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スペル星人

登録日:2009/05/26 Tue 23:20:33
更新日:2026/08/07 Fri 08:14:12
所要時間:約 5 分で読めます




スペル星人は『ウルトラセブン』12話「遊星より愛をこめて」に登場する宇宙人である。

え?そんな回見たことないって?

君たちは『ウルトラセブン』の11話「魔の山へ飛べ」(ワイルド星人、ナースの回)の次が、
13話「V3から来た男」(アイロス星人の回)になっているのを不思議に思った事は無いだろうか?


『ウルトラセブン』の関連本や、ビデオ、DVDをいくら調べても11話の次は、13話である……。

そして、


「12話は欠番とします。」あるいは「12話は欠番です」

という文字……。

君たちは、

「いったいウルトラセブンの12話ってどんな話なんだろう?」

「何故、欠番になったのだろう」

そう思った事は無かっただろうか?

実は1970年までは、普通に再放送していたし、ウルトラ怪獣図鑑や塗り絵等の関連本にも掲載されていた。

ゲストとして『ウルトラQ』の江戸川由利子や、『ウルトラマン』のフジ・アキコを演じた桜井浩子がアンヌの旧友の早苗役で出演している。



【概要】

真っ白なノッペラボウのような非常にシンプルな姿で、身体の所々がケロイド化して火傷のような痕がある。
これは母星において行われたスペリウム爆弾の実験による放射能の影響のためで、特に血液が著しく侵されている。
このために健康な血液を常に求めている。

飛行能力を持ち、目から放つ怪光線を武器にしている。
格闘戦も意外と強く、セブンとは幾度も投げ合うなど互角に渡り合っていた。


【スペック】

身長:1.7~40m
体重:100kg~1万t
出身:スペル星
デザイナー:成田亨

【本編での活躍】

健康な血液を採取するため、スペリウムという金属で出来た特殊な腕時計をばら撒いており、これを身に着けた地球人から密かに血液を奪っていた。
最初は若い女性をターゲットにしていたが、ある日たまたまアンヌの友人の弟が腕時計を着けており、非常に純度が高い血液が採取されたことで子供の血液が最も自分達に適していることを知る。

子供達に腕時計をばら撒く為、「ロケットの絵を描いて宇宙時計をもらおう!」とわざわざ丁寧に新聞広告でキャンペーンを行いだした。
既に捜査に乗り出していたウルトラ警備隊に間一髪で阻止されるとスペル星人は巨大化して正体を現し、円盤と共にウルトラ警備隊と激しく交戦しつつ、郊外の氷川貯水池まで逃亡する。

ウルトラセブンとも激しく格闘を繰り広げ、円盤からの援護攻撃もあって善戦するが円盤はウルトラホークによって撃墜され、本人も空を飛んで逃げようとした所でアイスラッガーで真っ二つにされた。


【評価】

「遊星より愛を込めて」を実際に(海外で放送したものが残っていたり、YouTubeやニコニコ動画等で)見た人曰く、つまらなかったそうだ。
一方で、ダンの宇宙人と地球人の友好関係を築ける日がいつか来るという独白によって、最終回にも通じるシリーズのテーマが語られた重要なエピソードと見なす声も。
まあ、面白いのかそうでないかは人各々なので一概には言えないのだが、ごくごく普通(?)のエピソードではある。

スペル星人の目的がかなり“ぼかされている”上に、実相寺昭雄特有の無駄に凝ったカメラワークによる白昼夢のような演出の所為で“何を言いたいのかわからない”と感じる人が多かったのだと思われる。
ウルトラホーク1号とスペル星人の円盤、スペル星人による空中戦、『ウルトラQ』『ウルトラマン』レギュラーだった桜井浩子氏のゲスト出演など、見所も無いではないのだが……

名作回である狙われた街と同時進行のためか夕焼けの背景をバックにセブンと戦うなど共通点もあるものの、ほぼ一瞬で終わるメトロン星人とは違って制作がこちらの方が早かったためか実はセブンとのバトル内容自体は第1クールのエピソードの中ではまともに格闘を行っている珍しいものとなっている。
……が、ほとんどの場面がシーボーズと同じく静止画で省略されており、実相寺昭雄独特の演出によって絵面としては地味なものになってしまっている。
この演出さえなければ、セブンがまともに戦わないエピソードが多い第1クール作品の中でも屈指の良バトル回となり得ていたかもしれないとして惜しまれている*1

以上のように、おそらく欠番とされていなかったら余り注目されていなかったであろう内容とされる。

『故郷は地球―佐々木守 子ども番組シナリオ集』に脚本が収録されているため、この話に興味がある方は大きな図書館を探せば、ストーリーを知ることはできる(脚本なので普通の小説や書籍よりは読みづらいが)。

欠番になったこの作品は長い間見ることができなかったが、ビデオがひっそりと裏で流通しており、後にネットにも流出してはいる。ビデオテープでダビングを繰り返されたものなので画質についてはお察しであるが。
出処は不明だが、テレビ放送を録画したものではなくフィルム映像をビデオに変換したものとみられている。
そもそも1960年代には家庭用ビデオがほとんど普及していなかったため、視聴者が録画するという事自体が殆どなかったと思われる上に、ビデオテープ自体も高価だったため、放送を録画したものが残っている事自体殆ど無いと思われるが。
物によっては後述する英語版の映像(現地放送局のロゴが確認できる)に、このビデオの音声を組み合わせたものも確認できる。

余談だが、日本を騒がせた連続幼女誘拐殺人事件の犯人(ビデオマニアでもあった)もその映像を所持しており、事件を起こす前にそのビデオ流通に一役買ったとかなんとか。


【欠番の経緯】

チャートにすると以下の通りとされている。

小学館の学習雑誌『小学二年生』1970年11月号の付録に、
「かいじゅうけっせんカード」というカードゲームが付く。

当時中学一年生の姉が、弟(小2)の買ってきた付録のスペル星人の項に、
「種族:ひばく星人 能力:目から怪しい光を出す。」と書いてある事を発見。

姉が「被爆者を怪獣扱いしている」と、
東京都原爆被害者協議会の関係者だった父親にチクる。

父親がその事を小学館と円谷プロに抗議する。
また、父親が所属していた市民サークルの関係者が知り合いの朝日新聞記者にこの件を伝える。

円谷プロは「あれは小学館が勝手にやった事」と、
初めは否定するも、結局新聞沙汰になり、
全国の被爆者団体・反核団体から抗議される。

円谷プロは「遊星より愛をこめて」を封印。小学館も謝罪。
作品を欠番にし、以後公開しないことにする←いまここ


後の世代の人間がこれだけを見ていると、「昔からマスコミのやることは変わらない」とか、「東京都原爆なんたら会はさらにとんでもない!」という意見が多いが、当時はかなり原爆被害者も存命だった上にまだ戦争の記憶も生々しかった時代である。
封印し欠番するのも仕方がないのかも知れない。

ならばやはり付録を作った小学館のせいなのでは、というとそういう訳でもない。
そもそも『ウルトラセブン』では他のウルトラシリーズと違い、製作時に「○○怪獣」「○○宇宙人」といった種族名(肩書)は付けられておらず(キングジョーなど具体的な名前すらついていない怪獣・宇宙人もいた)、それもあってか前作『ウルトラマン』のOPラストに記された「宇宙怪獣 ベムラー 登場」のようなテロップも存在しない。
「ひばくせい人」という名前は放送後、1968年刊行の『怪獣ウルトラ図鑑』(大伴昌司著・秋田書店)で付けられたものが、円谷プロ作成の設定資料集に逆輸入され、それを介して他の書籍に引用されたという。
本記事の肩書はこういった設定固めが行われる以前に使われていたものの一つで、抗議後には肩書を「吸血星人」に変更したという*2
結局、欠番が決まったため正式に使用されることはなかったようだが。

また、『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』の戦闘シーンを利用して制作された『ウルトラファイト』にも本話は取り上げられており、
再放送の際にしっかり流してしまい再び抗議を受け、こちらも欠番・差し替えとなっている。
同作のエピソード第196話「怪獣死体置場」は、この欠番に際して再放送時の話数補填のため、後年に急遽撮り足されたもの。

ちなみにフィルム自体は現存しているらしく、90年代に英語に吹き替えられた*3『ウルトラセブン』がカナダで制作された際には本話の英語版も制作された。

そして2025年12月の末、高画質の第12話本編が突如としてニコニコ動画にアップロードされたが、程なくして削除された。



【余談】

  • スペル星人のデザインはかの成田亨。
    『成田亨画集』でのコメントによれば(デザイン画は未収録)、実相寺監督から「真っ白い服にケロイド」という注文を受けたとのことだが、氏曰く自身のウルトラ怪獣に対する姿勢に反する注文*4だったため、ろくにデザインも書かずに造型させたとのこと。
    そのため人型の仮面に所々ケロイドがある白い体という極めて投げやりなデザインになっている。
    流石に現状の扱いが扱いな事もあって氏の画集に収録された事はないが、当のデザイン画自体は現存しているようで、2014年に富山近代美術館にて開かれた成田氏の美術展でスペル星人のそれが展示されたとの証言がある。

  • 問題のスペリウム爆弾は『セブン』第38話「勇気ある戦い」にてウルトラ警備隊側が使用している。
    そのためか、動画サイト等の興隆前の断片的な情報が出回っていた時期はスペル星人のことを「地球側の実験による被害者」と思っていた人も多かったようで、エピソードが封印される以前の60年代に刊行された怪獣図鑑でもそのような記述がされたものが確認できる。

  • 未制作エピソード「宇宙人15+怪獣35」の脚本では蘇った宇宙人連合にスペル星人の名前が確認されている。
    仮に実現していた場合、この話も欠番になった可能性が高い……といっても、同エピソードはほぼ没前提で製作された脚本だったらしいが。

  • 帯番組『ウルトラ怪獣大百科』ではウルフ星人の回にてザラブ星人ナレーターが血を吸う宇宙人を上げていく部分があり、その中に「腕時計を使って血を取った宇宙人」とスペル星人のことを差す発言があった。

  • ウルトラマン超闘士激伝』では、原作漫画とOVAにそれぞれ一カットずつ、スペル星人がモブ観客として描かれている場面がある。

  • 円道祥之の書籍『空想歴史読本』では、宇宙人が地球を侵略する目的の考察と、ウルトラセブンが地球に滞在していた時期の検証に際して「遊星より愛をこめて」の描写を引用している。

  • 2018年に刊行された、漫画『大怪獣バトル ウルトラアドベンチャー』の新装版上巻では、後書きで本来ペダン星人と書くべき個所が「スペル星人」と記載されてしまっているミスが存在している。

  • 格闘ゲーム『ストリートファイターⅢ 3rd STRIKE』のトゥエルヴというキャラは、スペル星人をモデルにしていると言われ、名前のトゥエルブも欠番の12話からきていると推測されている。



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最終更新:2026年08月07日 08:14

*1 視聴率自体は番組全体としてはベスト4の32.8%を記録しているほど

*2 本編内でスペル星人が「我がスペル星はスペリウム爆弾実験のためその放射能で血液がいちじるしくおかされた」と「我々の血に変わる」ものとして地球人の血液を狙うセリフがあるので「被曝による放射線障害の治療のための交換輸血の血液確保」と誤解している人が多いが、放射能汚染対象が「我がスペル星」という表現(「我々スペル星人」ではない)や「子供の血を吸え」というセリフもあるので、スペル星人は元々他の動物の血液を栄養源とする生物で、血液汚染はスペル星人の食用家畜の血液を指し、地球に食料を求めてきたという設定だったようである。

*3 どうやら円谷プロの人が現地のテレビ局との契約時にうっかりして「契約料と引き換えに『ウルトラセブン』の全話放送を許可します」といった感じで契約してしまい、第12話のフィルムを渡さないと「全話許可」の契約違反になるため止めれなくなったようである。

*4 ウルトラ怪獣をデザインするにあたって、1.実在の生物そのままのデザイン、2.首や手足がいくつもあるなどのお化けを思わせるデザイン、3.内臓がはみ出しているなど体が傷ついているデザインの3つを行わないように心掛けた。