ルーンワース創世
◎神々の誕生
光と闇の境界にルーンワースと呼ばれる世界が在った。
かつて、あらゆるものがそこで生まれ、栄え、滅んでいった。
たとえ神々でさえも例外ではなかったという
* * *
絶対神イアティルスが、はじめてルーンワースの地に降り立った時、世界は静かな眠りについていた。イアティルスの降誕を讃えるものはおらず、ただ原初存在ルーンワースだけがそこに在った。
まず最初にイアティルスが行ったことは、彼に仕える従属神たちを生み出すことであった。ルーンワースの外界より一筋の光を採り入れたイアティルスは、その光を額に受けて風神・フェムリューを、手の平で水神・クゥインタットを、胸で地神ゲンパダルを、眼球で火神ジェイガムの、四聖天を生み出した。
つづいて、光を採り入れた方向を東と定め、それより順にアウントゥム、セペスマイダ、チェンバス、カンカール、ペトゥムヌゥ、カルハニムス、レンテポナン、イェンダリュの八聖宮神を創り揃えた。
だがこの時、イアティルスが外界より採り込んだ光は、彼の背後に闇を呼び込み、混沌神ガルラスーンを誕生させてしまった。
◎天地創造
次に絶対神イアティルスは、自らが統べるべき世界の創造に着手した。イアティルスは、懐より《アンディウスの聖布》と呼ばれる一枚の布を取り出し、その端を四聖天に持たせたまま、四方に大きく拡げさせた。
そして、イアティルスが、その拡げた布の所々を摘み押さえると、大地は徐々にその姿を現していった。ある程度の形が整ったところで今度は、自身の右手親指を噛み切り、溢れ出た血をそのまま布の上に滴らせた。
布の上に拡がった血は、みるみるうちに海となり大地を潤し、ついにイア=ルーンワースが誕生した。この時、四聖天が漏らした感嘆の吐息は、多くの生命の種子をはぐくんだまま全世界へと拡がり、イア=ルーンワースにおける生命の祖となった。
◎黄昏の時代
イア=ルーンワースの創造を目の当たりにした混沌神ガルラスーンは、なんとかしてその美しい世界を我が手中に収めたいと考えるようになった。
しかし世界は、八聖宮神たちの厳しい監視によって守護されているため、絶対神イアティルスと同様の力を持つガルラスーンといえども迂闊に手を出すことができなかった。
そこでガルラスーンは、かつてイアティルスがそうしたように、ルーンワースの外界から闇を採り入れて、自身の力が及ぶ世界を生み出そうとした。
ところがガルラスーンが持ち込んだ闇は、イア=ルーンワースに予想外の災厄をもたらすことになってしまう。
光と闇という相反する性質が同次元に存在するという矛盾は、イア=ルーンワースの因果律を狂わせ、あらゆるものの存在を崩壊させ始めたのだ。
後に、この時代を《黄昏の時代》と呼ぶようになる。
◎サンタリルム議定
イア=ルーンワースの加速度的な崩壊に慌てたイアティルスとガルラスーンは、世界の中心地と呼ばれる《サンタリルムの間》に神々を集め、事態収拾のための会議を開いた。
まずイアティルスは、混乱の源である光と闇を二つに封じ分け、世界の崩壊を食い止めることを提案した。これには、ガルラスーンを含むすべての神々は賛同の意を示した。
だが、いかにイアティルスといえど、光と闇の二つの力を制御することは困難であるため、光の力はイアティルスが、闇の力はガルラスーンが、それぞれ受け持つこととなった。
これより、ガルラスーンが闇の力を抑えている間は昼、逆にイアティルスが光の力を抑えている間は夜という形で、イア=ルーンワースの世界に昼夜の概念が生まれた。
そして今度はガルラスーンより、イア=ルーンワースの平等な統治の監視者として、時間神の創造が提案された。当然のことながら、真のイア=ルーンワースの統治者であるイアティルスは不満を漏らしたが、実質上、ガルラスーンの協力なしに世界を維持することは不可能であるため、この申し入れを受け入れざるを得なかった。
イアティルスとガルラスーンは、各々が一つずつ取り出した眼球に光と闇の力を与え、時間神ウィル・ポーを生み出した。
時間神ウィル・ポーは、何者にも拘束されない自由な立場と能力を保証され、イアティルスとガルラスーンの力のバランス、つまり時の流れの監視者となった。ウィル・ポーは、過去を知るための緑色の右目と、未来を知るための青色の左目を持つといわれている。
ウィル・ポーの誕生により《黄昏の時代》は幕を下ろした。
神々たち
現在はイアティルスが主神となっている時代・世界なので「イア・ルーンワース」と呼ばれている。
<イア・ルーンワースの主な神々>
元素を司る六神 | ||||
属性 | 神名 | 役割 | 象徴 | 聖名呪文真言 |
天空 | イアティルス | 絶対神(天空神) | 太陽・光・昼・善良・誕生 | アウス・ラ・マージ・マージ・イアティルス |
闇 | ガルラスーン | 混沌神(闇神) | 月・闇・夜・邪悪・死 | |
風 | フェムリュー | 風神(四聖天) | 変化・力・分裂・獣・狂戦士 | フェッツ・オー・オー・フェムリュー |
地 | ゲンパダル | 地神(四聖天) | 安定・豊穣・協調・植物・王 | リ・エクサ・エクサ・ゲンパダル |
火 | ジェイガム | 火神(四聖天) | 愛・熱・虚偽・人・聖戦士 | アード・アード・ジェイガム |
水 | クゥ・インタット | 水神(四聖天) | 知恵・精神・真実・精霊・竜 | ラダム・ライグル・クゥインタット |
方角を司る八聖宮神 | ||||
東 | アウントゥム | 一宮神 | 赤子・新生・生命 | サー・サーレブ・アウントゥム |
東南 | セペスマイダ | 二宮神 | 賢者・法・魔術 | ヤーク・セペスマイダ |
南 | チェンバス | 三宮神 | 美・妊婦・富 | ナン・チェンバス |
南西 | カンカール | 四宮神 | 理性・女性・実体 | ル・カンカール |
西 | ペトゥムヌゥ | 五宮神 | 不死・霊体・寿命 | ハーサ・マローン・ラサ・テイル・ペトゥムヌゥ |
西北 | カルハニムス | 六宮神 | 盗人・無秩序・呪い | ノ・カルハニムス |
北 | レンテポナン | 七宮神 | 清浄・処女・治癒 | ワ・レンテポナン |
北東 | イェンダリュ | 八宮神 | 感情・男性・幻影 | セ・イェンダリュ |
属さず独立して調停者たる神 | ||||
時 | ウィル・ポー | 時間神 | 黄昏・平等・両性具有・解放 |
出典:「ルーンワース データハンドブック」
イラスト:灰下善美