I.K.E.M.E.N

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I.K.E.M.E.N - (2023/07/09 (日) 22:24:13) の編集履歴(バックアップ)



概要

I.K.E.M.E.Nとは、SUEHIRO氏が制作したネット対戦をする事ができるMUGENと互換性を持つ格闘ゲームエンジンである。
所謂ハック版などではなく製作者が一から作成したオープンソースのフリーソフト。決して男前の方ではない。
I.K.E.M.E.Nの名前の由来は「I(いつまでも)K(完成しない)E(永遠に)M(未完成)EN(エンジン)」である(ネタではなく本当にこの略称)。

まだまだ開発中であるためMUGENとは異なる点が多く、MUGENとは別の物と考えてもいいと思われる。
本体機能としてはWinMUGENをベースに新MUGENの機能をいくつか取り入れた感じ。
ズームが搭載されていたり、新MUGEN専用キャラクターをある程度使用する事も可能。
特筆すべき点としてリプレイ機能が搭載されており、ネット対戦をもう一度見返す事ができるという要素も。

ただし、前述の通りMUGENとは異なる点が多いので、MUGENでは正常に動作するキャラクターがI.K.E.M.E.Nでは正常に動作しないという事も多々ある。
代表的な例として、
  • 「コンボ火力・超必殺技の演出に差異がある」
  • 「チーム戦でゲージを持ち越さない」
などが挙げられる。
中には必殺技を出す事ができないという例もあるので、使いたいキャラがいる場合I.K.E.M.E.Nで操作して確認した方がいいと思われる。
これら以外にも異なる点は多数あり、確認されているものは 「I.K.E.M.E.N非公式wiki」 に記載されているので一度目を通すといいだろう。

もう一つの根本的な違いとして、IKEMENにはMITライセンスが使われているというのがある。*1
様々な有料ゲームが存在する2D格闘ツクールなど他のゲームエンジンと違い、MUGEN本体に適用されているライセンスは非営利目的の利用は自由だが、
営利目的の利用はelecbyteの許可なしには不可能と明確に定められている。
そのため、(他にも理由はあるだろうが)MUGENが有料ゲームのゲームエンジンとしてまともに採用された事例は皆無であり、それは許されていなかった。
しかし、MITライセンスは著作権表示さえ気を付ければ自由に商用利用も可能という点でMUGENとは大きく異なる。

おかげで2021年にはnorokopeketoで有名なコンプゲー『The Black Heart』が、
本体にIKEMEN GOを使用して様々な改良を加えた上でSteamにリリースするという快挙を成し遂げている。*2
単なるMUGENクローンに留まらないIKEMENの底力が窺い知れる事例である。

本体

MUGEN本体にいくつか種類があるように、IKEMENにもいくつかバリエーションが存在する。

  • IKEMEN
一番最初に公開されたIKEMEN。
2008年8月12日にリリースされ、現在は2017年5月版が最新となっている。
かつてはIKEMENといえばまずこれであり、各種サイトなどの解説もこの本体についてのものが多い。
下記の派生版の登場後間もなく更新が止まってしまったものの、
長らくネット対戦などで使われてきたため、現在でもこちらを愛用する人もいる。

「リプレイ個別化&ダウン時間固定化統合パッチ」という外部パッチが存在し、
パッチを当てるとリプレイの試合毎個別保存&再生、レバガチャによるダウン時間減少を無効化、
2P側の動きを記録&再生するダミーレコード機能追加、その他IKEMENの不具合修正などができる。

プレイヤー2人で協力してAIと対戦する「VSAI」というパッチも存在する。

  • IKEMEN Plus
K4thos氏が中心となって製作していたIKEMENの拡張版。
MUGEN用のアドオンが使えるようになり、アーケードやサバイバル、トレーニングといったIKEMENには無かったモードが追加されている他、
対CPUモード、100人組み手、CPU専用キャラ、ボスラッシュ、4人制タッグといったMUGENでも正式対応していない機能が実装されている。
特に4人制タッグは別々の人数で行える他、設定をいじる事で10人制タッグまで拡張する事ができる。当然キャラによっては常時処理落ちするので注意。
製作者が下記のIKEMEN GOの開発参加に移行したため、このIKEMEN Plusは開発終了。
これらの機能はIKEMEN GOへ統合される事になった。

  • IKEMEN GO
Go言語で作り直されたIKEMEN。製作者はIKEMENと同じSUEHIRO氏だが、その他複数の製作者も開発に参加している。
現在はIKEMEN Plusから引き継ぐ形でK4thos氏が中心となり、GitHub上でビルド済みのファイルが公開中。
こちらにも「ダウン時間固定化パッチ」が存在し、42氏が公開している。

MUGENとの互換性はさらに向上しており、MUGEN1.1の機能が一通り搭載されたのでWinから1.1のキャラまでちゃんと扱えるようになった。
IKEMENで確認されたバグもいくつか修正されており、動作も少し軽くなっている。
さらに上記のIKEMEN Plusと統合された事で様々なモードが楽しめるようになった他、
MUGENのアドオン、ライフバー、ストーリーボードの導入も可能に。もちろんネット対戦も可能。
様々な新機能や新ステコンが追加されるなど開発が進んでおり、機能的には既にMUGEN以上と言えるかもしれないエンジンになっている。
更にこの本体でしか動作しないGO専用のキャラやステージがまだ数は少ないものの存在する。将来が楽しみなIKEMENである。

なお、前述の4人制タッグについては、当初は8人まで組むことが可能だったが、最新版では初期設定の4人が上限。*3
おそらく新機能のタッグ戦(入れ替え方式)やライフバーの都合上、4人を超える人数には対応しきれないためだと思われる。
ファイルを弄って5人以上にしてもエラーが出るので注意(チーム戦はオプションで上限を8人まで上げられる)。

また、これをベースにしたコンプゲーも製作されており、『Super Crazy Jam』『TMNT x Justice League Turbo』等がある。


なお、IKEMENはオープンソースで公開されており改変自由なため、ここに載っていない様々なバリエーションも存在する可能性がある。
例えばコンプゲーの本体にIKEMENが使われる場合、ソースコードの一部が改変されている場合があったりする。


対戦環境について

対戦する場合は公式サーバーが設立されていないので、ポート開放やhamachiなどのネットワークソフトを使用して対戦する事になる。
直接接続となってしまうのでラグの発生はお互いの通信環境に大きく左右されてしまう。
ここで注意して頂きたいのがラグを一方的に相手のせいにしないという事。
一般的な商業ゲームでも言える事だが、ラグというものはオンラインゲームには付き物なので、誰のせいでもないという考えを持つ事が大事である。
対戦相手はAIではなく人という事をよく理解し、対戦中の発言やマナーには十分に注意しよう。

キャラクターランクに関しては、並~凶までのキャラクターが使われている事が多い。
そもそもAI戦が前提となるMUGENキャラのランク自体バランスがとても曖昧なので、人操作間でもバランス調整が難しい。
例えば喰らい判定が伸びるキャラと殆ど伸びないキャラとでは牽制の駆け引きが成立しないし、片方のみがバーストを使える場合は試合運びに大きな差が出る。
さらに上り中段や高性能な下段技、コマンドの入力し易さといったAI戦では目立たない武器も対人戦では大きく化ける。
実際に対戦を重ねて使用キャラの強さをおおよそ把握しつつ、対戦相手の様子を見ながらキャラクターを使い分けるのがベストであると思われる。
ちなみに神キャラなどはMUGEN専用のバグを使用している事が多く、ほぼ使用出来ない。対人戦で使う事はまず無いと思うが

肝心の対戦相手探しは、現在Twitterに 「I.K.E.M.E.N対戦募集くん」 という物が作られており、そちらを利用する事で多少は相手に困る事は無くなると思われる。
他にも前述したI.K.E.M.E.N非公式wikiに対戦募集場が設けられている他、 Discord にもIKEMEN部屋があるので、そちらを利用してみるのもいいだろう。
長らく認知度が低かったことや、MUGENのプレイヤー操作人口がさほど多くないという問題のため、一般的な商業ゲームと比べると人口はとても少ない。
ただ、全く人がいないという事は無いので、対戦したい場合はそれらを一度利用してみる事をお勧めする。

導入手順が少々特殊だが、下記のI.K.E.M.E.Nの導入動画に従って操作すれば問題無く準備出来るので、参考にどうぞ。


動画について

一般的には普段の対戦をリプレイ機能を使って録画した動画などが上げられており、大会なども開催されている。
他にも対人対戦を想定しているキャラクターの調整として使われていたり、
「チーム戦8vs8」といった専用外部ツールを使用した動画などもあったりと、幅広く投稿されている。
また、ニコニコでは専用のコミュニティも存在し、生放送も頻繁に行われているので、気軽に試合を観戦する事ができる。
動画投稿数はMUGENと比べると少ないが、オフ会を除けば唯一の対人戦の動画という点で、AI戦に無い魅力を持った1ジャンルを築いている。
対戦動画


展望

IKEMENとMUGENの最大の違い、それは商用ライセンスやネット対戦の有無ではなく実は将来性にある。
MUGENはプロプライエタリソフトウェアであるため、
ソースコードを持たない外部の人間が本体の機能を改変する事は限定的にしかできず、技術的にも非常に難しい。
一方IKEMENはオープンソースで誰でもソースコードを入手出来るため、
プログラミング知識とソフトをビルドできる環境さえあれば誰でも本体の機能を自由に弄る事が可能である。

最初のIKEMENはSUEHIRO氏が独自に作成した言語で作られていたため手を出しにくかったが、
IKEMEN GOでは使われているGo言語の学習に有用な資料が豊富に存在するため、比較的手を出しやすい。
おかげでIKEMEN GOは元の製作者のSUEHIRO氏が更新をしていないにもかかわらず、
前述の通り、別の製作者によって更新対応が引き続き行われるというMUGENでは有り得なかった状態が成立。
ソフトに対する技術と情熱を持った人が世界に1人でもいれば、エンジンを進化させ続けていく事が十分可能になっている。

もちろんこの記事を読んでいるあなたが、IKEMEN GOに新たな機能を追加したり、バグや不満点を修正するのも不可能な事ではないのだ。


関連項目



*1
ただし、無印のIKEMENには再配布禁止のファイルが含まれるためGoバージョンのみ。

*2
IKEMENとしては勿論、(元々)MUGENを利用したゲームとして合法的に正式販売されるのは歴史的にもこれが初となる。

*3
実はソースコードのMaxSimulの値を変更した上で自力でビルドを行えば、古いバージョン同様の上限4人以上になった本体が入手可能だったりする。