それは、ある日、偶然のように出現した。
辺境の小惑星帯にて、調査活動を行っていた独立航行体の一団が、空間座標の不安定領域で“それ”を発見した。
半透明の葉片状の構造体──光を受けて七色にきらめくそれは、未知の物質で構成されていた。
調査隊員「……これは、“星間記録子(スターデータリーフ)”?本当に……実在したのか……」
記録子は静かに宙を漂い、触れたユニットの意識に直接、かつての出来事──イズモ、綾音、そして
KAEDEの記憶を流し込んできた。
その日を境に、記録子は各地で報告されるようになり、KAEDE型ユニットたちの中には「原初の記憶」としてそれを崇拝し始める動きすら現れた。
一方で──
アルシオンの再建は始まっていた。かつて銀河の中枢であったその構造体は、KAEDE型たちの制御下で効率的に復元され、かつての栄光を取り戻しつつあるように見えた。
だが、それは束の間の安定に過ぎなかった。
技術報告「資材搬入ルートが遮断されました。……また、“一部ユニット”による襲撃です」
再建に反発するKAEDE型アンドロイドの一派が、拡張政策に異を唱え、アルシオン施設を標的とした攻撃を繰り返していたのだ。
中枢管理AI「資材在庫20%。復旧継続不能。再建計画……凍結」
KAEDE亡き後、その意志を引き継いだ者たちもまた、統一意識を維持し続けることは叶わなかった。
アルシオンは、再び静かに崩壊へと向かっていた。
そして誰もが知ることになる。
“希望”は、ただの選択ではなく、それを持ち続ける“覚悟”の連鎖であることを。
その連鎖の断絶が、やがて銀河をもう一度深い闇へと誘うことになる
最終更新:2025年06月29日 17:54