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死海文書(新世紀エヴァンゲリオン)

登録日:2026/02/13 Mon 00:50:10
更新日:2026/08/09 Sun 23:36:39
所要時間:約 10 分で読めます





人類補完計画は

死海文書通りに遂行される

もはや我々と語る必要はない


死海文書とは、新世紀エヴァンゲリオンシリーズに登場する書物である。
アニメ版(旧作)に登場する『裏死海文書』を中心に記載するが、ヱヴァンゲリヲン新劇場版に登場する『死海文書・外典』についても記載する。

+ 目次


概要


現実世界

いきなりだが、前提としてこの死海文書とは現実にも存在するものである。つまりエヴァの死海文書は現実にあるそれがまんま元ネタ。
「そんなのエヴァでしか聞いたことねーよ」という模範的なアニヲタの鑑ネットユーザーのためにもまずこちらから軽く説明する。というかリアルの死海文書の概要を詳しく把握してる識者などそう多くはいないだろう。

『死海文書』とは、1947年以降に死海北西、今でいうヨルダン川西岸地区のクムラン洞窟群で発見された約2000年前(紀元前250年頃〜紀元後70年頃)の文書群を指す。
内容としては旧約聖書の本文や外典*1、偽典*2といったキリスト教・ユダヤ教について羊皮紙にヘブライ語で書かれたものである。
「いや待て古いには古いが古代ギリシャのプラトン(紀元前427年~紀元前347年)やアリストテレス(前384年~前322年)の著作よりも新しくないか?なんでこんな珍重されるんだ?」と思う方もいるだろうが、実は古代のユダヤ教は史料がろくすっぽ残っていない
ユダヤ人がローマに反乱を起こして敗北したユダヤ戦争(66~73年)でエルサレム神殿が破壊され、またそこから信仰を立て直すときに教義や聖典などを色々整理した影響で古い時代の文書は焼失したり破棄されたりして、どう頑張っても2世紀までさかのぼることが限界だった。
聖書の写本すらギリシャ語版が4世紀頃のもの、ユダヤ教内部で正統とされたヘブライ語写本に至っては10世紀以降のものしか確認されていなかったのだ。
このため死海文書はユダヤ戦争以前のユダヤ教の信仰や生活、聖書の成立過程やキリスト教誕生前夜の思想的背景を紐解く貴重な資料として有名になった。

新世紀エヴァンゲリオン

ここからエヴァの死海文書の概要。
新世紀エヴァンゲリオンのアニメ本編(旧作)における『死海文書』とは、秘密結社ゼーレが所有している使徒に関することが書かれた書物のことである。
少しややこしいのだが、作中世界でゼーレが世間に公表した部分が上記現実世界と同じ内容の『死海文書』であり、ゼーレが極秘に持ち去って世間未公表とした部分を『・死海文書』と呼ぶ。
エヴァの劇中で"死海文書"という単語が出てきた場合は基本的に後者であるの方を指す。上記の通り、こちらの裏死海文書には使徒に関することが記載されている。

作中の『死海文書』に関する大まかな歴史は以下:

①1947年以降にゼーレが死海で書物群を発見。
  ↓
②キリスト関連の書物群を『死海文書』として世界に公表する。
  ↓
使徒に関することが書かれた書物『裏・死海文書』とし、極秘に持ち去る。
  ↓
④以降は裏死海文書に沿って行動するようになる。

旧作第壱話『使徒、襲来』において登場した第3使徒サキエルを見て、冬月コウゾウ「15年ぶりだな」と発言しているが、実は使徒が目覚める時期、そしてサキエルやラミエルといった使徒の名称も全てが死海文書に書かれているのだ。
ゼーレの最終目標である人工的なサードインパクト=人類補完計画のために行われてきた計画や行動は全てがこの裏死海文書に沿って立てられたもの。これにはアダムのコピーとなる汎用ヒト型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオンを作る『E計画』や、使徒迎撃用要塞都市である第3新東京市の建造なども含まれている。
まさにエヴァ世界における絶対的な予言書。

そして裏死海文書の正体とは、元々第1使徒アダムが所有していた計画書そのもの。*3
詳しいことはアダムの項目を参照して欲しいのだが、裏死海文書は"白き月"に乗ったアダムが地球に入植した際にロンギヌスの槍とセットになって入っていたもので、いわばアダムの運用マニュアル(取扱説明書)のようなもの。
なんでそんなものが本来の死海文書とセットでクムラン洞窟群に置いてあったのかは不明。
アダムがいた南極でもないし…
そのためアダムが産んだ15体の使徒の名称や出現時期といったこともここに書かれているのだ。ガバガバシナリオ
ただし使徒に関することが全て詳細に書かれている……という訳でも無さそうで、名前などは分かるものの所在地や能力までは分からないようだ。*4
またセカンドインパクトと同日に生まれた最後の使徒タブリスに関しても、その特殊な出自ゆえに裏死海文書には載っていないと思われる。

ちなみにゼーレは元々宗教団体であった為、その存在は認知していたものの、実はゼーレも『死海文書』の存在は一種の眉唾物として見ていた。
1947年以降に使徒に関することが書かれた"死海文書"が発見され、南極地下で眠りにつくアダムの発掘に成功し、そこからゼーレはこの書物が本物であると確信するに至った……という設定がある。

なお、庵野秀明氏監修の『新世紀エヴァンゲリオン2』の機密情報によると、ゼーレがアダムの計画書を己の教義と当てはめて写本したものが『裏・死海文書』という設定になっている。
そのため"アダム"や"リリス"といった使徒たちの名前は本来の名称ではなく、ゼーレが宗教的で難解な単語を意図的に付けたという可能性もある。エヴァ世界の大人達の会話がやたら抽象的で分かりにくい原因の何割かはゼーレの責任と言える


新劇場版

新劇場版でも引き続き登場する。世間に公表されている『死海文書』/ゼーレ達が独占する『裏・死海文書』の構図も変わらず。
ただしこちらでは裏死海文書は『死海文書・外典と名称が変わっており、『』では『掟の書』、『シン』では『生命の書』というものも登場している。

『序』のエンドロール後、ゼーレの少年が月面で目覚めるが、この時の彼曰く「死海文書が『掟の書』へと行を移した」とのこと。どうやら使徒襲来に関することを指しているらしく、新劇場版でも使徒に関する予言が書かれているようだ。

『破』では"真のエヴァンゲリオン"であるMark.06の建造方法が他とは違うこと、そして新劇場版のエヴァは5号機以降の建造計画が本来なかったということが冬月碇ゲンドウの口から指摘されており、ゼーレが開示していない『外典』の存在がここで示唆されている。
どうやらMark.06を始めとする「5号機以降の建造計画*5」や「リリスの復活」といった重要な事も外典に書かれているようだ。

Q』では、渚カヲルによって人類補完計画が「全てが太古からプログラムされた絶滅行動」であることが判明。つまり『死海文書・外典』とは人類(リリン)を人工進化させる為の手順が書かれたマニュアルであるということになる。
また、フォースインパクトの発生時ゲンドウが電源を落とされるゼーレの面々に向かって「死海文書の契約改訂の時が来ました」と言っておりが、死海文書・外典にはアディショナルインパクト以降の儀式は記されていない様子。
上記の「契約改訂〜」の発言から見るに、恐らく「リリスとの契約=死海文書・外典そのもの」であると推測できる。太古からプログラムされていた絶滅行動であり人工進化させる為の計画がリリスとの契約だとすると、どのみち人類は補完計画によって絶滅するのが確定していたということになる。
なお、上記の契約改訂……要は「死海文書の契約改訂ってどういうことだよ」という点については、存在しないはずの13番目の使徒を殲滅して計10体の使徒殲滅を達成する、という部分を指しているのではないかという説がある。*6
後の『シン』でゲンドウが語ったことを踏まえると「改訂されるリリスとの契約」はヒトが持つ知恵の実を手放し、生命の実を持つエヴァンゲリオンインフィニティに成ることであり、契約改訂とは使徒に成り代わり存在するのみで終わらせず、ゲンドウによってゼーレが諦観した神殺しを遂行するという意味であると推測できる。

シン』では、ゲンドウが人類補完計画について語るシーンにて、ついに朽ちた死海文書・外典そのものが登場。
朽ちているため描かれた内容は一部以外分からないものの、楔形文字や『序』『破』に登場した使徒*7、そしてスクロールの最後には12枚の羽を広げるリリスが描かれている。

画像出典:シン・エヴァンゲリオン劇場版:||、制作スタジオカラー、配給カラー+東宝+東映、2021年3月8日上映
死海文書・外典最初のイラスト。
セフィロトこと生命の樹から知恵の実を受け取る人類、生命の実を受け取る第4の使徒、そしてそれらを見守る無限状のロンギヌスの槍を持つ巨人(アダムスもしくは神?)。
中央部が大きく破損している。


画像出典:シン・エヴァンゲリオン劇場版:||、制作スタジオカラー、配給カラー+東宝+東映、2021年3月8日上映
羽根が生えた5体の巨人と第5の使徒が並んでいる。
4本腕の巨人はおそらく第13号機であるが、そうなると他の4体も含めて巨人達=アダムスと予測される。
セカンドインパクトではアダムスが羽根を生やしていることからも推察できる。


画像出典:シン・エヴァンゲリオン劇場版:||、制作スタジオカラー、配給カラー+東宝+東映、2021年3月8日上映
羽の生えたリリスとそれを取り囲む10体の巨人。公開されている死海文書・外典はここで終わっている。
12枚の羽根を生やしたリリスは輪っかのようなものを手に持ち、脚部は鳥類のように変化している。
周囲を取り囲む巨人は小さく書かれているので判断しにくいが頭部がないようにも捉えられる。
頭部がないことを前提に考えるのであれば言うまでもなく、エヴァンゲリオン・インフィニティの象徴だろう。知恵の実を失った人類の形である。
頭部がある場合は序のゲンドウの台詞に戻り、残る8体+既に殲滅した2体の使徒の想定でリリスとの契約で殲滅する10体の使徒を描いたものである可能性が高い。

余談だがこのリリスのイラストには元ネタがあり、古代バビロニアで紀元前1800〜1750年に頃作られた「バーニーの浮彫」と呼ばれる、現在は大英帝国博物館に所蔵されているレリーフから着想を得たと推察できる。
それ以外も楔型文字やイラストの画風など古代バビロニアや古代ペルシャ風の意匠が散見される。いよいよユダヤ教との関わりが薄くなってきた
当のレリーフは一般的に女神イシュタルもしくはエレシュキガルを象ったものと考えられているが、リリスを象っているとする説もあり、シンエヴァでは後者を採用している様子。
なお元ネタでは羽根は2枚のみ。


+ ネタバレ
「第1の使徒」であるカヲルは永遠とその役割を演じ続けるため、エヴァンゲリオンの世界を円環(ループ)していた。そしてカヲルの口から『生命の書』という単語が出てくる。この書には碇シンジも名を連ねているらしく、彼がずっと「第3の少年」であるのもこれが原因。

旧作における「アダムの運用マニュアル」という設定を当てはめると、この『生命の書』死海文書・外典本来の名称であると考えられる。作者と編集者間で表現の統一を図れマジで
ただし新劇場版と旧作の設定は一部を除いて殆どが一新されており、必ずしも旧作の設定が正しいという訳では無いので公式からの設定・資料公開を待つしかない。

また、リリスとの契約 / 死海文書・外典の本来の契約相手はゼーレであったが、ゲンドウがネブカドネザルの鍵を使用してゼーレと同格、もしくはそれすらを超えた神に近い存在へと昇華した為、契約を改訂出来たものだと推測できる。*8


余談

  • ちなみに現実の『死海文書』でも現代のキリスト教・ユダヤ教にとって不都合なものが隠されているのではないか? という陰謀論がある。
    かのヒット作「ダ・ヴィンチ・コード」の元ネタの一つであり、ぶっちゃけ裏・死海文書もこのへんの陰謀論が元ネタだろう。
    真偽や是非の議論はここではしないとして、現実の死海文書はそれだけ歴史的・宗教的価値の高い文書なのだ。
+ でなんでそんな陰謀論が生まれたかというと
当初(そして今も学者の大多数は)死海文書は「清貧な修行者たちが残したもの」と考えられていた。
また発見当時は今と違って「正式な論文を発表するまで古文書そのものや古文書の写真は公開しない」のが学界の慣例であった。
そして当初は保存状態の良い聖典を順調に解読して論文を発表しており、何の問題も起こらなかった。
が、文書の中の一つ、銅板に残された記述を解読すると「膨大な金銀の隠し場所」の記述だったことが判明すると、研究チームの内部で「清貧な修行者が財宝を隠していた?本当に?」という具合にその真偽をめぐって対立が生まれる。
そして「記述は本物」と主張する学者がメディアに「死海文書には財宝を隠した記述がある」「それどころかキリスト教をひっくり返す記述があると私は考える」とセンセーショナルなリークを行い始める。
この学者は暴走を重ね、勝手に財宝目当ての発掘調査を行ったり(なお結局財宝は見つからなかった)、さらにこのあと「キリスト教は幻覚性の毒キノコでラリッたなかで生まれた、十字架とかは性器の暗喩だ」とヒッピーとかが流行していた時代を感じさせる珍説を唱えだす。
当然こうなるとこの学者は学界からは無視されるのだが、この頃から死海文書の研究は細かくバラバラになった文書の復元・解読に取り掛かかったこと、一方でメンバーも高齢化などで徐々に抜け出したこと、そして第三次中東戦争で研究の休止を強いられたことで解読を行った論文の刊行も遅れ始める。
この遅れは「本当に危険な内容で宗教的圧力をかけられているのか」「情報に手を加えているのでは」と疑われ始め、これが陰謀論を産むこととなる。

一方でまともな学者の間でも「あんな変な説を真に受けたくはないが、そもそも原本が公開されないと確かめようがない」「俺だって古代ヘブライ語は詳しいんだから研究させろ」と、70年代あたりから閉鎖的な研究チームへの不満が高まるようになる。
しかし研究チームは文章を公開しないまま80年代に入ると論文の刊行はさらに遅くなるなど事態は悪化していた。
90年代に入り転機が訪れる。第三次中東戦争で西岸一帯を制圧し原本の保管を担当していたイスラエルが研究チームのテコ入れをしたことで研究が進み、95年から2009年にかけて全巻を解読した論文を刊行(ただしわからなかった箇所も多い)。また並行して91年にはアメリカのライブラリが未論文化された箇所の写真*9の公開を行ったことを経て、現在では死海文書はすべて公開されている。


  • こちらもリアル死海文書の話題。2021年3月に、60年振りに新しい『死海文書』の一部が発見されたということで話題になった。さらに奇しくも同月8日には『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』が公開されており、しかもその少し前には南極でなんと未知の生物が発見された。
    これらは大きな反応を呼び、特にTwitter(X)ではエヴァンゲリオンと当てはめて未知の生物を"アダム"と呼ぶなど、ファンの間でかなり話題となった。

  • 旧作と新劇場版の両方において予言書として登場する『死海文書』だが、見方を変えると一種のメタ的な脚本にも見える。もともとアニメーションとして直接的・間接的なメタ演出も多いエヴァだが、その一環として受け取ると『死海文書』の設定にもエヴァのユニークさを感じることが出来るかもしれない。



追記・修正は死海文書を読み解いた後、リリスと契約してからお願いします。


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最終更新:2026年08月09日 23:36

*1 紀元前3世紀から1世紀にかけてギリシャ語に翻訳された「七十人訳聖書」と呼ばれる旧約聖書にのみ収録された文書。ユダヤ教では聖書に含まないが、初期キリスト教が七十人訳聖書を使っていた影響でカトリックや正教会では「教義の根拠にするには頼りないが聖書のうち」くらいの扱い

*2 エチオピアやシリアなど一部の非カトリック教会では聖典扱いしていた聖書というよりも民間伝承的な文書

*3 人類の始祖である第2使徒リリスが、やがて目覚める使徒と戦う運命にある人類のために遺したものとも言われているが真相は不明。

*4 第8使徒サンダルフォンは当初は卵状態であったり、第14使徒ゼルエルや第10使徒サハクィエルなどは突如として現れている。

*5 アダムスの器(エヴァオップファータイプ)のこと。

*6 第1の使徒とリリスを除いた計10体の使徒を殲滅するのが契約のごく一部であり、『破』のラスト時点では8体しか殲滅できておらず、『Q』時点では第11の使徒が存在しないため。

*7 第3・4・5・6・7・10が確認

*8 『Q』でのゼーレに対するゲンドウの「人類を代表して〜」、カヲルの「流石はリリンの王、シンジくんの父上だ」という発言からして既にこの時点で鍵を使っていた可能性が高い。

*9 中東情勢の悪化による文書の破損を恐れてマイクロフィルムが配布されていた