは小さい水槽から…というのは別に構わないが、販売されている魚は稚魚や幼魚の場合が多い…つまりまだまだ子供であり、成魚になるとかなり大きくなる可能性がある。
採集した魚についても、正体がよく判らないまま飼い始めて、成長段階を観察記録して…というのは勿論楽しいのだが、いつの間にズンズンと育って、と言うことも珍しい話ではない。
と言うのも、魚の最大サイズをよく知らずに小さな幼魚と手頃な水槽を購入した結果、魚が見る見るうちに育ち、気が付いたら手に負えないサイズにまで成長してしまう…という事態が度々起きているのだ。
例えば、シルバーアロワナやレッドテールキャット、セイルフィンプレコ(セルフィンプレコ)やオスカーなどは、かなり安価で稚魚が売られている大型魚であり、泣く泣くペットショップに引き取ってもらう羽目になったという事例が数多くある。
そうした悲劇を防ぐ為にも、どこまで大きくなるかは購入する場合は必ずショップの店員などに聞いておこう。お兄さんとの約束だぞ?
もし、育てきれなくなっても絶対に野外に逃がそうと思ってはいけない。どうしても育てきれなくなってしまった場合は近所のショップに相談しよう。
もしくは捌いてから、煮焼きして食べてしまうという手段もある。
代表的な水槽サイズとしては、一般的な規格のものを挙げると
○メダカ・小型カラシンサイズまで
- 30cm水槽(幅30cmx奥行18cmx高さ24cm、水量約10L)
- 45cm水槽(幅45cmx奥行24cmx高さ30cm、水量約30L)
○金魚・中型カラシン・小型シクリッドサイズまで
- 60cm水槽(幅60cmx奥行30cmx高さ36cm、水量約60L)
- 90cmスリム(幅90cmx奥行30cmx高さ36cm、水量約85L)
○エンゼル・中型シクリッドサイズまで
- 60cmワイド(幅60cmx奥行45cmx高さ45cm、水量約110L)
- 90cm水槽(幅90cmx奥行45cmx高さ45cm、水量約165L)
○古代魚・ナマズなど中大型魚以上
- 120cm水槽(幅120cmx奥行45cmx高さ45cm、水量約220L)
- 120cmワイド(幅120cmx奥行60cmx高さ60cm、水量約400L)
- 150cm水槽(幅150cmx奥行60cmx高さ60cm、水量約500L)
- 180cm水槽(幅180cmx奥行60cmx高さ60cm、水量約600L)
水量を見てわかると思うが、大型水槽だとスペースだけではなく重量もすさまじいものになる。
120cm以上の水槽だと水だけで軽く200kgを超え、更に濾過器や砂なども追加されるため、そこらのタンスや机程度では耐えられない。
専用の水槽台も売っているので、倒壊して大惨事にならないように設置場所は熟考しよう。
巨大水槽だと最悪の場合、床そのものが抜ける危険性すらある。
○器具
基本の要素の確認が出来たら、より具体的に維持管理に関わる器具の役割と扱い方を理解する必要がある。
大前提の水槽は勿論のこと、エアポンプか濾過器のどちらかは最低でも欲しい。
アクアリウムは自然に比べるとどうしても生体の密度が高いため、これらがないと、すぐに水質が悪化したり酸素不足を起こしてしまう。単に水を循環させるだけでも、止水に比べて汚れにくくなるという効果もあるのだ。
エアポンプ
要するに送気装置のことであり、アクアリウムではダイヤフラムというゴム製の部品を電磁石で振動させることで空気を送り出す形式が一般的。
エアストーンという目の細かい通気性のあるパーツと、シリコンまたはビニール製のエアチューブとを繋ぎ、エアストーンの方を水中に沈めて稼働させる。この一連のシステムを「エアレーション」と言う。
周りの空気を吹き込むという簡単な仕組みだが、これがあるだけでもアクアリウム内の酸素事情は大きく改善できる。濾過器の項目でも改めて説明するが、濾過器の種類によってはエアレーションを補助的に使用したり、エアレーション自体で濾過器を稼働するタイプもある。
エアストーン自体にも様々な形状のものがあるので、飼育種やレイアウトに応じて選択するのも大いにあり。
最大の難点は、エアポンプは稼働している限り、二十四時間三百六十五日「ブーーーーン」と振動していること。置き場所が悪いとエアポンプが少しずつ動いていき、「ガッ!」と何かにぶつかって中々五月蝿い。下に防振材を付ける、紐で宙吊りにするといった対策をする人も多い。
メンテナンス中に止めたり、配管を変えたりする際に一時的にエアチューブの内圧が下がると、水槽から水が逆流して水浸しになるので、逆止弁を挟むか水面より少し高いくらいの場所に置くのがベスト。
150㎝以上の大型水槽や数十個以上の水槽を管理しているマニアの場合、ブロワーと呼ばれる浄化槽用のハイパワーのものを用いる場合もある。
濾過器(フィルター)
メダカなど小型魚や淡水貝類、水生昆虫などの代謝の絶対量が少なく、有機的な水質悪化に強い種の場合、数を押え十分に口が広い水槽で飼うならば濾過器を用いなくても飼育可能だが、中型魚以上のサイズの魚、或いはメダカでも一つの水槽で数十或いは数百と言う数になると、すぐに水質が悪化してまめな水換えが必要となるので濾過器を付けた方が管理は楽である。
濾過というと、小中学校の理科で習う「物理濾過」のイメージが強く、事実として水草の破片や餌の食べ残しなど目に見えるサイズのゴミを漉し取ることも大事だが、アクアリウムの場合、よりミクロな現象である「生物濾過」が重要となる。
簡単に説明すると、濾過細菌と呼ばれる様々な種類のバクテリアの代謝に拠って、魚類や水生無脊椎動物の老廃物中のアンモニアイオンを亜硝酸イオンに、更に亜硝酸イオンを硝酸塩へというように、反応性がより低い(≒毒性が低い)物質に変えることを言う。
硝酸塩になるとバクテリアでは殆ど分解されなくなるため、水換えでアクアリウム外に排出することになるが、植物は硝酸塩を栄養として利用可能であり、故に魚(水生動物)の排泄物量とバクテリアの代謝量、植物の硝酸塩消費量とが絶妙に釣り合っていれば、長期間の水換えが不要となり、こうした状況を「バランスドアクアリウム(Balanced aquarium:調和水槽)」と呼んだりする。
濾過器は中に「濾材」と言うバクテリアの住処となるものを詰める必要がある。
その種類は様々だが、アクアリウムで主に用いられるのは、セラミックや軽石を加工した多孔質な濾材である。濾過細菌は物体の表面にコロニーを作って増殖するため、体積に対して表面積が非常に大きい多孔質の素材は濾材として優秀なのである。
因みに、活性炭や竹炭など炭を利用した濾材もあるが、鉱物由来のものと比べて目詰まりが早く、物理濾過寄りの消費型の濾剤になりがちである。
加えて、ウールマットやプラスチック製リング型濾材を多孔質濾材の前(上)に入れたり、濾過器の取水口(ストレーナー)にスポンジを組み合わせて大まかなゴミを取っておくと、生物濾過の効率が良くなる。これを「プレフィルター」と呼ぶ。
飼育する生物の種や数、メンテナンス頻度に応じて適切な濾過器と濾材を選択することは非常に重要である。
そして、あらゆる種類のフィルター機器や濾材の組み合わせを試行錯誤するのもまたアクアリストの嗜みである。いわゆる機材沼を起こす要素であり、生体以上にハマりこむ人も多い。
なお、海水についても基本的なことは同じだが、淡水と比べて濾過細菌の増殖が不安定になりがちで、更に濾過器や濾材は製品によっては海水環境非対応のものもあるため、より慎重な判断が必要である。
メンテナンス時の注意として、バクテリアが定着しているため、水道水でジャブジャブと洗い過ぎるとバクテリアが死滅して逆効果になってしまう。
このため、可能であれば捨てる前の水槽の水で濾材を洗い、洗う際にも念入りに洗うのではなく、詰まりが軽く取れる程度に濯いで済ませるのがベストとされる。プレフィルターを採用しているならば、そちらは遠慮なく洗い落としてOK。
濾過器は様々な形式の物が存在するが、大まかに分類すると以下の通りとなる。
それぞれに目立ちにくさ、掃除のしやすさ、コストパフォーマンス、水草水槽との相性など一長一短の特性がある。
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◯小型水槽用 |
- 投げ込み式濾過器
- エアポンプに繋いでエアレーションによって水を循環させる方式。このような形式の濾過器を「エアリフト式」と呼ぶ。原理としては空気が上昇しようとする浮力に水を巻込んでいる。
性能は低めだが価格は濾過器の中では最安値で、設置もお手軽。ホームセンターやディスカウントストアで売られている「飼育セット」の附属濾過器の定番でもある。構造が非常に単純なので、ペットボトルやタッパー、塩ビパイプなどを組み合わせて自作することも充分に可能。吐出口にパイプを追加して高さを出してやると煙突効果で物足りない性能を補助することが出来る。 ブロワーと分岐コックを組み合わせて使えば一台の送気装置で複数の水槽の濾過器を稼働させることになるためコード類が増えにくく、サブフィルターとして追加し易いのも利点で、水槽を多数並べてコレクション的に飼育するタイプのマニアには特に重宝される。 バッテリー式のエアポンプと繋いで長距離輸送や怪我や病気の治療用のトリートメントタンクにも向いているため、ベテランアクアリストは常に未稼働のものを数個はストックしているものである。 底砂がある水槽なら、半分ほど埋めて使うと半底面式になって性能が上がる。その場合も含めて、掃除の際はそっと引き上げないと水槽内に溜まった汚れをぶちまけてしまうので注意。 猶、エアリフト式全般に言えることだが、エアポンプと泡の音や水跳ねがどうしても起きてしまうので、静かにしたい場所や塩ダレ(跳ねた海水が蒸発して塩状に固まる現象)する海水では不向き。
- スポンジ式濾過器
- 仕組みは投げ込み式と大差ないが、巨大なスポンジが濾材であり、そこから伸びるパイプにエアレーションを施すことで水を循環させる。
スポンジが取水口である為、稚魚や稚エビなど吸い込み難く繁殖水槽では最適な濾過器の一つ。また、巨大なスポンジは伊達ではなく一度バクテリアが馴染んでしまえば投げ込み式以上の性能を発揮する。 欠点としては水槽内で否が応でもスポンジが目立つことと、物理濾過は苦手なこと。カニやフグなどの水槽で用いると鉗や顎で齧られて機能不全になってしまうこともある。そういう意味では裏方の繁殖水槽に特化しているとも言える。
- 底面式濾過器
- 底砂の下に通水用の底面パネルを敷いて隙間を設け、エアポンプやパワーヘッド(水中ポンプ)などで水を吸い上げて底砂に濾過させる方式。
仕組みは投げ込み式以上に単純であるため、昭和のアクアリウムでは塩ビパイプを加工して自作するのがごく普通だった。現在は既製品が多数出ているが、水槽の形状やレイアウトのコンセプトに拠っては自作や改造してみるのも面白い。 水槽の隅にパイプが一本伸びているだけなので、非常に目立ちにくいのが一番の利点だろう。また、底砂の量がそのまま濾材の容量であるため、目詰まりさえ注意すれば性能も高く、日常の底砂掃除がそのまま濾過器のメンテナンスにもなる。ネット入りの濾材やウールマットは設置時に底面パネルの上に乗せておくか、後からでも底砂に埋めることで一応使うことができる。 熱帯魚店やペットショップで採用されることが多い形式で、コレクション飼育や繁殖水槽用としての適性も高い。底面パネルを拡張して、パワーヘッドを用いたり揚水パイプの本数を追加すれば大型水槽で使えないこともない。また、パイプの長さを調整すれば、浅い水深でも使用可能で、後述するアクアテラリウムに最適な濾過器の一つである。 欠点としては、後から追加導入したり逆に撤去しようとすると、必然的に底砂やレイアウトなどを全部出さなければいけない為、再構築に近い大掃除になってしまうことである。 また、底砂に汚れを溜める仕組み上、砂をよく掘り返す魚や大型魚には不向き。大型水槽に適応出来るといってもあまり使用例が多くないのはこの辺りの相性も踏まえてのことであろう。 ちなみに、水草水槽との相性は一長一短。光を遮らない上にパワーヘッド式であれば二酸化炭素を逃がすこともなく、底砂の中が淀まないように水流を作ってくれるので成長そのものには都合がいい。一方で底面パネルまで水草が根付くと逆に根詰まりを起こしたり、メンテナンスで底砂を掃除する際も、水草が隙間なく植えてあると却って抜けやすくなってしまう。どちらかというと短所の方が気になることから、総合的には不向きという説が多めか。
- 内部式濾過器(水中式濾過器)
- エアポンプの代わりに水中ポンプで水を循環させる方式。
ここからは電動揚水ポンプが動力になるため水の循環効率が大幅に上昇。エアポンプが不要になり、やや大きめの水槽でも対応することが可能になる。 エアリフト式と比べて断然静かになり、同時に水草の光合成に使う二酸化炭素を逃がし難いため、水草水槽にも向いている。 逆に言うと、酸素の供給は苦手なので一つの水槽で数多く飼育する場合、エアレーションが別途必要という場合もある。 水槽全体に強めの水流を作ったり、ホースやパイプで接続して水槽用クーラーや他の濾過器を稼働させると言う使い方にも向く。 一方、コンパクトな外見に違わず、濾材の容量はそこまで多くないため、ポンプ出力の割には濾過性能自体は物足りないことが多い。どちらかといえば「濾過も出来る水流発生装置」や「出力が高いプレフィルター」と言った側面が強め。
- 外掛け式濾過器
- 水槽の縁に小さめの濾過槽を引っ掛けて揚水ポンプで水を汲み上げる方式。
アクアリウム内には取水パイプしか存在しないため、目立ちにくさは底面式に次ぐ。濾過槽の容量も小型用の中では比較的多く、用途に応じて濾材の追加や変更することも出来るので拡張性は高い。また、排水時に滝状に水を落とす為、ある程度の酸素を供給する効果もある。音はエアリフト式と内部式の中間程度。 難点は純正の濾材の寿命が短くランニングコストが良くないことと、入り組んだ形やパイプ類が多いのでメンテナンスがやや面倒なことか。そのため、性能向上も兼ねて汎用濾材に変更されることが多い。 また、濾過槽の設置用に水槽の外にある程度の空間が必要で、水槽のフレーム幅に拠っては微妙につっかえたり、蓋や照明の配置に困ることもある。
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◯大型水槽用 |
- 上部式濾過器(上面式濾過器)
- 水槽の上に濾過槽を置いて揚水ポンプで汲み上げる方式。
60㎝水槽以上の水槽では最も標準的な濾過器であり、水槽・上部濾過器・照明+ヒーターとサーモスタットの3点または5点セットで販売されていることも多い。 設置が簡単で手軽に導入出来る。濾材もバリエーション豊富な上に、取り出し易くてメンテナンスも楽な部類である為、水質に敏感な魚や水を汚しやすい大型魚に向いている。揚水ポンプ以外は構造も比較的単純で故障も少ない。マニアの中には揚水ポンプだけ用意して、コンテナやパイプを組み合わせてオリジナルの濾過槽を自作する人もいる。濾過された水は水槽に落下する際に結構な量の空気を巻き込むため、酸素を供給する能力も高い。 難点としては、水槽に直接乗せる性質上、水槽自体に負荷がかかりやすいことと、水位が低いと稼働出来ないのでアクアテラリウムには不向きである。更に、照明を設置したい水槽上面を狭めてしまい、酸素の供給と同時に二酸化炭素を逃してしまうので、水草水槽にも基本的には不向き(丈夫な種ならば育つ)な濾過器としてよく挙げられる。 また、比較的廉価な量産品では揚水ポンプの個体差が割と多く、外れを引いてしまうと振動してカラカラ、空気を噛んでカタカタといった具合で騒音に悩まされることもある。
- 外部式濾過器(密閉式濾過器・パワーフィルター)
- 水槽内には取水・排水の2本のパイプを入れて、ホース経由で水槽外の濾過槽に水を引き込む方式。
サイフォンの原理を用いて水を濾過槽に送って揚水ポンプで水槽に戻すタイプのものと、揚水ポンプで水を濾過槽に送ってその水圧で水槽に戻すタイプのものとがあり、前者は水槽の下、後者は水槽の横に設置する場合が多い。製品全体としては前者の形式のものが多い。 内部式と同様、稼働音が殆ど無い上に二酸化炭素を逃がし難く、大規模な水草水槽との相性は抜群。濾材の種類も上部式同様に豊富でホースの配置にある程度の自由があるため、クーラーや殺菌灯などを繋いだり、水流の強弱や方向を調整したり、水位が低くても対応可能で、アクアテラリウムにも向いていたりと、拡張性は随一で、レイアウトに凝るタイプのアクアリスト達には御用達の逸品である。 難点としては、市販品の濾過器の中では高級品に属するものであり、初期費用はかなりかかる。また、稼働中は濾材が満載で水で満たされているので、外見に比べてかなり重く、メンテナンスはそれをシンクや風呂場などの洗い場に丸ごと持って行き、密閉度の高い頑丈な蓋を開けて、ホースやパイプの中まで掃除したり、終わってからも呼び水が必要で、丁寧かつしっかりと蓋のロックを掛けておかないと、水が濾過槽から溢れ出して大変な事になるなど、上部式に比べるとかなり面倒。 さしずめ剛の上部式、柔の外部式、或いは力の上部式、技の外部式と言ったところだろうか。 意外な盲点としては、老廃物の量が多い大型魚や海水魚に向いていない場面もある。濾材が空気に触れないため、濾過槽が嫌気環境になり易く、有毒な硫化水素などが発生することがあり、循環すればするほど魚が自家中毒に陥る可能性があるのだ。サブフィルターとして使用して、メンテナンスの頻度を意識して高めるなどの注意が必要である。
- オーバーフロー式濾過槽
- 水槽からの掛け流し方式で下に設置した濾過槽に水を引き入れ、揚水ポンプで汲み上げて水槽に水を戻す方式。
最大の利点は圧倒的な濾過容量と応用性。理屈の上では飼育水槽よりも巨大な濾過槽を設置することも可能である。様々な濾材を搭載して、ヒーターやクーラーや殺菌灯を組み込んでも余裕がある場合も珍しくなく、場合によっては、濾過槽の中で別途に魚を育てることさえ出来る。大型魚や海水魚では最適な方式の一つであり、ピラニアやサメなどの危険な魚種でも、極力水槽本体に手を入れずにメンテナンスが出来ると言う利点もある。 或いは小型水槽を連結させた集中濾過装置として構築し、水質の安定性とコレクション性とメンテナンス性を大幅に向上させることも容易い。 地味なメリットとしては、オーバーフローの名称通り、頻繁に足し水をしなくとも水槽の水位を減らさずに長時間維持出来るという特徴があり、水槽内にはパイプを設置する程度なのでレイアウトの自由度は高く、当然ながら照明の邪魔にもならない。 しかし、水槽自体に専用の加工が必要(寧ろ初めからセットで売られていることも多い)な点や、水槽サイズとほぼ同じスペースを下に確保しなければならないこと、何より外部式が裸足で逃げ出すレベルで費用がかかることから個人では簡単に手を出せない。 水族館やアクアショップなどの業務用以外でこの方式を採用するのは、アロワナや淡水エイ、ディスカスなどの高級魚に手が届く資産家のマニアや、水族館レベルで大量の水槽を管理したい骨の随までの魚好きかのどちらだろう。 一見自分で作れそうな気もするが、余程精密且つ頑丈に作らない限り、最悪崩壊して大洪水になるので基本的に自作は推奨出来ない。
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水質調整剤・人工海水の素
基本の項目で説明したカルキ中和剤や水質調整剤に就いては割愛する。
海水魚を飼育する場合は別途海水を用意する必要がある。
人工海水の素を使用して海水を作るのが一般的で、規定量を必要な水量で溶かし、比重計か濃度計で確認して、水温を合わせて使えばOK。汽水魚ならば更に適切な濃度になるように真水で割れば良い。最近の製品にはカルキ中和剤自体も含まれているものが多いが、別途に必要な場合もあるのでその点は要確認。
猶、海水には塩化ナトリウム(食塩)以外にも様々な成分が溶け込んでおり、生物ごとに必要な成分が違うため、ただの食塩を水に溶かしただけでは海洋生物は飼育出来ない。
天然の海水を汲んで使う人もいる。人工海水の質はかなり高いものの、補いきれない微量成分の補給や海水中に含まれるプランクトンや有機物を飼料に用いるなど天然海水ならではのメリットがあるからである。
潮通しが良く、川の水や生活排水が混ざらない場所が理想で、天候にも注意したい。運搬も含めてかなりの重労働になるので、バッテリー式の電動揚水ポンプがあると便利。
プランクトン目当てならばなるべく早く使い切るべきだが、微量成分が目的でストックスペースがあるならば、冷暗所で汲み置いてから沈殿物を濾紙で漉して使うと良い。
ヒーター・サーモスタット・クーラー
基本の項目で説明したヒーターとサーモスタットに就いては割愛する。
付け加えることとしては、ドジョウやウナギのように隙間に潜る性質のある種や、ナマズやハイギョ、大型のフグのように力が強い魚種を飼育する場合、魚体に直接ヒーターが触れないようにヒーターカバーが必要である。
クーラーに就いては、冷水魚は勿論のこと、水温の変化に敏感な海水魚(及びサンゴやイカなどのデリケートな無脊椎動物)でも必要になることが多い。
技術的に言っても、水は温めるよりも冷やす方が厄介であるため、同じ水量対応の物品でもヒーターと比べてクーラーは装置が大掛かり且つ高価である点は覚悟したい。また、冷水魚の場合は夏場に水槽周辺に結露が発生することがある。水槽台や床は腐食に強いものを準備しておき、結露の受け皿が必要な場合もある。素材の比熱(熱容量)の関係上、ガラス水槽よりはアクリル水槽の方が結露は生じ難い。
気休め程度だが、水槽の観賞面や採光面以外を発泡スチロールや発泡ウレタンの保温材で包んでおくと熱の損失は少ない。
大量の水槽を管理している場合は、個別保温では間に合わないため飼育室ごとエアコンで一括管理するというのもあり。その場合、冬場の電気代は覚悟するように。そこまで極端なものでなくとも、冬場に極端に冷える場所でヒーターを使ったり、夏場に異常に高温になる場所でクーラーを使っても、効率が悪く機材の消耗が激しいので、人間が活動してもある程度は快適な場所に水槽を設置すると良い。
底砂
必ずしも底砂は敷かなくとも良い。敢えて底砂を敷かない様式は「ベアタンク(Bare tank:裸の水槽)」と呼ばれ、掃除がし易いことから大食漢で水を汚し易い大型魚の飼育、孵化から間もないデリケートな稚仔魚の育成、外傷や病気または入手直後で体力が落ちた魚のトリートメント用で使われる方法である。
とは言え、水槽の底面が剥き出しと言うのは如何にも見た目が人工的過ぎるのと、薄くでも砂があれば濾過細菌が棲みついて水の汚れを軽減するので、底砂を敷いたアクアリウムもまた一般的である。
底砂を敷く場合、特に淡水水槽では幾つかの注意事項がある。
1つ目は「水質への影響」。
底砂に用いるものには、鉱物(及び、それに類するもの)としては水に溶け易いものもあり、水質を酸性やアルカリ性に傾けることがある。
また、自己採取で用意する場合は勿論のこと、市販品であっても大元を辿れば自然の山や川、海などから採取した土砂であるため、商品としての加工の段階を経ても、ある程度の「不純物」はどうしても混ざることになる。特に海辺から採取したものは、貝殻やサンゴの欠片、石灰岩の小片などが混ざり易いため、飼育水はアルカリ寄りに傾きがちである。
一応、市販品はパッケージに水質への影響が明示されてるが、袋ごとでも不純物の量には微妙な違いがあるため、使用前には最大限に洗浄を行い、導入後、暫くはpHの動向に注意すべきである。
2つ目は「濾過器への適正」。
判り易いのは底面濾過器であり、余りにも細かい砂では目詰まりを起こして濾過機能が低下することがある。
また、外掛け式濾過器や上部式濾過器では、電動モーターやポンプが細かい砂を吸い込んでしまうことで、マグネットやシャフトを痛めることがある。これに就いては、粒径の大きな底砂を用いる以外に、取水口にスポンジフィルターを取り付けたり、取水口を底面から離して設置することでも対処可能である。
3つ目は「飼育生物への適正」。
飼育環境の項目でも記したように、厚すぎる底砂は底生魚にとって害になる可能性すらある。
逆に、水草を植栽する場合は最低でも3㎝、出来れば5㎝以上の厚さが無ければ、水草は根を張ることが難しく浮き上がってしまう。
砂そのものの状態も重要で、粒が角張っているものよりは丸みを帯びたものの方が都合が良い場合が多い。
これらを踏まえた上で、アクアリウムに主に用いられる底砂を紹介する。
所謂「砂利」である古くからの定番素材。
神奈川県の大磯海岸から採取されたものが流通していたことがその名の由来。現在は大磯海岸からの採取は禁止されており、見た目が似たフィリピン産やインドネシア産のものが販売される。
海岸の砂なので、使用開始時はややアルカリ性に傾くが、砂そのものは反応性が低く、長期間使い続けると中性付近で落ち着く。
底面濾過器とは最も相性の良い砂であり、昔ながらの熱帯魚店の販売水槽でもよく使われている。
一方で、水中の風景を再現する、という点では、粒が大きく単調であるため不自然に見えがちである。また、生体の種によっては、誤飲して消化管閉塞の原因になることもある。
アクアリウムで「砂」のイメージに最も近いもの。
読んで字の如く、河川で採取されたものである。国内で採取されたものは、花崗岩由来のものが多く、やや白っぽいものが多いが、採取場所によって黒みが強いものや黄土色に近いものなど様々である。中国や南米、オーストラリアなどの海外産のものが流通することもあり。
大磯砂よりは粒が細かいが、底面濾過器でも使用可能なものもあり、外見的な違和感は少ない。
コンクリートの原料用や庭園用のものはホームセンターなどで安価に売られており、アクアリウムに使用することも可能ではあるが、初期の洗浄は大磯砂の比ではないほどに大変なため、多少高価でもアクアショップなどで処理済みのものを購入した方が楽である。
水田の底の方から引き上げた砂である。故に、個人で採取するのはかなり難しい。
基本的な性質は川砂に準ずるが、粒は更に小さく、砂に潜るタイプの魚には非常に相性が良く、水草の根も張り易い。
粒が細か過ぎるため、底面濾過器には不向きである。
花崗岩が風化したものが更に砕けたものである。麦飯のような茶色と白色が混ざったような色合いが特徴的。
日本からも採取されるが、中国産の輸入も多い。
多孔質であるため物理濾過的な吸着能力もあり、濾材として使われることも多い。これはアクアリウムに限った話ではなく、家庭用浄水器にも麦飯石が用いられることがある。
濾材として用いる場合は、一定期間を過ぎると吸着効果は低減するので、定期的な交換が必要である。
臭気の軽減や建造物の床下の湿度調節資材、園芸資材としても用いられる多孔質鉱物である。
特にアンモニアを吸着する性能が高く、バクテリア類の定着も良好なため濾過材としても定番。イオン交換と言う現象で、水中のミネラルを吸着する効果があるため、軟水を作るのにも用いられる。
ただし、塩水ではイオン吸着が鈍る欠点があるため、ほぼ淡水専用である。また、一定以上の濃度の塩化ナトリウム溶液に漬けると吸着していたアンモニアなどを吐き出す。この性質を利用することで逆に洗浄も可能だがかなりの手間を要するので交換する方が無難。
ガーネット(柘榴石)を多く含む砂である。
日本からも採取されるが、中国やインド、マダガスカルなどからも輸入される。
赤茶色のものが多く、熱帯の河川底床のイメージが強いため、愛用する人も多い。石英質であるため水質には影響を与えない。
欠点としてはガーネットの比重が高い(水を1とした場合、大磯砂は1.7程度だがガーネットサンドは4近くある)ことで、厚く敷くと水槽そのものや設置場所に負荷が掛かり易くなる。結晶が角張っていて摩耗し辛いため、砂に潜る魚には不向き。
薄く敷いても巻き上がり難いため、装飾用の化粧砂として用いることが一般的。
サンゴの骨格が砕けたもの。貝殻もかなり混じっていることが多い。
海水魚では定番の底砂の一つで、淡水魚でもアルカリ性を好むものは勿論、敢えて底砂に少しだけ混ぜることで、pHの極端な低下を防ぐというテクニックもある。
水草水槽にはほぼ向かない。
サンゴや貝殻の骨格を構成する鉱物にはアラゴナイトがある。サンゴ砂よりも水に溶けやすく、pH低下の緩衝効果が高いとされる。
1990年代から使われ始め、2000年代に一気に普及した比較的新顔の底砂。火山灰や黒ボク土を焼成した人工の底砂で、水質を弱酸性に保ち、水草の根の張りは最も良い。
欠点としては、耐久性は最も低く、遅くとも数年で泥状に溶けてしまうので、定期的な交換が必要であり、価格自体も高いのでコストパフォーマンスも良くないことである。
照明(ライト)
池や水瓶を用いた屋外での管理や、総ガラス張り温室など余程採光性が良い場合でない限り、照明器具も必要である。
特に光合成を行う水草や造礁サンゴを育成する場合は必須。
魚やエビなどの飼育だけならば一応無くても構わないように思えるが、夜行性の種であっても、一日中暗い環境で育てるとバイオリズムが狂ってしまい、食欲や免疫力が低下して病気になることもある。また、温帯域の種の場合、日長の変化を感じ取って繁殖行動に移るという種が少なくないため、ブリーディングには重要なこともある。更に、水質維持の観点では、水草以外にも水槽内の藻類や光合成細菌などが、光エネルギーを用いて亜硝酸や硝酸塩を消費してくれるという側面もある。
従来は蛍光灯が主流で、大型水槽には水銀灯を用いる例もあったが、水俣条約(水銀条約)の批准に伴い、水銀灯は2020年に国内での製造や輸入が禁止され、蛍光灯についても2027年までに同様の措置が執られる予定である。
故に、2026年現在はLED照明が基本であり、サンゴを中心とした海水水槽など光量が必要な場合はメタルハライドランプを用いざるを得ないと考えられていたが、LED光源は屋内での植物栽培に対する需要へ応えるため植物に対して適切な波長を実現するノウハウが蓄積されており、劇的な高性能化が進行している。そのため、家庭園芸用LED光源を流用・共用することも現実的になっている。
ボード状でスタンドを用いて水槽の上に載せるものや、クリップ式で水槽の縁やラックなどに取り付けるもの、フレームや天井から吊り下げるものなど、形状は様々でメンテナンス性やインテリア性、予算に応じ適宜選択する。
注意点としては光量が強ければ強いほど良いという訳でもなく、水草の種類によっては光が強すぎる事によるダメージ(葉焼け)を受ける場合もある。
昨今では調光式のLEDが出回っており、無調光の機種より値段は張るものの、光量が強すぎた場合にも買い替える羽目にならずに済むため便利。魚の色や敷いている底床などに合わせて光色を変える事で雰囲気作りにも一役買ってくれる。
因みに、サンゴの場合、水草とは異なる光の波長を求められる。そのため水草用とは違った、サンゴ用の照明が製品化されているのでそれを用意しよう。
蓋
表層付近で生活する魚や游泳力の強い魚を飼う場合は、跳び出し防止のためにほぼ必須であろう。
水槽の縁に対して水位が充分に遠い場合は不要な場合もあるが、飼育水の蒸発やエアレーションの飛沫を防いだりと、あって不自由することはない。
30〜40㎝水槽にはプラスチック製の、45㎝以上の水槽にはガラス製の、各々の水槽のサイズに対応した蓋が市販されている。プラスチック製の蓋はアクリルカッターや鋸、電動ドリルやハンダ鏝などで比較的容易に加工可能なので、自分の使い易いように改造するのも良い。120㎝以上の大型水槽で大型魚を飼う場合、種によっては薄いガラス蓋を割るようなものもいるので、丈夫な透明塩ビ板を用いる人もいる。猶、アクリル板は空気中の水分を吸収して反ってしまうので、単体では使えず高い工作技術が必要になる。
市販されている水槽用の蓋は、チューブやコードを通す様に角が欠けた形状になっているものが多い。ウナギやウツボのように僅かな隙間からも跳び出すようなもの、或いはカニやタコのように水槽の角をよじ登ってしまうようなものを飼う場合は、その僅か隙間から脱走して干涸びてしまうこともあるので、ウールマットやスポンジを適当なサイズに切って詰めておくと良い。
また、カメやイモリを飼う場合は蒸れ防止のためにメッシュ状になったものを用いると良い。魚を飼う場合でも夏場はメッシュ状のものを使うと、気化熱によって水温を下げる効果もある。その場合は水位の低下には注意すること。
その他の器具
日々のメンテナンス上で必要なグッズを紹介する。
水温管理上、ほぼ必須。
着色アルコール式のものは安価だが、劣化し易いので補助的に用いると良い。
デジタル式のものは故障も少なく、水槽の外からでも水温を測れるものもある。価格はやや高価。
水槽に設置するもの以外にも、水換えの際の水温合わせ用に、手持ちのものも用意しておきたい。
水換え用のバケツ、ホース、汲み出しポンプなども不可欠。
バケツは採集や運搬、一時的な隔離ケースとしても使える。
汲み出し用ポンプは手動のもので十分だが、大型水槽や多数の水槽を管理する場合には電動式のものも選択肢に入る。底床クリーナーと呼ばれる、底砂に突っ込んで溜まった汚れを吸い出せるタイプもある。
水槽の壁面やレイアウトに付着するコケ(藻類)除去用のグッズも必要。
専用のスクレーパーやスポンジも勿論売っているが、スクレーパーは三角定規やプラスチック製のカード、スポンジはウールマットの切れ端などでも代用可能である。
石や流木など、表面に凹凸が多かったり、入り組んだ形状のものの場合は歯ブラシが便利。100円ショップのもので構わないし、使い古しのものでも問題ない。
これも言うまでもないが、人間用の洗剤は使わないように。
水草の植栽用、器具のメンテナンス用、中大型魚への給餌用など色々な場面で必要となる。
菜箸などで代用出来る場合もあるが、各サイズのものを持っていて損はない。
大型魚への給餌にはトングを用いても良い。
トリミング用のステンレス製の鋏も併せて用意したい。
この他、飼育する生体次第ではオプションでこのような器具も用いる必要がある。
水草の光合成に必要な二酸化炭素(CO2)を補給する為の器具。
細かい気泡にして送ったり、フィルターに繋いだりもできる。
ボンベ式が主流だが発酵ガス式というものもある。
紫外線ライトで水を紫外線殺菌できる装置。
水換えの削減や病気の予防などに有効だが色々とコストはかかる。
大抵は水流ポンプなどと繋いで循環させるように使用する。
水中の細かい汚れや濁りの元を泡で分離して排出する。
淡水では上手く作動しないので主に海水向け。
アクアリウムの派生形
背景と歴史の項目でも記したが、アクアリウムはテラリウムの一種である「ウォードの箱」を参照して誕生し、初期の発展段階に於いてさえ「水中」のみならず「水辺」の生態環境を再現する試みが見られた。
必然的に、水場と陸場を併せ持ったものが作成されるわけであり、
アクアテラリウム(
Aqua-terrarium)と呼ばれるようになった。
水中と陸上という二つの環境を持つことによって、水中では魚や水草を育て、陸上には観葉植物を植栽することで、生態系の連続性を再現しようと試みたものである。或いは、カメやカエル、イモリやカニや水生昆虫など、水場と陸場の両方が必要な動物の場合は、当然ながらアクアテラリウムで飼育すべきである。
一方で、一つの空間でアクアリウムとテラリウムを同時に作成管理する必要があり、同じ用量の水槽では水中・陸上それぞれの空間が小さくなるため制約も大きくなるなど、維持の点では難易度が高くなるのも事実である。
日本に於いては1990年代後半から2000年代前半にかけて流行し、陸場に散水するための分岐ユニット付きの濾過装置や、超音波を利用した霧発生装置などが開発されたが、やはり作成管理の難しさから、徐々に下火となっていった。
2010年頃から注目されたものには
パルダリウム(
Paludarium)がある。
床材に水が常時うっすらと溜まるほどの非常に高湿度なテラリウムとも、水深が限りなくゼロに近いアクアテラリウムとも解釈可能である。
コケ植物やシダ植物、サトイモ科やキンポウゲ科などの湿生植物、或いはウツボカズラなどの
食虫植物には最適な環境を構築可能であり、ヤドクガエルやアマガエルなどのカエルを中心とした
両棲類とも相性の良いビバリウムでもある。
水の管理にそこまで頭を悩ませる必要もなく、植物のみならば給餌の必要もなく省エネである。特にコケ植物を主体としたものは
コケリウムとも呼ばれており、500ml程度の小型瓶でも作成できるので、近年は特に人気の高まっている。
インテリア性の高いアクアリウムが90年代に登場したが、その極北として、役目を終えた古い
MacintoshやiMacの筐体を利用し、その内部に専用のアクリル水槽を組み込んだ、
MacQuariumというものがある。
生態系の再現や生体管理を目的としたものではなく、古いコンピュータを捨てずに再利用する環境意識の啓発、インテリアとしてのデザイン性・存在感、現代アートとしての表現に重きを置いたものである。
起源は1992年、Mac界のコラムニストの
Andy IhnatkoがMacintosh 512Kのアップグレード方法を問われ、冗談で「水槽にするのが一番だ」と答えたことに始まる。
ところが読者が本気にし、作り方を求める手紙が殺到したため、Ihnatkoは設計図を公開した。
その後、1998年には
Carl Blakeが Macintosh 128Kを水槽化し、MacAquariumとして事業化した。
更に、2000年代にはデザイナー
Jake Harms がiMac G3を水槽化したiMacQuarium
iMacQuarium を制作し、専用タンクやフィルターを内蔵した完成品やDIYキットを世界中に販売したことで、一つの文化として確立した。
構造としては、筐体内部の電子部品をすべて取り除き、CRTの曲面に合わせて成形したアクリルタンク(約3米ガロン:11.36Lℓ)を収め、フィルター・ポンプ・LEDライトを内蔵するというものである。給餌用の上蓋やメンテナンス用の収納スペースも設けられ、見た目だけでなくアクアリウムの機能も満たしている。
特にiMac G3のカラフルな外装は水槽との相性が良く、ブルー、アクア、スモーク、フラワーパワーなど当時のカラーをそのまま楽しめる点も人気だった。。
この他、製品化されているわけではないが、ブラウン管テレビや冷蔵庫、電話ボックスなどを改造して水槽に仕立てる例は古くから存在する。
◉注意点
さて、準備や管理について色々挙げてきたが、実際に水棲動物を飼育するにあたっても気を遣う点は数多くある。
まず、世話をする際には
素手でがっちり触れるのはなるべく避けて欲しいのだが、これは体表が擦れやすいためという理由も勿論だが、魚類は変温動物であるゆえ自然の水温より熱い物には弱く、人間の体温(37℃前後)でも熱すぎて火傷の可能性があるためでもある。
体温程度でそんな大げさな…と思われそうだが、これはわかりやすく言えば
使い捨てカイロを直接当てていると起きてしまう低温やけどと同じ理由で、魚の方にも思わぬ負担をかけてしまうし、それらが命に関わる可能性は十分にある。
そのため、網を使って掬うのが基本。やむを得ず手で掴みたいのであれば魚に無害な手袋を着けたり、手を前もって冷水で冷やしておくと魚への負担を軽減できる。
魚にトゲがあって網や手袋に引っかかってしまう場合には、プラケースやビニール袋に誘導して水ごと掬ってしまう手もある。
また、種類によっては毒針や鋭い歯を持っていたり、果ては
強い電気を放電したりと人間に対して殺傷能力を持つ生き物も少なくない。
そうした魚や水棲動物を取り扱うときは言うまでも無いが普通の種類以上に用心しよう。
また、そもそも直接触る機会が少ないのもあるが、魚類は「人慣れ」はするが哺乳類や鳥のように「なつく」訳ではないとされる。
餌をくれる人程度には認識してくれるが、やはり手を入れるだけで大半は逃げてしまうし、人の感触自体を好いてじゃれたりすり寄ってくるといったことはどうしても難しい。
とはいえ、人の顔を覚える事はよくあるらしく、見知った人を見かけると餌をねだる動きを見せるものもいるので、それだけでも世話をしていると楽しいのだ。
例を挙げればスネークヘッドこと雷魚やオスカーは長期間飼い込まれて人慣れした個体になると水槽に人が近づいた時に餌をくれとばかりに積極的に前面に寄ってきて踊るような動きを見せることでも知られているようだ。
☆タンクメイト
アクアリウムで飼育される生物をタンクメイトと呼ぶ。
ここからは、淡水のアクアリウム(英語圏ではFresh water aquariumと呼び、日本で単にアクアリウムと言った場合はこちらを指すことが多い)と海水のアクアリウム(同じく英語圏ではMarine aquariumと呼び、こちらは日本でも一般的な名称である)とを分けて、それぞれで飼育される様々な生物を簡単に紹介する。
アクアリウム(淡水水槽)
金魚・錦鯉
観賞魚の原点にして頂点。
概要で述べた通り、どちらも元々は中国を起源とする魚であり、その後日本で独自の改良を続けられた結果、数百以上の品種が作り出されており、アクアリウム界隈に於いて大勢力を誇る。
金魚は原種となったヒブナに極めて近い和金から始まり、琉金にコメットに朱文金、出目金や蘭鋳(らんちゅう)や土佐金など、最早同一の種とは思えないほどに形態のバリエーションが豊富である。
その独特な形態と配色は、着物や雑貨や和菓子などの和柄のデザインと頗る相性が良く、玩具やキャラクターのモチーフとなることも多数。そして縁日や夏祭りの風物詩である
金魚すくいや古くは座敷遊びとして、現代でも釣り堀に放されて小型の釣り竿で釣るなど、単なる観賞魚と言う枠を超えて、日本文化を象徴する意匠の一つと言う、最早「文化的素材」と称しても過言でない存在感のある魚である。
現在進行形で品種改良や品評会も盛んであり、徹底的に極める愛好家は「蘭鋳専門」「地金専門」のように特定の品種の追究に生涯を捧げる、と言うような生活を送る人さえいる。
当然ながら、その執念と努力と技術と運の結晶である品評会優勝魚やその血統などは、市場価格が100万円を超えることもザラである。
勿論、全てが全てそのようなものばかりではなく、ホームセンターのペットコーナーで数百円で売られている金魚も、丁寧に育てあげれば充分に立派で美しいものに育てることが出来るため、初心者への間口も広い。
しかし、その親しみやすさとは裏腹に大食漢でフンが多く水を汚しやすい、丸っこい品種の金魚は鑑賞性極振りの品種改良であるが故に魚のくせに泳ぎが苦手と評されるほどで先天性虚弱体質の個体も相当数見られ、原因不明の病気で突然星になってしまう、後述するように観賞魚としては長い寿命や原種がフナの仲間だけあって品種によっては30~40㎝まで成長するために広いスペースを要するなど、飼育を志した者を回れ右させるくらい困難な要素がてんこもりであり、本気で飼育する場合のハードルは意外なほど高い。
そのような事情もあるにもかかわらず、
優美な泳ぎ姿や鯉と同様に人に慣れると餌をねだる愛らしい仕草に魅了される者は後を絶たず、まさにビギナーから玄人まで虜にし続ける「魔性の魚」でもあるのだ。
錦鯉は江戸時代に発見されたコイの変種を起源とする品種で、紅白に始まり大正三色や昭和三色、黄金や丹頂や秋翠など、単に派手なだけではない奥行きと味わい深さを持つ。
金魚もそうだが、特に錦鯉の美しさは個体ごとに異なる模様の入り方や色のバランスやコントラストの要素が大きく、成長過程でも刻々と変化するため、まさに一点物であり「泳ぐ芸術品」と呼ぶ人さえいる。
日本のみならず、海外でも東洋趣味を代表するものの一つとして高い人気を誇る。
元来が適応力の高い丈夫な魚であるため、日本以外でも中国やアメリカ、ヨーロッパ各国など世界中で飼育繁殖が行われており、厳密な定義での錦鯉ではないが、インドネシアで交雑改良されたヒレナガニシキゴイなどの海外独自の発展も見られる。
勿論、日本の錦鯉の品質は格別であり、ある程度のレベルの個体は輸出されていて各国で入手可能だが、本格的なマニアになると買い付け目的で来日するようになる。最上級品になると1000万円を下らないとんでもない価格になることさえあるが、金に糸目を付けずに買い占めていく豪(業?)の者さえいるとか。
飼育の観点から言うと、古くから知られる品種、特に錦鯉は「上見」が前提であるため、池で飼うのが最適解であるのも他の観賞魚とは一線を画している。池を用意できない場合も多数飼育する場合は入手しやすい大型タライや建設業でコンクリート等を練るのに使われるトロ舟と呼ばれる大型容器で屋外飼育する愛好家も多い。
とは言え、魚であることには違いないので、水槽で飼っても問題は無く、周辺器具の豊富さや手入れのし易さから言っても水槽飼育から始めるのが手軽だろう。
欠点としては、錦鯉は勿論、金魚も品種によっては全長40㎝と大型になり、改良品種であるが故に華美過ぎて野生の風景に馴染まないということで、緻密にレイアウトしたアクアリウムで飼育するのには向いていないことである。
(魚自体を楽しむ、ということの出発点にして終着点かも知れない)
また、魚としては長寿な方であり、金魚は平均でも10年、最長では43年生きた記録があり、錦鯉に至っては推定226年生きたものがいたとさえ言われているため、ある程度は将来を見据えた飼育が重要である。
なお、伝統的な飼育容器の「金魚鉢」は、名前と裏腹に金魚の飼育にはあまり向いていない。
魚は飼育容器の水量に応じて成長スピードやサイズが変化することを踏まえても、金魚の最大サイズに対して金魚鉢はあまりに小さ過ぎる。また、球形に近い窄んだ口であるため、水を多く入れると水面が狭くなって空気と触れる面積が減って酸欠になり易く、曲面ガラスがレンズの働きをして像に歪みが生じるため観賞しにくくなり、フィルターやエアーレーションやヒーターなどの器具の設置が困難であるなど、容器そのものの審美性を除くと、飼育容器として使い勝手が悪い点が多い。そもそも元来は普段は池で飼育している金魚を一時的に屋内で楽しむための容器であるので長期飼育のことなど考えられていないのである。
陶器の水蓮鉢や水甕のような大きな容器ならば、水力や口の広さといった問題は解決出来るが、矢張り利便性や観賞性では水槽、安定性や物量性では池の方が優れている。
どうしても金魚鉢で飼ってみたい人は、幼魚のみの期間限定として、エアポンプと頻繁な水換えを行うべきである。
抑も、本格的に飼育するなら、どの魚でも大抵の場合は普通の四角い水槽に行き着いてしまうものである。
近年のアクアリウム界隈の一大トレンド。
これも概要で述べた通り、江戸時代後期にはメダカは幾つかの突然変異が固定化されていたが、その状態からあまり進展がなかった。
ところが2004年に楊貴妃、2007年に幹之という今なお人気が高いスター品種が登場してから風向きが一気に変わり、新品種の開発ブームが勃発してロングフィンタイプ(ヒレ長、青蝶)やショートボディタイプ(ダルマ)、黒化型(オロチ)や二色型や三色型、ラメ入りに透明鱗にビッグアイなど、金魚に匹敵する形態や色彩のバリエーションが固定化されつつある。
孵化から成長して産卵するまで1年未満で到達可能で、金魚と比べても小規模な設備で飼育出来ることが「熱し易く冷め易く、住宅事情の悪い」日本人の特性に完全にマッチした故の大躍進であったのだろう。
コロナ禍の際に趣味としてのアクアリウムが評価された際も、熱帯魚はロックダウンにより海外からの輸入が一時停止してしまい、金魚や錦鯉はスペースが必要なことから、蓋を開ければメダカのほぼ一人勝ち、と言う状況だった。
極め付けは、2024年6月に小学館から出版された図鑑「小学館の図鑑 NEO メダカ・金魚・熱帯魚」である。学習図鑑で観賞魚を大々的に扱う時点で特異な存在だが、メダカが主役級の扱いを受けており、全体の4分の1近くがメダカに関する内容である。
飼育に関しては、メダカも屋外でグリーンウォーター化した水で飼うのが一番調子良く飼えるが、金魚や錦鯉と比べれば水草でレイアウトしたアクアリウムでの飼育には遥かに適正がある。
今後もアクアリウムの一大派閥を担うジャンルであることは間違いないだろう。
日本産淡水魚
日本の水辺の原風景。
文字通り日本が誇る淡水魚達のことであり、小はメダカ(ここでのメダカは改良品種ではなく、原種のキタノメダカやミナミメダカなどを指す)やヒナハゼのような5㎝に満たない小型魚から、大はメートル超えのイトウまで。南方系の各種ハゼ科や北方系のサケ科やトゲウオ科、コレクター魂を擽る温和な底物である各種ドジョウ科に美麗な婚姻色と二枚貝に産卵すると言う得意な生態で知られる各種タナゴ科、獰猛な肉食魚であるカワアナゴやウナギやビワコオオナマズもいれば、便宜的に外来種のカムルチーやチョウセンブナ、場合によっては各種汽水魚や中国や韓国、北米や産の温帯魚まで含むことさえあるため、バリエーションは想像以上に豊富で、専門に追究するマニアも少なくない。
ちょっとした郊外に出掛けば、フナやオイカワ、ドジョウやヨシノボリを自家採集することも容易で、それらの飼育からアクアリウム界隈に入り込んだと言う愛好家は多数存在する。居住地の近くで入手したものならば気候や環境を把握・再現し易く、温度管理に頓着しなくても良いというメリットもある。
一方で、奄美や八重山産の南方系の魚種には冬季の保温が、北海道や東北、或いは湧水環境の魚種には夏季に冷却が必要なことが多いが、形態や生態に独特な魅力的があるのも事実。自分自身の出身地がその近所ならば、ある意味で天佑だと思うべし。
一方で、近年な過剰な治水や農地整備による環境破壊と一部の心無いマニアと業者の乱獲、更には外来種による生態系の劣化により絶滅危惧種が相当な数に登るのは懸念点。
アユモドキやネコギギのような天然記念物は勿論、絶滅寸前のものが少なくないタナゴ科でも、幾つかの種は国内希少野生動植物に指定されて採集禁止になっているため、フィールドワークの際には要確認。漁業権や水難事故にも注意すること。
卵胎生メダカ
グッピーという観賞用熱帯魚の大スターを擁するキング・オブ・熱帯魚。
メダカの品種改良が急速に進んだのも、グッピーの品種改良によって蓄積されていた遺伝の放送や形質の発現などの知見が、ある程度応用出来ていたと指摘するマニアもいる。
品種の多さでは金魚やメダカには引けを取らず、しかもどのような形質がどのような遺伝経路によって発現するかの検証が非常に進んでいるのが特徴的。アクアリウム界隈随一の理論派であるとも言われる所以である。
他にも初心者向けのソードテールやプラティ、マニア向けで生態が特徴的なベロネソックスやヨツメウオ、グーデアなど個性的な面々が揃う。産地は北米南部から中南米。
最大の特徴は、稚魚を直接出産する胎生・卵胎生であること。そのため繁殖も容易な種が多いが、逆に増えすぎて困る事態にもなりかねない点は注意。また、交配を重ねると次第に先祖返りで地味な原種に近い色になってしまうこともあり、近親交配によって奇形や遺伝病が出易くなることも多いため、定期的に別の血統や導入するのが、長く楽しむコツである。
卵生メダカ
自然が作り出した宝飾品。
卵胎生メダカの対になるカテゴリーである。
魚は基本的に卵生だろう、と言うツッコミは無しで。
アジアのものもいるが、アフリカと南米に種数が多い。
特にアフリカ産のノトブランキウス属や南米産のアウストロレビアス属の繁殖生態は特徴的である。雨季の終わりに産卵して親魚は死に、卵は干上がった池の泥の中、時には殆ど水気が無い状態で乾季を過ごし、再び雨季が巡ってくると孵化した後に急速なスピードで成魚に成長して産卵する…ということの繰り返しである。
このような特異な生態を有するため、僅かな湿り気のある水ゴケに卵を包んで梱包して、郵送で世界各国のマニア同士で珍種や美麗種の交換を行う、ということが今現在でも行われている。逆に言うと、成魚の寿命がかなり短いため、一般的な観賞魚の流通経路に乗りにくい、と言うのは間口の広さと言う観点では欠点である。
尤も、このカテゴリーの魚が全てそのような生態という訳ではなく、他の熱帯魚と大差ない生活史を送るものもおり、例えばランプアイやクラウンキリーなどはポピュラーで、一般的なペットショップや熱帯魚店でも頻繁に出回っている。
改良品種が知られる種もいるが、同一種でも地域ごとに色彩や模様が異なる、ということが少なくないため、原種に拘って収集しているマニアが多い。透明度の低い水域で確実に繁殖を成功させるためが、元々の体色や婚姻色がド派手なものが多いというのもあるだろう。
なお、卵生メダカ及び卵胎生メダカは、現在までの諸研究で日本のメダカとは目レベルで異なる全く違うグループであるカダヤシ目に含まれることが判明しているにも関わらず、半世紀以上過去の分類体系(かつてはメダカ目という分類階級があったが多系統であることが判明したため消失した)縛られた名称を使い続けていることは好ましくないとの理由て、それぞれをLivebearerとKillifishと称するのが適切とする意見も少数だが存在する。
ややこしいというか、アクアリウム業界の怠慢と学術界の啓蒙放棄が原因である。
コイ・ドジョウ
混沌たる一族。
観賞魚のカテゴリーとしては、金魚・錦鯉・日淡を除いたコイ目全般がここに含まれる。
在来分布は南米とオーストラリア、及び海洋島を除く全世界で、淡水魚類ではナマズ目を超える最大派閥で4200種以上が知られている。
日淡水にもコイ目の魚は多いため、その延長版として親しみ易さもある。
東南アジアから南アジアに掛けての多様性が凄まじく、アフリカにも日本未入荷の種が相当にいる。北米やヨーロッパでは特定の科が適応放散している傾向がある。
上位分類は非常に厄介で、これだけの種数がいながら2000年代初頭まで科は5つしか無かった。特にコイ科の内部系統に関する学説が安定せず、分割しようにも出来なかったというのが大きい。現在は分子生物学の急速な発展と、CTスキャンを用いた骨格系の詳細な解析によってコイ科とドジョウ科の系統関係が整理され、23科に分類する説が安定しつつある。
観賞魚として見た場合、大きく游泳型グループと底生型グループに分けるのが妥当であろう。
游泳型グループで流通が多いのはコイ科とダニオ科である。
前者の代表はプンティウス、後者の代表はラスボラであろう。この属自体も嘗てはそれぞれ多系統なグループであり、前者はバルボデス・ドーキンシア・デスモプンティウス・ペチア・プンティグルス・シストゥムスなどに、後者はボララス・コテラッティア・ラスボロイデス・トリゴノポーマ・トリゴノスティグマなどに分割されている。
広義のラスボラ類は近縁種を含めた混群を作り、性質は温和で水草を痛めることは殆どないため、水草水槽での飼育に最適な魚種の一つである。細身のハヤ体型の種が多く、サイズも3〜20㎝程度の小・中型種であり、丈夫で飼い易い種が多く一般家庭でのアクアリウムに向いている。色合いは落ち着いたものが多いが、仕上がったファイヤーラスボラやラスボラ・カロクロマの深みのある体色は一見以上の価値がある。
一方で広義のプンティウスは体高の高いフナ体型の種が多く、サイズは4〜50㎝とラスボラよりも大型になる種もいる。チェッカーバルブやチェリーバルブのように小型種には水草と相性の良いものもいるが、全長10㎝以上になる種に関しては、多かれ少なかれ水草を齧るものが多いため、水草水槽には向いていない。また、スマトラのように多少性質がきついものがいる。とは言え、魚種の組み合わせを工夫すれば混泳自体は充分に可能なものが殆どで、レッドフィンバルブなどは大事に飼育すれば20年近く生きる長寿なものもいる。体質もラスボラと同様に丈夫で飼育自体は容易なものが殆どである。このグループも飼い込んでこそ判る体色の素晴らしさがあり、特にブラックルビーやロージーバルブ、メロンバルブやプンティウス・フィラメントーススの婚姻色は数百円で販売されている魚とは思えないような美麗なものである。
この他、ゼブラダニオやジャイアントダニオ、アカヒレやハチェットバルブにインレキプリス、アポロシャークにシルバーシャークにアロワナカープと、ポピュラーな種や魅力的な種は枚挙に暇が無いが、キリがないので割愛させて頂く。
底生型グループはドジョウ科・アユモドキ科・フクドジョウ科・タニノボリ科などが挙げられる。
ドジョウ科の代表はクーリーローチだろう。
体型こそ日本のドジョウと大差ないが、オレンジ色を基調としてチョコレート色の鞍型の模様が多数入るのは、如何にも東南アジアの熱帯魚と言う感じである。丈夫で飼育し易く、細長く柔軟な体を活かした「掃除屋」としてアクアリウムに迎えるのも良い。近縁種が複数おり、ワンコイン以下の価格で収集欲を掻き立てられる。
他にも日本のシマドジョウに似るが頭部が長いホースフェイスローチやシラスウナギに似たイールローチなど、様々な種が輸入されている。
アユモドキ科ではクラウンローチが有名且つ美麗である。
タニノボリ科はヒルストリームローチなどが含まれる。
種によっては非常に流れが強い環境に棲み、垂直の滝さえ平気で登って行く。餌もやや特殊で石や流木の付着藻類を主に食べる。飼育下ではアカムシや人工飼料も食べるが、可能ならば飼育用とは別の水槽を用意して、藻類を増殖させた石や流木を水槽に入れると言う方法で給餌させたい。
熱帯魚界の花形達。
2000種を超える淡水魚の大派閥の一つであり、その8割以上が中南米原産で、残りがアフリカにいる。グループとしてはコイ目に近縁で、大きな違いとしては口(顎)に歯を持ち脂鰭を持つことである。後述するナマズ類が多様化している地域に産するためか、底生型のグループが少ない傾向もある。
観賞魚としては「〇〇テトラ」と称される南米産で全長3〜5㎝程度の小型種は特に人気である。
特にネオンテトラは代表的な熱帯魚の一つであり、殆どのアクアリストは一度は飼ったことがあるのではないだろうか。よく似たカージナルテトラはネオンテトラ以上に丈夫で、最近はブリード個体が安定して流通するようになったので価格も安定している。サイズの割には生理的な寿命が長く、7年近く生きることもある。
この他、グローライトテトラやレモンテトラやプリステラ、ブラックファントムテトラやレッドファントムテトラやヘッドアンドテールライトテトラ、ラミーノーズテトラにペンギンテトラにグリーンファイヤーテトラなどなど、美しく丈夫で水草とも相性が良く、東南アジアや南米でのブリード個体が流通の主体であるから1匹100円以下で購入可能であるなど、観賞用の熱帯魚として非常に優れたものが多い。繁殖についても、ネオンテトラはやや難しいが、グローライトテトラやレモンテトラは繁殖は容易な部類であり、密に水草を植えた巨大なアクアリウムでは、自然に累代飼育出来る場合さえある。
勿論、入門種ばかりというわけではなく、ベテランでもワイツマンテトラ(ワイツマニーテトラ)やレインボーテトラ、トゥカーノテトラなどは飼育や繁殖に苦戦することもある。ジャックナイフテトラやインペリアルラピステトラなど、商業ルートに乗ってから間もない種も多く、抑も膨大な数の未記載種や正体不明の種がいるため、それらを専門に集めるマニアも少なくない。
この他、シルバーハチェットやマーブルハチェットなど、アクアリウムの上層を泳ぐ鳩胸で跳躍力が高いハチェットフィッシュ類や、アークレッドペンシルやドワーフペンシルなど細長い体で尖った吻が特徴的で糸状藻類の除去にも役立つペンシルフィッシュ類、レッドスポットダーターなどハゼの様な体型で底生生活を送るダーターテトラ類など、様々な生活様式を送るものがおり、これらを水草と組み合わせて一つの水槽で育てるのも充分可能である。
より特殊化したものには、水上の葉に産卵するコペラ・アーノルディや、洞窟性で眼や色素が退化消失したブラインドケーブカラシンなどもいる。混泳飼育には向かないものの、個別で飼育すれば興味深い生態を示してくれる。
全長20㎝以上の中・大型カラシンで最も有名なものは
ピラニアであろう。
アマゾンの人喰い魚だの淡水魚トップクラスの危険生物だのと、凶々しいイメージが先行しているが、意外と臆病で神経質なものも多い。体質的には丈夫だが、鋭い歯を持ち血液に敏感であるのは事実なのでメンテナンスは要注意。トリミングの観点で水草水槽には向いていないかも知れない。
ピラニアに近い仲間にはメチニス・ミレウス・ミロソマなどがいる。草食性が強く水草水槽では飼えないが性質は大人しく、同種や近縁種は勿論、シクリッドやナマズなどとも一緒に飼うことが出来る。丈夫で長生きであり20年近く生きることさえある。
この他にも、非常に長い牙を持つぺーシュカショーロ、古代魚のガーに似たハイドロシナスガー、尾鰭が美しく赤紫色に染まるピンクテールカラシン、淡水シーラカンスの通称がある独特の体型を持つタライロンと近縁種のホーリーやレインボーホーリーなど、魅力的な魚種が大量にいる。
tクラスのアクアリウムを管理出来るハイマニアには、巨大なメチニスという雰囲気のブラックコロソマやレッドコロソマ、日本の怪魚の一つ、イトウに似た雰囲気のドラードなどを欲する人もいる。
アフリカ産カラシンは種数こそ少ないものの、アクアリウムでも一定以上の存在感がある。
最もポピュラーなのはコンゴテトラである。雄成魚は背鰭や尾鰭、臀鰭がベール状に伸長し、タマムシにも似たメタリックな青やオレンジ、緑が入る体色は非常に美しい。全長が10㎝程度になり、柔らかい水草は齧ってしまうという注意点はあるが、60㎝以上の水草でアヌビアスなどの葉が硬い水草を用いれは飼い易い。
この他、レッドアイカラシンやイエローコンゴテトラも同じ様にして飼うことが出来る。一回り小型のレッドチェリーコンゴテトラはかつてアフリカ産カラシンの最高峰とも言われ、未だに価格は高価であるが、近年は入手の機会が増えた。
クラウンテトラも外せない。体高が高く綺麗な三角形をした各鰭を持ち、オレンジから朱色の地色に黒い横帯が6〜8本入ると言う、非常に特徴的な魚である。草食性が強く気性も荒いため、水草水槽や混泳には向かないが非常に丈夫で長生きするため、120㎝水槽で単独飼育すれば素晴らしいペットフィッシュになる。
ややマイナーではあるがビッグスケールテトラと呼ばれるブリキヌスの仲間もおり、こちらは水草から小魚などの生き餌までなんでもござれな雑食性なので人工飼料もすぐに餌付いてくれる事が多い。
しかし雑食性故に小魚との混泳や水草水槽には向かず、更に大食漢なので餌食いが遅い魚の分まで奪って食べてしまうのは玉に瑕。
とはいえ、性格そのものは温厚なので中型~大型で尚且つ餌食いのスピードで競り負けない種との混泳に向いていると言えるだろう。
アフリカの「牙魚」にはタイガーフィッシュがいる。やや細身で大きなニシンのような雰囲気があるが、口元には鋭い牙が多数並んで迫力満点である。釣り人の間で有名なムベンガもこの仲間である。巨大な水槽さえ用意出来れば体質的には強健な部類である。
同じくアフリカの牙魚に分類される種にはワニのような頭部を持つアフリカンパイクカラシンもおり、野生下では50㎝~70cmにもなるものの、飼育下ではそれほど大きくならず、30㎝いけばいい方である。
更に獰猛そうな見た目でありながらそれ程攻撃的ではなく、タイガーフィッシュ程大きな水槽もいらないので秘かに注目されているという。
観賞魚の「奇」や「珍」の極致。
水底を蠢く妖しくもユーモラスな面々である。
5大陸全てに産し、3000種以上の種が知られている淡水魚の最大派閥である。
南米にその3分の1近い種がおり、次いでアフリカおよび東南アジア産の種も多い。
日本はこの仲間が少ない反動か、熱心なマニアが多い「ナマズ輸入大国」であり、殆どの科が観賞魚として紹介されている。
人気があるのはコリドラスやプレコで、丈夫で温和な種は混泳水槽の「掃除屋」として飼われている場合も多いが、それぞれの仲間だけを集めて飼っている人も少なくない。コリドラスの場合は日中によく動き回るのでまだ目立つが、プレコやドラス、タティアやバンジョーキャットを専門に集めている場合、隠れる性質が強く一見すると「流木や砂しか入っていない水槽」のように見えてしまうかも知れない。
生態も奇妙なものが多数おり、筋肉が透明で骨格が透けて見えるトランスルーセントグラスキャット、空気呼吸が可能なクラリアス、
毒棘持ちで海水産のゴンズイ、天地逆で泳ぐサカナナマズ、托卵を行うカッコウナマズ、他の魚な血液を吸うことに特化したカンディル、電気を発生させるデンキナマズなどなで人間の創造を超えたものがいる。
冒頭のレッドテールキャットやタイガーショベルノーズを始め、古代魚に並ぶ勢いで成長する大型ナマズもおり、飼うとなると相応の設備が必要。
プレコ以外の多くが肉食だが、慣れてくれれば肉食魚用の人工飼料を与えることもできる。
美しい中型魚の代表格であるエンゼルフィッシュ、ディスカス等。
カラシンの仲間は繁殖は原則難しいと言われるが、シクリッドの仲間は個人でも繁殖が可能。エンゼルフィッシュやディスカスも色合いや品種まで吟味して繁殖に挑戦する愛好家は多い。
シクリッドの仲間は南米だけでなくアフリカにも生息している。
東アフリカのタンガニイカ湖やマラウイ湖周辺のアルカリ性寄りの水を好むものと、西アフリカ諸国の河川に生息する中性から弱酸性寄りの水を好むものに大別される。
前者は全身コバルトブルーのアーリーこと「スキアエノクロミス・フライエリー」、後者は度々入り込んでは殖えるスネール(サカマキガイ)を食べる「アノマロクロミス・トーマシー」が有名か。
彼らもまた繁殖可能とされる種類が多く、稚魚が成長するまで付きっきりで子守をすることで有名。卵や稚魚に寄り添うペアの様子はなんとも微笑ましい。
空気呼吸可能なクラシック熱帯魚。
アフリカとアジアに分布しており、特に東南アジアで非常に多様化している。
殆ど流れの無い池や沼地、浸水林の水溜りなど水中溶存酸素量が少ない環境に棲むものが多いため、鰓の上方に迷宮器官という補助呼吸器を持つ。このためエアレーション無しの止水でも窒息することなく飼える物も多い。
最初の観賞熱帯魚であるタイワンキンギョや陸を歩く魚で有名なキノボリウオ、闘魚に用いるベタもこのグループの魚である。
ベタは夏場のホームセンターやスーパーなどで瓶に入って売られる機会が多い。
日本でも熱心なマニアが多い、本場のタイでは日本の金魚・錦鯉に匹敵する品種改良が行われている。
グラミーは初心者向けの種が多く、ピグミーグラミーやドワーフグラミー、パールグラミーなどは丈夫で飼い易い。チョコレートグラミーやリコリスグラミーも人気が高いが、体質はやや繊細。
スネークヘッドには近年、注目が集まっている。
古くから流通していた種はメートル近くに育つものが多く、大型魚ファンには馴染み深かった。
近年は30㎝以下の小型種の流通が増え、コウタイやドワーフスネークヘッドの改良品種も出回るようになった。
淡水・汽水フグ
愛嬌は随一。
海水魚のイメージが強いフグでも、一部の種類は淡水や汽水(半海水)に生息していることで知られる。
ただし、汽水域に生息する種類は、汽水の塩分濃度に合わせた水が必要。
成長しても2cm程度しかないアベニー・パファーや、よりサイズが大きく貫禄十分なミドリフグが代表的。
小さくてもフグなので驚くと膨らんだり、立派な歯でボリボリ食事したりもする。中々気が強いので混泳は難しい。
またマニア向けにはなるが、アベニー・パファーやミドリフグに似ているが更に大きくなるインドトパーズ・パファー、トラフグ並みに巨大になるテトラオドン・ムブ、ハコフグに少し似た見た目のテトラオドン・ミウルス、
全身に毛のような器官があるパオ・バイレイといったやや珍しい種もいる。
勿論これらの種は大型な分噛む力も凄まじいので口の中には興味本位で指を入れないように。誇張抜きに指がなくなります。
おそらく毒は無いのだろうが、流石に食用に飼う人はいるまい…。
汽水魚・レインボーフィッシュ
我ら海の子。
前述の淡水・汽水フグ以外にも、海洋起源だが汽水域や淡水域に適応した魚は多い。
代表なものにはテッポウウオやトビハゼがいるが、カレイ・ヒラメ・アジ・ヨウジウオ・タツノオトシゴ・サヨリ・ダツ・オコゼ・カエルアンコウなどなど実に様々な種が知られており、個人での飼育向きではないがサメやエイさえもいる。
飼育水に塩分が必要なものも多いが、完全な淡水で生涯飼育可能なものもおり、海の魚を淡水魚として水草水槽で飼うと言う不思議な感覚を味わうことが出来る。
レインボーフィッシュも祖先は海洋起源のグループだが、こちらは多くの種が純淡水で飼育可能である。
日本では一部の種を除いて人気が低めのグループだが、欧米では熱心なマニアも多い。
底無しの得体の知れなさ。ニョロニョロ系とも呼ばれる。
食用のイメージが強いウナギだが実はペットとしても意外に人気であり、
海にいるイメージの強いウツボも一部の種は汽水や淡水に生息する種がいるので珍しい魚が好きな愛好家によく飼育されている。
どちらも絶食には強く、特にウナギはある程度の水質の悪化にも耐えるタフさも持ち合わせているので意外と飼いやすい魚なのだ。
ただしどちらも脱走名人でもあるので少しでも隙間があればそこから抜け出し、
干物に…なんて悲劇にもなりかねない為ウールマットなどで隙間という隙間を塞ぐ必要がある。
また狭い場所を好む魚なので塩ビ管やシェルターのような隠れ家になるものを入れてあげると落ち着いてくれる。
餌は小魚やエビ等生の餌を好む傾向があるが、慣らせば人工飼料も食べてくれる。
太古からのロマン。
世間一般では古代魚と聞いたら図鑑か水族館でしか見たことがない人もいるかもしれない。
実は古代魚もペットとして飼育することができる種類である。
名前の通り人類が誕生する前の遥か太古の時代に誕生し、現在まで
あまり形質を変えず生き残ってきた魚のグループであり、
金魚など普通の魚にはない爬虫類のような奇妙な姿から人気が高いのだ。
ポリプテルスの仲間やアロワナの仲間もこのグループに属する。
このように見た目が奇抜というのもあるが普通の魚とはまた違った行動をとったりもするので
飼ってて楽しい魚である。
しかしその一方で古代魚の多くに共通する傾向として
巨体が挙げられている。
例えばピラルクーやチョウザメなんかは野生下だけでなく飼育下でも
mクラスに大きくなるので一般家庭ではまず終生飼育は不可能である。
では古代魚の飼育は諦めようかと思っているならまだ早い、
ポリプテルスの仲間の一部や
モルミルスの仲間、ナイフフィッシュの仲間の一部にはそれほど大きくならない小型種もいるので
この場合はあまり大きな水槽を用意しなくても飼えるのだ。
甲羅と
鋏は
漢の
浪漫。
…ここへ来てえ?カニ?と思われるかもしれない。
実はサワガニを筆頭として淡水で飼えるカニは意外にも多く、
我が国にいる各種サワガニは勿論だが海外にはドワーフクラブと呼ばれる小さくも
美しいカニがいるし、中にはヤマガニ、タガニと
呼ばれる比較的大型になる種も輸入されては飼育されているのだ。
これらの種に共通しているのが大卵型と呼ばれ、個数が少ない代わりに大きな卵を産み、
直接子ガニが生まれてくるスタイルの繁殖方法であり、その気になれば繁殖も狙えるので需要があるのである。
ただし小型種・大型種に共通して脱走名人としても知られるので脱走には気を付けなければいけないし、
大型種の場合その体に見合って力も強いので挟まれると場合にもよるが流血沙汰になりかねない点も注意。
癒し系甲殻類で女性ファンも多い。
よく熱帯魚などの飼育においてはコケ掃除や残飯処理といった脇役扱いをされがちだが、エビも熱帯魚に負けじと様々な種がいる。淡水でも簡単に繁殖させられる種類も多いのでその人気も高い。
中でもビーシュリンプと呼ばれる種が有名かつ人気で、色合いの美しい個体はなんと1匹1万円近くの高値になるケースもあるほどである。
エビだけに水面から跳ねて飛び出す事故が多いので要注意。
巻貝
掃除屋に止まらない魅力。
タニシ筆頭に淡水の巻貝もコケ防止や残飯処理のために入れられるが、貝殻がきれいだとこれ自体も鑑賞対象になることがある。
ただしコケを食う=草食性なので、種類によっては水草を荒らす害をなすことがあるので水草を植えた水槽では投入前に大丈夫な種類か調べたほうが良い。
また、繁殖が容易な種類は、増えすぎて水槽の景観を損ねる場合もあるので、注意が必要。
マリンアクアリウム(海水水槽)
クマノミ
共生する魚の代名詞。
元より特徴的な魚の一つだったが、あの「
ファインディング・ニモ」の公開により、世界的な知名度を得た。
やはり有名なのは、主人公マーリンと息子ニモのモチーフになったカクレクマノミ(日本語版ではそのように翻訳されているのだが、実はマーリンとニモの故郷であるオーストラリア北部のグレートバリアリーフにはカクレクマノミは分布しておらず、非常に外見が似た別種のペルクラアネモネフィシュがモチーフである)だろうか。他にクマノミやハマクマノミなど日本に6種、ワイドバンドアネモネフィッシュやスパインチークアネモネフィッシュなど世界に約30種が知られている。
海水魚としては割と丈夫な部類であり、単独飼育ならば45㎝水槽でも飼える。とは言え、やはりイソギンチャクと共生させてこそのクマノミであるため、その場合は60㎝以上の水量でそれなりの設備を用いて飼育する必要があるだろう。
「ニモ」の劇中にもあったように、卵を岩肌に産み付けて保護する。海水魚としては卵が大きいため孵化直接からブラインシュリンプを食べることが可能で、個人での繁殖成功例も多い。
スズメダイ
群泳乱舞するサンゴ礁の宝石。
その殆どが全長10㎝以下の小型種で、世界各地の熱帯・亜熱帯海域、特にサンゴ礁や岩礁海岸に棲むものが多い。実はクマノミもスズメダイ科クマノミ亜科に属しているため、アクアリウム界隈でクマノミ以外のスズメダイ科を指すことが一般的である。世界に400種以上、日本だけでも100種以上が知られている。
黄色や青の原色系の鮮やかな体色を持つもの、目立つ斑紋や線条を呈するものなども多数おり、観賞価値が高い。
ルリスズメダイやデバスズメダイ、ヨスジリュウキュウスズメダイなどはコンスタントに入荷して、価格も安価。
このグループも丈夫な種が多く、餌も人工飼料に簡単に餌付くため、技術的には初心者向けである。
一方で、ダイビングで見られるように幼魚は群れを作る一方、成魚は縄張り意識が強くなり、クロソラスズメダイに至っては同種や近縁種どころか、ダイバーに対しても噛みつこうとするほど気性が荒い。アクアリウムではミツボシクロスズメダイの気の強さは愛好家感でも有名で、付いた渾名は「ミツボシワルスズメ」。デバスズメダイやブルークロミスは比較的温和な種だが、それでも喧嘩する時は喧嘩するので、キンチャクダイやニザダイやベラなど一回り以上大きな魚と混泳させるか、60㎝水槽で10匹以上と過密気味に飼育して縄張りを持たせないようにするのが良い。
チョウチョウウオ
海水魚の高貴なる女王。
魚に興味が少ない人でも、熱帯魚と言われてその姿が思い浮かぶこともあるほど特徴的な魚である。
全長20㎝前後の極端に側扁して薄い体にやや突き出た吻、黄色や白を基調とした体色に黒い斑点や線条が入る種が多いというコントラストの効いた体色をした種が殆どで、観賞価値はスズメダイと同等かそれ以上に高い。
西部太平洋が分布のピークであり、次いでインド洋や紅海にも様々な種がおり、大西洋産の種数はさほど多くはない。世界には約130種、日本からは53種が知られる。日本の場合、石西礁湖を代表とする南西諸島のサンゴ礁に在来するのは勿論のこと、卵や稚仔魚が黒潮に乗って関東沿岸まで流れ着く「死滅回游魚」として知られる種も少なくない。晩夏から初冬に掛けては死滅回游魚を求めて磯や漁港に通い詰める愛好家やマニアもまた珍しくない。
非常に魅力的な魚であるのは間違いないが、飼育はかなり難しいものが多いと思って良い。
特にサンゴのポリプを専門に食べる種は、代用餌に餌付かないことが多く、水族館レベルの設備や技術をもってしても長期飼育は困難である。その手のものに限って、オウギチョウチョウウオやミスジチョウチョウウオ、ミカドチョウチョウウオやハクテンカタギなどの美麗種が揃っているのもマニア泣かせである。また、科全体に言えるのは胃が退化しているため絶食に弱く、基礎体力がないためか白点病やウーディニウム症などの魚病に罹患し易いのも飼育管理する上で要注意である。気性も意外と荒く、特に同種や近縁種同士では激しく争うこともある。
他の海水魚飼育である程度の知識や経験を付けた上で、幾らか丈夫であるフエヤッコダイやハタタテダイ、トゲチョウチョウウオやセグロチョウチョウウオなどから始めるのが良いだろう。
キンチャクダイ
海水魚の威厳ある王者。
チョウチョウウオに近縁なグループの魚で体型も近い。強いていうと体はやや厚みがあり、口吻は太短く、赤や青を主体とした体色のものが多い。和名は「〜キンチャクダイ」よりは「〜ヤッコ」とつくものが多い。これは鰓蓋の一部が棘状に張り出しており、それを奴髭に見立てたことに由来するためである。英名では Angelfishと呼ぶが、淡水産のエンゼルフィッシュと紛らわしいため、Marine angelfishと呼ばれることが多い。
チョウチョウウオと同じく死滅回游魚として採集対象になる種もおり、特にサザナミヤッコは関東近郊の採集家には憧憬の種であり、更にタテジマキンチャクダイは四国以北で採集された場合、愛好家間ではちょっとしたスクープになるほどの幻の存在である。
アクアリウム界隈では、最大全長が15㎝以下の種を小型ヤッコ、それ以上の種を大型ヤッコとして区別することが多い。
小型ヤッコの代表種にはコガネヤッコやスミレヤッコ、フレイムエンゼルフィッシュやペパーミントエンゼルフィッシュなどがいる。割と深場にいる種が多く、磯採集は勿論のこと、素潜りでも中々巡り会えない種ばかりである。水質には敏感なものが多いが、後述するサンゴ水槽ならば長期間飼育可能なものもいる。
大型ヤッコの代表種には、先に挙げた種に以外ではニッキヤッコやワヌケヤッコ、クイーンエンゼルフィッシュやアラビアンエンゼルフィッシュやグレイエンゼルフィッシュがいる。成魚は環礁や裾礁のやや深い場所にいるが、幼魚は水深1m以下の浅場で育つものが多い。チョウチョウウオと比べて体力はあるが水を汚し易いため、水量に余裕のある水槽と強力な濾過器、定期的な水質管理は必須である。性質もやや荒めなので混泳には注意する。
ニザダイ・アイゴ
毒と刃持ちの美麗魚。
「ニモ」のドリーのモデルであるナンヨウハギが含まれるグループである。
体型は楕円形もしくは背腹に長い菱形で強く側扁して薄い。吻は丸みを帯びているものと、長く突き出すものがいる。テングハギのように角状の突起を備えているものもいる。
ニザダイ科では尾柄に刃のような突起、アイゴ科には背鰭に毒腺を備えているので、水槽掃除や飼育魚の移動の際に注意する。
飼育難易度はチョウチョウウオと同じ程度だが、餌付きは良好で冷凍餌や人工飼料に馴れるものも多い。一方で、運動量が多く痩せ易いので、可能ならば給餌頻度を多くする。自然下では藻類を好んで食べるものもおり、特にアイゴ科はミックスベジタブルや湯がいたホウレンソウを食べることもあるので試してみると良い。
ベラ・ブダイ
隠れた個性派。
マリンアクアリウムのタンクメイトとしては、チョウチョウウオやキンチャクダイの陰に隠れがちだが、これらと比べると形態や生態のバリエーションが豊富で熱心なファンも少なくない。
ベラは「扁羅」が語源とされているため、体は側扁しているが、体高はやや低めでホクトベラやオトメベラのような笹の葉のような体型の物が多い。サイズは20〜40㎝前後のものが多数派だが、ニセモチノウオのような5㎝前後の種やナポレオンフィッシュのように2m近くにまで育つものがいる。
ヤマブキベラなどは性的二型が明確で、性転換をするものがいる。この他、顎が異様に伸びるギチベラやクリーナーフィッシュとして有名なホンソメワケベラなど、様々な生態を持つものがいる。
ブダイは頭は丸みを帯び、オウムのような頑丈な嘴や持つ。岩やサンゴなどの基質表面の藻類や無脊椎動物を、基質ごと齧り取って食べることが知られている。夜間に急速
形態や生態が様々で、一括りにして紹介するのは難しい。
割と飼い易いのはヒオドシベラやシチセンベラで、本土近海で自家採集するならばオハグロベラやニシキベラも飼い易い。キュウセン属も水槽飼育向けだが、夜間は砂に潜って休むため、砂を厚めに敷く。カンムリベラやツユベラ、クギベラなども丈夫で入荷量も多いが、游泳力が非常に強く、水槽内でもツユベラとクギベラは全長30㎝以上、カンムリベラに至っては60㎝を優に超えるので、相当に巨大な水槽が必要である。サンゴ水槽を用意出来るのであれば、モチノウオ類は飼育し易い。イトヒキベラ属はやや繊細。クリーナーフィッシュとして有名なホンソメワケベラも飼えるが、同種や近縁種との複数飼育は個人レベルの飼育設備では難しい。
ブダイは餌が難しい。イロブダイは比較的他の餌に餌付くことがある。
ハナダイ
海中の百花繚乱。
スズメダイ同様にサンゴ礁や岩礁域で群れを作る小型魚であるが、体高がやや低く、尾が明確な二叉形である種が殆どで、体色は赤やピンク色のものが多い。タイドプールで見られる種も少なくないスズメダイに対して、キンギョハナダイを除くハナダイはより深い場所を好み、ニラミハナダイやサクラダイなどはスクーバでも容易には到達し難い、水深40m以深が主な棲息環境である。
スズメダイと比べると性質は温和だが、体質的繊細なので中級者向け。餌付きは良いが代謝が高く痩せ易いので、まめな給餌が欠かせない。サンゴ水槽とも相性は良い。スミレナガハナダイなど性的二型の明確な種は成熟した雄同士では争うものもいるので、雄1個体に対して雌3〜5個体というハーレム式で飼うと良いだろう。
ハタ
威風堂々。
前述のハナダイもハタ科であるが、概ね全長20㎝以上に育ち、群れを作らず単独生活する種を指す。
流通が多いのはユカタハタやサラサハタ、ナミハタやカンモンハタで全長30〜50㎝程度の種が多いが、タマカイやカスリハタなどの2mを超える巨大魚も入荷することがある。
体質はかなり丈夫な種が多く、游泳性はそこまで強くないため、水質管理さえ出来るならば大きさの割には比較的小さい水槽で飼うことが可能である。目安としては、飼育下だと全長40㎝前後で成長がほぼ止まるサラサハタならば90㎝水槽で飼いきれる。活き餌を好むがクリルや魚の切り身にも餌付けき易く、人工飼料に馴れるものもいる。同種や近縁種では争う場合もあるが、それ以外の魚種にはあまり頓着しないことも多く、意外と混泳は可能である。但し、口が大きく開く為、呑まれないような大きさであることは重要である。
カサゴ・オコゼ
綺麗で奇怪な魚には棘がある。
近年系統的解析ではハタ科に近いと言うことが判明している。
背鰭や胸鰭に刺毒装置を持つものが多く、取り扱いには注意する。
アクアリウムで人気が高いのはミノカサゴ類で、特にハナミノカサゴは流通量も多い。全長は30㎝を超え、胸鰭が背鰭が長く伸びるので、最低でめ90㎝水槽、出来れば120㎝水槽以上の容量が欲しい、ネッタイミノカサゴやキミオコゼ、キリンミノなどは全長が20㎝未満なので60㎝水槽でも何とか飼える。
ハダカハオコゼやニセボロカサゴも人気が高いが、流通量は少なく、価格も高価である。
ダンゴウオ
北の海の妖精。
近海魚を扱っている店舗ならば購入可能な場合もあるが、自家採集の方が入手し易い。真冬の海に繰り出すことになるので防寒対策は十分にしておくこと。
飼育には低水温を維持出来ることが最低条件。冷蔵庫の中で飼う人もいる。
体の割に卵が大きいので、水槽内繁殖を狙うことが出来る。
ヨウジウオ・タツノオトシゴ他
魚らしからぬ魚の筆頭。
細長く棒状の体型のヨウジウオ、胴体に対して首が90°曲がって巻きつく尾を持つタツノオトシゴ、逆立ちして泳ぐことで有名なヘコアユ、角張った胴体に異様に大きな胸鰭をしているウミテング、極め付きは海藻に擬態して多数の皮弁を持つリーフィシードラゴンやウィーディシードラゴンもこの仲間である。
この仲間を飼育する上での最大の関門は給餌である。基本的には活き餌、ブラインシュリンプやイサザアミを与える必要がある。馴れてくると冷凍餌でも食べるようになるが、動いていないものには興味を示さないことも多いため、適量の水流を作って餌を流すと良い。他の魚に対しては無害だが、餌事情を考えると貪欲なタイプの魚種との混泳には不向きである。サンゴ水槽との相性は良い。
ハゼ
愛すべき底魚。
巨大なグループの一つであり、岩礁海岸やサンゴ礁には様々な種が知られている。
初心者向けなのは游泳性の強いハタタテハゼやクロユリハゼである。サンカクハゼ属やイソハゼ属も飼育自体は容易だが、互いに似通っている種が多く、識別が難しい場合も多い。
他に特徴的なグループとして、共生ハゼとベントス食ハゼがいる。
共生ハゼはテッポウエビが堀った巣穴に同居する。アリの巣の観察ケースのように、水槽の一部を仕切って奥行きを無くした状態にして砂を分厚く敷くと、興味深い生態が観察出来る。
ベントス食ハゼは非常に派手な模様を持つものがいる。サンゴ水槽で飼育すると長く飼える。
ギンポ
二寸の体に漲る闘志。
非常に丈夫な魚種だが、同種や近縁種に対して闘争的になるものがいる。
ヤエヤマギンポやカエルウオは藻類の除去用に代われることもある。
フグ・ハコフグ・カワハギ
至高のペット海水魚。
知能が高い種が多く、飼い主の顔を覚えて餌をねだるようになる種も多い。
人気があるのはキンチャクフグ属である。
コクテンフグやミゾレフグなどが含まれるモヨウフグ属には幼魚が汽水域に侵入する種がいる。
ハリセンボンも有名な種であるが、最大全長が50㎝、飼育下でも30㎝以上に育つため、大型水槽が必須である。
ハコフグはその特徴的な外見から飼育欲をそそる。成魚は比較的丈夫だが幼魚は病気に罹り易く飼育はやや難しい。調子が悪くなると皮膚からパフトキシンという毒を分泌して、混泳している魚を巻き添えにして死ぬことがあるので注意する。
モンガラカワハギは強健な種が多いが、性質が荒く単独飼育しか出来ないものもいる。
海のギャングと言われるウツボも実は飼育可能である。
凶暴なイメージが強いが実のところ性格は臆病であり、脅かしたり餌の匂いが付いたまま手を入れたりしない限りはまず噛み付いてこない。
ただし危険な魚である事に変わりはなく、縫うケガを負いやすい上に最悪の場合は指を失いかねないので取り扱いは注意する事に越したことはない。
また狭い場所を好む生態であること、ハナヒゲウツボやサビウツボ、ゼブラウツボのように比較的小型な種もいるのでそこまで大きい水槽を用意しなくても飼育可能。
サメ・エイ
え?サメって飼育できるの?と思う人もいるかもしれない。
実はサメと言ってもその大きさは多様であり、ネコザメやカスザメ、トラザメ等のように比較的小型の種やあまり泳ぎ回らない種類のサメも多い。
そうした種に関してならその気になれば一般家庭でも飼育は可能なのである。
小型で大人しい種と言っても大半が顎の力が強く、歯も鋭いので噛まれると大怪我になりかねないのは気を付けよう。
また、あくまでも大型魚の中では小型というだけであり、ネコザメは120cm、カスザメは150cm、かなり小型のトラザメでも50cmくらいにはなるので、相応の設備は必要となる。
そのサメに比較的近縁と言われるエイももちろんだが飼育できる。
サメと比べても流通は多くないが、リーフスティングレイは比較的入手し易い種である。
底砂を用意してあげればそこに潜ってリラックスするので砂を敷いてあげよう。
ただサメのように噛んだりはしないものの、尻尾には猛毒の針があるので刺されないように注意。
心配であれば折ってしまっても構わないようだ。尤も、数ヵ月くらいで新しく生えてくるのでいたちごっこである。
エビ・ヤドカリ・カニ
アクアリウムにおいてもメジャーなエビだがマリンアクアリウムにおいても多種多様なエビがいる。
中でも有名なのはオトヒメエビでマリンアクアリウムにおけるメジャー格ともいえる美しいエビ。
クエや
ウツボなど大型の魚と共生してはゴミや寄生虫を食べる習性で有名。
女性的な名前だが当然ながらオスもいる。
ユビワサンゴヤドカリやべニワモンヤドカリなど美しいヤドカリも飼われている。
カニではカラッパ類の人気は根強い。
え?
カブトガニって天然記念物じゃ?そう思った人もいるだろうが
それは日本に生息している種であり、海外のものは種にもよるが合法で飼育が可能である。
餌は肉食であるが大人しいので攻撃的な種でなければ混泳も可能。
しかし成長が遅い上、寿命自体も非常に長いとされるので飼うときは相応の覚悟をしよう。
タコ・イカ
海の霊長類。
嘗てイカは「人間が人工飼育出来ない唯一の動物」とまで言われていたほど飼育が困難であった。現在に於いてもスルメイカやソデイカなど、游泳性の高いツツイカ類は飼育困難であるが、コウイカ類に関しては個人での飼育は決して不可能ではない。
タコについても概ね同様であり、イイダコなどは飼育に挑戦しているマニアもいる。
最後に……
上の方で基本4つを書いたが一番大事なのは放流しない…つまり逃がさないこと、これに尽きる。
実際大きくなりすぎて手に負えなくなった等の理由で逃がした結果
たまたま日本の気候に適合・適応できる種だったが故に定着してしまい、大問題に…なんてケースは結構ある。
例えば日本各地の温泉地には増えすぎてしまったという理由で放流されたグッピーがいるし、
沖縄県のような温暖な地域ではプレコやクラリアス(ヒレナマズ)というより大型な種が定着し、
環境を自分たちの住みよいものにするために荒らしてしまったり、
在来種を捕食したりして問題となってしまっている実情があるのだ。
目立つ体色により野生下では生存に不利とされている金魚や錦鯉ですら、ある程度大きくなった個体は天敵が殆ど存在せず、
特に鯉はその生命力の高さと貪欲な食性も相まって環境に大きな影響を与えている。
また魚類以外の水棲動物で有名なのが
アメリカザリガニで
元々はウシガエルの餌として輸入された甲殻類であったがこれが逃げ出すなどした結果、
持ち前の適応力で日本の気候にも順応し、大繁殖してしまっているのである。
なので様々な事情からもし飼育できなくなった場合、ペットショップや然るべき機関と相談しよう。
場合にもよるが引き取ってくれることもある。
アクアリウムを趣味とするキャラクターたち
追記・修正は、家を水族館に改造してからお願いします。
- エミネムさんが教えてくれるヤツ。流行った時にあったお店で見たクラゲに憧れてたがやらなくてよかった。 -- 名無しさん (2023-02-14 23:50:18)
- アクアリウムの日淡は大型魚はともかく、小型魚(マブナ、モツゴ、ドジョウ、ヨシノボリ、オヤニラミとか)はマイナーすぎるのかなぁ…大体のショップだと日淡は良くて大型しかいないし… -- 名無しさん (2023-02-15 00:12:13)
- 金のかかる趣味の代表格ってイメージ -- 名無しさん (2023-02-15 04:48:32)
- パチンコ風俗に比べたら、犬猫と比べたら、お金は掛からないよ。金魚を繁殖させてお祭りに出すのが生き甲斐…だったのになあ、お祭りすらしないんじゃどうしようもない -- 名無しさん (2023-02-15 07:45:03)
- 異種族レビュアーズでアクアリウム題材のエピソードがあったのを思い出す -- 名無しさん (2023-02-15 07:51:17)
- とりあえずエミネムさんに教わろう? -- 名無しさん (2023-02-15 09:01:14)
- エビは簡単でいいよ 色もカラフルだし -- 名無しさん (2023-02-15 09:26:05)
- 小さい頃は何も考えずに金魚を手づかみしちゃってたけどアレってかなり負担にさせる行為だったんだなあ… -- 名無しさん (2023-02-15 19:54:14)
- アクアリウムの世界は器具なんかはブランドにこだわる人もいれば100円ショップの品などを工夫して使うなんて人もいるから面白いよ。 -- 名無しさん (2023-02-15 20:58:31)
- アウトド生き物全般に言えるけど、物凄くデリケートだろうし、2,3日家を空けるようなことが多いと厳しそうだ。アウトドア系の趣味との両立は難しいかな -- 名無しさん (2023-02-15 22:37:55)
- 命令者ちゃんと神々の山麓キャラが熱心に討論してるよね -- 名無しさん (2023-02-16 20:05:22)
- ↑2 メダカとかだと数日くらいは絶食でも全然平気だよ 勿論種類によっては致命的になるようなのもいるだろうけど -- 名無しさん (2023-02-16 20:53:01)
- 水生生物入れずに水草だけ飼育してもアクアリウムなんだろうか?餌、フィルターがいらない分育てやすくはありそう。カボンバ、アナカリスとかは品種として強そうだし -- 名無しさん (2023-02-16 21:35:53)
- 30cmキューブ水槽でプラティのペア1組飼育したら、1年で60cm水槽にグレードアップしたわ -- 名無しさん (2023-02-17 17:01:12)
- ザリガニはいいぞ…(アメザリかつ釣ってきた個体に限るが) -- 名無しさん (2023-02-18 23:32:16)
- エミネムさんの動画を思い出してる人が結構いて笑った。「ちびまる子ちゃん」は70年代初頭くらいを舞台にしているだろうにグッピーを飼うエピソードがあるんで、割と先見の明があったのかな。 -- 名無しさん (2023-02-19 10:15:55)
- 項目名見てワートリの太一を思い浮かべながら開いたらしっかり言及されてて笑った。せっかくだから趣味にしてるキャラクターの項目に来馬先輩も追記して欲しい。 -- 名無しさん (2023-02-19 14:40:20)
- 初心者はネオンテトラ、グッピー、アカヒレが丈夫で見栄えもして、混泳できていいぞ。値段も安いし。 -- 名無しさん (2023-12-27 17:26:54)
- 仮面ライダーアマゾンズの遥もアクアリウム趣味じゃなかったっけ? -- 名無しさん (2024-09-03 17:19:48)
- 小型日淡の世界でもう一つデカイジャンルがタナゴ類の世界。繁殖のさせる場合、淡水二枚貝の飼育とセットになるので難易度が上がるが根強い愛好家が多い -- 名無しさん (2025-08-05 21:36:08)
- 淡水における水草飼育という面で行くと、90年代前半でCO2の添加、後半でソイルを使用した軟水環境の簡便化、2000年代の照明のメタハラの導入及びここ最近のLED化でかなり無理が効くようになった。(が、水草を通り越してジメジメ系(高湿度熱帯植物)に移行していった人も多い) -- 名無しさん (2025-08-05 21:50:44)
- このページにザリガニも入れてみたいけどどうなんだろ -- 名無しさん (2026-06-12 01:23:00)
- 実は機材が屋内での観葉植物栽培と被るので両方に手を出してる人が多い印象。栽培用LED照明はほんの数年前に比べるとビックリするくらい低価格化と高性能化が進んだ。なお、調整ミスって水草が繫茂しすぎる模様 -- 名無しさん (2026-06-15 16:22:21)
- 今の時期は金魚飼い始める人が多いが、すっごい難しいんだよね。そもそものところ、金魚は中型魚であるっていう認識自体浸透してなくて、真っ当に飼うなら60㎝規格水槽と上部フィルターが必要っていうと大分驚く人が多い。 -- 名無しさん (2026-08-19 14:58:19)
最終更新:2026年08月19日 14:58