磐永阿梨夜

登録日:2025/09/13 Sat 19:53:26
更新日:2025/09/30 Tue 19:10:17
所要時間:約 11 分で読めます





ここから先は生きる事が異質になる停止の世界 幻想郷に恒久あれ!


磐永(いわなが)阿梨夜(ありや)東方Projectの登場キャラクター。


【概要】

登場作品:東方錦上京(6面ボス)
種族:神(石の女神)
二つ名:恒久の姫
能力:変化を辞めさせる程度の能力
テーマ曲:最後の一人は慣れてるから ~Stone Goddess

【人物】

東方Project第20弾『東方錦上京』にて初登場した石の女神。同作のラスボス(6面ボス)。

『錦上京』における、「幻想郷が停止し、変化のない同じ日が繰り返される」「それに伴い、幻想郷の妖怪や神さえも無力化したが、誰もそれに気づいていない」という現象を引き起こした元凶。

一人称は「私」、二人称は「貴方」とかなり丁寧で、全体的に中性的な口調。


【物語での活躍】

異変の元凶と推定された「聖域」地下に埋まっていた「浅間浄穢山(ピラミッド)」の主。
元々は4面ボスのユイマン・浅間とともに祀られており、ピラミッドは2人が祀られている神社の本殿*1だったのだが、阿梨夜の能力が月の民から目をつけられてしまう。
「変化を辞めさせる程度の能力」とは即ち進化や進化を完全に拒む能力。
月の民は言ってしまえば「穢れ」との接触を極限まで減らした「本物に近い紛い物の不変」*2に対し阿梨夜の操る「不変」は穢れの有無に依存しない完全な停止であった。
月の民からすれば垂涎モノの能力であり、阿梨夜も度々月人になるよう勧誘を受けていたがそれを拒み続けた結果、月の民によってピラミッドごと封印されてしまう。
さらには共に祀られていたユイマンは洗脳・記憶改竄を経て月の民の道具としてこき使われるようになってしまい、ピラミッドも月に浄化された情報を送るための情報処理施設「浅間浄穢山(あさまじょうえさん)」に改造されてしまった。
それにしても、咲夜といい輝夜といい、月の民が欲しがりそうな時間関係の能力者が悉く地上にいるor移り住んだのはなんの皮肉だろうか……全員名前が「夜」で締められているのも面白い共通点である。

それから長らく封印の眠りについていたものの、「外の世界(生成A I)」の変化*3により膨大な量の情報が流入するようになってしまい、ついにユイマンが処理能力の限界を迎えパンク、未処理で「穢れ」まみれの情報が月の都に流入してしまうという事態に陥る。ざまぁねぇな
これではマズいと月の民は阿梨夜の封印を解いて世界を停止させ、その間にユイマンを再起動(リブート)させる策を取った結果、今回の異変が起きたのである。

月からは一方的に封印された挙句、自分の都合で封印を解きあまつさえ協力まで要求してくるという暴挙オブ暴挙に対しかなり恨みを募らせていたが、こうでもしなければユイマンが無事に助からないことを悟り、幻想郷の妖怪や神ですら無力化してしまうという強力極まりない能力、いわば世界を滅ぼしかねない力である自分の能力を已むを得ず使用した。
ユイマンの処置が完了した後、自分を打ち倒しに来るであろう「不変を打ち破る力(異変石)」を携えたの来訪を信じて……。

自ら主体的に異変を起こしていたわけではなく、むしろ幻想郷を案じていたもののやむなく能力を使用しているため、これまでのボスとは一線を画す背景となっている。
厳密なターゲットは異なるとはいえ、純狐がこのことを知ったらお互い喜んで結託しそうである。この時点で紺珠伝の異変が解決済みなのは幸いだった……のだろうか?

+ つまり? ※一部ネタバレにつき折り畳み
ユイマンがキャパオーバーでダウン、浅間浄穢山が機能停止

月の民が封印を解き、ユイマンを再起動するまでの間幻想郷を停止するよう要求。月の民or阿梨夜のどちらかにこの策を入れ知恵した人物がいるとみられる

阿梨夜はユイマンのこともあるため渋々承諾、幻想郷を停止

自機組が「異変石」を発見し異変解決へ。あとは自機組が阿梨夜をシバいてくれるでしょうと丸投げ

今作のキーアイテムにして異変に対抗するための「異変石」の製作者は玉造魅須丸と、月と幻想郷の両方に顔が利く賢者・八意永琳
事前に浅間浄穢山の管理人であった綿月豊姫から連絡が行っていて、それを受けて永琳が立案までしていたと仮定すれば、異変石を用意しておけば異変の元凶である阿梨夜のもとに自ずと辿り着くことになると踏んだのであろう。


【元ネタ】

日本神話における女神の一柱・石長比売(イワナガヒメ)(日本書紀では磐長姫)であろう。別名「苔牟須売神(コケムスヒメノカミ)」。
父は大山津見神(オオヤマツミノカミ)、妹は木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)。華やかながらも限りある花の女神である妹とは対照的に、一見地味で醜い(神基準)が、未来永劫朽ちることがない永遠の岩の女神である。
転じて不老長生の神として、漁師の間では海上安全の神としても信仰された。

天孫降臨に際し邇邇芸命(ニニギノミコト)が地上に下った際、大山津見神に娘2人を嫁がせるよう頼み、大山津見神もそれを快諾したのだが、
邇邇芸命は美しい木花之佐久夜毘売に夢中になり、醜い(神基準)石長比売は冷遇され、ついには大山津見神の元へと送り返されてしまった。
これに激しく怒った大山津見神は、「石長比売を嫁がせたのは天孫が岩のように永遠にいられるようにと誓約を立てたのに何事か。天孫の寿命は短いものになるだろう(意訳)」と告げ、それ故に天孫の子孫である皇族、ひいては人間には寿命が生まれたとされている。
ただこれは「古事記」での内容。「日本書紀」においては、寿命を短くしたのは石長比売によるもの*4と書かれている。なんであれ嫁さんを露骨に差別した挙句不義理をかました邇邇芸命が悪いのは確かなのだが。

また、富士山の化身とされる木花之佐久夜毘売に対し、石長比売は八ヶ岳の化身であるとする伝承もある*5
もともとの八ヶ岳は富士山よりも高い山だったのだが、背比べで負けた腹いせに八ヶ岳を蹴り飛ばした結果8つの山に分裂し、富士山より小さくなったという伝承もある。
その際、蓼科山が流した涙が貯まったものが諏訪湖になったともいわれている。
……とことん災難な神様である。

ちなみに、妹の旦那の祖母(天照大神)の兄(素戔嗚)の妻は天弓 千亦の元ネタとされる神大市比売(カムオオイチヒメ)
遠縁ではあるが千亦は義理の家族の可能性が高い。



【容姿】

丈が長い白シャツがベースとシンプルなのだが、炎を纏う左半分だけの肋骨や右半分だけの鳥の骨、蛇の尾部の骨を巻いている。鳥の骨部分には鳥居と同様に三角形の目玉模様(プロビデンスの目?)が入ったマントあるいは翼があり、アニメーションだとこの模様は常に動いているほか、
棒状の石のようなものをスカート代わりに巻いている。
足元は何も履いていない裸足。太もも付近にも衣服らしきものが見えないため全貌は描き手の裁量に委ねられている。

髪は茶色のショートヘアで、左目を中心とした顔の左半分に仮面のようなものを着けている。
これはおそらく邇邇芸によって「醜い」とされた箇所を隠していることを表現していると思われ、仮面の下がどうなっているのかはファンの間でも解釈は様々。

総じてかなり奇抜なファッションデザインで、霊夢も「変なのは見た目だけじゃない」と評しているが、「私は不変の神なのです だから、私は変に非ず」と返している。意外とギャグセンスもあるのかもしれない。
立ち絵に一緒についてくる文字は「そうこなくっちゃ」。
ただ元ネタの磐永姫やそれをモチーフとした様々な作品のキャラクターのようなブサイクというわけではなく、どちらかといえばイケメンの部類。とはいえ、古事記の時代から考えれば「女性が男のような顔立ちや髪型をしているのは異端=醜い」と判断されてもやむなしと言える。



【スペルカード】

『東方錦上京』

※()内は使用してくる難易度。

  • 石神「巌となるさざれ石」(E.N.H.L.)
    • 自機周辺を除く画面全体に水色の米粒弾を設置、それがランダム方向にゆっくり直進する。
      説明だけならチルノのパーフェクトフリーズを思わせるが、弾幕の密度は桁違い。

  • 死符「永遠の冬」(E.N.)
  • 死符「恒久の冬」(H.L.)
    • 自機狙いの青い結晶弾を連射、画面端で反射する。弾は5回反射すると画面外に消えるが、残った弾が少なくなると再びボスから発射される。
      反射角は概ね自機狙いだが、反射回数が増えるほどブレが大きくなるので最終的には画面全体に弾が散らばることになる。

貴方にも見えるか? 穢れが満ち始めている
残りは少ないよ 貴方の寿命……

ここから4面道中のような4色の線が中央に向かって出現する。

  • 生符「混沌の冬」(E.N.H.L.)
    • 斜め四方向に四色の結晶弾を連射、画面端で反射する。
      一つ前のスペルに似ているがこちらは弾速がやや遅く、反射角が自機狙いではない。ゆえに早い段階で画面全体に弾が散らばる。

  • 「弾幕の化石」(E.N.H.L.)
    • 画面全体に弾消し耐性のある黄色い石弾を設置し、自機狙いの黄色い中型弾を発射。中型弾は全方位に分裂する。
      石弾は自機周辺には設置されない…などという忖度はしてくれないが、最下段は石弾に対して安地。

残念、時間切れ 遊びはここまでよ
これ以上の穢れの流入は聖域が持ちません 私の力で穢れを無力化しましょう

ここから先は生きる事が異質になる停止の世界

幻想郷に恒久あれ!

これ以降、最後のスペルを突破し撃破するまで背景の動きが停止しモノクロになる。

  • 地符「幻想のリリクウィー」(E.N.H.L.)
    • 弾消し耐性のある白い石弾を交差する軌道で撃ち下ろしてくる。
      設定ミスによる物なのか、ノーマル以上の難易度は全て弾幕密度が同じ。ゆえにハード以上の難易度では癒しポイントとなる。

  • 月符「錦の上のイマジナリー」(E.N.H.L.)
    • 画面最下段から丸弾が扇状に発射され、最上段まで到達すると中型弾に変化。また時折メイン異変石と同じ色のピラミッド雑魚が召喚される。
      ピラミッド雑魚を倒すと周辺の弾が消えるが、狙って破壊するのは難しい。
      ブルーシーズンの異変攻撃が発動すると哀しみを背負うことに…

  • 「ストーンゴッデス」(E.N.)
  • 「不生不滅の石の女神」(H.L.)
    • ボス周辺から弾消し耐性のある石弾が発射される。最初は黄色だけだが、体力減少か時間経過に合わせて青→緑→赤と弾が追加される。
      ダメージは減少するがボムも一応効くのでゴリ押しも出来なくはない。ボーナス狙いならひたすら気合。



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最終更新:2025年09月30日 19:10

*1 浅間山を模してデザイン

*2 それでも十分永遠に近いのだが

*3 開発に際し、生成AIを使用していることはZUN氏自ら述べている

*4 邇邇芸命の子を妊娠した木花之佐久夜毘売を呪ったため

*5 小説版「東方儚月抄」にて言及あり。輝夜が残した「蓬莱の薬」の処分に困った帝が富士山で焼くことにしたのだが、現れた木花之佐久夜毘売から止められ、代わりに石長比売のいる八ヶ岳を紹介された。なお、この蓬莱の薬は運搬していた岩笠が同行者の少女によって殺害されたことで奪われ、その流れで服用され失われたため、八ヶ岳に火を放たれることはなかった。