基本
真円出し(真円加工)
タイヤ改造における基本中の基本。
後述のどんな改造をするにしろ、ここが出来ていないと台無しとなる。
ミニ四駆のタイヤは成型の関係上、中央にパーティングラインが走っているものがほとんどだが、このパーティングラインにバリが出ていたり、パーティングラインを境に型ずれがあったりして綺麗な円が出ていないものが多い。とくに古いタイヤや、固いハード素材のタイヤなどに出やすい傾向がある。
そのままでは振動が起こり速度も伸びないうえに安定性も損なわれるので、ワークマシンや電動工具、工作機械などで綺麗な円になるよう加工するのである。
タイヤの加工ではあるが、実は最も重要なのが
ホイールとシャフトの精度。どちらの精度が低くても回転するタイヤをきれいに削れない。
- シャフトとホイールの選別をする
- タイヤとの接地面にぶれがないようにホイールを加工する
- 削っている最中にタイヤが外れたりしないように固定する(接着剤や両面テープなど)
は最低限必要となる。
うまく出来ているかのチェック方法の例としては
- まずは目視。回転しているタイヤがブレて見えないことは大前提。特に手で転がしてゆっくり回っている時はブレを確認しやすい。背景が白いところ、明るく光っているところを背にすると特に見やすい。
- 回転しているタイヤを指で触れて確認。ブレていたら振動を感じるが、綺麗にできているとスムーズに指の上を滑る感覚が実感できる。
- 少々特殊な方法としては、タイヤにスタンプ用のインクを付け、紙の上でマシンを転がすこと。タイヤが通った跡がはっきり見える。(もちろん確認した後はタイヤを拭くこと)
問題なければテスト走行して速さや飛び姿勢を確認するといい。
ハーフタイヤ
「ハーフタイヤ」とはタイヤの全幅を半分程度の細さにして、横グリップを抑えたり軽くしたりする方法。
横グリップを抑えるとコーナーでの抵抗が減って速くしやすいが、接地面積が狭くなるため安定性は犠牲になる。
コースレイアウトやマシンセッティングによって、ハーフがいいのか通常のタイヤ(通称面タイヤ)がいいのかを見極めて使うことになる。
レギュレーション上の「タイヤの全幅は8~26mm」に引っかからないように、接地しない少し小さい径のダミーとなるタイヤを一緒に装着するのが基本。
もしくは切り落とさず、面タイヤの半分を更に薄くするだけでいい「段付きハーフ」という方法を用いるのも手。
一般的なサイズのタイヤを作るなら問題ないが、極限まで薄くしたタイヤの場合ダミーや段付きを用意できないので、そこだけは注意。(大径タイヤを24ミリ付近まで削るなど)
立体向け
薄タイヤ(ペラタイヤ)
タイヤは分厚く柔らかいほど衝撃を緩和してくれるが、反面その反発力も大きく、着地などで跳ねやすくなる傾向にある。
そのためアップダウンの多い
コースなどでは固いタイヤが好まれるが、そういうタイヤは大抵重めである場合が多い。
ホイールにはめたタイヤをギリギリまで薄く削って、反発力の低下と軽量化を狙ったのが薄タイヤである。
上記の真円加工でやることと基本は一緒だが、分厚いタイヤを薄くするのは想像以上に根気がいる。
力加減を間違えてタイヤに熱を与えすぎて変な形になる、最悪バーストする、欲しいサイズより小さくしてしまった、等は加工初心者によくある失敗例。
立体レース向けのタイヤは概ね24ミリ以内にするように作る場合がほとんどだが、ローハイトタイヤとホイールを使って加工すれば丁度いいタイヤを作りやすい。
薄く仕上げたい場合この限りではなく、概ね24ミリ以上なら大径タイヤを、26ミリ以上なら大径ローハイトタイヤを使えばこれらのサイズで極限まで薄く出来る。
当然ホイールのリブがタイヤ経より大きくなってしまうので、タイヤより小さくなるように削る必要がある。
小径タイヤ(約24ミリ)を薄くしようと思ってもレギュの関係上(タイヤ経22ミリ以上)大して薄く出来ない。ペラタイヤ作りには小径ローハイト(約26ミリ)以上の物を使うといい。
現代ミニ四駆において基本的に推奨される改造だが、跳ねが少なくなる分、着地時のショックはホイールやシャフト、
シャーシにモロに伝わることだけは注意。カーボンホイールや強化シャフトなどの丈夫な素材の物を使う、柔軟性のあるシャーシやフレキ等の
サスペンション改造で衝撃を和らげるなどで対処出来るといい。
基本的に立体向けの改造であり、フラット向けに大径ホイールを作るには向かない。
ホイールのサイズに左右される為、なるべく大径にしようと思ってもせいぜい26~27mmくらいにしか出来ない。
大径でゴム部分を薄くしようと思ったら、後述のインナースポンジでタイヤを作成することになる。
簡易薄タイヤ
大径ホイールに中空タイヤを延ばしてはめるだけである。
削らなくていい上、それほど延ばさないのでタイヤへの負荷も少ない。
大径ローハイトホイールの場合、リブの直径が大きすぎるためそこだけ切り落とす必要がある。
素材となる中空タイヤのグリップが強めでコーナーに弱くなる、それを解決するためにハーフタイヤにしようにも、そもそも薄すぎてダミータイヤを用意するのがほぼ不可能なのが欠点。
縮みタイヤ
現在のミニ四駆のタイヤは熱可塑性エラストマー樹脂(TPE)というもので、ゴムのようでいて実はプラスチックの一種である。(ソフトタイヤを除く)
これに鉱物油などが混ぜられてタイヤが作られているわけだが、油が抜けることにより小さく、そして硬くなる。
グリップ力を落としたり(縮みスーパーハードはローフリクションよりグリップを抑えることができる)、対応していないサイズのホイールに合わせるために縮めるなどといった目的で行われる。(大径バレルタイヤをローハイトホイールに装着するなど)
やり方は縮めたいタイヤをホームセンターで売っているプラを痛めるパーツクリーナーの液に漬けるだけ。
このとき密閉できるある程度の大きさがあるビンが必要、クリーナーやジッポは揮発性が高いので密閉できないと蒸発してしまう。
5~8時間くらい(使用する物によっては30分でいけるものも)つけているとタイヤが膨張する。
その後ビンから出して7時間くらい放置するとタイヤが縮んでくる(縮みが足りないと思ったら同じ工程を繰り返す)。
その後多少削って直径をそろえれば完成。
低反発スポンジタイヤ利用
スイカタイヤ
中空ゴム小径タイヤに低反発スポンジタイヤをインナースポンジとして入れた物。名前は黒と緑のカラーリングと丸っこい見た目から付けられたと思われる。
どうしても柔らかくなりすぎる中空の欠点と、スポンジタイヤの特徴がそのまま当てはまる低反発の欠点をフォローしあい、速度を落としにくく、かつ跳ねにくいタイヤになる。
制作自体は簡単で、中空タイヤのホイールにある3つのリブを切り取り、そこに低反発タイヤを入れて中空タイヤを被せるだけ。更にホイールの内側にある穴を広げておくとより動作が安定するとの情報もある。
簡単な割に効果があるのは利点だが、タイヤとホイールの種類を選べずグリップ力や幅を選べない、ホイールの規格が古いので穴が緩い等の欠点がある。
ハイブリッドタイヤ
ハイブリッドタイヤという言葉自体は他の改造方法でも使われるが、ここでは低反発タイヤ利用方法の一つとして説明する。
スイカタイヤより一歩進んだ低反発の利用方法。性能や自由度が上がる代わりに加工技術を求められる。
やり方自体はペラタイヤの作成と何ら変わらないので、ペラタイヤを作れるなら問題ない。
主流のホイールやタイヤをそのまま使いながらも低反発を間に仕込むことで跳ねを抑制する。
径の大きさ以外にもスポンジの厚みによって性能差が出るため、そこも考えて作る必要がある。
例えば24ミリのハイブリッドタイヤを作るとなった場合だけでも「小径ホイール+そこそこ厚みのある低反発+削った大径タイヤ」とするか、「ローハイトホイール+薄めにした低反発+削った大径タイヤ」とするかといった選択を取れる。
これによって転がり抵抗を重視するのか衝撃吸収を重視するのかを選ぶ事ができる。
フラット向け
ラウンド加工
タイヤのグリップ力調整のために、断面をΔや
バレルタイヤ状に加工する。
上記のハーフ加工や下記の超大径工作と併用される場合が多い。
超大径
最高速を伸ばすため、公式規定の制限いっぱいまで直径を大きくしたタイヤ。
基本的にはゴムタイヤを二重に被せる方法で作られる。
タイヤを2つ使う分、重くなるので、大抵ハーフタイヤにしてラウンド加工される場合が多い。
タイヤを無理に延ばさなければならないので、熱湯で温めてから行うことが多い。やけどに注意。
インナータイヤとアウタータイヤはそのままではきっちり固定されず、走行中の振動・衝撃や時係変化などでずれる事があるため、接着剤で固定する。
接着剤には
瞬着を使う事が多いが、瞬着にはかなり強力な溶剤が含まれていて、タイヤを無理やり伸ばしている超大径では材質によっては溶剤の作用でちぎれてしまう事がある。その場合、瞬着ではなくゴム系接着剤を使うとある程度回避できる(ただしゴム系にも溶剤は含まれているので、100%ではない)
また、タイヤを延ばしてはめるため厚みが不均一になりがちで、真円度が低くなりやすいため真円加工は必須と言ってもいい。(特にインナースポンジの場合)インナー・アウターとも加工しなければならない事も多いので、それなりの経験が必要な改造である。
インナースポンジ
超大径タイヤの内側に使う素材をスポンジタイヤにしたもの。
スポンジタイヤはそのままではやわらかすぎるので、瞬間接着剤で硬化させる必要がある。
超大径の欠点である重量の増加を抑えられるが、大量の瞬間接着剤が必要な上作るのにコツが必要。上手く作らないとインナーゴムより重くなる事もある何かと難しいタイヤ。
ダブルインナースポンジ
インナースポンジの発展系。その名の通りインナーのスポンジを二重にする。
ゴム部分が薄くなるのでかなり軽量化できるが、スポンジ部分が上記のものよりも作りにくい上、被せるゴムタイヤも必要以上に伸ばされるためにバーストしやすい。やはり接着の際には注意が必要。
大径ローハイトホイールに小径ローハイトタイヤ二重被せ
直径がほぼ規定ギリギリの34.5mmになるため手軽に超大径を作れるが、ホイールの直径が大きいためバーストする危険性が高い。
特にアウターは必要以上に延ばされるため、ちぎれる事が多い。熱湯での加熱は必須と言える。
手軽と言っても無理に引き延ばしているため、やはり真円加工は必要である。
タイヤを裏返しにして元に戻しながらはめると作りやすい。
加工に使う道具
リューター
加工したいタイヤを回転させる根源。これがなければ始まらない。
あまりに高回転だとタイヤに熱が入りすぎて使いにくいので、高くても8000回転くらいのものを選ぶのが吉。
ミニ四駆のシャーシを使ったいわゆる「ワークマシン」を用いるのもいいが、パワー重視の
モーターやギヤ比にしてもたかが知れている。最後の仕上げを丁寧に行いたい時にはいいが、基本的にはちゃんとパワーのあるリューターを使ったほうが楽。
デジタルノギス
タイヤのサイズを計測するのに最も信頼できる計測器。(少なくとも一般入手出来る範囲では)
これを利用して径や幅を丁寧に計測しつつタイヤを削っていくことになる。
0.01mm単位の細かく測れるものを用意しておくといい。
ナイフ類
デザインナイフや彫刻刀などが該当。ハーフタイヤを作るために回転しているタイヤに刃を入れる、技術に自信があれば横からナイフを入れてタイヤ削りの工程を短縮したりもできる。
ヤスリ
タイヤを削る基本の道具。100以下の荒い番手から600番くらいの仕上げで使える番手まで揃えておくといい。
どういう形状のヤスリを使うかは好みもあると思うが、困ったら板状の重くて大きめのヤスリ(包丁用くらいの)を使うとタイヤの回転に引っ張られなくて安定する。
接着剤、両面テープ
タイヤとホイールを接着して外れてしまわないようにする。
両面テープはお手軽だがテープ分の厚みがどうしても出てしまう。
接着剤は扱いが少々面倒だが、厚みもなくしっかり接着できる。
総合的に優秀なのは「
セメダインスーパーXハイパーワイド」あたりだろうか。
ホイールでよく使われるポリプロピレンにも付き、無溶剤なのでタイヤを溶かさない、衝撃にも強い、すぐ固まるわけではないので位置合わせもしやすい等が理由。
塗る時はホイールの上にごくわずかに出して薄く塗るだけでいい。
最終更新:2025年04月09日 12:48