登録日:2025/12/01 Mon 22:02:00
更新日:2026/05/05 Tue 16:26:54
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「人間には不可能なことだが…君は改造人間なんだ!」
緑川弘とは『
仮面ライダー』の登場人物である。
下の名前は殆ど存在感がないので「緑川博士」の方が通りはよい。
ショッカーの飛蝗男=仮面ライダーの誕生に大きく関わった紛う事なき重要人物ではあるのだが曖昧な部分も多く
山積みの設定と反比例した短い登場期間もあって「よく考えるとこの人は具体的に何してたんだっけ」という印象になりがちな謎多き博士でもある。
その立ち位置から色々な作品で登場するが、ここでは基盤の一つにして最も多く取り扱われる1971年の特撮TVシリーズを中心に説明していく。
【概要】
その才能に目をつけた
ショッカーに拉致され、本編開始時点では行方不明扱い。
劇中では明確化されていないが改造人間の製造に従事させられていた。
期待に沿う成果が出ない事に業を煮やした組織の圧力に耐えられず(娘の命なども脅迫の材料にされ)知能・体力ともに優れた素体として教え子の本郷の名前を出してしまい…というのが本編の導入部となる。
ルリ子には「お父様」と呼ばれるなど、父子間の仲はさほど悪くはない。
【活躍】
「すまん、本郷くん…君を私が協力者に選んだばかりに…」
(演:野々村潔)
特撮TVシリーズ。緑川先生。
本郷の手術に合わせアジト内の発電設備を破壊し、脳改造寸前で救出に入る。
改造された肉体に戸惑う本郷に説明と助言をしつつ、なんとか脱出に成功して
サイクロン号で逃走を図るが、道中で
蜘蛛男率いる部隊に捕縛されてしまう。
絶体絶命となるが、マスクを被り
『仮面ライダー』として覚醒した本郷によって窮地を脱した。
その後は立花藤兵衛をメッセンジャーとして戸浦埠頭の50番倉庫でルリ子と落ち合う手筈だったが、諜報用の小型蜘蛛により察知し先回りした蜘蛛男の手にかかり今度こそ死亡する。
蜘蛛の糸に絡め取られ、死体は本郷の目の前で溶解した。
更に折悪くそのタイミングで現場に訪れたルリ子には本郷が父を殺したようにしか見えず、誤解の種となっていく。
危険を顧みず本郷を救出しショッカーへの反抗の嚆矢となったが、その精神は憔悴しきっていた。
ショッカーの悪に反旗を翻す正しさを理解しつつも、それに立ち向かわねばならない己の非力さ、裏切りの代償により狙われる娘の命、本郷を悪魔に差し出したも同然の罪の意識などが混然一体とり、悲観的な言動が目立つ。
死の寸前に事の次第と罪悪感を伝える事ができ、それを本郷が受け止めてくれたのがせめてもの救いである。
「意志をもたない人間の世界は……死の世界と同じだ」
「そんな世界をみるくらいなら死んだほうがいい さあ殺せ!」
上記のテレビ版と同時並行で掲載されたメディアミックス。緑川博士(はくし)。
こちらでは失踪期間が半年と明示され、やはり本郷の脳改造の寸前に救出したが本来は肉体改造をも阻止したかったらしい。
大まかな流れはTV版と同じだが、上の台詞のように死を目前にしても心まで屈せず啖呵を切る芯の強い人物として描かれている。
TV版では本郷に励まされるばかりだったがこちらでは逆にショッカー打倒の気持ちを伝え、その悪を全世界に公表して人々の団結を促そうとしていた。
まんがビデオでのCVは納谷六朗。
ショッカー首領の弟でテレビ版で
藤岡弘が負傷していた時期の本郷猛の声である。
【改造推薦受付中】
地味にサラッと流されがちな部分なのだが、作中では本郷を協力者としてショッカーに推薦したと語られるのみで、実は仮面ライダーの改造に携わっているかは明言されていない。なんなら本郷の改造手術の際にその場にいない。
つまりこれを「改造人間を作らされてたけど本郷に対してはあくまで推薦しただけで直接関わってない人」として解釈すると、全ての始まりである『仮面ライダー』の設計思想に至った科学者という超絶重要なポジションが空位という事になるのである。
このあまりにもデカすぎる切れ込みはファンにとってある種の
メアリースー的な存在を作りやすく、令和の時代にも
この辺に踏み込んだ映画が公開された。
それ以外では作品によって話に合わせやすい説を採用するか、そもそも触れないかで一定していない。
ただしTV特撮版の産みの親の一人である平山亨プロデューサーの執筆した小説や裏設定では明確に緑川博士を仮面ライダーの設計を考案したとしている。
このへんについては後述。
また
こちらの作品では
死神博士が立案した…という設定で描かれていたが、最近の連載では作ったのは類似の飛蝗男で、最終的にコンペで緑川に競り負けたという事になっている。
【仮面ライダー=緑川タイプか否か】
緑川改造説を前提にした資料として平山Pが執筆した小説や監修の設定本が存在し、そこではショッカーに拉致された緑川博士が仮面ライダー0号とも言えるバッタ男のプロトタイプの改造に着手するも素体の青年が術後の肉体に耐えられず、体力が限界を迎え死亡したという前日弾が綴られた。
当初は異常な状況下ながらショッカーのバックアップを受け、研究者の性として改造人間を開発に打ち込んでいたが、手術失敗による0号青年の壮絶な死と、それを気にもせず次なる成果を要求するショッカーを見てその本質を身を以て味わった事により良心の呵責に苛まれていく。
そして組織への疑念を深めつつも首領の厳しい追求を受けた事で理想の被験体として本郷の名を挙げてしまい、蜘蛛男が捕獲に向かう。
萬画版の言動に顕著だが、その心うちは人間の自由や平和な世界を尊ぶ善良な気質の持ち主である。
虜囚同然にショッカーで研究を続ける傍ら、自らの最高傑作として心血を注いだ仮面ライダーを命懸けの一刺しとするために準備を進めていた。
本来は同じショッカー怪人ながら他の改造人間に比べライダーがヒロイックなデザインで機械的なシステムが多い番組制作上の成り行きでしかない部分もこの辺で説明ができてしまうという仕組み。
本郷を被験体に推薦したのは脅迫に屈した面も確かにあるが、一方でその能力・精神共に自らの希望を託すに足る人物だという確信があったから。
あからさまにライダーと連動したサイクロン号も緑川改造説を採用した場合は当然こちらも緑川博士が基本コンセプトを提唱し、ショッカー科学陣に制作させたという流れになる。
定番のツッコミどころの一つである「ショッカー製の筈のサイクロン号にアジトの脱出時点で立花レーシングのエンブレムがある」という点もつまりは緑川博士の仕込みであり、教え子として人となりを熟知していた博士がレーサー志望の本郷猛の象徴として、またショッカーに立ち向かう希望のシンボルとしてコッソリ足した、みたいな理由づけ。
企画段階時の設定や資料では概ね緑川改造説を前提にしており、諸々を総合すると脅迫に負けて教え子を差し出してしまい、できれば生身のまま助けたかったが一方で本郷を悪と戦う希望として心のどこかで改造という結果を前提にし、脱出まで成功させながら予期していた通りの罪悪感に押し潰されるという険しい雁字搦めに苦しんでいる。
しかし願いを託された本郷猛は仮面ライダーとなり、恩師の思いを継ぐようにショッカーに立ち向かう正義と平和の旗印となったのだ。
ただしあくまでも裏設定止まりであり、基本的に本編では「本郷を推薦してしまい贖罪として逃したけど具体的に組織で何してたかは分からない人」以上の物はないという部分には留意されたい。
【緑川の系譜】
一応は本編で明確化されていない緑川改造説(緑川タイプ)だが、平山Pが担当した10人ライダーのシリーズではこれまた裏設定で関わりが示唆されている場合があり、シリーズ化が前提にある類似性や細々とした疑問点はそれで解消できるというもの。
一例として
仮面ライダーXの神啓太郎は作品の企画書に
神教授は、仮面ライダーの製作者・緑川博士の僚友で
人間工学の共同研究者として共に世界的権威であった。
と記述されている。
つまり緑川博士はかねてより自由と平和の象徴として『仮面ライダー』タイプの改造人間を考案しており、その思いや技術体系を同志と共有していた、という考え方。
深海開発用のカイゾーグを
本郷猛や一文字隼人の飛蝗男に限りなく近いデザインにし、改造した
神敬介に対していきなり『仮面ライダー』の称号を授け、かなり熱の入った様子でXライダーにGOD(悪の組織)との戦いを託すのにはこういった背景がある。
神教授をはじめ、なんらかの形で緑川博士の考えや技術を知る科学者たちは前途ある青年を人外の体に作り変える罪悪感に苛まれながら、ある時は瀕死の重傷から救うために、またある時は悪の組織に命を握られた絶望的な状況で改造手術に臨む時、悔恨の一方で悪に立ち向かう願いを込めて『仮面ライダー』を生み出すのだ。
いきなり遠距離通信ができたり歴代ライダー同士で妙に互換性があるのもこれによる物で、違う系列で誕生しても後継者として認められれば諸先輩方に調整を受け…という万能起源説だが、あくまでも企画書とか裏設定で言及されている程度で劇中では定かではないという点を重ねてになるが付け加えておく。
…この説を採用してしまうとなんだか緑川博士が裏で糸を引く黒幕にも見えてしまうが、恐らく気のせいだと信じたい。
全ての道は緑川に通じているのだろうか。
漫画家の長谷川裕一氏は「2号ライダーやショッカーライダーを改造したスタッフが生き延びて後続の仮面ライダーを作ったのでは?」との意見を著述している。
緑川博士と親しかった神教授がショッカーに捕まってライダー2号の改造を強いられた、と考えれば前記の設定とも整合性はとれるし、仮面ライダー系の改造人間が『多数は作られていないが、着実に系譜が続いている』根拠にもなる。
【他作品・他媒体での活躍と死に様】
長い歴史の中で初代『仮面ライダー』を題材としたリメイク・リブート作品は数多く輩出され、その誕生に関わる緑川博士も自然とお呼びがかかるのだが、この手のキャラの宿命としてだいたい早死にする。
企画がテレビ番組『仮面ライダー』に至るまでの改造人間が存在しない世界観=鬼門の蜘蛛男がいなかったり、どの怪人が襲撃するか決まっていなかったりなどの企画書の数々も例外ではなく
- 落雷から本郷や家族を庇って黒焦げ感電死(仮面天使、クロスファイヤー)
- 本郷と脱出に成功するが体内に埋められていた火薬を遠隔操作で起爆され爆死
など、実にバリエーション豊かな死因が考案されている。このへんまでくると蜘蛛男に溶かされた方が幾分かマシかもしれない。
殺されないとすれば
はじめから存在そのものが抹消されているパターンくらいしなく、いずれにせよキャラとして死んでいる。
「恩師の意思を継いで悪と戦い、その遺児(ルリ子)を守り抜く」決意こそが本郷猛=仮面ライダーの出発点であり、逆説的に物語を始めるために退場しなければならない。
もはや
西洋版蜘蛛男のベンおじさん並に助からないが、改造人間には優れた肉体が求められるので緑川自身が仮面ライダーになるといったようなどんでん返しの生存ルートも作れず、
逃れられない死の運命が待ち受けている。
必要な犠牲としか形容できないその死は半世紀以上の時を経ても覆る事はなく、生き延びる世界線(作品)は確認されていない。
さまざまな世界で本郷猛が仮面ライダーとなる限り、今日もどこかで緑川博士は殺されているのだ。
【余談】
- 蜘蛛の巣に絡め取られ崖下に落ちた本郷に愕然とし「本郷くん!本郷くん!」と名前を叫ぶシーンがあるが、熱演のあまり声が掠れてどこか艶かしく聞こえてしまい、某笑顔動画の配信では当該シーンでハートマークをつけたコメントが乱れ飛んだ。言うまでもなく、本来は絶望的な状況での慟哭という極めてシリアスなシーンである。
- 奥方(ルリ子さんの母親)については不気味なほど言及されない。取り敢えずショッカーによる非業の死を遂げたとかではないらしく、緑川家はずっと父子家庭だったようである。
- リブート作品では説明される作品もあり、上の本家の状況に合わせて「ルリ子が幼少の頃に死去」みたいなパターンが多い。
- シンでもやばい人? -- 名無しさん (2025-12-01 22:58:49)
- 東島「遂に緑川博士の項目が出たか!」 -- 名無しさん (2025-12-01 23:08:23)
- 全媒体でリメイクでも必ず死ぬ役回りってどっかで見たな…と思ったがそうかベンおじさんだ -- 名無しさん (2025-12-01 23:58:22)
- TV本編のパラレルにあたる『ビヨンド・ジェネレーションズ』では別の科学者が緑川博士ポジになってて自らライダーに変身してた -- 名無しさん (2025-12-02 12:17:26)
- 緑川博士でこんなに書けるとは仮面ライダーは奥が深いぜ。平成以降でもこれは緑川博士の翻案ではないか?と考察されることがある。555の花形社長とか。 -- 名無しさん (2025-12-04 01:20:37)
- 飛蝗男と仮面ライダーの性能の差にいかに緑川博士がてんさいだったのかわかるな。 -- 名無しさん (2025-12-05 12:27:14)
- シンだと、ストーリー上における説得力を何とか強化しようとアレンジした結果、なんか余計にヤベー奴になった感があったな。 -- 名無しさん (2025-12-05 16:45:46)
最終更新:2026年05月05日 16:26