空飛ぶ装兵の噂
野外演習を終え、駐屯地へ戻る最中の事だった。
突然、俺たちの中隊に援助要請がかかった。
突然、俺たちの中隊に援助要請がかかった。
どうやら、ある部隊が機兵に乗った犯罪者を追い掛けており、ちょうどこちらに向かっているとの事だった。
そこで我々がその犯罪者の乗る機兵の行く手を包囲して、逃亡を阻んで欲しいとの事だ。
そこで我々がその犯罪者の乗る機兵の行く手を包囲して、逃亡を阻んで欲しいとの事だ。
正直言って、演習の帰りとあって体力的、魔力的にギリギリではあった。
だが、だからといって犯罪者を見逃すと言うのは道理が違う。
幸い、数がいるからこれ見よがしに囲んでやれば、相手も諦めるだろう。
だが、だからといって犯罪者を見逃すと言うのは道理が違う。
幸い、数がいるからこれ見よがしに囲んでやれば、相手も諦めるだろう。
そう考えて、俺は部隊に展開するよう号令をかけた。
程なくして、砂煙を巻き上げながらソイツが現れた。
見慣れない機兵だ。どこの国のものか、見当がつかない。
見慣れない機兵だ。どこの国のものか、見当がつかない。
だが、そんな事よりも、速い!
とにかく速い。
よく見ればあのヤロー、機兵のくせにホバーなんぞを使っていやがる。
とにかく速い。
よく見ればあのヤロー、機兵のくせにホバーなんぞを使っていやがる。
ソイツを追いかけている部隊の方も、ホバー艦二隻で追いかけていた。
ホバーで逃げる機兵は、展開している俺達に気が付いたらしい。
俺達を避けるように、進路を東に向け直した。
だが、そっちは崖だ。もう袋の鼠も同然だ。
俺達を避けるように、進路を東に向け直した。
だが、そっちは崖だ。もう袋の鼠も同然だ。
俺達も、追跡して来たホバー艦もヤツを崖へと追い詰めてゆく。
崖は非常にわかりやすく、逃げるヤツにも見えている筈だ。
それなのに、ヤツは一向に止まる気配を見せず、そのまま崖へと一直線に進んで行く。
それなのに、ヤツは一向に止まる気配を見せず、そのまま崖へと一直線に進んで行く。
オイオイオイ、待て待て待て。
いくら逃げられないからって、まさか崖から飛び降りるつもりじゃないだろうな?
いくら逃げられないからって、まさか崖から飛び降りるつもりじゃないだろうな?
あの崖は落差50mだ。
その上、下はゴツゴツとした岩肌しか無い。
ホバーを使うような機兵だろうと、落ちれば無事では済まされない。
それなのに………
その上、下はゴツゴツとした岩肌しか無い。
ホバーを使うような機兵だろうと、落ちれば無事では済まされない。
それなのに………
俺達が見守る中、ソイツは崖からダイブした。
あーあ、やりやがった……
なんとも後味が悪い結末だ…
なんとも後味が悪い結末だ…
そう思った次の瞬間、全く信じられない事が起きた。
実際に目にした自分も、一緒になって目撃した仲間達も、本当に、実際に起こった事を理解出来ず、信じられなかった。
実際に目にした自分も、一緒になって目撃した仲間達も、本当に、実際に起こった事を理解出来ず、信じられなかった。
ヤツの機兵が、空を『飛んだ』………
だが、ヤツの機兵のは跳躍なんかじゃ無い。
猛烈な速度で横へ、滑る様に、水平に、飛んだ。
猛烈な速度で横へ、滑る様に、水平に、飛んだ。
そう、飛んだ、鳥の様に飛んだんだ。
ただただ、呆然と、ヤツの姿が小さな点になって、空の彼方へ消えるまで、俺達は動けなかった。
駐屯地へ帰ってすぐに、今回の事は上官を通じて口止めされた。
緘口令というヤツだ。
見た事聞いた事を漏らしたら、ただでは済まないと脅された。
緘口令というヤツだ。
見た事聞いた事を漏らしたら、ただでは済まないと脅された。
しかし、空飛ぶ機兵の噂は割とすぐに広まった。
崖の下に民間人が多数いて、そっちから広まったらしい。
とはいえその噂も、風魔法で浮遊したんだ、魔導板を使ったんだと言われる様になった。
あれから30年…
果たして、俺が見たのは本当に、空飛ぶ機兵だったのか?
果たして、俺が見たのは本当に、空飛ぶ機兵だったのか?
今となっては、真相なんて解る筈も無い。