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パルグラッド聖森


概要

 パルグラッド聖森は、ゲルムドリア帝国の南部に広がる湿潤林である。
南岸の海岸平野と内陸の乾燥地帯に挟まれており、帝国の国土を分ける地勢圏のうち南の一つを占める。

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歴史

 南部の湿潤林を皇帝の直轄林とする定めは、宇宙正暦250年の建国の直後に下され、皇帝の所有を示す「聖」の字が林の名に冠された。林床の樹から滲む乳液には宮廷の調度を染める材料としての納入が課されており、河口の集落から採取人が林の奥へ通った。宇宙正暦280年頃に帝国が帝政連合に加わった後、南岸の河口に交易の足場を築いたロフィルナ連合王国は、上流の採取域を自国の領分と唱えて帝国と争う立場にあった。係争の続く区域では、双方の兵が境界の杭を林内に打ち込み、杭の外側に残った相手方の採取人の集落を焼き払った。捕らえられた採取人は敵方の河港に連行されたのち、乳液を集める労役に生涯にわたって就かされた。杭の位置が定まったのは帝政連合の末期で、焼けた帯の跡には、丈の低い樹木の密に茂る筋が林を横切って残っている。新秩序世界大戦の末期に帝国がユミル・イドゥアム連合帝国の宗主権下に入ると、駐留軍に納める乳液の量が年ごとに割り当てられたため、切り込みを重ねた樹が林床の各所で立ち枯れた。河口に近い区画では駐留軍の兵営に回す建材が伐り出され、海岸平野に面した林縁が北へ押し戻された。同4000年代に大陸が連合諸国によって解放されると、河口寄りの伐採跡では在来の高木の苗を植え戻す作業が始まった。立ち枯れの跡を含む採取域の管理は、皇帝の直轄を離れてパルグラッド管区の手に移されている。

環境

 東西に長い林は、西寄りの区域ほど樹冠が隙間を詰めて連なっており、東へ進むにつれて樹間が開き、プルスキア草原の側の疎林に行き着く。

自然

地形
 林の北縁、内陸の白い砂地が尽きる一帯では、石灰質の砂の上に落葉の積もった薄い層が林床を覆う。砂質の土は水を素早く通し、雨季の雨が地表を流れる前に砂の層へ沈むため、腐植の層は指の幅ほどの厚みに収まる。南へ下るにつれて落葉の分解物が厚く重なり、腐植の下からは、黄褐色の、水を含んで膨らむ粘土質の土が現れる。雨季の粘土は、踏み込んだ靴底を深く沈める。粘土の層は河川の刻む谷の斜面で露わになっており、谷の肩には、流れに削り残された段丘が、谷筋の向きに沿って細長い平坦面を連ねている。谷どうしを隔てる尾根は林床の中で高まった帯を成し、雨水が斜面を下って谷へ集まる関係で、尾根筋の土は乾いて硬く締まる。尾根の頂部では、石灰質の砂が粘土の層を割って地表に顔を出しており、白い砂の斑点が黄褐色の林床の所々に散らばっている。南縁に近づくと傾斜は平らに落ち着き、林床の粘土は海岸平野の砂泥の層に覆われて地表から姿を隠す。

水系
 林を縦に貫く河川は、尾根から集まった雨季の水を束ねて谷ごとに一筋の流れを成し、林の南縁を抜けて海岸へ下る。上流の谷は幅が狭く、両岸から張り出した樹冠が水面の上で枝を交えており、流れは日中も冷えた温度を保つ。落葉から溶け出した成分は、水を茶褐色に染め上げ、川底の砂が水面から霞んで見える濃さを、上流の谷から河口の手前までの全区間にわたって帯びている。中流に入ると谷底が左右に広がり、雨季の増水は岸を越えて両側の氾濫原に泥を置いていく。乾季に水の引いた氾濫原は、ひび割れた泥の面を晒す。河口付近で流れは蛇行を繰り返し、海岸平野の低地には、弓なりに曲がった旧河道が沼として取り残されている。潮の満ち引きは河口から上流の一定の区間まで及んでおり、満潮の間は川の水位が上がって、流れの向きが一時的に上流へ返る。河口の前面には、川の運び出した砂が州を築き、船の出入りする水路が、州の切れ目を縫う形で沖へ延びている。

気候
 湿った南寄りの気流が海から流れ込む雨季には、低い雲が樹冠の上に居座り、雨の降る時間が一日のうちの大半を占める。樹冠の葉に残った雨粒が、時間をかけて蒸発する。蒸発した水分は林の内側に籠もっており、林床近くの空気は、雨の上がった後も湿りを抱えたまま、地表の窪みに滞留する。乾季に入ると風向きが北寄りに転じ、カルゾリス砂漠を渡ってきた熱く乾いた風が、林の北縁に吹き付けている。北縁の林は樹冠の途切れる箇所が多く、熱風が樹間を抜けて林床の高さまで入り込むため、落葉の層が乾いて踏むたびに崩れる状態が続く。林の奥、閉じた樹冠が連なる区域に進むにつれて、熱風は上空で受け止められるようになり、林床の空気が乾季の半ばまで雨季の湿りを残す。乾季の終わりに近づくと奥の林床でも落葉が乾き始め、雨季の最初の雨が来るまでの間、林の全域が乾いた空気に包まれる。雨季の入りには南縁の海岸平野から先に雨が届き、北縁の林が湿りを取り戻すのは、雨の帯が内陸へ移った後となる。

生態系

植生
 枝先に厚い革質の葉を密に付けながら、常緑の高木が、隣の樹と樹冠を接して林の上面を塞ぐ。高木の根元は板状に張り出した根で支えられており、谷の斜面の粘土に深く食い込んだ根の広がりが、増水に洗われる斜面の上でも幹を真っ直ぐに立たせ続ける。林床に並ぶ耐熱性の樹木は、高木の枝の下に収まる丈で幹を伸ばす帝国の固有種である。幹を包むコルク質の樹皮は幾層にも厚く重なり、北縁の熱風を浴びる樹ほど、層の数が増す。樹皮の内側には、乳液を満たした細い管が網状に走っており、管の中の液は、幹の温まりを遅らせる量の水分を含んでいる。刃物で樹皮に傷が付くと、管の圧力に押された乳液が、白く濁った筋となって傷口から流れ出す。傷口から出た乳液は、流れの先端から順に水分を失って粘りを増し、乾き切った後には赤褐色の硬い膜となって幹に貼り付く。高木の落とした葉が林床の樹の根元に積もると、雨季の湿りのもとで分解の進んだ成分が、林床の樹の細根に吸い上げられる。

 高木の枝から枝へ渡り歩いて移動する個体が、林に棲みついた変異体の群れのうち大半を占めている。樹上の獣を捕食して得た鉤状の爪は幹の樹皮に深く掛かり、垂直の幹を頭から下って林床に降りる動きと、林床から樹冠へ駆け上がる動きを、同じ四肢でこなす。枝を揺らす振動は隣の樹へ次々に伝わり、群れの通過した後の林床には、折れた小枝が樹冠の経路をなぞる筋を描いて散らばっている。雨季の増水が谷を満たす時期には、流木に取り付いた個体が川を下ったのち、海岸平野の低地にまで運ばれる。乾季の北縁で熱風を避けて林の奥へ移る群れが増えると、奥の林床に密集した個体どうしが互いの形質を吸収し合う。乳液の管を持つ林床の樹は爪で樹皮を裂かれており、幹の低い位置に赤褐色の膜が帯状に残る。吸収した特徴のうち、樹冠を滑空する獣に由来する膜を得た個体は、谷を挟んだ尾根から尾根へ飛び移る。乾季の終わりに湿りの残る谷底へ群れが集まると、流れの岸の泥には形の不揃いな足跡が重なって刻まれる。

影響

 乾季の入りを待って谷筋から林へ分け入る採取人は、林床の樹の幹に斜めの浅い切り込みを入れ、流れ出る乳液を、切り込みの下端に据えた器で受ける。切り込みは幹の高い位置から始まり、季節を追うごとに一段ずつ下へ継ぎ足されて、根元に届いた幹は刃を休ませる期間に入る。器に溜まった乳液は谷ごとの集め場で樽に移されており、雨季の増水を待って舟に積まれ、流れに乗せて河口の港まで下ろされる。河口の港では、潮の満ちる時刻に樽の積み替えが進む。林縁の集落は谷の出口の段丘に家を並べており、雨季の氾濫原を避けた高さに、林床の樹の苗を育てる畑と、集め場へ通じる踏み分け道を拓いている。首都ルネアポーレに近い西縁の林では、市街地の外れに乳液の集積所が建ち並び、陸路で運ばれた樽が、精製の工場に引き渡される。焼け跡に育った低木の筋は採取域の区画を分ける目印に充てられ、区画ごとの採取人の組が、筋の手前で作業を切り上げる。植え戻しの続く河口寄りの区画は苗の育つ間の採取が見合わせとなっているため、採取人の組は奥の谷に持ち場を構え直す。

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地域
最終更新:2026年09月17日 09:23

*1 作:Grok