アットウィキロゴ

サイクロン号(仮面ライダー)

登録日:2026/04/03 Fri 19:30:00
更新日:2026/05/25 Mon 14:56:02
所要時間:約 25 分で読めます






仮面ライダー・本郷猛の乗るマシンはサイクロンである
カウリングを飾る立花レーシングチームのエンブレムには
かつて籠められていたレースへの熱意に変え
平和への祈りが籠められているのだ


ヒーロークラブ 激戦の名場面集より




サイクロン号とは、仮面ライダーの代名詞であるバイクの元祖。
本郷猛一文字隼人の戦いを支え続ける鋼鉄の、そして疾風の愛馬である。

ライダーに不可欠の存在なので後続作品でのリスペクト・オマージュは数限りなく存在し、小説版は既に個別項目ができている。
それらまでひっきりなしに纏めていくと収集がつかなくなるので、ここでは
  • サイクロン(後続と呼び分ける場合は旧サイクロン)
  • 改造サイクロン
  • 新サイクロン
の、本家本元の初代TVシリーズの3機を中心に述べていく。
ベース車まわりも諸説あって説明が面倒なので割愛する。



旧1号編

【サイクロン号(旧サイクロン)】


登場話数:第1話〜第37話、第41話
主な搭乗者:旧1号、旧2号、桜島1号

元祖ライダーマシン。
200馬力のジェットエンジンは最高時速400キロでかっ飛ばし、ジャンプ力は30メートルの凄いやつ。
高速走行で発生した風圧でエネルギーを蓄え、本郷猛は仮面ライダーへと姿を変える。
レーサーバイクを使用した事で前傾姿勢で跨るライディングスタイルでお馴染み。
オンロードなのでアクションには向かないが、フルカウルで覆われたシルエットが美しい。

背部にある6本のノズルはジェット噴射を起こし、強力な磁気繊維のタイヤは原子力ダイナモを回すことで磁化してビルの壁を垂直に駆け上がる。
無人操縦もお手のもので、ライダーのベルト左側のスイッチを入れれば瞬く間に駆けつける頼もしい相棒。
おまけに水中適性もあり、カニバブラーの回では海底アジトに突撃していた。


至る所に刻まれた立花レーシングのエンブレムはレーサー・本郷猛の象徴であり、その人間性を以ってショッカーの悪に立ち向かうという精神性の顕れ。
このエンブレムは仮面ライダーの誓いの証として一文字隼人も共有しており、そのまま初代仮面ライダーという作品を代表するのライダーズクレストとして扱われている。
製作者は明確になっていないが、レーシングクラブのエンブレムなど最初から本郷に寄り添った設計になっており、その心内を知る緑川博士か立花のおやっさんのどちらかと言われている。



旧1号の専用機体というイメージが強いが、実際には2号編に移行してからも使われ、ゾル大佐の赴任時期まで活躍した。
2号編への移行に際してマフラー(ケツの6本の排気管)が青みがかったグレーからシルバーに塗り替えられており、玩具などではこれを1号用と2号用の違いとする事が多い。

仮面ライダーの名は伊達ではなく、白兵戦で太刀打ちできない怪人に対して力の不足をバイクで補うという展開も度々あり、移動だけでなく戦闘でも頼りになる存在として描かれる。

必殺技は放映当時には特に技名を呼称するものはなかったが、ゲバコンドルを空中で撃墜した技が「サイクロンクラッシャー」と後付けされ、90年代の書籍や98年の総集編ビデオ『仮面ライダーメモリアル』あたりから使われ始めた。
後は2号がヒトデンジャーに体当たりしており、場合によってはこれも含む。




レギュラーとしての最終的な出番は第37話(制作35話)でトリカブトを追跡するシーンだが、制作順で見た場合は第35話(制作36話)が最後。
ドクダリアンとの最終決戦で登場こそしたが限界が近いようで、一人称視点で戦闘員を追いかけたりジャンプシーンは人形だったりで実際には走っていない*1


撮影初期の段階では正面下部のカウルが少し長く真ん中にポッカリと穴が空き、側面の赤い線がライトの真下まで伸びていたが(俗にAタイプ)、
タイヤとの間隔が無さすぎてサスペンションが沈むとカウルが干渉して走行不能という致命的な欠陥が発覚したので、タイヤがぶつかる下部を切り取り(Aタイプ改修型)、
それでも走れない上に前歯が折れたみたいでカッコ悪いので潔くライト直下までスッパリ切ったものが視聴者が本編でよく知る形である(Bタイプ)。
本編撮影の段階で改修されたのでAタイプの穴空きサイクロンは変身バンクを除き本編には登場しないが、ライダー図鑑のサイクロン号の2枚目の画像など、印象的なスチル(特写)がAタイプな事が結構多い。
どちらかが良いかはあなたのお好み次第。




  • 前途多難スーパーマシン
レーサー用のバイクを用いデザイン性を重視したサイクロン号は番組のシンボルにして、アクション番組にとって数多くの難題を抱えたじゃじゃ馬でもあった。
風防(前面を守る窓みたいな部分)は市販レーサーの部品を流用したが、1971年当時の価値で数万する上にすぐ割れる悩みの種。
昆虫の6本足をイメージした背部の6本のマフラーは元から備わっている2本を除いて全てダミーで、水道管を針金で強引に括りつけ。
ジェット噴射はマフラーに花火を仕込んで物理的に吹き出すというとんでもない方法で、一歩間違えばボヤ騒ぎ。

小回りが効かない代わりに整地でスピードが出るという訳でもなく、実際の走行速度は30キロあるかどうかで、設定の10分の1も出ていない。
美術担当の三上睦男もさすがにバイクの溶接でプロの仕事は難しく、代名詞のフルカウルで車体は重く沈む。
ジャンプなどもってのほか。

コテコテの溶接は重く、それでもアクセルターンを何とか成功させているのはバイクスタントの大橋春雄の技巧の賜物である。

このように全身を覆うフルカウルの優美なデザインは制作サイドの理想であったが、デザイン面を重視するあまりバイクの機能性という現実的な問題との折り合いが上手くつけられていなかった。
キックペダルまでカウルで塞いだために撮影当初からいわゆる“押しがけ”をしないと動かなかった事などはその最たるものである。

中身と外見の両立。
夢のスーパーバイクが抱える難題に直面した製作陣は、まるで立花藤兵衛のようにサイクロン号の改良に挑むこととなる。



【常用サイクロン】

いきなり何ぞと思うかもしれないが、要するに旧1号編で本郷が普段乗っているバイクのこと。
本郷が常用しているオートバイなので常用サイクロン。
正面から見ると普通の市販車だが、側面から背部にかけてサイクロン号の面影があり、ハンドル左側のレバースイッチを捻る事で変形し、カウルが展開されてサイクロン号となる。

名前は公称と呼ぶにはちょっと微妙なラインで、資料によっては変形前サイクロンなどと呼ばれたりするが、リブート映画の『シン・仮面ライダー』では常用が採用されるなど、半ば公用語みたいな立ち位置。

一応はサイクロン号の世を偲ぶ仮の姿(いわゆる偽装バイク)なのだが、ライダーの姿でもシレッとこっちになっている事が多い。
これは上記の通りサイクロン号にアクション適性がないためで、密かにバイクアクションの大部分を担っていたのである。
番組の顔であるオープニング(旧1号編)で疾走しているのも実はこっちで、エンディングでは乗用車を飛び越した。
あくまでもサイクロン号に比べて動けるという話であり、ジャンプも台から落として強引に表現し着地の衝撃でマフラーがもげ落ちたりしていたが、それでも荒事を一手に引き受けた陰の功労者である。


そしてこのバイクを語る上で避けられないのは、主演俳優の事故という大アクシデント。
第9話と第10話に渡るコブラ男の撮影は順調に進み、ラストカットはバス道T字路をバイクで左に軽く曲がり、撮影テストも問題なくこなしていた。
しかし本番ではカーブを曲がりきれず、コースアウトして電柱を支える鉄線に足を引っ掛けた藤岡弘の体は宙を舞い、左大腿部複雑骨折。

シリーズの運命を大きく変えたこの出来事と共に、常用サイクロンもその姿を消したと思われたが……?


  • 英雄の最期
主演俳優の事故を乗り越え、元祖サイクロン号は一文字と共に戦い続けた。
度重なる激戦により車体は痛んで汚れ、ライトも左はカバーが陥没、右をガムテープで補修し、代名詞のレーシングクラブのエンブレムもキックペダルが使えないので左側面を削ぎ落とし黒ずみながら、限界ギリギリまで不屈の闘志で走り続けた。

数話の暇をもらい、元祖ライダーマシンの最後の出番は本郷猛が復帰した記念すべき九州ロケ・ダブルライダー編の第41話。
しかし、洗脳された桜島1号が一文字隼人の命を狙うというなんとも言えない場面であった。

「労を労うかのように九州まで引っ張ってきたなら、最後にダブルライダーで後継機の改造サイクロンと並走させて花道を送り出す筋ではないか?」という意見は至極もっともである。
実際には第40話のラストが本郷と一文字の並走に対応するように、当初は第41話でゴースター撃破後に桜島1号が改造サイクロンに、2号がサイクロン号で並走するシーンが撮影されたが、敢えなく没となった。
斯様に王道的なシーンをカットしたのは何故なのか?

「みんな…元気でいてくれ…」

「ただひとり悪と戦う男、本郷猛」
「お前って…お前って男は本当の勇者だぞ」



その理由は、本編を見れば察しがつくのではないだろうか。


2号編

【改造サイクロン号】

登場話数:第14話〜第67話、第72話、劇場版1作目
主な搭乗者:旧2号、桜島1号、新1号、新2号(南紀編)

2号編の開始と共に登場した機体。フルカウルをやめ、フロント部分が独立したセミカウル(ひと繋ぎではない)の外装になった車体は内部の機械構造が部分的に露出している。
前傾姿勢ではなく背筋を伸ばして乗り、正面の風防とケツのテールカバーが斜め上に反り返っているのがチャームポイントの尻尾の長いやつ。


基本的な機能は旧サイクロンからあまり変化はないが、地獄サンダーとの戦いではやはりライダーのベルト左側の操作でワイヤーを射出しており、これが一応の改造サイクロンの個性という事になる。


元来のサイクロン号と比べ、カウルを始め全体的に軽量化された事による機動力の上昇が特徴。
エンジンの出力も上がり、ジャンプ力も40mになるなど少しずつ各種数値が伸びている。
装甲も数千度の高熱にも耐えるなど軽量かつ頑強な作りにパワーアップした。
……と、後付けのカタログ設定ではそうなっているのだが、本編では旧サイクロンと普通に併用されており、カット毎に両者が切り替わるなど半ば同一視されている。
という感じで、当時は2つともまとめて「サイクロン号」という扱いだった。
なので必殺技も「サイクロンクラッシャー」と後付けと同一視に合わせて設定されているが、本編ではこの形態での目立った必殺技や怪人撃破はない。
一応みんな大好きエジプタスに体当たりをするシーンなどはある。

  • 改造型ができるまで
撮影における前身は、なんと常用サイクロンこと本郷のバイク。
つまり主演俳優が事故った機体だが、マシンの方は大破を免れていた。
元よりデザイン重視で運動性に難を抱えていた旧サイクロンの代わりにアクションシーンを引き受けていた常用サイクロンは、非常事態を機に「アクション用のサイクロン号」として正式にリニューアルする事に決定。
翌日に撮影が控えた状況で大橋春雄は予備パーツを動員しカウル部分を徹夜で仕上げて組み合わせた。
ライダーのスーツで例えるなら旧サイクロンが「アップ用」で、改造サイクロンが「アクション用」といった塩梅。

大抵の資料で「一文字が日本を発つ本郷から譲り受けた」という旨の説明がされているが、その場合の本郷の足はどうなるか不明。ヨーロッパに渡ってから自分用のを作り直しとかなのだろうか。

急ピッチで仕上げてアップで見せないようにしていたカウルはライトのカバー部分が出っ張りすぎて出目金だったり、正面のレーシングクラブのエンブレムが黒ずんでほとんど見えないなど地味にカオスな作りになっているが、「だがそれがいい」という層も多いとかなんとか(これを俗にAタイプと呼ぶ)。
この出目金型のカウルは2号編の終わりまで酷使され、最後のギルガラス回ではあちこちの塗装が剥げライトは真っ黒、正面の立花レーシングのマークはもはや原型を留めないレベルで剥げ落ち何のマークが分からない状態になっていた。

その後、劇場版1作目の頃には綺麗な形に整えられたカウルが新調され、そのオープニングでは旧2号を乗せた晴れ姿を見せている(この改修したカウルをBタイプと呼ぶ)。
その後、後述のCタイプカウルを移植した上で、新1号編でも本郷のマシンとして引き続き使用された。
これらが全て纏めて“1台目”となる。



排気量こそ優れていたが、完全なオフロードではなくトレール車(オン/オフ共用)で、アクション用といえど本格的な動きは難しく、バッテリーがすぐに上がってしまうので予備の持参が不可欠。
丸っこい水道管だった旧サイクロンに対してトンがった背部のマフラーはカブの実車の物を流用しており、6本も据えつけては重量過多で走行の度にやっぱりボトボトもげ落ちる。
だがバイクスタントの大橋春雄はオンロード出身の経験と才覚を以って見事に乗りこなし、数多くの名シーンを生み出した。

【2台目】

桜島1号が復帰しダブルライダー制が登場した直後の本編は残念ながらバイクの数が足りておらず、旧サイクロンは限界を迎え、1台目の改造サイクロンを2人で使い回していた。
そこで、一文字の普段使い用バイクのうちひとつを改造し、本郷用に作られたのがこの2台目である。
劇場版という特別な舞台で満を持して投入され、2つの改造サイクロンで並ぶダブルライダーの映像は圧巻の一言。

そして最大の特徴は、新造に際してお役目を終えた旧サイクロン号のパーツを流用している事である。
カウル部分はCタイプと呼ばれ、先述の通り新1号編で1台目に移植された。
虎が死して皮を残すように、かつての相棒である本郷猛の復帰に合わせてその志は受け継がれた。

1台目との違い(見分け方)は時期による細かい変化もあって説明が難しいのだが、最大のポイントは風防の形状だろう。
1台目は正面からだとライダーの顎にかかるレベルで競り上がっているが、2台目は首の辺りで収まっている。
つまり風防がご立派に屹立しているのが1台目柔らかそうに丸まっているのが2台目。
……ちと例えがアレだが、これが本当に覚えやすい。





  • さよなら改造型
2台の改造サイクロンは新1号編になっても引き続き使用され、ライダー1人で2台を使い分けていた。

1台目は旧1号編の事故を乗り越え、2号を乗せ、ダブルライダーを乗せた最古参である。
だが、同時に主演が事故った縁起の悪いバイクでもあったので、第59話(フクロウ男)で燃やされるシーンで本当に焼いて後でお祓いするという古今東西で類を見ない経緯と理由で退場した。
一緒に処分ではもったいないのでカウル部分は取り外され、該当シーンでは在りし日の常用サイクロンの姿にかなり近い。

その後は2台目に一本化し、第68話で新サイクロンに後を託してお役御免。
最後の出番は第72話(モスキラス)で、新2号(南紀2号)の初登場に花を添えて新1号の新サイクロンと並走した。



  • 最近の扱い
「改造サイクロン」という名称は2000年代になるかならないかくらいのタイミングでようやく定着した名前である。
上記の通り当初は2つ纏めて「サイクロン号」として扱われており、後年ようやく呼び分けるようになっても「一文字のサイクロン」とか「サイクロン改良型」など名称にブレがあり、あまり個として認識されていなかった。


フルカウル信仰が強かった製作陣にとって、首を振る(ハンドルを左右に切る)度にフロント部分がボディ部分とズレてしまうセミカウルは好ましい状態ではなく、後世でも1クールながら原初の姿として名高い旧サイクロン、新1号や新2号と共に現代のベーシックなイメージとして定着している新サイクロンに挟まれており、中間機体の宿命としてあまりスポットが当たらない存在である。

しかしながら一文字の登場、ダブルライダーの再会、そして新1号と、番組の存続危機からスターダムを駆け上がるまでの激動の時代を支え、実は本編当時の活躍期間は3台のサイクロンの中で最も長い。新旧のダブルライダーを両方とも乗せているのは改造サイクロンだけである*2
小ぶりなカウルや、繋ぎ目で機械部分が露出しているデザインもそれはそれで生のバイクっぽさがあり、マニア層の支持も根強い中期の傑作機であることに疑いの余地はない。

桜島や新1号も乗ってはいるが登場は旧2号と同時で、その最後の出番を共にしたのも新2号だった事から2号のマシンというイメージが比較的強め。


新1号編

【新サイクロン号】

登場話数:第68話〜第98話、劇場版2作目
主な搭乗者:新1号、新2号


本郷が滝と立花のおやっさんの協力を得て共同開発したニューマシン。
小型軽量化の路線を進みながらも最高時速500キロ、ジャンプ力50メートルと順当にパワーアップしている。
「サイクロンジャンプ」の掛け声と共に飛び出し、フロントカウル横から飛び出す赤い2枚の羽根「サイクロンカッター」は機体を安定させ、翼のイメージ通り短時間の滑空飛行を補助し、怪人をも切り裂く必殺の武器。
後部から射出されるパラシュートは全速力からでも急ブレーキをかけられる急制動装置。
必殺技は全速力で体当たりする「サイクロンアタック」で、こちらは本編の段階でイノカブトン相手に技名の呼称と共に使われ、資料によっては第79話でガニコウモルと空中激突したのもこれとする場合がある。

最初に登場したタイプは俗にAタイプ(あるいは前期型)と呼ばれ、死神博士との決着を迎えた第68話や劇場版2作目で華々しいデビューを飾った。
ライト周りやフロントカウルの下部が真っ白で赤い部分が少ないのが特徴で、第72話を最後に改修されるため4回くらいしか出番がないのだが、その少ない4回のうちに劇場版の豪華なバイク戦や死神博士との決戦、南紀編で新2号の改造サイクロンと並走など印象的なシーンが多い罪作りなやつ。
おまけに新サイクロンになってからのオープニング映像のタイトルバックで走っているのもこっち。

そして、下部の白い部分をライトの直下まで赤く塗り直しライトの縁取りを青くしたのが俗にAタイプ彩色改修型(もしくは後期型)であり、今日の新サイクロンのイメージ像となっている決定版である*3
こちらは74話から登場し、最終話まで戦い抜いた。
これらを纏めて“1代目”と呼ぶ。

  • 完成系サイクロン
フルカウルの優美なデザインを追求するあまり運動性がない旧サイクロン。
分割面が丸見えでデザインと引き換えに軽快に動き回る改造サイクロン。
これら2台を経たニューマシンは未だフルカウルでの高い機動力を実現できず、後者の方向に舵を切る。
ただしフロントカウルを大型化し、側面のカウルもギリギリまで伸ばす事で、繋ぎ目をほぼ見えなくした。

これにより分割カウルの運動性を保持しつつ、ハンドルを左右に切ってもデザインが崩れない質実剛健な機体となった。

オンロード寄りだった従来のサイクロンに比べ当初からオフロードでの操縦性能を重視して製作した事で改造サイクロン以上の運動性能を獲得し、バイクアクションでも八面六臂の大活躍。
大爆発の中をジャンプするなど今まで以上に激しいシーンもこなせるようになった。

機能美と装飾美。
荒々しく動きつつも一糸乱れぬヒロイックなデザインは流星のマシンと呼ぶに相応しく、番組と合わせるように疾風の相馬もまた円熟期を迎えたのである。






【本郷猛のバイク】

もう名前からしてサイクロンではないのだが、取りあえず聞いてほしい。
要するに新サイクロンになった後、本郷猛が日常的に使用しているバイクのこと。
ライダーマシンではないが明らかに普通の市販車ではない変形途中のような段階のバイクで、つまり新1号版の常用サイクロンである。
「変形前新サイクロン」とか「新常用サイクロン」とか旧版以上に名称がとっ散らかっているのだが、ここでは2025年頃にハセガワから発売された1/12スケールバイクで使われた「本郷猛のバイク」という名称を便宜上用いる。

本郷が立花や滝とニューマシンの完成祝いにシャンパンファイトをしていたのもこちらの機体で、設定上は旧サイクロンのように変身と連動して変形するのだが、劇中では本格的な変形バンクなどは用意されなかった。
レモン色に輝く風防がチャームポイント。

ちなみに改造サイクロン時代にはこうした変形前バイクの概念はなく、本郷は普通の市販車を乗り回している。
一文字も旧・改造・新の3台を制覇しているが、こちらは一貫して変形前マシンは存在しない。


【2台目】

ショッカーライダーの登場に合わせて製作され、後に新2号が乗った2台目の新サイクロン。
こう書くと語弊があるのだが、厳密にはまず1台目にショッカーライダー用の黄色いラインを施し、第92話でそれとバイクチェイスをした新1号が最初に2台目に搭乗→第93話ではそのまま新2号が乗ってショッカーライダーとチェイス→第94話でお役御免になったショッカーサイクロンを元に戻して新1号が元鞘に収まる、というややこしい経緯を辿っている。

1台目との違いは多々あるが、ここでも分かりやすいのは風防の大きさ。
1台目が丸くたわわに膨らんでいて、2台目はペッタンコで真っ直ぐとイメージしておくと比較的分かりやすい。

基本的にはそのまま1台目が新1号、2台目が新2号といった感じで乗り分けているのだが、なにせ見た目的には殆ど違いがないのでちょいちょい逆になっている事もあり、あまり徹底して統一されていない。
新1号単独の回ではシーンによって2台を使い分けている。

この2台は『仮面ライダーV3』以降のゲスト出演時にも使われ、1期シリーズの完結まで活躍したが、その最後を飾った『仮面ライダーストロンガー』最終回のラストシーンである栄光の7人ライダーの横並び並走でも思いっきり逆になっていた(センターの新1号が平べったい方に乗っている)。



その後のサイクロン号シリーズ

シリーズの象徴的存在なので、余程の事がなければ何かしら出てくる。
やはり多いのは最終系の新サイクロンで、次点で旧1号を強調するための旧サイクロン。
改造サイクロン派でいつも爪に火を灯し糊口を凌いでいる。
いつか桜島や旧2号と一緒に新造してください

ここでも片っ端から列挙するとキリがないので、ここでも特撮版の上記シリーズと関連した作品だけピックアップしていく。

【映像作品】

放映当時の機体は1期シリーズの栄光の7人ライダーの終了と共に役目を終え、姿を消した。

4年のブランクを経てシリーズが再会した『仮面ライダー(新)』から連なる2期シリーズでは、ポピーの歴代バイクの玩具CMに合わせて7人ライダーのバイクが一斉に新造された。
新1号が改造サイクロン、新2号が新サイクロンというせめて逆にして欲しいレアな取り合わせだが、一回り小さいベース車やCM予算で現役当時ほどじっくり作れないのでちょっとシュールな外観になっており、ちょいちょいネタにされる。
このポピーCMバイクは仮面ライダーZXのネーミング発表会の特写まで活躍し、10人ライダーのバイク大集合という豪華な絵面を後世に残した。

その後の目立った登場は1993年の『ウルトラマンVS仮面ライダー』で、ここで新サイクロン号が新造され登場。
そして2000年のオートレースの藤岡弘、がパリを満喫するトチ狂ったCMでも新サイクロン号に乗った新1号が激走し、やはり新1号と共にパブリックイメージとして新サイクロン号の登場が多い。

(バイクのメーカーなどの問題もあるので大っぴらに言及されないが)、平成ライダー以降の春映画などに出てくる新サイクロン号も形状などの予測からこの辺のが使われていると目されている。

【オールスター系の映画】

ニチアサ期のライダー映画に初めて姿を現したのは2009年の『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』で、世界を繋ぐオーロラカーテンの向こうから2台の新サイクロンとハリケーンに乗った仮面ライダーV3の3人ライダーが救援に駆けつけるシーンで観客の度肝を抜いた。
その後も新カラーのダブルライダーが登場する映画では概ね2台の新サイクロンもセットである。
2014年の『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』では本郷の姿でも乗ったが、人間体は常用バイクでないと設定的におかしいのはここだけの秘密。

一方、ライダー側が新カラーを基本形態にしている事もあり元祖サイクロン号はあまり出番に恵まれていない。
1998年のPS格闘ゲームのキャンペーンの際に製作はされたが、旧1号ともども映像作品には縁遠かった。
契機が訪れたのは仮面ライダーシリーズ50周年&スーパー戦隊シリーズ通算45作品記念のWアニバーサリー映画『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』で、すっかり広告塔となった本郷、そして旧1号と共に久々のカムバックを果たす。
……が、よく見るとマトモに走行しているシーンがなく、極端な遠景やアップで誤魔化しており、ほぼ置物。
なのでファンからは冗談めかして「石ノ森萬画館あたりから展示品を引っ張ってきたのでは?」と推測されている。


【コミカライズ作品】

『ZX』のコミカライズである『仮面ライダーSPIRITS』では当然ながら1号は映像作品準拠で改造サイクロンに乗って……いるはずがなく、記念すべき第1話から新サイクロンに乗っていたこればっかりはさすがに残当。
一方で改造サイクロンは第3部にて立花藤兵衛が保管していた事が判明、ZXのバイクであるヘルダイバーにエンジンが移植されるという見せ場が作られた。
また、同作においては旧2号誕生編にて改造手術を受けた一文字を救出した際にショッカーで新造されていたショッカーライダー用のサイクロンを本郷が1台拝借している事から、一文字が使っていたサイクロンはここで拝借したサイクロンを改造したもの*4と思われる。


【ゲーム作品】

アクション面で使うためにいちいち鍵を探さねばならない事でお馴染み。
それとは別に「サイクロン号」というアイテムが存在し、購入するとエンカウント時に「サイクロンたいあたり」というそのまんますぎる必殺技が使える。
1号が最初から覚えて2号もLv2で覚えるライダーキックと全く同性能なので全く購入する価値がない事でも知られる。あえて価値を見出すなら、使用時の一枚絵が他の技との使い回しが一切ない事くらい。
ソフトのパッケージは桜島っぽい旧1号が改造サイクロン、新2号が新サイクロンというちょっとレアな取り合わせでV3をセンターに挟む。

旧1号/旧2号のスタートに伴い旧サイクロンから。
その後は選択肢次第で改造サイクロンや新サイクロンにパワーアップしつつ好きな所で止められるなど妙に細かい。

  • スーパーヒーロー作戦 ダイダルの野望
ダブルライダーが旧カラーで止まったままな事がしばしば指摘されるが、地味に旧2号が新サイクロンという謎の割り振りになっている(旧1号はちゃんと正しい組み合わせ)。

  • THE バイクレース
仮面ライダーアギトまでの歴代作品が集まるレースゲーム。
デフォルトで新1号と新2号が新サイクロンが登場し、隠しキャラで旧1号がサイクロン号、旧2号が改造サイクロンで登場。
歴代3種が登場し、各機の違いも細かく再現されているのだが、なにぶん歴史的クソゲーなので全く触れられない可哀想な子。

本編には登場しないが、オープニングムービーで旧1号がサイクロン号を駆る。

1972年11月(新カラー)では新サイクロンが一連の場面で活躍し、隠し要素として1972年1月(旧カラー)を選ぶと元祖サイクロン号に変わるというサプライズが仕込まれている。
独特の前傾姿勢すら再現するなどオマケとしてはかなり凝っているのだが、いかんせんこのゲームのバイク面がとてもアレなのでそちらばかり話題になる可哀想な子。

  • ぱちんこ仮面ライダー ショッカー全滅大作戦
新2号が新サイクロンを駆り、逃走するサボテグロンを「サイクロンクラッシャー」で押し潰すという摩訶不思議なリーチアクションが用意されている。

  • データカードダス
要するにガンバ〇〇の三部作。
1作目の『仮面ライダーバトル ガンバライド』、2作目の『ガンバライジング』では新サイクロンが作られ、バイクを利用したオリジナル技が幾つか登場した。
そして3作目の『ガンバレジェンズ』ではなんと旧1号の参戦と共に変身シーンが再現され、それに伴い元祖サイクロン号も登場した。
さすがに常用からの変形はなくいきなり完成しているがかなり力が入っており、参戦弾のPVではこれに乗った旧1号が崖の上から歴代ライダーを見守っている。

順当に新サイクロンが登場。
旧1号もスポット参戦で原作再現ステージのみ使用可能なのだが、それだけのために個別にサイクロンは作れないようで、バイクの呼び出しボタンを押しても反応しない仕様になっている。ちと残念。




【余談】

  • ライダーの名を冠するだけあって誕生にあたり凄まじいまでの熱意が籠められており、毎日放送の編成局次長(当時)の廣瀬隆一が「月光仮面みたいにスクーターでチョロチョロは許さないよ」と念を押すように言いつけた事で知られている。
    氏は戦中に陸軍の自動車隊に所属しており、満州で伝令兵として乗り回した陸王*5を敵兵にも関わらず羨望の眼差しで見つめる現地の子供達の純真さが忘れられず、そうした思い出をオートバイ乗りのヒーローに託した。



  • バイクスタントを担当したのは室町レーシング所属の大橋春雄。当初は代表の室町健三が自ら勤める予定だったがスケジュール都合で断念し、オープニングだけ撮影して交代。
    • たまにサイクロンに乗ってる後頭部からロン毛がモリモリはみ出ているライダーが大橋さんで、2号編いっぱいまでバイクスタントを勤めた。















  • 風は止まず、ただ吹き続ける
初代『仮面ライダー』の2年間の歴史を背に乗せて、サイクロン号は幾度も姿を変えながら駆け抜けた。
そしてシリーズの続編として『仮面ライダーV3』の制作が決定。
その代名詞であるバイクのベース車に選ばれたのは、スズキTM250
スズキがモトクロス世界選手権に出場するために製作し、そして優勝経験もある本格派モトクロッサーである。
軽量ながらパワーもあり、小ぶりな車幅は多少の荒地をものともしない。
そこから誕生したV3の専用マシン「ハリケーン」は、フルカウルのデザインで運動性も抜群というまさにサイクロン号の理想を具現化させた夢の結晶となった。


そしてバイクの歴史と共に、ライダーマシンの歴史も連綿と受け継がれていく。

同じくスズキTM250を採用したクルーザージャングラー

族車ネイキッド型の必要最小限の装甲で極限まで運動性を追求したカブトロー

改造サイクロンの魂を継ぐが如くセミカウルで内部機構が覗く軽量機敏なスカイターボ

旧/改造サイクロンの使い分けをさらに発展させ、整地最高速のオンロードと荒事担当のオフロードを明確な別機体にしたVマシーン/ブルーバージョンや、バトルホッパー/ロードセクター

そして時代は平成に移り、普段は運動性を重視しながら必殺技の時のみ大型に切り替えるという捻った発想を用いたトライチェイサー/トライゴウラムなどなど。



半世紀以上の時を経てもなお、マシンは走り続けている。
正義の味方の手足となって、平和な世界という夢を目指して。




ライダーマシンの歴史

つづく








英雄はね…
風のように現れて…嵐のように戦って…

そして…必ず
朝日と共に帰ってくるんだ


平山亨





※追記・修正は時速300キロの状態でパラシュートを射出しブレーキテストをしてからお願いします。





この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2026年05月25日 14:56

*1 厳密にはそれ以前にも話の都合で出番がないエピソードも少しあるが細かいので割愛する。

*2 厳密には旧1号は桜島だが。

*3 本当はショッカーライダーの登場と前後して更に1度改修されているのだが、長くなるので割愛する。

*4 つまり本郷は自分のサイクロンをそのままヨーロッパへ持ち出した。

*5 陸軍軍用車97式側車