海の魔物
俺の暮らしているノルド王国は海の上にある。
正確には自由都市同盟本国から海を隔てた島国なのだ。
元は俺ら水棲型の亜人である魚人族が海賊を組織して暮らしていた場所なのだが、同盟本国との戦争に負け、同盟に組み込まれて今に至っている。
正確には自由都市同盟本国から海を隔てた島国なのだ。
元は俺ら水棲型の亜人である魚人族が海賊を組織して暮らしていた場所なのだが、同盟本国との戦争に負け、同盟に組み込まれて今に至っている。
それはさておき、その報せが来たのは年末、深夜もいい具合にふけた頃だった。
仲間達と酒盛りをして、良い気分で体を横たえてからほんの数分ほどしか経ってないってのに……
仲間達と酒盛りをして、良い気分で体を横たえてからほんの数分ほどしか経ってないってのに……
「クソが……全く、明日にしろっ!」
そう愚痴りながらも重い体を引き起こし、駐機場へ向かう。
くそ忌々しい。
とっとと片付けて、恋しい寝床に戻るとしよう。
とっとと片付けて、恋しい寝床に戻るとしよう。
*
俺達の小隊が入江近くに集結した後、ようやく詳しい状況を説明された。
その魔獣は海中に張り巡らせた網をしこたま破って入江の中に入って来た、という事だった。
その魔獣は海中に張り巡らせた網をしこたま破って入江の中に入って来た、という事だった。
冗談じゃない。
海中の網は硬質のワイヤーを編んだものだ。
これまで魔獣の侵入を防いできたそれが、こんな簡単に突破されるなんて…
海中の網は硬質のワイヤーを編んだものだ。
これまで魔獣の侵入を防いできたそれが、こんな簡単に突破されるなんて…
だが、海面でチラッと見えた魔獣の姿を見て、合点がいった。
ほとんどは群れをなして外洋を回遊しているが、稀に単独で陸地近くに現れる事がある。
だがここまで侵入して来るとはいい度胸だ、本当に忌々しい。
だがここまで侵入して来るとはいい度胸だ、本当に忌々しい。
これだけでもウンザリだというのに、俺達に与えられた任務は入江に入り込んだ|鋼魔獣《こいつ》を、出来るだけ無傷で捕獲することだった。
最早、悪い冗談にしか聞こえなかった。
しかも笑えないときている。
しかも笑えないときている。
仲間達からも不満の声が上がる。
こんな馬鹿げた指示を出してきたのは、おおかた、同盟中央から来た行政官殿だろう。
|行政官殿《あいつ》はノルドの海がお気に召さないらしく、常日頃から大陸へ戻る算段を巡らせていた。
|鋼魔獣《こいつ》を無傷で手に入れることが出来れば、またと無い収穫だ。こいつを土産に本国への凱旋を企んでいるのだろう。
こんな馬鹿げた指示を出してきたのは、おおかた、同盟中央から来た行政官殿だろう。
|行政官殿《あいつ》はノルドの海がお気に召さないらしく、常日頃から大陸へ戻る算段を巡らせていた。
|鋼魔獣《こいつ》を無傷で手に入れることが出来れば、またと無い収穫だ。こいつを土産に本国への凱旋を企んでいるのだろう。
けっ、それは、まぁ…いいさ。
俺達も|行政官殿《あいつ》の事はいけすかない。どうにかして居なくなってくれるなら、それに越したことはない。
だが、その為に俺達の命を危険にさらすことが気に入らない。
さりとて現状として、どのみちあの鋼魔獣は排除しなければならない。
危なくなったら捕獲を諦めて破壊するまでだ。
俺達も|行政官殿《あいつ》の事はいけすかない。どうにかして居なくなってくれるなら、それに越したことはない。
だが、その為に俺達の命を危険にさらすことが気に入らない。
さりとて現状として、どのみちあの鋼魔獣は排除しなければならない。
危なくなったら捕獲を諦めて破壊するまでだ。
「お前らァ、とっとと片付けるぞ!
気ぃ抜くな、行くぞォ!」
気ぃ抜くな、行くぞォ!」
「「「了解!」」」
遥か遠くの水平線が薄ぼんやりと白じんで来ている。
俺達は任務を遂行する為に水陸両用型機装兵を水辺に進め、まだ暗い入江へと身を躍らせた。
俺達は任務を遂行する為に水陸両用型機装兵を水辺に進め、まだ暗い入江へと身を躍らせた。