オーガスト・ダーレス
オーガスト・ダーレス(August William Derleth, 1909年2月24日 - 1971年7月4日)は、アメリカの小説家、編集者、出版者であり、特に
ホラー文学や「
クトゥルフ神話」における貢献で知られています。
彼は
H.P.ラヴクラフトの遺稿を整理し、「
クトゥルフ神話」を体系化した人物として評価される一方、その解釈やアプローチに対して批判も受けています。
概要
生涯とキャリア
- 出身と教育
- ダーレスはウィスコンシン州ソーク・シティで生まれ、生涯をその地で過ごしました
- ウィスコンシン大学で英米文学を学び、卒業後も執筆活動を続けました
- 作家活動の開始
- 1926年、17歳のときに短編「蝙蝠鐘楼」でデビュー。その後、『ウィアード・テイルズ』誌などに多くの作品を発表しました
- アーカムハウスの設立
- 1939年、ドナルド・ワンドレイとともに出版社「アーカムハウス」を設立
- H.P.ラヴクラフトの作品集を出版することを目的としており、これがラヴクラフトの知名度向上に大きく寄与しました
クトゥルフ神話への貢献
ダーレスはラヴクラフトが創始した「
クトゥルフ神話」を体系化し、その普及に努めました。
- 体系化の特徴
- ダーレスは「旧支配者(Great Old Ones)」と「旧神(Elder Gods)」という善悪二元論的な対立構図を導入しました
- この設定はラヴクラフトの原作には明確には存在せず、ダーレス独自の解釈です
- また、四大元素(地、水、火、風)に基づいて邪神たちを分類するなど、新たな要素を加えました
- 新作執筆
- ラヴクラフトの未完原稿やメモを基に、新たな作品を執筆し、それらをラヴクラフトとの共著として発表しました
- この手法には一部から批判もありますが、ダーレス自身はこれをラヴクラフトへの敬意と考えていました
批判と議論
ダーレスの解釈や活動には賛否が分かれています。
- 批判点
- 善悪二元論や四大元素などの要素が、ラヴクラフトの「コズミックホラー」の本質を歪めたとの指摘があります
- また、一部では「ダーレス神話」として区別されることもあります
- 擁護と評価
- ダーレスがいなければラヴクラフト作品がここまで広く知られることはなかったという点で、多くの支持者から高く評価されています
- また、彼は後進作家たち(レイ・ブラッドベリやラムジー・キャンベルなど)の育成にも尽力しました
- その他の業績
- ダーレスはホラー以外にも推理小説や詩、歴史小説など幅広いジャンルで活躍しました
- シャーロック・ホームズへのオマージュとして、「ソーラー・ポンズ」シリーズというパスティーシュ作品も執筆しています
オーガスト・ダーレスは、
H.P.ラヴクラフトとその作品群を後世に伝える上で欠かせない存在でした。一方で、その解釈や創作手法については議論が続いています。彼の功績は単なる編集者や体系化者に留まらず、多くの後進作家やジャンル全体にも影響を与えた点で非常に重要です。
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最終更新:2025年01月26日 18:25