軍務への参加
僕は今、師匠と一緒にラスハー級重巡航艦に乗り込んでいる。
これから、フォーレンハイト領にある『第八特戦隊駐屯基地』へと向かう為だ。
これから、フォーレンハイト領にある『第八特戦隊駐屯基地』へと向かう為だ。
『第八特戦隊駐屯基地』はフォーレンハイト家の主要都市である『第一都市デルドロ』の西12kmにある前線基地の一つで、カナド地方から帝国に侵入してくる魔獣や鋼魔獣といった外敵を討伐する為に組織された第八特戦隊『オルトロス』の拠点だ。
そこで、僕の実戦訓練を兼ねた軍務に参加する事になる。
機兵に乗り始めてまだ一週間なのだが、もう実戦……
生物兵器の成れの果てである魔獣や、無人兵器だった鋼魔獣が初陣の相手になるわけだけど、人相手では無かった事で、どこかしらホッとしている。
機兵に乗り始めてまだ一週間なのだが、もう実戦……
生物兵器の成れの果てである魔獣や、無人兵器だった鋼魔獣が初陣の相手になるわけだけど、人相手では無かった事で、どこかしらホッとしている。
多分、今でも十分に抵抗無く人を殺せてしまうだろう。
色々と覚悟はしたけれど、やはり人を殺す事に慣れたくは無い。
色々と覚悟はしたけれど、やはり人を殺す事に慣れたくは無い。
だけど魔獣や鋼魔獣が相手となると、人間相手にやってきた組手がどれほど意味があるかはわからない。
なんにせよ、気を引き締めなければいけないのは確かだ。
この話を聞いたのは出発するニ日前の事だった。
「ご主人様、そういう事はもっと早く言って頂かないと困ります!」
そう言って憤慨するエミリさんは、なぜか僕を抱きしめて離さなかった……。
結局、エミリさんに手伝ってもらって、持って行くものを慌ただしく準備する事となった。
そして御屋敷を出立する直前、エミリさんは僕の手を握って目を閉じ、「黒竜神様の加護があらん事を。」と祈ってくれた。
無事に帰る事を約束したんだ。彼女に心配をさせたく無い。
動き出し揺れ始めた船内で、僕はこの先の不安と闘っていた。
*
目的地である第八特戦隊駐屯基地には二日で到着した。
陸上艦に揺られている間もトレーニングは欠かさず行った。
陸上艦に揺られている間もトレーニングは欠かさず行った。
まぁ確かに、僕はまだ上手く反物質を扱えないのだから、艦の設備に損害を与えてしまう可能性は否定出来ない。
だから大人くし従った。
だから大人くし従った。
その代わり機装兵の整備について、整備士に教えてもらっていた。
僕も軽機兵を持ったのだから、自分の機体は自分でもよく知っておきたかった。
機装兵の構造なんかは座学である程度学んだだけだったけど、実物を見て、触って、それから教えてもらうと理解が格段に進む。
僕も軽機兵を持ったのだから、自分の機体は自分でもよく知っておきたかった。
機装兵の構造なんかは座学である程度学んだだけだったけど、実物を見て、触って、それから教えてもらうと理解が格段に進む。
やはり本で見て、話を聞くだけでは理解出来ないところも沢山あるのだと、よく分かった。
この実戦訓練が終わる頃には、ある程度は自分でも応急処置や簡単な修理も出来るようになっておきたいな。
ああ、覚える事がどんどん増えていくなぁ……。
*
「私が当駐屯地責任者、ディートフリード・アメルハウザーと申します。イディエル卿、わざわざのお越し、歓迎致します。」
「いや、こちらこそ急な要請に応えて頂き感謝する。」
駐屯地に到着して早々、指揮官自らが僕達を出迎えに現れた。
アメルハウザー少佐は駐屯地責任者と第八特戦隊指揮官を兼任しており、この場での最高責任者だ。
道中の艦内では高潔で実直、戦場では勇猛果敢と帝国軍人の鑑のような人物だと聞いていた。
アメルハウザー少佐は駐屯地責任者と第八特戦隊指揮官を兼任しており、この場での最高責任者だ。
道中の艦内では高潔で実直、戦場では勇猛果敢と帝国軍人の鑑のような人物だと聞いていた。
目の前の人物は30代前半くらい、鋭い眼光からは強い意志を感じさせる。
僕らへの丁寧な対応を見るに、聞いた通りとても実直そうだ。
僕らへの丁寧な対応を見るに、聞いた通りとても実直そうだ。
「ではユミア、早速だが君には三ヶ月間、我が隊の一員として軍務に従事してもらう。我々の任務は国境の警備と巡回、国境を超えてカナドに入り魔獣を掃討する事だ。常に危険が付き纏う為、気を抜かぬよう心掛けよ。」
「判りました。」
「ボルサ中尉!」
「ハッ」
アメルハウザー少佐に呼ばれて、一人の男性が進み出て来た。
厳つい見た目は少佐よりも頭一つ分くらい大きく、逆三角形の体格は非常に屈強な印象を受ける。
厳つい見た目は少佐よりも頭一つ分くらい大きく、逆三角形の体格は非常に屈強な印象を受ける。
ボルサ中尉は僕を睨め付けるように見据え、こう言った。
あまり歓迎されていないのだろうか。
あまり歓迎されていないのだろうか。
「それから分からない事は遠慮なく聞け。隊はチームワークが大事だ。貴様がヘマをすれば隊全体が危機に陥る事だってあるからな。新人のうちは周りを頼れ、いいな!」
そう言って、中尉は僕の頭をぽんぽんと軽く叩いて笑った。
見た目よりも良い人みたいだ。
見た目よりも良い人みたいだ。
「はい、判りました。よろしくお願いします。」
「返事は『了解』だ!」
「了解!」
これから初めての軍務が始まる。