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警視総監

登録日:2010/03/10 Wed 02:50:57
更新日:2025/01/09 Thu 16:13:49
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警視総監(けいしそうかん)(英称:Superintendent General)は、警察法第62条に定められている日本の警察官の階級の最高位にして、東京都警察本部たる警視庁の本部長の職名でもある。定員は1人。


概要

各都道府県には「警察本部」が置かれ、それぞれ「道府県警察本部」と呼称されるが、首都を管轄する東京都に限り、「東京都警察本部」ではなく「警視庁」という固有の名称が用いられる。
同様に、道府県警のトップは「道府県警察本部長」と呼ばれるが、東京都においては「東京都警察本部長」とは言わずに「警視総監」と呼ばれる。
この警視庁のトップを務める警察官の階級兼職名が警視総監である。
道府県警本部長の階級が警視監か警視長*1なのに対し、警視庁だけが最高の階級である警視総監になっているのは、明治時代からの由緒正しき名称であることはもちろん、日本の首都たる東京都を管轄する「首都警察」であることから道府県よりも別格の地位にあるためであり、広大な面積を有して単独で地方を構成する北海道警とともに管区警察局の管轄から除外され、警察庁直々の指揮下にある*2


歴史

警視総監は1874年1月15日に発足した内務省直轄の「東京警視庁」のトップを起源としており、初代にいわゆる日本警察の父・川路利良が任命された。当時は「大警視」という名称で*3、1881年1月14日に警視庁が再設置された際に「警視総監」と改められて以来、現在に至るまで使われ続けている。
内務大臣直属として内務次官・警保局長と並んで「内務三役」と呼ばれた重職とされており、中でも同じ勅任官の東京府知事より俸給が多く、警視総監の方が格上とされていた。
退任後も貴族院議員に勅選されるなど優遇されており、大蔵省や外務省ではこのようなことは滅多になかったことから見ても、いかに内務省が別格だったかうかがえよう。

敗戦後の1948年には内務省の廃止・解体による警察組織の抜本的な改革が行われ、旧警保局の流れを汲む「国家地方警察」と各市町村で設置した「自治体警察」がそれぞれ発足した。東京都では旧東京市を管轄する「警視庁」と自治体警察を設けない地域を管轄する「国家地方警察東京都本部」の2種類に分かれ、警視総監は前者の長として引き続き存続したが、当時は東京都知事が所管する「特別区公安委員会」が任命する東京都の公安職公務員と位置付けられるなど、法律ではなく条令を根拠とする東京都の地方公務員のような扱いだった*4
また、1948年9月からはGHQの意向で「大阪市警視庁」が発足し、そのトップが警視総監を名乗ることになり、その風潮が全国に普及して警視庁や警視総監なる存在が日本に複数出てくる事態になった。

1954年7月1日の新警察法施行により、国家地方警察と自治体警察はそれぞれ警察庁・都道府県警察へと発展する形で再出発することになった。これにより、警視総監は東京都警察本部たる警視庁トップの国家公務員、および警察官の最高階級として位置付けられた。


役職として

地位

一般職の国家公務員で、地方警務官*5である。警察官の階級としては最高の地位にあるが、さらに上位職として、階級制度の適用を受けない警察庁長官が存在するため、警察官全体の序列としては長官に次ぐNo.2の地位である。
ただし、日本の警察組織を統括する警察庁のトップである長官とは違って警視総監はあくまで「東京都警察本部長」に過ぎないため、他の道府県に指揮命令できる権限はなく、基本的には警視庁(東京都)のみに限定される。
さらに、警察庁次長は階級こそ警視監ながらその地位は長官に次ぐ警察庁No.2であるため、当然ながらその権限は全国の都道府県に及んでおり、警視総監を含めた全国の本部長に対して指揮命令を出せる立場にある。そのため、「地位は警視総監、実質的な指揮系統や権限は次長」がそれぞれ勝るという一長一短の関係性である。
これは検察における、最高検察庁No.2の次長検事と東京高等検察庁のトップである検事長との関係に類似している。次長検事は全国の検察を統括する最高検のNo.2だが、実務上の序列や俸給面では東京高検検事長が検事総長に次ぐNo.2になっている。ただし人事面では全く異なり、後述するが警察庁次長が警視総監を経ずに長官に昇格するのが基本なのに対し、次長検事から直接検事総長に就任したのは清原邦一氏のみで、基本的には東京高検検事長が次期検事総長として昇格する慣行が続いている。

俸給は「指定職7号俸」が国庫から支出される。これは事務次官ないし警察庁・金融庁・消費者庁長官などの「指定職8号俸」に次ぎ、省名審議官や国税庁・海上保安庁長官、防衛大学校長、陸・海・航空幕僚長などと同等の地位である。
階級章は左胸につける警視監以下とは違い、制服の両肩に金属の日章4個が配置される特殊なデザインになっており、識別章の役割を果たしている。
ちなみに、刑事ドラマなどの印象から制服姿のイメージを持たれやすいが、実際に着用するのは自ら陣頭指揮をとる場合や式典程度で、基本的には私服勤務であるという。


任務

警視庁のトップとして警察法やその他の法令・条例などに職務が規定されている。
  • 東京都公安委員会の管理に服し、警視庁の事務を統括し、職員を指揮監督する。
  • 警視以下の警察官およびその他職員を都公安委員会の意見を聞いて任免する。
  • 緊急時における都公安委員長に対する都公安委員会の臨時会議の開催要請。
  • 警視庁組織規則を施行するため必要な事項を定める。
  • 警視庁の各部、課、部の附置機関、警察学校、方面本部、犯罪抑止対策本部、人身安全関連事案総合対策本部、サイバーセキュリティ対策本部、オリンピック・パラリンピック競技大会総合対策本部、警察署に配置する職員の定員を定める。
  • 副署長を置く警察署を定め、警察署の分課及びその他内部の事務分掌について定める。
  • 毎年度監察実施計画を作成し、都公安委員会に報告し、少なくとも毎年1回、監察実施状況を報告する。
  • 警視庁職員の懲戒事由に係る事案について都公安委員会への報告義務。
  • 警察教養に関し必要な事項を定める。
  • 道路交通法に基づく免許の保留及び停止、仮免許の付与及び取消を行う。
  • 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に基づく仮命令、指示などを行う。
  • ストーカー行為等の規制等に関する法律に基づく警告、仮命令、援助を行う。
  • 警視庁の所掌事務に係る一定規模の契約行為につき、都公安委員会に代わり事務を行う。
  • 重大事件の指揮命令、知事部局との折衝、議会答弁など。


任免

任免には国家公安委員会が都公安委員会の同意を得た上で、さらに内閣総理大臣の承認が必要になっている。道府県警本部長は道府県公安委員会の同意を得て任免されるが、警視総監は「首都警察の長」という観点から首相の承認も要している。また、都公安委員会は国家公安委員会に対し、警視総監の懲戒または罷免に関して必要な勧告をすることができる。
海外の警察とは違って東京都知事や都公安委員会の直接的な指揮下には置かれておらず、その関係で両者の権限による任免や懲戒処分も不可能であり、必ず国家公安委員会が行っている。
これは警視総監を含めた本部長をはじめ、警視正以上の要職を担う地方警務官全てに共通する事項になっており、国家公安委員会が都道府県公安委員会の同意を得て任免するため、都道府県知事や都道府県公安委員会には権限がない。制度上、都道府県公安委員会が人事案に同意しないことは当然に可能であるが、実務上は一度も例がない
さらに、建前上は国家公安委員会が任免してはいるものの、実際には地方警務官の人事は国家公安委員会の管理のもとで長官が掌握していることから報道では警察庁人事として報じられており、幹部人事・運営ともに警察庁の強い影響下にある国家警察色の濃い現状が垣間見える。

前職としては主に指定職5号~4号俸の局長級からの就任が一般的である。1900年代までは一部を除いて警務局長が大半を占めていたが、2000年代に入ると局長から就任するケースが増加。中でも警備局長が顕著で、相次ぐ国内外のテロ事件の増加もあってか警視総監に昇格する人事が多い。他の局長が1~2人程度であることを考えても圧倒的である。
そもそも警視庁は管轄が日本の首都東京ということで他の道府県よりも高度な治安維持を要求されるため、必然的に警備公安のトップである警備局長の就任が多くなるのも自然な流れと言えるだろう。
次長は基本的に次期長官のポストと定められてはいるものの、1900年代を中心にしばしば警視総監に就任した例が存在するので前職としては比較的多い部類に入る。
後述のように警視庁No.2である副総監はしばしば「次期警視総監候補」として描写されることも多いが、実際に昇格したケースは槇野勇氏と斉藤実氏の2人しか存在しない。
副総監以外では小倉謙氏と原文兵衛氏が警務部長から、警視総監代理を務めた古屋亨氏が総務部長から就任しているが、いずれも現行法の施行から10年以内の黎明期における事例である。通常はここで退職する「あがりポスト」である近畿管区警察局長から就任した川合壽人氏もこの時期に含まれることから初期ゆえの流動的事例と言えるだろう。
勇退後は治安維持の手腕を買われ、国防を除いた危機管理を担当する内閣官房直属の内閣危機管理監や皇室を所管する宮内庁次長→長官に任命されることもある。
出身大学はやはり東京大学法学部(一部は経済学部)卒が大半で、それ以外は京都大学法学部卒がわずかにいる程度である。

ちなみに、現行の警察法の政府案においては、警察庁は総理府の外局として、かつての防衛庁のようないわゆる大臣庁という位置付けで設置され、警視総監の任免は国務大臣である警察庁長官が首相所管の国家公安監理会の意見を聞いて行うことになっており、都公安委員会は長官と国家公安監理会に対し、警視総監の考課を具状し、罷免・懲戒を勧告し得るという構想になっていた。
また、警視総監は警察庁次長とともに新設の階級である警視監が就任するとされていた。

法律上の規定はないため、ノンキャリアや準キャリアが警視総監に就任することは理論上可能である。実際に一部の県警においては準キャリア本部長をはじめ、人事交流の一環で出向してきた他省の官僚や警察官ではなく技官として採用されたキャリアの本部長が一時的に警察官の階級を与えられる形で就任した例が稀にあり、創作でも『有閑倶楽部』の松竹梅時宗のように叩き上げの警察官が警視総監まで出世したケースが存在する。
もっとも、前述したように警視庁は道府県警よりも別格の地位で「首都警察」という重責を担うことから、実務上は現在に至るまで例がなく、実質的には警察庁に入庁してさまざまな経験を積んできた生粋のキャリア警察官が着任する指定席になっている。
戦前は上記のように内務省が警察権を掌握していたこともあって都道府県知事や内務官僚といった非警察官が就任するケースが多く、再任された人も一部いたが、現在は警察法において「警察官をもって充てる」と定められており、任期も1~2年程度に限られている。

ちなみに、官房長や局長以下の幹部とは違って警視総監の定年は長官・次長と同じく特例で2年長い62歳になっており、定例で天皇に進講し、交代時は後任者ととともに皇居に招かれ、天皇陛下が出席して「お茶」を供される。
退職後は70歳以降の春秋叙勲で、長官だった人と同じく瑞宝重光章を授与される。

現在に至るまで3人の懲戒処分が確認されている。いずれも戒告処分ながら警察の威信に関わる重大な不祥事を受けての引責によるものであり、うち2人が引責辞任している。
  • 1978年に発生した北沢警察署の警察官による清泉女子大学生殺害事件により土田國保氏が戒告処分を受け、引責辞任した。
  • 1997年に発生した城東警察署による覚醒剤所持捏造事件により前田健治氏が戒告処分を受けた。
  • 2007年に発生した立川警察署の警察官による女性射殺事件により矢代隆義氏が戒告処分を受け、引責辞任した。


警視総監表彰

道府県警本部長による「本部長表彰」と同様に、多大な功労を残した警視庁職員及び東京都民に対しては警視総監から表彰が行われる。大きく分けて職員や部署に対する警察功績章・賞詞・賞状・賞誉、民間人に対する感謝状がある。
これらは「警視庁警察表彰取扱規程」で定められている。厳密には表彰と賞は区別されるが、一般的にはこれらを総称して「警視総監賞」と呼ばれることが多い。
  • 警察功績章:職員として特に顕著な功労があると認められる者に対して退職時に行う表彰。警察勲功章警察功労章に次ぐ第3位の警察表彰。受章者本人に限り終身着用することができ、本人が死亡した場合は遺族に交付される。ただし、表彰者が禁錮以上の刑や懲戒免職になった場合は返納が義務付けられ、警察職員としてふさわしくない非行が見られた場合にもやはり着用停止か返納が義務付けられる。
  • 賞詞:職員として多大の功労があると認められる者に対して行う表彰。
  • 賞状:警察職務遂行上、顕著な業績があると認められる部署に対して行う表彰。
  • 賞誉:職員として功労がありもしくは成績が優秀であると認められる者に対し、または業績が優秀であると認められる部署に対して行う表彰。
  • 感謝状:警察上の功労があると認められる部外者またはその団体に対して行う表彰。
いずれも表彰者が表彰前に死亡・退職した場合は生前ないし退職の日に遡って表彰され、表彰者が表彰前に刑事事件での起訴や懲戒処分など、表彰が不適当と認められる事態が生じた場合は表彰を行わないことができる。


警察庁長官との比較

警視庁と警察庁を混同する人が多いのと同様に、警視総監と警察庁長官を混同する人も多いと思われるが、上記の通り一言でいえば警視総監は「東京都警察本部たる警視庁の本部長」、警察庁長官は「日本の警察を統括する警察庁の長官」であり、警視庁と警察庁の違いが分かればそれほど難しい話ではない。

組織図上、警視総監は長官よりも下位に位置するのは前にも述べたところで、道府県警本部長と同様に「警察庁の所掌事務」について長官の指揮監督を受ける。一例として、内閣総理大臣が国家公安委員会の勧告に基づき、一部の都道府県か全国に対して警察法71条による「緊急事態」の布告を発した場合、首相が一時的に警察を統制し、その指示のもとに長官は布告された都道府県を管轄する警視総監や本部長に対して指揮命令を出すことが可能になり、布告区域以外の都道府県警察に対しても布告区域やその他必要な区域に警察官を派遣することを命ずることもできる。
ただし、あくまで「警察庁の所掌事務」に関することに限られる。警察庁はあくまで日本の警察を統括する行政機関に過ぎず、都道府県警察のような捜査機関ではないため、いくら長官でも建前上は個別の事件捜査に関与することはない。

一方で、「キャリア警察官の最終目標」という点では、全警察官の頂点にして事務次官に匹敵する長官と、最高の階級にして首都警察たる警視庁を統括する警視総監はいくら組織図上長官の方が上位とはいえ、出世コースのゴールという点では同格の立場になっている。そのため、警視総監から長官に昇任することも、長官から警視総監に異動(実質的には降格だが)することもない。よって、警視総監と長官の両方を歴任する人事は原則として存在しない*6
上記のように警視総監は前職が次長・官房長・局長級と比較的幅広いのに対し、長官は現状必ず次長から昇格するため、官房長や局長が次長を飛び越えて一気に長官に就任した例はない。

キャリアパスを見てみると警備局長は1900年代まで長らく長官に栄達した人の方が多かったが、上記のように2000年代に入ると警視総監候補としての人事が多くなっている。生活安全局長も大半が「あがりポスト」としての位置付けが強いが、それでも長官よりは警視総監に就任した人が多い。
一方で刑事局長は伝統的に長官への登竜門として位置付けられている。交通局長も「あがりポスト」の側面はあるが全体的には長官コースの傾向にあるなど、ある程度役職の性質に応じた人事傾向が見られる。

ちなみに、あくまで「警察庁」の「長官」という普遍的な命名法則や行政機関という環境、警察制度の企画立案といった業務から、よくも悪くも事務的・官僚的・政治的な側面が強い長官に対し、「警視総監」という単なる「東京都警察本部長」に留まらない特別な名称と、約4万人以上(警察庁職員の数は約8000人程度)という日本最大・世界有数の職員を統括し、日本の首都東京の治安と秩序を守る大規模な実働部隊を指揮できる警視総監の方が魅力を感じる人は少なくないとも言われる。
テレビ朝日のテレビドラマ『桜の塔』ではこれが顕著で、登場人物の多くが「警察官の頂点」である警視総監の椅子を目指して邁進する一方、序列上の最高位である長官にはほとんど言及されない。

なお、内閣危機管理監は警視総監OBや警備局長から任命されるケースが多く、長官OBが就任した例は見られない。これは上記のように国防を除いた危機管理という任務が治安維持に長けた警視総監や警備局長と親和性が高いためである。
同様に宮内庁次長→長官も皇室行事には警衛や儀礼が常に伴うため、警察庁からは警備実務を統括してきた警視総監OBが多く登用されている。
他方で官僚機構のトップとして位置付けられる内閣官房副長官の事務担当は警察庁からは長官OBが多く、警視総監OBが就任した例は見られない。これは各省間の調整が主な任務であることから官僚のトップとして行政面に優れた長官などの事務次官級に適した役職であるからと言える。
一方、内務省時代からの指定席である国家情報局のトップである国家情報局長は、前身の内閣情報調査室長時代には政令を根拠とする一般職国家公務員であり、過去には室長を経験後に警察庁へ戻って警視総監まで栄達するなど警察庁キャリアの通過点として位置付けられた。
しかし、1998年に法律を根拠とする特別職国家公務員に昇格し、2001年に内閣情報官に名称が変わってからは事務次官級の地位に引き上げられており、警視総監以上の立場になっている。逆に警視総監を経験後に就任したケースは室長時代を含めて存在しない。
インテリジェンスを扱う職務柄もあって主に警察大学校長など現役の局長級が任命されるケースが多く、OBが登用されることの多い内閣危機管理監・宮内庁・官房副長官とはまた別系統の人事になっている。
なお、内調は2026年7月31日より国家情報局に昇格しており、合わせて内閣情報官も大臣政務官級の局長に立場が引き上げられている。

刑事ドラマなどの創作においては、警視総監は制服・長官はスーツで登場する場合が多い。逆に私服姿の警視総監や制服を着用した長官はあまり見られない傾向にあり、やはり「警視総監=警察官のトップ」という印象の一因になっているとも取れる。


消防総監との比較

東京消防庁のトップにして消防士の最高階級である「消防総監」と似ているが、警視総監は「地方警務官たる国家公務員」であるのに対して、消防総監は「東京都の地方公務員」である点で異なる。
これは警察が国家や都道府県主体で行われるのに対し、消防は各自治体主導で行われるからである。
両者とも東京都の行政機関のトップである点で共通しているが、消防総監はあくまで都の内部組織である東京消防庁の長に過ぎず、俸給も都の主要局長と同等クラスで、都知事の権限で任免や処分ができる。一方、警視総監は国家公務員であり、俸給も上記の通り各省審議官などと同等かつ都知事の権限での任免や処分は不可能であるなど、実際には似て非なるものになっており、国家公務員と地方公務員の立場関係を考慮しても、一般的には警視総監の方が格上とされている。
また、階級章が両肩への肩章になっている警視総監とは違い、消防総監は他の消防士と同様に右胸に着用する。

ただし、これはあくまで現行法の話であって、旧警察法の時代においては前述の通り、いくら警視総監であっても当時は都知事が所管する「特別区公安委員会」が任命する都の公安職公務員に過ぎなかったため、現在の東京消防庁や消防総監の構成に酷似していた。


副総監

警視庁には警視総監に次ぐNo.2の役職として「副総監」の職が設置されている。正式名は「警視庁副総監」で、階級は警視監。定員は1人。
警視総監を助けて庁務を整理するが、警視総監に事故のある時または欠けた時には副総監が臨時で代行する。また、都公安委員長から要求があった時は都公安委員会の会議に出席しなければならない。
俸給は警察庁生活安全局長・サイバー警察局長・警察大学校長などと同等の「指定職4号俸」であり、局長クラスの待遇になっている。
前職としては警務部長・公安部長からの昇格および大規模府県警本部長が比較的多く挙げられており、その後は本庁局長や大阪府警本部長に転ずることが多い。逆に局長や大阪府警本部長から副総監に異動した例は極めて少数で、逆に大阪府警本部長は局長と相互に異動する例や官房長・次長として栄転するケースが存在するなど、人事体系上は局長や大阪府警本部長よりもやや下回るという見方が強い。
副総監経験者が警視総監に就任する例は少なくないが、上記のように直接昇格した例は2人しか存在しない。よって長官に対する次長とは違い、必ずしも創作によくあるような「次期警視総監の筆頭」というわけではなく、あくまで警視監の一役職に過ぎない側面が強い。
サイバーセキュリティ対策本部長や犯罪抑止対策本部長は副総監が事務取扱という形で兼任しており、状況によっては警務部長も兼務することも比較的多い。

また、大阪府警と皇宮警察には副総監と同様の「副本部長」職が設置されており、それ以外の道府県では人事・給与・福利厚生・教養などを担う警務部長が部長職の筆頭になっており、本部長に次ぐNo.2と位置付けられる。
テレビドラマでは山梨県警和歌山県警・神奈川県警など、大阪府以外の道府県でも副本部長が置かれている作品もあるが、これは視聴者への分かりやすさという側面も大きい。

創作において

刑事ドラマでは権力や組織に従順し、警察の威信を守るためなら不祥事の隠蔽もいとわない典型的な官僚気質の人物が多く、真実を明らかにしようとする主人公たちとしばしば対立するのがお約束。階級は言及されないことも多いが、警視長以下の人物はほぼ確認されない。「警視副総監」という名称で登場する作品もある。
また、前述したように実際には副総監が警視総監に直接昇格する例は少ないが、創作においては『相棒』の坂之上慶親などのように「次期警視総監と目される副総監」がしばしば登場したり、『踊る大捜査線』では次長と次期長官争いを繰り広げたりするなど、文字通り「警視庁No.2」という側面が強調されて現実以上の地位になっていると思われることもままある。

なお、『踊る大捜査線』における上記の「副総監と次長による次期長官争い」は実際のところはまずあり得ない完全なフィクション。確かに両者は庁のNo.2で階級も警視監だが、上記の通り副総監の俸給が指定職4号俸なのに対して次長は6号俸であり、この時点でも2ランクの差がある。実務上は副総監から次長に就任した例すら存在せず、大阪府警本部長や局長などを経てステップアップする必要がある。同じNo.2と言っても実際には全国を統括する警察庁とあくまで東京都警察に過ぎない警視庁とではそもそも土俵が異なる。
また、次長は警視監の筆頭職だが、副総監は上記のように局長や大阪府警本部長よりもやや下位に位置付けられるため、警視総監ならまだしも次期長官としてお呼びがかかることは通常の人事ではまず起こり得ない。
それ以前に警察庁長官は一貫して現状全員が次長から昇格しているため、そもそも「次期長官争い」が繰り広げられる余地すら存在しない。
その点、警視総監は次長から副総監まで比較的幅広く就任の可能性が残されており、対照的と言える。


階級として

一般的に警視総監は「警視庁のトップ」として認識されているが、前述の通り階級名も兼ねていることは意外と知られていないかもしれない。日本の警察には巡査・巡査長・巡査部長・警部補・警部・警視・警視正・警視長・警視監の階級があり*8、その上に位置する最高位が警視総監である。上記のように長官は確かに警視総監以上の地位にあるが正式な階級ではないため、あくまで「警察官の階級」としては警視総監が最高位である。
法律上は階級であることから、理論上は警視長や警視監が殉職すれば警視総監に特進し得るが*9、実務上はあくまでも警視庁の本部長という役職としての側面が強く、現在に至るまで実例は存在しない。

数多いる警視監の中から優秀な1人が国家公安委員会からの任命により、階級が警視総監に昇任すると同時に、警視庁の本部長たる警視総監の職に当然に就任する。
そのため、職名と階級が一致する唯一の警察官であり、実際に辞令では「警視総監に任命する」という任命辞令のみ書かれている。つまり警視総監の階級で他の役職に就くことも、警視監以下の階級で警視総監の職に就任することもなく、常に一体化した運用が行われている。
すなわち、階級としての警視総監は警視庁の本部長に就任した結果として付与されるものとして考えられている。


創作において

刑事ドラマに限らず、創作では現職・経験者問わず警視総監(およびそれに相当する役職)が登場する作品が非常に多く、ゲストキャラや名前すら明かされないモブ同然のキャラから、物語の本筋に大きく関わるキャラまで幅広い。
副総監と同様に主人公視点では比較的悪役の印象が強いが、中には真っ当な人格者もいるため、個性は千差万別である。
また、『桜の塔』では刑事部長・警備部長・警務部長の3人を中心とした警視庁のキャリア組が警視総監の椅子を賭けて熾烈な権力争いを繰り広げるという、今までの刑事ドラマにはない珍しいストーリーが展開された。

また、警視総監(およびそれに相当する役職)を親族に持つ人物が登場することもある。主に子や孫が多い。
全員ではないが、父や祖父譲りの優秀な能力を持つ人やその権力を笠に着て傍若無人な言動をする人も多く、刑事ものでは彼らの犯罪や不祥事を組織ぐるみで隠ぺいしようとする光景も多々見られる。

前述の通り、警視総監はあくまで警視庁の本部長に過ぎず、警察官のトップは警察庁長官だが、響きのよさや登場のしやすさからか、出番はこちらの方が多い傾向にある。
あまりに多用されたせいか、警視総監が警察官の頂点であると勘違いしている人も多いかもしれない(上記の通り階級という点では間違っていない)。



追記・修正は警視総姦、いや警視総監に就任した方がお願いします。

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最終更新:2025年01月09日 16:13

*1 基本的に道府および政令指定都市を有する大規模県では警視監、それ以外の中小県では警視長が務める。

*2 なお、関東管区警察局長の階級は警視監であることから組織図上の兼ね合いもある。警察通信に関する業務は警察庁の地方機関である「都道警察情報通信部」が行っているが、警視庁に関しては1954年7月1日の新警察法施行から1958年3月までの間は関東管区警察局の管轄に属していた。

*3 1874年8月4日~10月15日の間は「警視長」。当然ながら現行の同名の階級とは名前以外関係ない。

*4 ただし、特別区公安委員会が警視総監をはじめとする「特別区の存する区域における自治体警察の警察長」を任命する際は内閣総理大臣に対して意見を聴取する必要があった。

*5 採用区分を問わず、都道府県警察に所属する警視正以上の階級にある警察官は「地方警務官」と呼ばれる一般職国家公務員である。ノンキャリアから叩き上げで昇任した場合は「特定地方警務官」ともいい、国家公務員法第106条(一般職国家公務員などが他の職員を営利企業に再就職させるあっせん行為の禁止)が適用されないなどの相違点がある。

*6 唯一の例外は斎藤昇氏で、彼は第60代警視総監を務めた後、警察庁の前身である国家地方警察本部長官を経て、新警察法施行によって発足した初代警察庁長官に就任した。あくまで現行法施行時の特殊な例外ということに留意すべきである。

*7 スピンオフ映画『相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿』の原作に登場し、ドラマでは未登場。

*8 ただし、巡査長は警察法に定められている正式な階級ではなく、一種の名誉職である。階級章や俸給の面では巡査と異なる扱いになるが、法律上は巡査と同じく「司法巡査」(巡査部長以上は「司法警察職員」)であり、逮捕された犯人の受け取りや証拠品売却・還付、告訴・告発・自首の受理や調書の作成などに制限がある。捜査上必要がある場合、巡査および巡査長を司法警察員に指定することも可能。

*9 管理職で殉職した警察官はあさま山荘事件の警視庁第二機動隊長や東日本大震災の岩手県警大船渡署高田幹部交番所長(いずれも警視→警視長)など少数で、ましてや警視正以上の幹部にもなれば現場や最前線に出向くこと自体が非常にレアケースではある。

*10 「外務省公邸人質籠城事件」が発生した1987年の警視総監。

*11 岩田と同様、スピンオフ映画『相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿』の原作においての登場人物である。

*12 本人は未登場。背景にある警視総監賞に書かれたものであるため、一時停止してアップにしなければ確認するのは容易ではない。

*13 本人は未登場。こちらも組織犯罪対策部組織犯罪対策第5課の部屋にあった警視総監賞に書かれたものであるため、一時停止してアップにしなければ確認するのは容易ではない。

*14 後者2人は劇中で描写された警視総監賞より。本人は未登場。

*15 紅子のみ、シリーズの原点である『悪いオンナ「ルーズソックス刑事」』に登場。

*16 作中における「警偉総監」の娘。