ウルトラマン(作品)

登録日:2016/08/13 Sat 14:45:35
更新日:2021/02/19 Fri 02:15:35
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申し訳ないことをした、ハヤタ隊員、
その代わり、私の命を君にあげよう。
きみと一心同体になるのだ。


『ウルトラマン』は1966年(S.41年)7月17から1967年(S.42年)4月9日にかけてTBS系列で全39話が放送された空想特撮ドラマ。
タイトルでは『空想特撮シリーズ』と銘打たれている。

2021年。遂に生誕55周年を迎えた。

ウルトラQ』に続く円谷プロ製作の
『ウルトラ』を冠するテレビシリーズ第2作目で、後継作の『ウルトラセブン』と並び、第一期ウルトラシリーズを代表する作品。
本作のヒットが無ければ、後のウルトラシリーズはおろか、円谷プロも無かったかもしれない。

前作のコンセプトを引き継ぎつつも、放送局であったTBSの要求に従い『ウルトラQ』から大幅なパワーアップと路線変更を遂げた円谷初のカラー作品は、
人類の味方として怪獣と戦う巨大ヒーローという強烈なエポックメイキングを提示し、文字通りに『ゴジラ』以来の特撮の歴史を変えた作品となった。

番組タイトルでもある巨大ヒーローについてはウルトラマンを、
作品に関連した詳細な情報については各関連項目を参照。

“特撮の父”たる監修の円谷英二が繰り返し語ったとされる
「見終わって夢が残るものじゃなきゃダメだよ。汚ならしいもの、目を背けちゃいけない現実は別のリアリズム映画がやってくれる」
この言葉に従い生み出された奇跡の超人は、現実をも呑み込む“現代の寓話”として後に誕生する兄弟達と共に今日まで人々の心に生き続けているのである。

初放送は1966年7月17日だが、
先週の7月10日には本作放送以前に杉並公会堂で1966年7月9日に行われたイベントの中継録画番組(VTR収録)のウルトラマン前夜祭が放送された。

当初、『ウルトラQ』の第28話として5月15日に放映が予定されていた「あけてくれ!」は、
「怪獣が登場しないうえに内容が難解」という理由で、4月末頃に本放送見送りの処置が下された。
つまり、『ウルトラマン』の放送開始は7月10日に繰り上がることになったのである。

それにもかかわらず放映第1話の特撮班が6月に入ってようやくクランクインという、
撮影スケジュールの遅れを危惧したTBSプロデューサーの栫井巍が、1週間の時間稼ぎにと急遽企画したものが本番組だった。

なお、「ウルトラ作戦第一号」の完成品フィルムがTBSに納品されたのは7月13日であり、栫井の判断は正しかったと言える。

最終スケジュール日程は、7月6日に技術スタッフの打ち合わせ、翌7日と8日にリハーサル、9日の午後1時より開演となった。
本番では演出用の豚が暴走したり、視界が悪いマスクのためにウルトラマンがつまずいてしまったりなどのトラブルが続出した。
また、アントラーのスーツが前後逆になるというミスも生じている。

そうした状況を恥じたTBSの担当ディレクター・実相寺昭雄は、独断で自身の名前のテロップを抜いてしまった。
その後、本番での数々のトラブルは編集で削除され、さらに完成していた第3話のハイライトシーンが加えられての放送となった。
その結果、『ウルトラマン前夜祭』は30.6%の高視聴率を得たため、実相寺はお咎めなしで済んだという。

カラー放送だったと伝えられるが、当時のマスターテープの現存が確認されていないため、詳細は不明。
現存する映像は『タケダアワー』のオープニングキャッチ、CM、提供画面、新番組予告を含むモノクロのキネコフィルムで、
『現代の主役 ウルトラQのおやじ』とのカップリングで1988年にビデオ化された。
その後、LD-BOX・DVD-BOX・BD-BOX等に特典映像として収録されている


【解説】

“M78星雲光の国”からやって来た身長40メートルの超人ウルトラマンの活躍する空想特撮ドラマにして、
後継作である『ウルトラセブン』と共に、以降の『ウルトラシリーズ』の礎を築き上げた……というか凡てのオリジナルとなった作品である。

『ウルトラQ』から更に進化した、カラー放送された“怪獣退治の専門家”の姿*1は瞬く間に子供達を虜にし、初回放送にて34%。平均で36%越え。
最高視聴率に到っては42.8%を記録する超人気番組となった。

……尤も、その熱狂とは裏腹に製作している当人である円谷プロでは直ぐに製作費を回収する事が出来ずに資金難に喘ぎ続け、
結局は39話までで打ち切らざるを得なかったとの裏話もある。
以降『メビウス』らへんまで40年以上こんな感じの制作体制が続き、結果的に円谷プロ破産にまでつながったのはなんというか…

こうした事情は後に少しずつ解消されていくようになるものの、
朝から晩までが費やされた撮影環境の悪さと、怒号すら飛び交った現場の思い出は苦笑混じりに当時の関係者から繰り返し繰り返し語られる程。
1エピソードを作るのにだいたい1月分の撮影を擁したとの証言もある辺り、同時進行による過密スケジュールを急ごしらえでよくも乗り切れたものである。

その興奮は放送終了後も収まらず、最初の再放送でも視聴率18%台を記録。

これ以降も四半世紀以上にも及ぶ各都道府県での再放送と、主人公であるウルトラマンの後継シリーズや他ジャンルへの客演により、
非常に幅広い層にまで浸透する知名度と支持を得る事となった。

作品単体としての評価は子供番組にこだわり過ぎた部分もある為か、マニア層からは『ウルトラセブン』程の支持を得てはいないものの、
やはり以降のシリーズの殆ど“凡て”に先鞭を付けたと言える多彩な脚本は見返すことで新しい発見もある程である。

この他にも時代を先取りしすぎたした成田亨らによるウルトラマンや怪獣、秘密兵器のデザイン。
世界観に説得力を与える精緻なミニチュアや着ぐるみの数々。
そして、何よりも資金難に喘ぎながらも試行錯誤と職人芸により産み出された特撮演出の妙は半世紀を経た今も色褪せない魅力を伝えてくれる。
近年のシリーズと比較すれば流石にVFXなどがなかった当時の技術の限界を感じる部分はあるものの、
各話をしっかり見るとむしろ限られた技術を上手く活用して臨場感を出しており、昭和41年のドラマとしては非常にクオリティが高い。

シリーズが進行してからは円谷プロの思惑とは別の雑誌展開などで勝手に設定が固められたりした結果、
不当に初代となる本作が貶められたような形になってしまっていた時期もあったが、
元祖にして最大の知名度を誇る“初代ウルトラマン”の名は今日でも唯一無二の輝きを放ち続けているのである。


【世界観】

時代設定についてであるが本放送当時の公式資料と、『週刊少年マガジン』1966年31号(8月7日号)でのグラビアページの時代設定は、「1975年頃」という記載がある。
しかしスタッフの認識は近未来という程度で明確な合意はなく、 第23話でジャミラの墓標に没年が1993年と記されていたり、第26.27話は放送当時の現代(1966年)が描かれていたり、第39話で「1930年代から40年以上」との台詞があり全てをまとめるとウルトラマンは27年間も地球に滞在していることになってしまうのでその回限定だと思っていいだろう*2

地球は未知の生物たる怪獣による災害や宇宙からの訪問者による接触を受けており、
それに科学特捜隊も所属する国際機関「国際科学警察機構」が対処している世界である。

一連のストーリー作品ではあるものの、時系列がハッキリとしていなかったり、
シナリオによって基本設定に食い違いが見受けられる等の矛盾も抱えているが、
これは前作『ウルトラQ』同様に『ウルトラマン』がオムニバス作品としての形態を引き継いでいる為であろう。

事実、ウルトラマンと怪獣達の活躍を描く事こそがシナリオの最優先課題であり、
この時点でのウルトラマンは自らの意思で地球に残ることを決意した善意の異邦人でしかなかったからである。
尚、前作である『ウルトラQ』とは何となく世界観が繋がっており、ラゴンやケムール人といった怪獣が本作にも登場。
科特隊もそれらについての情報を予め持っているという描写となっている*3


【国際警察機構】

パリに本部を置く国際的な地球防衛機関。
後の『ウルトラシリーズ』に比べると宇宙人による侵略行為がまだまだ目立っていない時期なのか、宇宙に対する防衛や調査技術が未発達な点が垣間見える。

この、国際機関の日本(極東)支部が主人公の属するチームという設定は後の第二期『ウルトラシリーズ』にも引き継がれていく事になるが、
国際機関としての組織全体に目を向けた演出は『ウルトラセブン』を頂点として、以降は前線でのチームの活躍に絞った演出が多くなっていった。

本作『ウルトラマン』でも、他国の支部からのエージェントがゲストとして登場する回が見られる辺り、
第一期『ウルトラシリーズ』が純粋な特撮SFドラマを目指していた事が伺える描写となっている。


【科学特捜隊】

国際警察機構極東支部に属する、怪事件の調査と原因究明。
それらの事件が怪獣や宇宙人によるものだった場合には、その対処や排除をも受け持つ特殊部隊。

正式名称は「科学特別捜査隊(Science Special Seach Party)」 で、劇中では更なる略称の「科特隊」と呼ばれることもあるため子供には微妙にややこしい。
Something Search Peopleではない。そりゃ別のウルトラ作品だ

東京近郊にある特徴的な形状のビルディングは特に隠蔽されたりしていない反面、
あらゆる熱線や光線を遮断する強固な防御力を誇ると説明されている鉄壁の要塞でもあり、彼らの使用する専用機ジェットビートルの発進設備もある。

ムラマツキャップ以下の隊員達は常時この基地に駐留して、時には民間からも寄せられる怪事件の発生に備えているのである。


※この他、各国の隊員が時折登場しては世界観の豊かさを印象付けていた。



【科学特捜隊の主な装備・専用機】




【エピソード】



【余談】

●番組のアイディアが固まるまでの仮題は『WOO』『科学特捜隊ベムラー』『レッドマン』…等。
元々は敵怪獣と戦う善玉怪獣というコンセプトを提示されていた為かフジテレビ用の企画であった『WOO』のコンセプトを流用する事*10から初めたが難航。

『科学特捜隊ベムラー』と『レッドマン』は企画的にはかなり『ウルトラマン』に近くなったものの、
前者はカラス天狗。後者は獣神。と、怪獣の概念から脱しきれない姿をしていたらしい*11

こうして試行錯誤を繰り返す中で番組プロデューサーから出されたのが「メタリックな宇宙金属」の様なイメージであり、
これに対して彫刻家である成田亨が解答として示したのが「卵形の顔にギリシャ彫刻の様なアルカイックスマイル」の統合を目指して誕生したウルトラマンだったのである。
因みに、成田氏のイメージによれば銀色の肉体は鈍い銀ではなく、鏡面の様なイメージだったとか。

また、ウルトラマンのイメージが仏像。
特に弥勒菩薩像に似ているという説は昔から存在しており、
仏像マニアとしても知られる漫画家のみうらじゅん氏らにより指摘されたそれらの噂を「特撮と怪獣」にて成田氏自身も認めているとの事。

文芸担当でもあった脚本家の金城哲夫がウルトラマン関連の副読本や雑誌記事で賛否を集めた大伴昌司との会話の中で、
怪獣をモンスターとしか捉えられない大伴氏に対して、日本的なカミである怪獣をウルトラマンが鎮魂しているという構図を説明しているが、
単なる“悪い怪獣vs正義のヒーロー”にはしようとしなかった円谷プロの願いを考えれば、同じくカミであるウルトラマンが仏像の様な姿に落ち着いていった事も当然だったのかもしれない。

何にしても、そうした経緯を経て生み出されたウルトラマンの姿の斬新性は半世紀を経ても色褪せぬどころか、
その姿を借りた兄弟達と共に現在でもヒーローとしての威光を失っていないのは御周知の通りである。


●ウルトラマンのドラマは大人向け
ストーリー展開自体は子供向けだが、ドラマパートの演者は大人向けドラマと同じように演技している。
撮影現場でも演者達のリーダー的存在だったムラマツキャップ役の小林昭二氏が「子供に媚びない、大人の芝居をしよう」と提案したらしい。
子供向け番組でも大人向けの芝居をするという慣例はその後も暗黙のルールとして脈々と受け継がれている。


●ウルトラマンの掛け声と言えば「シュワッチ!」である。
これは文芸段階から確かに「シュワッチ!」なのだが、
実は文字の段階では様々に出された掛け声を纏めてアルファベットで書き起こした「SHWACH!」だった。
これを正確に「シュワッチ!」と日本語で初めて表現して見せたのは何と“ギャグ漫画の神様”赤塚不二夫。
代表作『天才バカボン』の第一話でバカボンのパパがウルトラマンの掛け声を「シュワッチ!」表記を使用したのが、ウルトラマンの正しい叫びが国民に定着するキッカケとなったのだという。正に天才!
ただし、ウルトラマン本人が明確に「シュワッチ!」と言ってるのは勝利後の飛び去るシーンのみ。
戦闘時は「ヘアッ」「シュワッ」などと叫んでいる。

●ウルトラマンの歌
OPはウルトラマンのことを歌った歌詞のはずなのだが……1番2番3番全て末尾以外は科学特捜隊のことが歌われているなどおかしくなっている。
それでも有名な曲であることには違いなく、近年では矛盾を気にせず、ウルトラマンを「怪獣退治の専門家」と評することさえもある。
なお「進め!ウルトラマン」という主題歌候補だった曲は最初から最後までウルトラマンの内容になっている。

●没エピソード
映像化された以外にも没に終わってしまったエピソードが多々存在している。
これらの内「サイボーグ恐竜」「侵略基地を叩け」「怪獣用心棒」「リプロスが狙っている」は一峰大二の漫画版でエピソードが採用されており、また劇場用脚本を想定していた『ジャイアント作戦』は川崎郷太の漫画版、並びに千束北男*12による小説版が後年刊行された。

●その後のウルトラマンとハヤタ
その人気故、ちょっと客演からがっつりメインまで数多くのシリーズ作品に登場しているウルトラマンとハヤタ。
マルチバースによってその後のハヤタの歩みは様々だが、ウルトラマンは「宇宙警備隊の中でも凄腕として、怪獣退治や後進の育成に関わっている」とされることが大半。

以下、ハヤタの歩みをまとめる。
  • 本編ラスト:ウルトラマンと分離。最終回には「ウルトラマンってなんです?」というハヤタの没台詞が存在し、これを信じるならばハヤタは分離して蘇生された際にウルトラマンと一体化した記憶を失ったと思われる。
    • 『帰ってきた』~『メビウス』~『銀河伝説』『サーガ』:ハヤタ本人は不明だが、ウルトラマンが地球人態としてハヤタの姿を使用。宇宙警備隊員の他、一時地球にとどまった際は神戸空港の空港長を務めた。
      一説にはこの時には既に本来のハヤタは故人であるとも、歴代防衛チームの偉い人としてウルトラマンが地球にいられるよう各所に働きかけているとも*13
    • 『甦れ! ウルトラマン』:ゼットンに敗れた後もウルトラマンが地球に駐留するため、それまで通り科特隊員とウルトラマンを兼業。
    • ULTRAMAN(漫画)』 :科特隊を辞め、日本国内閣の防衛大臣に。この宇宙においてもずっとウルトラマンの記憶を失っていたが、物語冒頭に記憶を取り戻している*14
    • 『ウルトラマン怪獣伝説 -40年目の真実-』:最終回以降も科特隊(本作の宇宙では地球防衛軍に改編された)に残り、そのまま引退(おそらく定年退職)。
      この宇宙では「ウルトラマンと融合していたころに科特隊員として経験した事件」は覚えていたが、肝心のウルトラマンの記憶はやはり忘れている。
      ある理由からウルトラマンに頼まれ事をされ、無意識のまま科特隊メンバーに召集をかける。そして…?
  • ウルトラマン THE FIRST』:最終話でゼットンとの戦闘で死亡したウルトラマンと分離し、ゾフィーに授けられた命によって蘇生したが、記憶は失わなかった。
  • 大決戦!超ウルトラ8兄弟』:最終回とはつながっていない宇宙。一介の自転車屋さんだが、後にいつもの宇宙同様ウルトラマンと一心同体となって戦う。




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最終更新:2021年02月19日 02:15

*1 放送開始当時は一部地域は白黒放送。また、時代的にカラー放送されていた地域でも白黒テレビで視聴したご家庭も少なくなかった。

*2 『マックス』などに近い

*3 後に『メビウス』にてアーカイブドキュメントとして明確な設定になった

*4 現:毒蝮三太夫……いい加減にしろババァ!この番組での勇猛な戦いぶりが師匠の立川談志の目に留まり、毒蝮の芸名が付いたという

*5 複数回に登場しているが、演者の都合により脚本では岩本博士だったのが別の博士に置き換えられている回も存在する。

*6 演者にも不評な派手な配色はカラー撮影で如何に色が映えるかを確かめる為だったらしい。素材はスキーウェアの物で、生地は身体にピッタリな反面厚く、夏は熱くて冬は寒い。トイレも大変。などの思い出が語られている。

*7 特に、一風変わった演出で知られる実相寺昭雄は「絶対にスペシウム光線では決めない」拘りを持っていたという。

*8 ※漢字はのぎへんに斉

*9 野長瀬に怒鳴り込ませたと言われるこの回の演出のせいで、実相寺はしばらく円谷から干されたとかなんとか……。

*10 ※宇宙からやって来た不定形生物“WOO”がカメラマンと共に怪事件に挑むSFストーリー。かなり後になって2006年、『生物惑星WoO』として一部設定変更しつつNHKで放送

*11 ベムラーは大怪獣ガッパ、レッドマンは三角頭のウルトラの父

*12 脚本スタッフの一人であった飯島敏宏の別名義。

*13 この場合どこかで記憶が戻った事になる

*14 ちなみにハヤタ以外の科特隊メンバーは皆彼がウルトラマンと一体化していたことに気付いていたが、彼に配慮して秘密にしていたという。