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【ガーネット】「柘榴石の心(グラナート・クオーレ)」【クロウ】第3話 繭玉の心 - (2009/12/23 (水) 01:01:35) のソース
&sizex(5){第3話 繭玉の心} 突然だが、実は俺はかなりの甘党だ。 ケーキなら同じ種類でも三個は余裕。 いや、調子が良ければホールケーキ一個まるごと食べられる自信がある。 そんな俺が最近特にハマっているのは・・・ ネアポリス市街にある菓子店「セータ」のティラミスである。 この店、何でも南イタリア最高と呼ばれるパティシエが店長らしく、 その名声はヨーロッパ全土に広まりつつあるというから驚きだ。 そこまで有名な店ならば、当然その人気は絶大である。 店は毎日客でごった返しているし、人気の品物はあっと言う間に品切れになる。 それは俺が愛するティラミスも例外ではない。 ティラミスが手に入らなかったために、俺は何度枕を涙で濡らしたことか・・・ そういうわけで、俺は今その店に来ているのだ。 狙いはもちろん、ティラミスである。 嗚呼、あのカスタードとマスカルポーネチーズのハーモニー! そして底に眠る生地とエスプレッソの苦みとの調和ッ! 世の中にこれほど素晴らしい組み合わせがあっただろうかッ! 残り二つ! 買ったッ! 第三話完! &nowiki(){・・・ではなく、物語はここから始まる・・・} 「イザベラ・・・」 「・・・はい」 「これ、お前のだな?」 「・・・そうです・・・」 店長は、私が作ったケーキを手で掴み、口に運んだ。 私にとって、その時間は異様に長く感じられる。 だが、実際は冷酷な程に一瞬の時間であった。 店長は、私のケーキをそのままゴミ袋に放り投げたのだ。 ブン! ガサッ! 「全然、駄目。成長の色なし・・・ やる気あんのか!!」 バン!! 店長は突然厨房の台を叩く。 私は縮こまっているしかなかった。 「俺は忙しいんだ。お前の面倒ばかり見ているわけにはいかないんだ。 ・・・フゥー・・・今日はいい、もう帰れ」 店長からの冷たい一言。 私には痛い程辛い言葉だった。 私はイザベラ・ジャッロ。パティシエの見習いとして、この菓子店で修行している。 はじめ、この店で修行することが決まった時、私は有頂天であった。 何しろ南イタリア最高と言われるパティシエに弟子入りするのだから。 だが、現実はあまりにも厳しかった。 ここに来てから、店長は私の成長を認めてくれない。 きっと今までの彼の弟子達は、こんな程度の実力ではなかったのだろう。 でも・・・やっぱり辛い。 努力はしているつもりなのに・・・ 私は服を着替え、店の裏の道路に出た。 いつも人通りがない道だ。 私はただゆっくりと歩いた。 どこに行くわけでもなかった。端から見ればただウロウロしているだけである。 だが今の私には“それしかできなかった”。 歩くのをやめて、私は壁に手をついた。 涙が頬を垂れる。 どうすればいいんだ・・・ これ以上の努力は無駄なのか? 才能が努力に圧倒的に勝る場合だってある。 菓子作りという道がこれに当てはまるのならば、今までの私は間違っていたと言って良いだろう。 どうすれば・・・ 私は一人で悩んでいた。 &nowiki(){・・・ここは誰も通らない道路。} もうしばらくここでこうしているつもりだった。 だが・・・ 突然、誰かが私の肩に触れた。 普通ならば、驚いて振り向く所である。 しかし、私は振り向けなかった。 “突然肩を触られるよりも驚くべき事が、私の身に起きたからだ”。 “悲しみが消えた”。 嫌な事を忘れたというわけではない。 それまでの悲しみが、突然他愛もない事のように思えてきたのだ。 “何者かが肩に触れた瞬間から・・・” 私はゆっくりと振り向いた。 そこには・・・ 一人の少年と、“彼の守護神のような存在”が立っていた。 私の肩に触れたのは、守護神のような存在の方。 赤を基調とした身体と、胸に付いた心臓のような宝石が特徴的であった。 私はそれを見ても恐怖することはなかった。 なぜならば、“私にも同じような守護神を持っているから”・・・ 「あ、いや、急にごめん・・・」 少年はそう言った。 私は思ったことを口にした。 「あ・・・あなたも・・・“使えるんだ”・・・」 「・・・え?」 少年は驚いている様子である。 「もしかして、君もスタンドが使えるの?」 「そうよ、『スタンド』って名前なのね。初めて知った」 「へぇ~・・・ いや、本当に急にごめん、買い物の帰りに、君がここで泣いてたからさ・・・」 「いや、気にしないで。・・・あっ、その袋、私のお店のだ」 「え! 君、ここの店で働いてるの?」 「働いてるっていうか、弟子入りしてるのよ。大変だけどね」 「そうなんだ。いや~、ここのお店にはいっつもお世話になってるよ。 今日は自分で食べるやつと、あとお見舞い用にどうでもいいのを・・・」 「クスッ、お見舞いに行くのに、どうでもいいような物でいいの?」 「あぁ大丈夫、大して仲のいい知り合いでもないから」 「ウフフフッ!」 私は彼の言葉に笑った。 つい数分前の私だったら、絶対に笑うことなど出来なかったのに。 「私はイザベラ・ジャッロっていうの。あなたは?」 「俺? 俺はロッソ。ロッソ・アマランティーノだよ」 「ふ~ん。ねえ、あなたの能力・・・スタンド・・・だっけ? いつから使えるようになったの?」 私はロッソにこんな質問をした。 「あぁ、これはね、ごく最近なんだよ。 スタンド使いを見たのもつい最近で、いつの間にか俺も使えるようになってたんだ」 「そうなの? 私は生まれつき・・・ ちょっと気味が悪くて、あんまり使わないんだけどね」 「そうなんだ。俺なんかあんまり便利なもんで、手足としてこき使ってるよ」 「それじゃあ可哀想じゃない!」 私とロッソは笑った。 不思議だ・・・さっきまであんなに辛い気持ちだったのに、彼に出会った瞬間からそれが吹き飛んだ。 まるで、それが彼の“能力”であるかのように・・・ だが・・・私達の笑い声は、次の瞬間にかき消された。 バァーーーーーーーン!! バァーーーーーーーン!! 二発の銃声である。 すぐ近くだった。 「・・・え?」 私は信じられなかった。 目の前で笑っているロッソの顔がひきつった。 そしてそのまま・・・ 「う・・・ぐ・・・」 彼は、その場に倒れた。 ドサッ 「キャアァーーーーーーーーーーーッ!!」 私は思わず悲鳴を上げた。 何が起きたのか分からない。 私はすぐにしゃがみ込んでロッソの容態を見る。 まだ息をしていた。 腹の部分を横から二発、貫かれたらしい。 一体誰が・・・ 「奇遇ね、ロッソ君って言ったかな? こんなところで私と出会えるなんてね」 銃声がした方角に、一人の女性が佇んでいた。 &nowiki(){・・・片手にピストルを持っている。} 「あなたは・・・チレストロ・・・」 ロッソが苦しみながら言った。 「名前覚えててくれてありがと。でもね、もうひとつ覚えてて欲しかったことがあった・・・ “いつやられるか分からない”って・・・言ったでしょ・・・覚えてない・・・?」 私は恐怖した。 あのチレストロという女性から伝わってくる、並々ならぬ殺気に。 彼女の目は、明らかに普通の女性の目ではなかった。 今まで沢山の人間を殺してきた人の目だ・・・ 私がこれまでにそんな目を見たことがあった訳ではないが、 彼女からは直感的に“それ”が伝わってくる。 しかし、私はここで何もしないわけにはいかなかった。 “治さなければ”・・・ “私の力で”、今ここに倒れているロッソを救わなければ・・・ そのときの私は、何らかの責任感のようなものでいっぱいだった。 私は何も考えず、ロッソを抱きかかえた。 必死だったからか、不思議と重さは感じなかった。 「・・・あら? 何処行くの?」 背後からのチレストロの声に再び私の背筋は凍ったが、私は夢中で走り出していた。 道を曲がって、目に付いた廃屋に飛び込んだ。 建物の奥へ奥へと進む。 悪魔のようなあの女性に見つからないように・・・ 「イザベラ・・・」 ロッソが苦しそうな声で話しかけてきた。 「俺のことはいいんだ・・・俺は一人で戦える・・・ 君は逃げてくれ・・・」 「いや、あなたをここで見過ごしてはおけないの。 あなたは私を元気付けてくれたんですもの・・・あなたを“治す”義務があるッ!」 「治す・・・だって・・・?」 私は部屋の隅にロッソを寝かせる。 &nowiki(){・・・そしてすぐに私の「スタンド」を呼び出した。} 「『シルキー・スムース』!」 ズオォォ! “それ”は一見、巨大な蛾のようにも見える。 私がさっき「気味が悪い」と言った理由はそれだ。 だが、その能力はあまりにも「優しい」ものである。 こんな私には似つかわしくない程に・・・ シュルルルルルルル・・・ 「・・・こっ、これは・・・?」 「この子の作る『繭』の中にしばらく居れば、怪我が回復するのよ」 「でも・・・チレストロが来る・・・危険だ!」 「大丈夫、私が何とかするわ」 「そんな・・・うわっ!」 『シルキー・スムース』の吐いた糸はあっという間にロッソを包み込み、「繭」を作り上げた。 怪我が完全に回復するまで、内側から繭を破壊することはできない。 それまでは・・・ 「あなたも・・・スタンド使いだったのね。驚いちゃったわ。 その白いのの中にロッソ君がいるのね・・・」 それまではこの人から逃げきらなければならない・・・! 私は繭を抱え、すぐに走り出した。 「逃げても・・・無駄なのよ・・・?」 チレストロの声がする。 私は建物の二階へ逃げた。 正直私は、これから先どうすれば良いか全く考えていない。 だが、とにかく今の私はこの「繭」を守る気持ちでいっぱいだった。 二階に到着する。 そこには・・・ 「あんまり抵抗しちゃ駄目よ、ガールフレンドさん」 「嘘・・・」 チレストロがいた・・・ 「何で・・・? 私の方が早かったのに・・・ 階段は他には無かったのに!」 「ウフフ・・・何ででしょうね・・・」 チレストロが不気味に微笑む。 また、背筋が凍った。 こんなことが出来るなんて、彼女は間違いなくスタンド使いだ。 「私はね・・・飛び道具で人を殺したくないの。 殺る時は必ずスタンドを使いたい・・・そう思ってるの。でもね・・・」 チレストロがゆっくりと迫ってくる。 私は「繭」を抱えたまま後ずさりした。 「ロッソ君の場合は、ちょっと厄介でね・・・触れられただけで私はもう戦えなくなる恐れがあるのよ。 だからまずは撃って動きを止めてから・・・っていうことにしたの」 後ろに壁が迫る。 こうなったら・・・ 「『シルキー・スムース』ッ!」 シュルルルルルルルルルッ! 「!」 『シルキー・スムース』の吐く繭糸を、チレストロに巻き付けたのだ。 「これは・・・!」 ダッ! 私はすぐに走り出した。 さらに上の階へ・・・ 「くっ!」 バチン!! 後ろでチレストロが糸を引きちぎる音がした。 単に糸を巻き付けるだけでは、全く無駄であることは分かっていた。 しかし今の私の使命は、とにかく「逃げる」こと。 「繭」の中のロッソが回復するまで、チレストロの攻撃を防がなければならない。 三階に着いた。 だが・・・ 「何で・・・」 やはり、チレストロがいる。 「あなたからその『繭』を奪うのは簡単なのよ。 でもね、あなたからそれを渡してもらわないと・・・ あなたは私達の“敵”と認められてしまう・・・それはどういうことか分かる?」 私は『シルキー・スムース』を出したまま、ただチレストロを睨んでいた。 「“私は、あなたを殺さなければならないの”・・・ そこにいるロッソ君と同じようにね・・・」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・ 彼女の言葉を信用するならば・・・ ロッソはかつてチレストロの属する組織に反抗し、それ以来彼女たちに狙われていたということか・・・ つまり、チレストロにこれ以上抵抗すれば、私もずっと命の危険にさらされ続けるということ・・・ それどころか、今日ここで彼女に殺されるかもしれないのだ。 「そんなの嫌よね。だったら、私にロッソ君をよこしなさい」 でもロッソは・・・ 私の苦しみを、まるごと取り除いてくれた。 そんな彼を見放すわけにはいかないのだ。 私は逃げきってみせる! ロッソと共にッ! ダッ! 私は再び駆けだした。 だが・・・ 「・・・交渉成立・・・ね」 シュバッ! バシッ! 「あぁッ!」 チレストロは猛スピードで滑るように私に近づき、ローキックを食らわせたのだ。 足に凄まじい衝撃が走り、私はよろけた。 「この際、力づくでロッソ君を頂くわ。 &nowiki(){ ・・・彼を始末したら、あなたも死んでもらうけどね」} 「そうは・・・そうはさせないわッ! 『シルキー・スムース』ッ!」 「それはもう効かないの・・・なッ!?」 シュルルルルルルルル・・・ 『シルキー・スムース』の糸を再びチレストロに巻き付けた。 しかし先程とは違って、まずは目を狙って怯ませる。 続いて腕、足を拘束して動きを奪い・・・ さらに糸を巻き続け、「繭」を完成させた。 「繭」の中にいる者は、治癒が完了するまで絶対に出られない。 これを利用して、チレストロを繭の中に閉じこめたのだ。 無論、彼女はどこも怪我をしていないので、閉じこめられる時間はごく僅かだ。 だが今の私にとっては、ほんの一瞬でも時間を稼ぎたかった。 しかし、人一人分の重さがある繭を抱えて何度も階段を登っていた私には、体力の限界が近づいていた。 「ハァ・・・ハァ・・・」 さらに、今しがたチレストロの蹴りを受けた足がズキズキと痛む。 骨にヒビが入ったかもしれない。 疲労と痛みに耐えつつ、私はさらに上の階に向かった。 &nowiki(){・・・なぜ私は上に登っているのだろう・・・?} そのまま下の階に逃げれば良いものを、上に逃げてしまえばいつか逃げ道が無くなってしまう。 後になってから考えた結果なのだが、これはもしかしたら私の「深層心理」が呼び起こした行動なのかもしれない。 つまり、この時の私はただひたすら「上」を目指していたということ。 何の根拠もない話だが、私にとっては何故か納得のいく理由だった。 今の私は、叱られただけで落ち込むようなさっきまでの私とは違う。 例えるなら、私は今「羽化」しているのだ。 私は繭玉のように閉じこもっていた心を打ち破り、羽を広げようとしている最中なのである。 あの場所でロッソという少年に出会わなかったら・・・ そして彼がチレストロという女性に撃たれなかったら・・・ 私の心がかくも成長することはなかった。 人の出会いは運命で決まる。 私は今、この言葉を強く信じていた。 悲鳴を上げる身体に鞭打ち、ようやく上の階に到着する。 そこは屋上だった。 「・・・もう逃がさないわ。覚悟しなさい・・・」 真後ろで、チレストロの声がした。 追いつめられた・・・ いや、違うッ! 「ハァ・・・ハァ・・・ッ!」 私は全力で走り出した。 そしてそのまま・・・ 「・・・! と・・・飛び降りる気!?」 私は・・・ バッ! 屋上から飛び降りた。 「『シルキー・スムース』!」 飛ぶ直前にスタンドの糸を柵に巻き付けて・・・ ガシッ! 私はその糸を掴み、降りようとする。 &nowiki(){・・・しかし・・・} 私の体力は、既に限界であった。 「きゃあぁッ!」 ドシャアァッ! 自分と繭の重さを支えられるだけの腕力は、もう残っていなかった。 私は二階あたりの高さから落下したのだ。 「うっ・・・く・・・」 自分の身体を受け止めた腕に激痛が走る。 頭から落ちなかったのが不幸中の幸いだったが。 とはいえ、地面に叩きつけられた私の身体は、もはや動かすことができない状態である。 「に・・・逃げないと・・・」 一緒に落ちた繭を探すため、私は仰向けになる。 その時・・・ 「そんな・・・」 私は、あのチレストロの能力の正体を見たのだ。 &nowiki(){・・・チレストロは、壁を歩いていた。} 「そこまでしてロッソ君守ろうとする意志・・・流石だわ。 ガールフレンドはそうでなくちゃあね」 一体何なの・・・「壁を歩く」・・・? そして私を攻撃したときの、あの滑るような動き・・・ そうか・・・ 彼女の能力は「摩擦」を操る能力なんだ・・・ 足の裏の「摩擦」を極端に弱めたり強めたりできるおかげで、あんな動きが可能になるというわけだ・・・ 上の階へ一瞬で移動したのも、窓の外からああやって上がっていたからだろう。 しかし、敵の能力が分かったからといって私の勝ちではない。 「ごめんね・・・これは“掟”なの。 二人で仲良く逝って頂戴ね・・・」 ズシュッ! チレストロは、私から少し離れた所に転がっていた繭に向かって突進した。 「やめて・・・」 あぁ! ロッソが殺されてしまうッ・・・! ドゴォ! 「ぐふぅッ!」 だが、凄い勢いで飛ばされたのは・・・ チレストロの方であった。 「!」 私は動かない身体を無理矢理起こして、「繭」のある場所を見る。 そこには・・・ ロッソの「守護神」が、堂々とその姿を現していた。 「完了・・・したんだ・・・ 『繭』による回復が完了したッ!」 繭には一文字に裂け目が走っており、スタンドに続き、ロッソがそこから姿を現した。 「チレストロ・・・あなたはもう俺達を襲うことはできない。 俺達に対する『敵意』を取り除きましたからね」 「ハァ・・・ハァ・・・」 ボディーに一撃を食らったチレストロは、口から血を流しながらも立ち上がる。 そして突然・・・ 「殺してッ!!」 不意にチレストロが叫んだ。 「私を殺しなさいッ! どうせ私はいつか消されるんだから!」 「・・・・・・」 ロッソは黙っていた。 「早く・・・殺しなさいよ・・・ こうなったら私から・・・」 チレストロは、手刀を自らの首の後ろに回した。 自殺する気だ! 「待って・・・!」 私が声をかけようとしたとき、チレストロの動きが止まった。 「“死ねない”わ・・・死ぬ気になれない・・・ こんなこと・・・」 「自殺もできませんよ。 あなたに“自愛”の心も埋め込んでおきましたから」 「!」 チレストロは驚愕した。 そしてその場にゆっくりとへたり込んだ。 「ロッソ君・・・あなた、女性に優しいのね・・・ イタリア男児の鏡だわ・・・ウフフ」 チレストロは力なく笑う。 その表情は、今にも泣きそうな赤ちゃんのそれにも似ていた。 「あなたの優しさを受け入れるわ。 私は『教団』から追われる身になるけど、頑張って生き延びてみせる・・・ あなた達も無事でいてね・・・」 彼女は空を見上げた。 そして・・・ バッ! バッ! 立ち上がる隙も見せずに、どこかへ去ってしまった・・・ 空は、透き通った水色をしていた。 チレストロ/スタンド名『アーケイディア』 → 逃走・・・行方不明。 しばらく経ってから、ロッソが私に駆け寄ってきた。 タッタッタッ・・・ 「イザベラ、大丈夫か!」 「うん、大丈夫よ、気にしないで!」 私はゆっくり起き上がる。 「ひどい怪我だぞ・・・」 「大丈夫、私のスタンドですぐに治せるから!」 「そうなんだ・・・便利なもんだな・・・ あっ・・・あと、一言言っておきたいんだけど・・・」 「ん? 何?」 「助けてくれて、本当に有り難う。 正直言って、撃たれた状態で戦うのは無理だった。 君が命がけで守ってくれたおかげなんだ」 「・・・・・・」 私は何も言えなかったが、内心とても嬉しかった。 私の心は今、晴れて「羽化」できたのだ・・・ もう、今までの繭玉のように籠もりがちだった性格の私ではない。 こんなに私が成長できたのは、ロッソのおかげなのだ。 私も彼に感謝したい・・・ だが、私は何故か何も言うことができなかった。 ロッソもしばらく黙っていた。 そして急に・・・ 「あっそうだ、『繭』の中に忘れ物が・・・」 ロッソは繭の所まで走っていく。 そして中から取り出したのは・・・ 「いや~、無事でよかった、“ティラミス”」 最初に出会ったときから大事に持っていた、私の店の袋だった。 「ティラミス・・・?」 私は呟く。 「俺大好きなんだよね~、ここのティラミス。 何個食べても飽きないッ!」 「なんだか・・・」 「ん? 何?」 「なんだかティラミスなんて、私とあなたにピッタリなお菓子かもね!」 「ピッタリ? どういうこと?」 「フフッ、知らないの? だって『ティラミス』って・・・ 『私を元気付けて』って意味なのよ!」 第3話 完 使用したスタンド No.721 「[[ガーネット・クロウ>http://www2.atwiki.jp/orisuta/pages/154.html#No.721]]」 考案者:ID:8rEguwGhO 絵:ID:Y0ksuGPEO 絵:ID:Qt/9IV4aO 絵:ID:jn.D2.SO No.366 「[[シルキー・スムース>http://www2.atwiki.jp/orisuta/pages/78.html#No.366]]」 考案者:ID:7DJZ5hm40 絵:ID:lT+Ux0GN0 No.599 「[[アーケイディア>http://www2.atwiki.jp/orisuta/pages/131.html#No.599]]」 考案者:ID:3fHZczYAO 絵:ID:lAd32x7V0 |[[第2話へ>http://www2.atwiki.jp/orisuta/pages/321.html]]|[[第4話へ>http://www2.atwiki.jp/orisuta/pages/323.html]]|