ウリ(植物)

登録日:2025/06/24 Tue 22:50:59
更新日:2025/07/18 Fri 11:38:01
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()めば子供思ほゆ 栗食めばまして(しぬ)はゆ
いづくより来たりしものそ 目交(まなかい)にもとなかかりて安眠(やすい)しなさぬ
(しろかね)も (くがね)も玉も 何せむに (まさ)れる宝 子にしかめやも
*1

――山上憶良『万葉集』巻5 802 より


ウリ(瓜)とは、それぞれ以下の意味である。

1. ウリ科キュウリ属の植物・メロンのうち、東洋系のものをいう。

2. 栽培されるウリ科植物の総称。

本稿では、両者について解説する。



東洋系メロンー「瓜」ー

そもそも、メロン(Cucumis melo)の原種の原産地についてはこれまで諸説入り乱れていたが、現在のところはインドや北アフリカにかけての地域が原産であるとする説が確定的になっている。
いつしかこの原種はユーラシア全土に伝播していったのだが、現在の植物学上において、ヨーロッパなどの西方地域に渡っていったのが「メロン」、アジアなど東方地域に渡っていったのが「ウリ」とされる。
この「メロン」については個別項目で述べるものとする。
我が国においても縄文時代の貝塚などの遺跡からウリ類の種子が発見されているほか、瀬戸内海や九州地方の島しょ部にごく小さい果実をつける野生のウリ類の生息が確認されている。
この極小のウリ類は縄文時代から現代にいたるまでひっそりと生き延びてきたとされるもので、生態から「雑草メロン」という名称で呼ばれている。マクワウリを小型にしたような見た目で、果皮の色合いが様々である。これらの中には甘い芳香を放つものもあり、一見するとおいしそうに見えるが、果肉は猛烈な苦みがある。
このことからして、縄文人はこれらのウリを果物としてではなく、ウリから取り出した種子を穀物のように利用していたのではないかと推測されている。
この「ウリ類から種子を取り出し、それだけを利用する」という食べ方は世界各地に存在する。例えば、カボチャやスイカの中には種子のみを食材として利用する品種があるし、ナイジェリア、ブルキナファソ、トーゴ、ガーナ、コートジボワール、マリ、カメルーン等の「西アフリカ」ではスイカに近い「エグシメロン」というウリから取り出した種子(これが「エグシ」である)の殻をむいたのち、粉末状にしてスープに加える。エグシを入れたスープはとろみが出て、さながらエグシの粉末が片栗粉のような役割を果たしている。

やがて古代日本でこれらのウリが栽培化されるにつれて、いつしか夏の重要な食材となっていった。本来は栽培するにあたっては高温乾燥の環境が適していたが、我が国で栽培が重ねられるに従い、高温多湿に耐える性質を身につけていったのである。
冒頭の『万葉集』の山上憶良の歌にも登場しており、この頃の「瓜」と言えばマクワウリを指した。やがて奈良・平安時代ごろにはシロウリという熟しても甘みが出ず、もっぱら野菜として調理して食べるような品種群も渡来し、江戸時代後期まで「瓜」と言えばマクワウリかシロウリを指した。これらは長い歴史の中で、地方に独特の品種が数多く作出され、上は貴族から下は農民に至るまで夏の食材として好まれた。
戦国時代において徳川家康がマクワウリを栽培しだしてめんどくさい家臣に「あいつ何やってんだ!武士が農家の真似なんかすんじゃねえ!」と畑をめちゃくちゃにされたり、大坂の陣の最中、献上されたマクワウリのおいしさを気に入って美濃国真桑村の農民に諸役を免除して毎年の夏に必ずマクワウリを将軍家に献上するよう約束させたりしたという逸話や、織田信長が朝廷にマクワウリを献上した*2という逸話や、豊臣秀吉が開いた仮装大会で、秀吉と家臣・真田昌幸が瓜売りに扮したという逸話はその代表例である。

やがて、明治時代になり、欧米諸国との交易が盛んになると西洋野菜が次々と導入され、その中に欧米諸国で品種改良された「メロン」があった。これらはマクワウリよりも甘みが強いことが好まれ、大隈重信のように自邸に温室を設けてこれを栽培する者もいたが、病害虫に弱くて栽培が難しいことから多くの庶民の口に入るまでには至らず、庶民はもっぱらマクワウリを食した。これは戦前まで続き、庶民の中にはあえてマクワウリを「メロン」と呼んで気を紛らわせる人もいた。伝統野菜のマクワウリの中で、大正~昭和戦前に栽培が始まり、「メロン」という名称を有するものは「網干メロン」や「妻鹿(めが)メロン」「深志野メロン」「加古川メロン」(いずれも兵庫県で栽培)、「甫立メロン」(鹿児島県で栽培)が好例である。
東洋系メロンの一つであるシロウリは季節感を感じさせる食材として好まれ、またどこの家でも漬物を作る習慣が浸透していた戦前までは重要な夏野菜として好まれていた。
昭和も戦後になると一気に食生活の洋風化が進み、それと時を同じくしてマクワウリの一種とフランスのメロンを掛け合わせた「プリンスメロン」という品種が作出されたのを皮切りに、病害虫に強く味もよく、なおかつ安価な「メロン」が作出されていった。
だがそれ等の事象は、同時に東洋系メロンが次第に見向きもされなくなっていったことを意味した。
メロンよりも甘みの薄いマクワウリは次第に好まれなくなっていき、漬物を家庭で作るという習慣が減少していく中でシロウリも利用量が大幅に減少した。

現在は地産地消の取り組みが進み、その中で伝統野菜への注目度が高まり、マクワウリやシロウリの栽培はかつてほどではないものの、復活傾向にある。
この記事をご覧になっているwikiメンバーの皆様も、今年の夏はぜひともマクワウリやシロウリを召し上がり、季節感を感じられてはいかがでしょうか?

植物種としての東洋系メロン

マクワウリ(甜瓜、Cucumis melo var.makuwa)

「金マクワ」と呼ばれる品種。出典:ユーザー makinomantaro 撮影(自宅にて)

滋賀県の伝統野菜の一つの「虎御前」というマクワウリ。全体的にゴツゴツとした形状である。出典:ユーザー makinomantaro 撮影(自宅にて)


インドが原産の蔓性一年草で、ウリ科キュウリ属に属する。
東洋系メロンの代表格ともいうべきもので、果皮色は黄色一色のもの(金マクワ)や光沢のある黄緑色(銀マクワ)、純白のもの(ナシウリ)、黄色時に濃い緑色の縦じま模様が入ってスイカのような見た目になるものなど多彩で、果肉色は普通は白だが、青肉メロンのように黄緑色のものもある。
各地において様々な品種が作出されてきた伝統的作物の一品種で、「味瓜(アジウリ)」「真瓜(マウリ)」「マッカ」「梵天瓜(ボンテンウリ)」「甘露(カンロ)」「甜瓜(テンカ)」などの地方名の多さがそれを物語っている。
普通果実を冷蔵庫や井戸水で冷やし、食べやすい大きさに切ってから果皮をむいて食べる。種子のある果実中心部が特に甘みが強い。
西洋のメロンほど甘みが強いわけではないが、それでもさっぱりとした風味で水分に富むので、老若男女問わず一定のファンはいる。
この性質を逆手にとって、漬物にして食べてもよい。
近縁種に、新潟県でお盆のお供えとして栽培される「コヒメウリ」(単に「ヒメウリ」と呼ぶこともある)というものがある。
これは果実はせいぜいピンポン玉より少し大きい程度で、果皮は純白なのだが、見た目に反してうっすらと甘みがあり、食べることができる。
未熟な果実を漬け物にして食べることもある。
一説によれば、『枕草子』における「瓜にかきたるちごの貌」の「瓜」とはこの「コヒメウリ」ではないかとする説もある。
またもう一つの近縁種として「シマウリ」と呼ばれるものがある。
これは果実が縦に長く、果皮がスイカのように縞模様になるもので、熟すと非常に甘い香りがするのだが、果肉は汁気が少なく、かなり紛質である。
これを食べたおばあさんがのどを詰まらせる様子を連想して「ババゴロシ」という何とも物騒な名前が付けられている。
現在は八丈島や福江島でごくわずかに栽培される程度で、食べ方としては蜂蜜やコンデンスミルクをかけて食べると食べやすい。


シロウリ(白瓜、Cucumis melo var.conomon)

  
出典:ユーザー makinomantaro 撮影(自宅にて) (左)シロウリ、(右)はぐら瓜

マクワウリ同様東洋系メロンの一種で、たいていは漬け物用として栽培されることから「漬け瓜」の別名もある。
種小名のconomonも日本語の「香の物(漬物)」に由来する。
果実は細い楕円形または円柱形で、普通果皮色は鮮やかな黄緑色であるが、
  • 緑色が濃い「アオウリ」
  • 濃い深緑色の「クロウリ」
  • ややくすんだ黄緑色で細い縦じまが入る「カタウリ」
  • 表皮は深緑色で縦溝が入り、果肉が柔らかい「はぐら瓜」(千葉県の伝統野菜)
などの品種がある。
和名は熟すと果皮が白っぽくなることにちなむが、熟しても甘みはほとんど出ない。
前述のように漬物にして食すほか、家庭で漬物を作るということが珍しくなった現在では、サラダやカレーなどの西洋風の調理法でも食べられている。


ハミウリ(哈密瓜、Cucumis melo var. inodorus)

画像出典:ウィキペディア日本語版の「ハミウリ」のページ( 外部リンク )から。 著作者:Biggie6579(Public domain)

中国新疆ウイグル自治区哈密(ハミ)地区原産のウリ。
わが国ではデパートで「ウズベキスタンメロン」や「恐竜のたまごメロン」という名称で高級フルーツとして販売されることがまれにある。
メロン類の中でも「フユメロン群」という果実の長期保存が可能な品種群に属しており、ほかにこの品種群に属するものは、わが国において冬季に出回る輸入果実の一つである「ハネジューメロン」や、ゴツゴツした黄色いカボチャのような見た目をした「カサバメロン」が知られている。
果実はラグビーボール型で、表面には縦じまが入り、マスクメロンを盾に引き伸ばしたような見た目である。
これ以外にも上の写真のように果皮に緑色の縞模様が薄く入るものや、深緑色をしているもの、真球形でますますマスクメロンそっくりな見た目をしたものなどがある。
果肉はスイカのようにしゃりっとした食感で、かなり甘味が強いという。
一説によれば、哈密回王の献上品に対して清の康熙帝がこの瓜の風味の良さを大変気に入り、「ハミウリ」と命名したといわれる。


アカゲウリ(Cucumis sativus./Cucumis meloの二説アリ)

画像出典:「ボタニックガーデン」の「しろうり」のページ( 外部リンク )から。

沖縄県の伝統野菜の一つで、琉球方言で「モーウィ」と呼ばれる*3
植物学上はキュウリの一種ともメロンの一種ともされるが、現在はキュウリの一種であるとする説が優勢である。
果実は尻太りの円柱形で、表皮は初めは薄い黄緑色だが、熟すと赤茶色になり、表面は薄くひび割れたような見た目になる。
キュウリと比較して青臭さは感じられず、煮物や汁の実にしてトロっとした食感を楽しむ。
もちろん、未熟な果実もキュウリのように利用できる。


東洋系メロン以外の「瓜」

キュウリ(胡瓜、Cucumis sativus)

大学の庭園にて筆者撮影。

ウリ類の代表選手の一つで、キュウリ属に属する。
インドが原産の野菜で、大和朝廷時代には導入されていたのではないかと推測される。
現在でこそサラダ野菜や漬物用の野菜として不動の地位を築いているが、昔は苦みが強いせいで嫌われ者の野菜の一つだった。水戸黄門が「田舎に多く作るもの」「ウリ類の中で最も下等」と酷評したことでも知られる。
今でもたまに(ヘタ)に近い部分が少し苦いことがあるが、切って果肉どうしをこすり合わせれば苦みは和らぐという。
江戸時代になると民衆の間では少しずつ野菜として食用にされ始めるが、武家の間では輪切りにした時の切り口が将軍家の家紋「三つ葉葵」に似ているとされ、恐れ多いとして食用にはされなかったという。
こうしたキュウリの輪切りを何かになぞらえて食べないという風習は現在にもみられる。例えば、福岡県福岡市博多区において、祇園山笠祭りがおこなわれる7月上旬の間は、輪切りにしたキュウリの切り口が、山笠の祭神であるスサノオノミコトのお印に似ているとしてキュウリを食べないという。
もう少し詳しい解説は個別項目をご覧ください。


キワノ(角苦瓜、Cucumis metuliferus)

画像出典:ウィキメディア・コモンズより引用。( 外部リンク ) 著作者:Biggie6579(Public domain)

アフリカが原産のキュウリ属に属する一年草。
植物学上は「ツノニガウリ」という和名で呼ばれるが、ニガウリとは遠縁の植物である。
「キワノ」という名称は本来はニュージーランドの会社の商標登録名称であるが、一般的にはこの名称で呼ばれる。
果実は楕円形で、はじめは果皮色は濃い緑色だが、熟すとオレンジ色になる。表面にはまばらに棘が生えているが、先端はそれほど鋭くない。
果肉は鮮やかな緑色で、ややゼリー状になり、プチプチとした独特の食感がある。
風味としては、酸味があって甘みは少なく、「バナナとパッションフルーツを合わせたような味」「バナナとキュウリ、柑橘類を合わせたような味」と評される。
果実を二つ割りにして、果肉をスプーンですくって食べる。


ニシインドコキュウリ(西印度小胡瓜、Cucumis anguria)

画像出典:ウィキペディア英語版の「Cucumis anguria」のページから引用。( 外部リンク ) 著作者:著作者:Eugenio Hansen, OFS(CC BY-SA 3.0)

アフリカが原産のキュウリ属の蔓性一年草。
わが国では時折物珍しさからデパートで売られていることがあるくらいである。
果実は楕円形で、表面が柔らかい棘で覆われている。はじめは黄緑色だが、熟すとクリーム色に変色する。
キュウリ属ということで多少の青臭さはあるが、見た目に反して癖のない風味で、漬物(ピクルス)やサラダにして食用にする。
和名は英名のWest Indian gherkinの直訳である。


キュウリメロン(Melothria scabra)

画像出典:ウィキペディア日本語版の「きゅうりメロン」のページ( 外部リンク )から。 著作者:Tigerente(CC BY-SA 3.0)

メキシコが原産のスズメウリ属の蔓性一年草で、ブドウ大の楕円形の果実をつける。
果実はスイカをそのまま小さくしたような見た目をしており、薄い緑色地に濃い緑色の細い縦縞模様が入る。
果実の風味はキュウリに似ているが少し酸味があり、この酸味を生かしてもっぱらピクルスや浅漬けにして食べる。
原産地と風味から「メキシカンサワーガーキン」*4と呼ばれることもある。


カボチャ(南瓜、Cucurbita.spp)


新宿駅近くの植え込みを撮影。ニホンカボチャの一品種で、「内藤カボチャ」という伝統野菜の一つ

自宅にてmakinomantaro撮影。セイヨウカボチャの一品種の「みやこ」。「えびす」と並ぶセイヨウカボチャの代表的品種

自宅にてmakinomantaro撮影。「オモチャカボチャ」の一品種。

カボチャ属に属する蔓性一年草。我が国には戦国時代に南蛮貿易の最中に渡来し、当初は毒があると誤解されて観賞用だった*5が、江戸時代前期になって関西地方で食用としての利用が始まり、いつしか日本全国に伝播していった。
カボチャ属に属する植物種は決して少なくないが、我が国で栽培されるものは戦国時代に渡来した南アメリカ原産のニホンカボチャ(C.moschata)、幕末~明治期に渡来した北アメリカ原産のセイヨウカボチャ(C.maxima)、明治期に導入された中央アメリカ原産のペポカボチャ(C.pepo)に大別される。現在最も多く栽培・販売されるのはセイヨウカボチャである。

ニホンカボチャの果実はたいていシワとヒダがあってごつごつした形状で、果肉はあっさりとした風味をもち、天ぷらや煮物に向く。果皮の色は暗い緑色だが、熟すと徐々に赤茶色になり、表面に粉を吹く。蔕は五角形で木質化して、果実と接する部分が広がり、「座」をつくるのが特徴である。
古くは上から見ると菊の花を思わせるような形状のものを「ボウブラ」、胴が真ん中でくびれて瓢箪型やフラスコ型になっているものを「唐茄子(トウナス)」と区別したが、現在こうした区別はほとんどされていない。

セイヨウカボチャは表面がつるっとしていて丸みを帯びた形状で、硬い果皮(色合いは黒緑色、赤橙色、灰色、くすんだ青緑色などがある)と濃いオレンジ色のホクホクとした食感の甘味の強い果肉を持つ。その食感と風味から「クリカボチャ」とも呼ばれる。蔕は円柱形で、コルク質となる。果実と接する部分はほとんど広がらない。
秋ごろになると黄色またはオレンジ色の巨大な果実を実らせる「ポンキン」というカボチャが花屋や八百屋の客引きとして用いられることがある。これはセイヨウカボチャの一種であるが、果肉は水っぽく、食用には向かない。果実の大きさを競うコンテストのために栽培するほか、適当な大きさに砕いて家畜のえさにする。

ペポカボチャは小型で形や色合いの様々な観賞用の「オモチャカボチャ」やハローウィーンの飾りに使われるオレンジ色の丸っこくて大きなカボチャがこのタイプである。蔕はニホンカボチャと似ていて木質化するが、果実と接する部分は広がらない。
1608年に豊臣秀頼により建築された京都北野天満宮の拝殿の蟇股部分に「金冬瓜(キントウガ)」という植物の果実の彫り物があることが確認されており、この「金冬瓜」はペポカボチャの一種とされる。これは食用にはされず、観賞用にされていたという。現在ではほとんど見かけない。
キュウリそっくりの「ズッキーニ」や俵型で黄色く、ゆでると果肉がそうめん状にほぐれる「キンシウリ(そうめん南瓜)」などは数少ない食用になるペポカボチャの一種である。
調理法などについては個別記事を参考。


ズッキーニ(蔓無南瓜、Cucurbita pepo L. 'Melopepo' )キンシウリ(金糸瓜、Cucurbita pepo L. 'fibropulposa')



(上)ズッキーニ。自宅近くにてmakinomantaro撮影。(下)キンシウリ。自宅にてmakinomantaro撮影。

前述のとおり、いずれも観賞用として栽培されることの多い「ペポカボチャ」の中で、数少ない食用可能な品種である。
ズッキーニはわが国においては昭和40年代後半から欧米産の輸入品が利用されており、そのころは「知る人ぞ知る」程度の野菜であったが、昭和50年代後半からわが国でも栽培が開始され、今では通年手に入る野菜となっている。
普通一見するとキュウリにしか見えない果実を実らせるが、果梗を見ると全体的に太く、星型ないしは多角形なので、カボチャの一種とわかる。また近年は丸型やUFO型、鶴首型のものがみられ、特に丸型のものの中には、一見するとますます若いカボチャにしか見えないものも存在する。果皮色も普通は濃緑色だが、黄色や黄緑色、純白やオレンジ色、黄色と緑のツートンカラーなど豊富である。
若い果実をラタトゥイユなどの炒め物や煮物、フライなどの揚げ物やパスタの具材にして食する。加熱するとナスのようなとろりとした食感になる。
成長すると果肉の繊維が発達して硬くなり、味も落ちてくる。なお、UFO型のものや鶴首型のものは、あえて果実を完熟するまで実らせておき、表皮がカチカチに硬くなったものを「オモチャカボチャ」として観賞用にすることもある。
和名を「蔓無しカボチャ」と言い、カボチャのように蔓が茂らず、株もとに果実が実るという生体に由来する。

一方、キンシウリはわが国には明治時代から大正時代にかけて中国から「攪糸瓜(カクシカ)」という野菜が導入され、栽培が始まったのが最古の記録であるとされる。
果実は俵型で、表皮はクリーム色または黄色である。出始めの頃は果皮が白っぽいものもあるが、この場合蔕を見て木のようにカチカチに硬くなっていれば熟しているサインなので、通気性の良い場所に数日置いておけば黄色くなってくる。
「そうめん南瓜」という名称でも知られているが、これは熟した果実を適当な大きさに切ったのち、ワタや種子を取り除いてゆでると、果肉の繊維が素麺のようにほぐれることにちなむ。
果肉の繊維を素麺のようにおつゆにつけて食べるほか、「なます瓜」の別名のように酢の物やなますにしてもよい。また、ダイエット食として、スパゲッティの代わりにパスタソースをかけて食べてもよい。英語圏でもSpaghetti squashと呼ばれるが、こちらもまさに体を表す名称である。


スイカ(西瓜、Citrullus lanatus)


自宅にて筆者撮影。小玉スイカ。

夏と言えば真っ先に思い浮かべる食材で、スイカ属に属する。わが国には南北朝時代に入ってきたとも、戦国時代の南蛮貿易の頃に入ってきたとも、はたまた江戸時代初期に入ってきたともいわれている。今でこそスイカと言えば「縞模様」のイメージが強いが、当初の果皮は深緑一色であった。
果肉色も今でこそオーソドックスな赤以外に黄色やオレンジ色があるが、古くは熟しても果肉は真っ白のままというものも栽培されていた。
導入当時は甘味が弱く、現在のようにデザートとして食するよりかは水分補給のために食されていたという。また赤い果肉が血を連想させるということで、江戸時代初期のスイカの評判は悪く、口さがない人は「由比正雪*6の首のようだ」と忌み嫌ったといわれる。
食べ方や見分け方などについては個別記事を参考。


コロシントウリ(古魯聖篤瓜、Citrullus colocynthis)



(上)東京都薬用植物園にてmakinomantaro撮影(下)東京薬科大学薬用植物園にてmakinomantaro撮影。

熱帯アジアや北アフリカが原産のスイカ属の蔓性一年草で、蔓や葉、花や果実までスイカに酷似した見た目である。
果実はハンドボール大の大きさに成長し、表面は薄緑色で表面には鮮やかな緑色の縦じま模様が入るが、熟すと表皮は黄色に変色し、模様はほとんど見えなくなる。
これほどおいしそうな見た目にもかかわらず果肉は真っ白なスポンジ質で、おっそろしく苦い。多量に食べれば下痢や嘔吐を引き起こすが、この性質を利用して原産地やヨーロッパでは本種の果実が下剤として用いられたという。
わが国には明治時代後期に薬用植物として導入され、現在は標本用ないしは観賞用に植物園で栽培されるのみである。


ヘチマ(糸瓜、Luffa cylindrica)


東京都薬用植物園にてmakinomantaro撮影。

小学校の理科の授業で、植物のライフサイクルを教えるために必ずと言っていいほど栽培されるヘチマ属に属する植物。
果実は円柱形で、薄い縦溝が入るが、この溝は成長するにつれて深くなる。
開花後1週間以内の若い果実は野菜として食用にすることができ、鹿児島県や沖縄県では夏の食材として重宝されてきた。
それ以上成長すると繊維が発達し、食感が悪くなって食べられなくなる。繊維が発達してきたヘチマの果実は水につけて表皮を腐らせてはがし、内部の種子を抜いて乾燥させてから「たわし」に加工する。沖縄方言でヘチマのことを「ナーベラー」と呼ぶが、これは「鍋洗い」という意味で、ヘチマたわしで鍋などの食器を洗ったことにちなむ。
「ヘチマ」についての詳しい解説は個別項目にて。
近縁種のトカドヘチマは「十角糸瓜」と表記し、これは果実が10個もの稜を持つことに由来する。こちらは大正時代に導入されたが、ナッツのような独特のにおいがあってあまり好まれず、ヘチマと比較して普及を見ていない。


ヒョウタン(瓠瓜、Lagenaria hispida var.gourda)ユウガオ(蒲瓜、Lagenaria siceraria var. hispida)



(上)「大瓢箪」。大船フラワーセンターにてmakinomantaro撮影。(下)ユウガオの丸い果実をつけるもの。東京薬科大学薬用植物園にてmakinomantaro撮影。

ユウガオ属に属する蔓性一年草で、わが国への正確な伝播ルートは判明していないものの、縄文時代後期の遺跡から炭化したヒョウタンの果皮の一部や入れ物に加工された果実の全体部分が発見されている。
植物としての詳しい解説は個別項目にて。
果実は真ん中でくびれたいわゆる「ひょうたん型」のほか、こん棒型や球形、球形で表面にちりめん状の細かいこぶがあるもの、枕型、鶴首型、だるま型など千差万別である。大きさも様々で、全長が50㎝を超す「大瓢箪」や、豊臣秀吉が馬印として用いたことで有名な、小さい果実を多数つける「千成瓢箪」などが知られる。
果肉はククルビタシンという成分を含んでおり、食せばたちまち猛烈な苦みにより嘔吐・腹痛により苦しむ。但し例外的に、「食用一口ひょうたん」という品種がある。こちらはククルビタシンがほとんど含まれていないので、若い果実を漬け物にして食することができる。
とはいえ、たいていは果実のよく熟したもの(蔕が木のように硬く、果実の表面がやや白っぽくなっているとよく熟しているサインである)を水につけ、果肉をドロドロに腐らせて抜き去り、乾燥させたものを容器や楽器に加工して用いる。
干瓢の原料であるユウガオはヒョウタンが栽培を重ねるにつれククルビタシンがほとんど含まれなくなったもので、こん棒型かややひしゃげた球形(特にこのタイプは「フクベ」と呼ばれる)の未熟な果実を鉋のような器具で薄く剥き、乾燥させた「干瓢」として寿司ネタや汁の実として食するほか、適当な大きさに切って煮物や汁の実とする。
熟すと表皮がコチコチに硬くなるので、ヒョウタンと同じ要領で容器や楽器に加工する。
先ほど「ユウガオにはククルビタシンがほとんど含まれない」と記したが、まれに先祖がえりを起こしてククルビタシンによる苦みが発現することがあるので、調理中に味見をして舌がしびれるような強い苦みを感じたら、食べずにすぐに廃棄するべきである。


トウガン(冬瓜、Benincasa hispida)


「姫冬瓜」という小型の品種。自宅にてmakinomantaro撮影。

トウガン属に属する一年草で、果実を食用にするため栽培される。わが国には奈良・平安時代に渡来しており、京都加茂地区で多く栽培され、「かもうり」の名称で呼ばれた。
果実は臼型のものと縦長の円筒形のものがあり、現在多く栽培されるのはもっぱら後者である。また、熟すと果皮に粉の吹くものを「在来種」、熟しても果皮に粉を吹かない「沖縄種」があるが、これも現在栽培されるのはもっぱら後者である。
食べ方などの詳しい解説は個別項目にて。


ニガウリ(苦瓜、Momordica charantia)


自宅近くの植え込みをmakinomantaro撮影。

沖縄方言の「ゴーヤー」でも知られるツルレイシ属の野菜。わが国には江戸時代に渡来した。当時は現在の沖縄県に該当する地域(琉球)において早くも野菜として利用されていたようだが、それ以外の地域ではもっぱら観賞用ないしは熟した果実の種子の周りの赤い仮種皮を食するために栽培され、現在のように野菜としての栽培が始まったのは大正以降で、やがてそれが日本全土に爆発的に広まるのは戦後の沖縄返還以降である。
果実は円錐形で、細かなイボで覆われる。果実の色はふつう鮮やかな緑色だが、城に近い黄緑色の品種もある。
若い果実は特有の苦みがあるが、この苦みがかえってうまみのもとと言えるもので、チャンプルーなどの炒め物やスープの具材とする。熟した果実は黄色く変色し、下から裂け、赤い仮種皮に包まれた種子を露出する。前述のとおり、この仮種皮は甘味があって食することができる。
現在はグリーンカーテン用の植物としても栽培される。蔓が茂って窓を覆ってくれ、また果実を収穫して食べることもでき、まさにいいことづくめである。
別名をツルレイシと言い、これは果実の表面の突起がレイシ(ライチ)に似ており、かつ蔓に実るものであるから。

近縁種の「カックロール」(M.dioica)はバングラデシュなどの東南アジアが原産で、柔らかくて短い棘に覆われた薄緑色のラグビーボール型の果実を、カレーや素揚げ、天ぷらやサラダに調理して食する。ニガウリと比較して苦みが弱いが、ビタミンCを普通のニガウリの3倍から5倍含む。



ナンバンカラスウリ(南蛮烏瓜、Momordica cochinchinensis)


画像出典:ウィキメディア・コモンズより引用。https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Momordica_cochinchinensis_249498432.jpg 著作者:葉子(Public domain)

中国南部からオーストラリア北東部、タイ王国、ラオス、ミャンマー、カンボジア、ベトナムに分布する蔓性多年草で、名前に「カラスウリ」とあるものの、実際はツルレイシ属に属する。
果実は直径12㎝程度の楕円形または球形で、表面は細かなトゲ状のイボで覆われる。利用されるのは仮種皮と種子で、ベトナムではお正月の際に仮種皮と種子をもち米と一緒に炊いた「ソーイ・ガック」という真っ赤なおこわを食べる。
モクベツシという中国名で呼ばれることもある。これは「木鼈子」と表記し、種子が鼈甲細工のような形状であることに由来する。


ヘビウリ(蛇瓜,Trichosanthes anguina)カラスウリ(烏瓜、T.cucumeroides)キカラスウリ(黄烏瓜、T.kirilowii var. japonica)


東京薬科大学薬用植物園にてmakinomantaro撮影

カラスウリ属に属するインドが原産の一年草で、我が国には明治時代に入ってきたものの、当初は観賞用として極小量が栽培されるにすぎず、近年のエスニック料理ブームにのっとってようやく野菜としての注目が高まった、「新顔のウリ類」と言えるものである。
果実はひょろ長い棒状で、白地に細い緑色の線状の模様が入り、遠目から見ればますますヘビと見まがう見た目である。見た目に反して味は優しく、軽く茹でて酢の物や漬物にするほか、原産地のインドではカレーの具材とする。
熟すと真っ赤に熟し、果皮が紙のように破れて黒い亀の甲羅のミニチュアのような種子を露出する。
わが国在来の野草であるカラスウリ(T.cucumeroides)もキカラスウリ(T.kirilowii var. japonica)も古くは若い果実を漬物として食することがあった。ただ、前者は赤く熟れた果実は一見すると美味しそうだが、苦みとえぐみが強いので食用にはされない。一方、後者は熟すとさながら黄色いメロンのミニチュアのような見た目で、果肉も甘みがあって古くは子供のおやつとして好まれたという。但し、熟しすぎたものは発酵が始まっており、若干口の端がピリピリすることがある*7
両者は薬用植物としても知られており、前者は根を「王瓜根(オウカコン)」、種子を「王瓜仁(オウカジン)」と呼んでそれぞれ利尿薬や咳止めとして用いる。後者は根を「栝楼根(カロコン)」と呼んで解熱剤や口の渇きの防止に用いる。
キカラスウリの根から採れる澱粉を「天花粉」と呼び、ベビーパウダーのように用いることも有名である。

カラスウリ。東京都千代田区四谷の「真田グラウンド」にてmakinomantaro撮影。

キカラスウリ。東京都薬用植物園にてmakinomantaro撮影。


パルワル(Trichosanthes dioica)


画像出典:ウィキペディア英語版の「Trichosanthes dioica」のページから。https://en.wikipedia.org/wiki/Trichosanthes_dioica 著作者:Ferdous(CC BY-SA 4.0)

カラスウリ科カラスウリ属に属するインドが原産の蔓性一年草で、わが国ではほとんど栽培されない。
果実はわが国在来のカラスウリの未熟果を盾に引き伸ばしたような見た目で、表面はざらつく。若い果実をカレーやサラダの具材として食べるほか、ローストすると特有の甘味が出るので、付け合わせとしても人気である。それ以外にも、種子や胎座ををくりぬき、そこに食材を詰め、油で揚げたものも好まれている。


ヤサイカラスウリ(野菜烏瓜、Coccinia grandis)


画像出典:ウィキメディア・コモンズより引用。https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ivy_gourd_(Coccinia_grandis)_fruits.jpg 著作者:Tauʻolunga(CC BY-SA 3.0)

インドが原産で、名前には「カラスウリ」とあるが、わが国に生息する野草のカラスウリとは遠縁のコッキニア属という属に所属している。我が国にはこの属の植物は長らく生育例が知られていなかったが、現在は沖縄県にて本種の野生化した個体が発見されたことが報告されており、帰化植物の一種とされることもある。
ウリ科の作物の中では珍しく雌雄異株である。夏に5枚の花弁からなる白い花を咲かせるが、カラスウリの花のように花弁の先端が細く切れ込むことはなく、先端は尖る。
果実は長楕円形で、当初は濃い緑色地に薄い黄緑色の縦縞模様が入るが、果実が赤く熟すと縞はほとんど消滅する。
果実はまだ未熟なものも真っ赤に熟したものも野菜としてサラダや炒め物、カレーに調理される。若い蔓も青葉として食用にされる。


カイグア(Cyclanthera pedata)


画像出典:ウィキペディア英語版の「Cyclanthera pedata」のページから。https://en.wikipedia.org/wiki/Cyclanthera_pedata 著作権:Zyance(CC BY-SA 4.0)

ペルーが原産のバクダンウリ属の蔓性一年草で、我が国では沖縄県でごく少量が栽培される程度である。
果実は勾玉を引き延ばしたような形状で、まばらに棘が生えている。
この果実は内部が空洞になっているので風船のように軽く、果肉が少ない。果実中心部に黒く小さな丸い種子が入っていて、さながらピーマンのような構造である。
種を取り去ってからピーマンのように肉詰めにすることが多い。こうすると癖のない風味でおいしく食することができるという。これ以外にも種子を取ってから二つ割りにし、チーズ焼きにしてもよいそうだ。
キュウリのように本種の果実を生で食べる人もいる。ただし、生食の場合「キュウリのような風味があっておいしい」という意見と「青臭いばかりでおいしくない」という意見が併存し、好みが分かれる。
近縁種に「バクダンウリ」という雑草がある。こちらはカイグアより一回り果実が小さく、棘が長くて鋭い。一応未熟な果実は野菜として食することができるという。危険なのは熟した果実で、破裂して種子を四方に散らすことで繁殖するのだが、ものすごい勢いで種子が飛んでくるので、この種子で目を負傷した例が知られている。


シカナ(Sicana odorifera)


画像出典:ウィキペディア英語版「Sicana odorifera」のページから。https://en.wikipedia.org/wiki/Sicana_odorifera 著作者:E. André(Public domain)

南アメリカが原産のシカナ属に属する多年草であるが、我が国の冬の気温には耐え切れずに枯死するので、一年草の扱いである。
全体的な草姿は別属のヘチマに似ているが、円筒形の果実の表皮は赤茶色ないしは黒紫色である。果肉は鮮やかな黄色で、内部には無数の黒い種子がある。未熟な果実はサラダにして食し、熟した果肉は甘味があるのでジュースにする。
果肉も果皮も硬くなることと、蔕部分が木質化して硬くなることから、かつてはカボチャ属に含められることもあったが、現在は独立した属とみなす説が優勢である。


ハヤトウリ(隼人瓜、Sechim edule)


自宅にてmakinomantaro撮影。

ここまで紹介したウリ類は、ほとんどが初夏~初秋に旬を迎えるものであるが、本種は晩秋に旬を迎える珍しいものである。
熱帯アメリカが原産のハヤトウリ属の一年草である。わが国には大正時代にアメリカから鹿児島県に導入され、「薩摩隼人」にちなんで「ハヤトウリ」と呼ばれた。
原産地では多年草となるが、わが国では冬の気温に耐え切れず、一度霜に当たれば解けるようにして枯れるため、一年草の扱いを受ける。
9月ごろから花を咲かせ始め、10月に果実の成長が始まる。果実は洋ナシ型または卵形で、表面にはカボチャのように縦溝が入る。果実色はクリーム色ないしは黄緑色であるが、いずれのものも癖や青臭さはない。
原産地ではこれらに加え、果皮色が深緑色で、表面に柔らかい棘が生えているものが栽培されている。
果実をサラダや漬物、炒め物や酢の物、煮物に調理して食用にする。果実だけでなく、若い蔓や葉も食用にすることができ、成長した蔓からは繊維をとる。


テッポウウリ(鉄砲瓜、Ecballium elaterium)


画像出典:ウィキペディア英語版「Ecballium」のページから。https://en.wikipedia.org/wiki/Ecballium 著作者:Kurt Stueber(CC BY-SA 3.0)

地中海沿岸地域が原産のエクバリウム属に属する多年草で、矮性で蔓は伸びず、葉や茎を含めた植物体に硬く短い毛が生えており、ゴワゴワした見た目である。
春から晩秋にかけて黄色の小さな5枚の花弁からなる花を咲かせたのち、細かい毛が生えた灰緑色の楕円形の果実を実らせる。この果実は熟すと茎から離れ、果汁とともに種子を発射する。
このとき発射される果汁は苦くて有毒で、嘔吐や下痢を引き起こすことがある。しかし、その性質を利用して、古くは下剤として用いられたことがあった。


ラカンカ(羅漢果、Siraitia grosvenorii)


ウィキペディア日本語版の「ラカンカ」のページから。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%82%AB 著作者:KasugaHuang(CC BY-SA 3.0)

中国広西チワン族自治区が原産のラカンカ属に属する蔓性多年草で、地下の巨大な塊茎から5mもの蔓を伸ばし、7月から9月にかけて小さな黄色い花を咲かせる。やがて球形または卵形の深緑色の果実を実らせる。
この果実は甘みがあって食用にすることができるが、果物として生食することはなく、乾燥させて粉末にしたのち、お茶として煎じて飲むほか、水やメタノールなどで抽出したものを、「ラカンカ抽出物」という名称で料理の材料に用いる。大型スーパーで見かけることのある「ラカント」という調味料はこのようにラカンカから抽出した甘味料で、砂糖よりも低カロリーであることから、健康食品として人気が出ている。
また本種は古くから薬用植物としても利用されており、漢方の世界では喉や肺を潤し、鎮咳作用があるとされる。わが国においても、のど飴に抽出物を添加しているものがある。
名称は果実の薬効を仏教の聖者である羅漢のご利益にあやかったとも、果実の見た目を羅漢の頭に例えたともいわれる。


アレチウリ(荒地瓜、Sicyos angulatus)


ウィキペディア日本語版の「アレチウリ」のページから。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%81%E3%82%A6%E3%83%AA 著作者:SB_Johnny(CC BY-SA 3.0)

北アメリカが原産のアレチウリ属の多年生つる性植物で、我が国では1950年代前半にアメリカからの輸入大豆に種子が混じっているのが発見されたのが最初の例である。
現在は本州以南において帰化しており、河川敷に大群落を作っているのがみられるほど繁殖力が旺盛である。特定外来生物に指定されている他、日本生態学会によって日本の侵略的外来種ワースト100にも選定されている。
蔓や葉の見た目こそカボチャのそれに少し似ているが、花は黄緑色でごく小さく、花の後に実らせるくすんだ緑色の果実もかなり小さい。果実は金平糖型をしており、表面には柔らかな毛が生えている。この果実は苦みがあって食用にしない。
上記のように繁殖力が旺盛で、除草剤が効かないケースも存在する。この場合は「食べる」ことでこの植物に応戦するのである。
食べるといっても、果実は苦くて食用にはならないから、葉や蔓を青菜の代わりに食するのである。
葉や蔓にも苦みはあるが、幸いこの苦みは長時間加熱すれば軽減されるので、炒め物やおひたしにして食した例が知られる。


オキナワスズメウリ(沖縄雀瓜、Diplocyclos palmatus C. Jeffrey)


東京都薬用植物園にてmakinomantaro撮影

名前に「スズメウリ」とあり、花屋や園芸店でも単に「スズメウリ」と呼ばれることがあるため混乱を招きやすいが、わが国在来の野草のスズメウリ(Zehneria japonica (Thunb.) H.Y.Liu)とは別属である。本種はオキナワスズメウリ属に属し、スズメウリは「スズメウリ属」に属する。
我が国においては元来沖縄県の口之島や鹿児島県の吐噶喇列島に野生品が生息していることが知られていたのだが、現在は果実を観賞用にするために庭に栽培することが増えている。
果実は直径3㎝程の球形で、スイカのように白い縦じま模様が入る。果皮色は初めは鮮やかな緑色だが、熟すにつれてくすんだオレンジ色になっていき、最終的には鮮やかな紅色となる。
スイカのような見た目をしているだけあって食用になるかと思われがちだが、先ほど触れたヒョウタンの類に含まれる苦み成分のククルビタシンが本種にも含まれているので、食用にはできない。
ただし、インドでは若い蔓の先を野菜として食すことが知られている。


アマチャヅル(甘茶蔓、Gynostemma pentaphyllum (Thunb.) Makino)


東京都薬用植物園にてmakinomantaro撮影

我が国をはじめ、朝鮮半島や中国、マレー半島やインドにまで分布するつる性の多年草である。山野の林縁に生息しており、ウリ科の植物には珍しく、5枚の複葉からなる「鳥足状複葉」と呼ばれる葉を茎に互生させるのが特徴である。
しばしばブドウ科の蔓草であるヤブガラシと間違われやすいが、茎を見ると、ヤブガラシの茎の方が紫色で太く、やや角ばっているのに対し、本種の茎は黄緑色で細く、丸みを帯びているので区別できる。
夏から秋に5枚ほどの花弁からなる黄緑色の花を咲かせ、秋に直径6㎜から8㎜程の球形の果実をつけ、光沢のある黒い緑色に熟す。しかし珍しいことに、本種の主な利用部位は果実ではなく葉である。
葉には甘味があるので、これを乾燥させたのち、煎じてお茶として飲む。このアマチャヅルから作ったお茶には鎮静作用や咳止め、滋養強壮の効果があるとされ、古くから飲用されてきた。さらに研究が進められ、もともと滋養強壮の効果のある薬用植物・チョウセンニンジンに含まれる複数の薬用成分の「ジンセノイド」が本種にも含まれることが明らかになっている。


瓜にまつわる言葉あれこれ


瓜の蔓に茄子はならぬ
平凡な親から優秀な子供は生まれないものだという意味。
類義語:蛙の子は蛙、この親にしてこの子あり

瓜二つ
両者が酷似していること。マクワウリを二つに切った際に、断面がそっくりであることから。

ウリ坊/瓜坊
猪の子供のこと。背中の模様が瓜のように見えることから。
ポケモンに登場するウリムーの名前の由来はおそらくこれ。

瓜田(かでん)李下(りか)(瓜田に(くつ)()れず 李下に(かんむり)(ただ)さず)
瓜の畑で靴を直そうとしゃがむと「あの人は瓜を盗もうとしているのか?」と疑われ、(スモモ)の木の下で冠を被り直そうと手を上げると「あの人は李を盗もうとしているのか?」と疑われる。
そこから、人に疑念を抱かれるようなことをするな、という教え。
類義語:君子危うきに近寄らず、悪木盗泉

瓜に爪あり 爪に爪なし
読んで字の如く、字形の似た漢字の区別法。

破瓜
「瓜」の字を縦に割ると、「八」と「八」に分かれることから、転じて16歳の女性のことを指す。
また八×八=64歳の男性のことを指すこともある。
エロい意味の方が諸兄にはお馴染みではあろうが。

一瓜実に二丸顔
女性の顔立ちで、一番良いのはやや細長く白い瓜実顔(瓜の種子のように細長い顔つき)、二番目は愛嬌のある丸顔だということ。その後に「三平顔に四長顔、五まで下がった馬面顔」と続く。

西瓜は土で作れ南瓜は手で作れ
西瓜は土と土壌が、南瓜は手入れが大事ということ。作物の上手な作り方を例えた言葉。

見かけボウブラ
見た目が立派だが、中身が伴っていないこと。見かけ倒し。福岡県のことわざで、「ボウブラ」はカボチャのこと。

南瓜に目鼻
女性の顔立ちがよくないことをからかう表現。

瓜売りが……
早口言葉の一つ。全文は「瓜売りが瓜売りに来て、瓜売り残し、うり売り帰る瓜売りの声」。

瓜の皮は大名に剥かせよ、柿の皮は乞食に剥かせよ
マクワウリは皮を厚めに剥いてから食べるのがよく、逆に柿は皮を薄く剥いた方がおいしく食べられるということ。
「乞食」という言葉が今では差別用語になっているので、このことわざは現在はあまり知られていない。
類義語:適材適所、餅は餅屋

瓜を投じて(たま)()
少しの贈り物(出費)で多大なお礼(見返り)を頂くこと。瓊は玉とも。
原点は中国の『詩経』。
類義語:小を捨てて大を拾う、海老で鯛を釣る


追記・修正は瓜売りになって瓜を売りつくしてからお願いします。


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最終更新:2025年07月18日 11:38

*1 大意としては「瓜や栗を食べていると子供のことを思わずにいられない、彼らはどこから来るのだろう、子供らが目に浮かんで寝付けない。金銀や宝石などに子供という宝が勝るものか、いや及びはしない」というところ。

*2 天下人になった秀吉も朝廷にマクワウリを献上している

*3 ただし、この表現はマクワウリを指すこともある

*4 ガーキン(Gherkin)は漬物用の小キュウリのこと

*5 ただし、長崎では現地に居留するポルトガル人や中国人に供出するために食用として栽培されていた

*6 4代将軍・徳川家綱の治世に浪士を募って幕府転覆計画を練り、実行に移そうとするが仲間の裏切りで逮捕。ほどなくして斬首刑に処され、梟首となった

*7 この熟しすぎによる発酵はメロンでも起こり得る現象である