ジョーズ


"What we are dealing with here is a perfect engine, er…an eating machine.
 It's really a miracle of evolution.
 All this machine does is swim and eat and make little sharks and that's all."

(我々の相手は言うなればそう、人を食う機械なんです。
 まさに進化の奇跡から生まれた機械兵。機能はと言えば泳いで、食べて、子を産む事。それだけだ)

ピーター・ベンチリー氏の小説及び、それを原作にした当時28歳だったスティーブン・スピルバーグ氏が監督を務めた、
1975年公開のアメリカ映画『ジョーズ』に登場するホホジロザメ。*1
正確には「ジョーズ(Jaws)」とは「顎」を意味する英語であり、つまり捕食者であるサメが獲物に襲い掛かろうと大顎を開く様子を表したものなのだが、
本作の大ヒットにより、半ばサメの代名詞となってしまっている部分がある。
名前の前に『床』を付けて検索するなよ!絶対だぞ!

美しい海水浴場を目玉とした観光業で生計を立てている東海岸の田舎町「アミティ」に突如として現れ、
次々と人を襲いアミティを恐怖のどん底に陥れ、新任の警察署長マーティン・ブロディと戦った。
体長25フィート(約8m)、重さ3tと現実のホホジロザメを大きく上回る体格*2を誇り、
鎖で繋がれた餌を桟橋ごと沖まで引っ張っていったり、体当たりで漁船オルカ号の底を突き破ったり、
自身を釣り上げようとしたオルカ号を逆に引っ張り回した挙句沈めるなど、凄まじいパワーと獰猛さを持つ。

サマーシーズンの収益確保だけを考えるボーン市長ら町の有力者達の楽観的判断により次々と犠牲者を出したが、
市長も自分と息子が浜辺にいる時にサメが現れた事でようやく状況を理解し、サメの討伐とビーチの閉鎖を決定。
マーティン、海洋学者フーパー、そして熟練のサメハンター・クイント*3ら三人がオルカ号で戦いを挑む事となる。
そしてクイントのスピアガンやマーティンの拳銃などを物ともしないサメの攻撃でオルカ号を沈没させられながらも、
フーパーの決死の作戦により、海中で猛毒ストリキニーネの注射を敢行。
しかしなおもサメは暴れ続け、最終的にクイントを食い殺されるという犠牲を出しながら、
サメの口内に酸素ボンベをねじ込み、マーティンの銃撃によってボンベごと頭部を爆発四散せしめ、ようやく仕留める事に成功した。

「巨大な捕食者の口に爆発物をねじ込んで銃撃で爆破する」というラストシーンは、
これまで襲われる側だった人間が一転攻勢するカタルシスを呼ぶため、多くの作品でオマージュされている。
例を挙げていくとキリが無いが、日本では『バイオハザード2』の巨大ワニが有名か。

+ しかし3年後、アミティの街には再び新たな巨大ホオジロサメが現れる事になる……
3年後を舞台にした『ジョーズ2』では、再びマーティンとサメとの激戦が繰り広げられる事になる。
『1』での経験から、皮肉にもクイント同様サメへの異様な警戒心と敵意を抱くようになったマーティンは、
再び現れたサメに対して過剰反応を示した事で、警察署を解雇されてしまう
(この時、やはり皮肉にもボーン市長だけが前作の経験を踏まえてマーティンを擁護していた)。
しかしそんな父との約束を無視した息子達が海に遊びに出てしまい、マーティンは単独でサメとの対決を決意。
襲ったボートを炎上させた事で焼け爛れた顔となったサメとの激戦を繰り広げた末、
送電用の海底ケーブルを使ってサメを感電死させ、息子達を守り抜く事に成功した。

この事件を経て成長した息子マイケルは前作から5年後の『ジョーズ3』で、海洋水族館「シー・ワールド」のエンジニアとして就職。
しかしオープン初日からサメに襲撃されて死亡事故が発生してしまい、マイケルはこの人喰いサメを捕獲する羽目に。
そのサメは無理に展示させられたためにすぐ死んでしまったが、マイケルの嫌な予感は当たった。
子供の死を感じ取った親の巨大人喰いサメが水族館に襲撃を仕掛けてきたのだ。
マイケルは水中トンネルに閉じ込められた来客を救助するべく決死の戦いの末、サメの口に手榴弾を投じて撃破に成功した。

そしてさらに4年後の『ジョーズ'87 復讐篇(ジョーズ4)』では、三度アミティの街がサメに襲われる事になる。
サメとの戦いによる心労から、マーティンは『3』で息子がサメに襲われたと聞いたショックで心臓発作を起こし亡くなってはいるものの、
次男ショーンは父の跡を継いで立派な警察官となっており、海洋博士を目指す長男マイケルには長女テアも生まれ、
遺されたマーティンの妻エレンの悲しみはまだ癒えぬものの、ブロディ一家は幸福なクリスマスを迎えるはずだった。
しかしまたしても現れたサメによってショーンが食い殺された事で状況は一変。
さらにマイケルの探査艇もサメに襲撃され、とうとうテアにまでサメは狙いを定め、まるで復讐するかのように執拗に一家を襲い始める。
孫娘まで襲われた事で激怒したエレンはサメへの復讐を決意し、追いかけてきたマイケルと協力しながらサメと対決を繰り広げる。
最終的には電磁パルス発生装置を口内に押し込んだ所に船で体当たりし、サメを爆発四散させる事に成功。
こうしてブロディ一家とサメとの因縁は、一家の勝利で幕を閉じたのだった。

……まあ残念ながら、お察しの通り、シリーズが続くにつれて迷走していくいつものハリウッドホラー映画のパターンではある。
『2』については前作俳優陣もロイ・シャイダーはじめ多く続投しており、改良を施されたブルースくん(後述)の出番も増えて、
「前作ではサメを見せなかったが、今作ではサメを見せる!」という方向性で大暴れ、終盤の展開はアトラクションにも流用されている等、
流石に『1』には劣る(比較対象が悪すぎるともいう)ものの続編として十分見応えのある内容の良作映画になっているのだが、
当時流行していたとはいえ「3だから3D映画にしようぜ!」という事で画面に向かって飛び出す演出を最優先して作られた『3』や、
肝心のサメのクオリティすら低下してしまった『4』に至っては……。
『3』のヒロインじゃない女と結婚してるマイケルとか、孫を守るおばあちゃんと恋するヒロインをフラフラするエレンとか、
毎回サメの口に爆発物ねじ込むオチじゃねーかとか

ちなみに『バック・トゥー・ザ・フューチャーPART2』の世界線では2015年にスピルバーグJr監督の「ジョーズ19」が公開されているらしい。

アニマルパニック映画は『ジョーズ』以前にも『世紀の怪物/タランチュラの襲撃』『鳥』『白鯨』など多くあったが、
海中から獲物を見つめるサメの視点、気付かれる事無く背びれだけが海上を進んでくる描写、
そして無慈悲かつ豪快に食い殺される被害者達の様子や、ジョン・ウィリアムズ氏による海中から忍び寄るサメの恐怖を表現した人食いザメのテーマなど、
サメの恐怖をこれでもかと言う程に煽りまくる非常に秀逸な数々の演出により視聴者に大きな印象を与え、
屈指のヒット作として映画史にその名を刻むと共に、空前のアニマルパニック映画ブームを引き起こした。
サメ映画に詳しいレビュー家の知的風ハット氏も、まずこの作品をサメ映画の最高傑作に挙げる程である。
つまりまあ、二匹目のドジョウならぬ二匹目のサメとなった後続便乗の乱造サメ映画達の評価は……うん…
ユニバーサルスタジオジャパンのアトラクションとしても馴染み深いだろう。
また、フジテレビのバラエティ番組『めちゃ×2イケてるッ!』における「アクション寝起き」では本作をパロったムービーパートも。
ジョーズのテーマ

撮影には作品用に作られた実物大のサメロボット「ブルース」が使われたのだが、
スタッフのみならず俳優勢にまでウンザリされる程の頻度で故障を繰り返し、スケジュールと予算を大幅に延ばされ、
終いには上記の通り背びれと背中の部分だけ外して水中を走らせて撮影せざるを得なくなる有様だった。
内一回は陣中見舞いにきたジョージ・ルーカスがふざけてイジってたら顎がバキッて壊れたのを黙って帰ったせいである
あまりに苦労させられた監督のスピルバーグ氏は撮影が終了してロケ地を去る際に、
ダグラス・マッカーサーの名言「I Shall return.」を捩って「I Shall not return!(二度と戻らん!)」と吐き捨てたほど。
そのせいで、劇中である意味物語の要であるジョーズの姿が見える場面は決して多くは無いのだが、
しかしこの「背びれだけ」の描写が「作中の登場人物が見つけられていない捕食者がすぐ近くにいる」という、
上記の通り見えざる敵への恐怖を強く印象付ける効果をもたらした。
そしてそれは人を襲うサメがCG製作となった時代においても予算削減の観点から変わる事が無く、
出ても背びれだけ、人間ドラマパートが大半という形で受け継がれてしまっている……
その後『2』では改良が施された事により背びれ以外もバンバン登場して派手に暴れる演出が可能になり、
『3』ではさらに口から取り込んだ水をエラから噴出する水中航行能力まで獲得するなどサメ映画さながらに進化を遂げたが、
『4』では何故かクオリティが低下して作り物丸出しのチープなものになってしまったという悲劇的な運命を辿った。

ともあれこのブルースの活躍によって『ジョーズ』は素晴らしいサメ映画として大成功を収めたのだが、
その一方、本作で描かれたサメの恐ろしさと空前の大ヒットは、結果的に「サメ=人喰いの恐ろしい怪物」というレッテルを生み出してしまい、
現実の世界における野生動物であるサメの駆除活動を引き起こし、保護活動に対する妨害や無理解などに繋がってしまった。
『ジョーズ』自体は1916年にアメリカ・ニュージャージーで実際に発生した事件がモデルになってるが、
ホホジロザメが人を襲うのは好物であるオットセイと間違えたためという説が有力であり、
この項目の読者諸兄におかれましても、くれぐれもフィクションと現実の混同はしないよう気を付けて頂きたい。

余談だが『魁!!男塾』では撮影が終わったサメロボットを男塾が購入し、毎年夏に塾生を鍛える「大海島巡り」に活用している。
島周辺のサメ達にも親しまれている様子である。


MUGENにおけるジョーズ

カーベィ氏の製作したキャラが公開中。
ファイル名は「Bruce(Jaws)」となっており、動きは「OPTPiX SpriteStudio」で作られている。
泳ぐように空中を自在に移動するが、自分はガード不可な仕様となっている。
また、ステージの端に移動する事で、相手の背後に回り込める。
近接戦メインの性能で、「とびかかり」「尻尾攻撃」などの技を使う。
超必殺技は1ゲージ消費の「必殺噛みつき」「必殺尻尾攻撃」の2つ。
AIもデフォルトで搭載されている他、7P以降はフィールドが海中になる。

                    
                    
     
また、同じくカーベィ氏によるガワ替えキャラとして、
  • メガシャーク(『メガ・シャークVSジャイアント・オクトパス』)
  • ディノシャーク(『ディノシャーク』)
  • フライングジョーズ(『フライング・ジョーズ(原題:『SWAMP SHARK』)』)
  • ダブルヘッドジョーズ(『ダブルヘッド・ジョーズ(原題:『2-HEADED SHARK ATTACK』)』)
  • メカシャーク(『メガ・シャークVSメカ・シャーク』)
  • トリプルヘッドジョーズ(『トリプルヘッド・ジョーズ(原題:3-HEADED SHARK ATTACK)』)
  • ファイブヘッドジョーズ(『ファイブヘッド・ジョーズ(原題:5-HEADED SHARK ATTACK)』)
  • トキシックシャーク(『Toxic Shark』)
  • サンタジョーズ(『Santa Jaws』)
  • パペットシャーク(『パペットシャーク』)
  • ブラックデーモン(『ブラック・デーモン 絶体絶命』)
  • マミーシャーク(『Mummy Shark』)
も公開されている。
一部のキャラは技が変更されているものもあるが、基本的な仕様は同じものとなっている。

また、サメではないが1977年に公開された『オルカ』に登場するオルカも同じくカーベィ氏によって製作されている。
こちらはMDソフト『エコー・ザ・ドルフィン』のスプライトを基に作られており、潮吹き攻撃やストライカーを呼ぶ技が搭載されている。

出場大会

  • 「[大会] [ジョーズ]」をタグに含むページは1つもありません。


*1
ホオジロザメとも言う。
漢字で書くと「頬白鮫」で、この発音違いは頬(ほっぺたの事)を「ほほ」と言うか「ほお」と言うかの違いでしか無い。
正式にはホホジロザメらしいがホオジロザメの名も広く使われている。
……と言うわけでか、このページでも表記が統一されていない

*2
ホオジロザメは間違いなく大型のサメだが、現実でははっきりと測定されたものでは4~5mが普通サイズ、6m級に達すれば十分特大サイズである
(これより大きい個体の情報は大げさに見積もられた場合や、近縁でさらに大型種のウバザメとの誤認が疑われている)。
つまり、『ジョーズ』の個体は現実にいたら確実にギネスブックに載せて差し支えない大物なのだ。
実際作中でも数mクラスの大型のイタチザメが一度発見、駆除された際に「これが問題のサメ」と楽観視して決め付ける場面があり、
無論これは市上層部の無理解さと危機感の無さを演出する意図で描かれたシーンだが、このサイズのサメを想定するよりは常識的な判断だったと言えよう。

ちなみに2作目に登場したブルーセットは妻、3作目に登場するのは娘のブルセッタとその息子であるベビーシャークのダニーは孫、
4作目のヴェンジェンスはブルセッタの弟であり息子と、全く無関係の巨大サメがポンポン現れたのではなく、巨大サメの一族であったようだ。
ブルーセットさんもデカかったって事は、巨大鮫の家系がもう一つ在るって事っすか!?

*3
第二次世界大戦中、米海軍の重巡洋艦インディアナポリスの乗組員であったという設定の人物。
インディアナポリスは日本軍潜水艦伊58によって沈没させられてしまったのだが、脱出した乗員はサメの泳ぐ海域に放置され、
サメの襲撃の他、低体温症や体力消耗によって、戦闘に関係の無い場面で大勢の犠牲者を出してしまった。
結果、生還したインディアナポリス艦長チャールズ・B・マクベイ3世氏は軍法会議で有罪となり、遺族からの非難を浴びて後年に自殺。
伊58艦長である橋本以行氏も、この一件に関してマクベイ氏に責任は無かったと彼の名誉回復を訴えていたが、叶わなかった。

しかし、本作にてクイントがインディアナポリスでの経験からサメに強い恨みを持ったハンターとして魅力的に描かれた事で、
1998年当時12歳だったハンター・スコット少年が『ジョーズ』を見てインディアナポリス沈没事件に興味を抱き、研究を開始すると状況は一変。
スコット少年は生存者150名にインタビューを行い、800にも及ぶ文書を精査し、
インディアナポリスが撃沈されたのは広島・長崎に落とされた原子爆弾を運搬した極秘任務の帰路だった事、
極秘故に艦船位置表示システムから外されて付近の艦船に沈没の情報が伝わらなかった事、
本来インディアナポリスの位置情報を管理すべき責任は軍の上層部にあり、
救助の遅れを隠蔽するために「魚雷の回避に落ち度があった」としてマクベイ氏に濡れ衣を着せた事を証明すると、
これを米国議会で訴え、2000年にビル・クリントン大統領の承認を得て、マクベイ氏の名誉回復を成功させたのである
(残念ながらその直前に橋本氏は亡くなっており、この吉報を知る事はできなかったが)。

そうした意味でも、この『ジョーズ』という映画は、歴史を動かした名作なのだ。


最終更新:2025年06月09日 19:18