「精霊機 ゼータル・ケーニス」



[ショートストーリー]
その機装兵?は、バルクウェイ公国公王の居城、その王族区画を囲む城壁の内側にある、暗く狭い専用機兵庫の中に封じられていた。
ソレは、何時から自身に「ココロ」が有ったのか、よく分からなかった。
この「機体」を得た時かも知れないし、もっとずっと以前だったかも知れない。
いや、この暗い場所に封ぜられた、ずっと後だったかも知れない。
その「ココロ」が悲鳴を上げている。ここは暗い、ここは嫌だ、「周囲」が感じられない、誰か「自分」をここから連れ出してくれ……。
ソレは、何時から自身に「ココロ」が有ったのか、よく分からなかった。
この「機体」を得た時かも知れないし、もっとずっと以前だったかも知れない。
いや、この暗い場所に封ぜられた、ずっと後だったかも知れない。
その「ココロ」が悲鳴を上げている。ここは暗い、ここは嫌だ、「周囲」が感じられない、誰か「自分」をここから連れ出してくれ……。
けれど、誰も来なかった。
どれだけ時間が経ったのかは分からない。最初はここから自分を出してくれた者のためなら何でもしよう、と思った。
次にはここから自分を連れだした者に取り憑いて殺してやろうと思った。
そして次にはここから出る事ができたなら世界を滅ぼしてやろうと思った。
可能か不可能かは置いといて。最後には、もうどうでも良くなった。
ここで自分は朽ち果てるのだ、そう覚悟したら気が楽になった。
全部あきらめた。暗闇に「ココロ」を委ねて眠りに就こうとした。
次にはここから自分を連れだした者に取り憑いて殺してやろうと思った。
そして次にはここから出る事ができたなら世界を滅ぼしてやろうと思った。
可能か不可能かは置いといて。最後には、もうどうでも良くなった。
ここで自分は朽ち果てるのだ、そう覚悟したら気が楽になった。
全部あきらめた。暗闇に「ココロ」を委ねて眠りに就こうとした。
なのに、今さら「ソイツ」はやって来た。
外の世界が怖かった。嫌だった。
「周囲」を感じる事が恐ろしかった。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。
「自分」はここにいるんだ。ここに居てもいいんだ。
なのに、「ソイツ」は叫ぶ。
「周囲」を感じる事が恐ろしかった。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。
「自分」はここにいるんだ。ここに居てもいいんだ。
なのに、「ソイツ」は叫ぶ。
「動け!動いてくれ!お前の……。お前の力が必要なんだ!!今動かなきゃダメなんだ!頼む、動いてくれ、動け動け動け、動けよ!!」
その「思い」の力は凄まじく強かった。
なんだ、「コレ」は?「ココロ」が悲鳴を上げる。
「ソイツ」が恐ろしかった。動かなかったら何をされるかわからない。
それが恐ろしかった。
「自分」は、已む無く「ソイツ」の操縦に従い、「機体」を起こした。
なんだ、「コレ」は?「ココロ」が悲鳴を上げる。
「ソイツ」が恐ろしかった。動かなかったら何をされるかわからない。
それが恐ろしかった。
「自分」は、已む無く「ソイツ」の操縦に従い、「機体」を起こした。
[解説]
この機兵を製作したのは、聖王国の辺境伯ジカルド卿である。
ジカルド卿は、様々な国家で主力機とされている機装兵を設計し、先行量産型数機を建造し、その陣頭指揮を執って、各国での生産体制を整えた功を持ち、聖王国にて貴族位を与えられて辺境伯の地位に就いた人物だ。
だが辺境伯の地位に就いて後の彼は、基本的に一品物の機装兵……たとえどんなに強くとも、戦局それ自体には影響を与えづらい機体ばかりを造っていた。
例外は聖王国に義理立てして造ったオーラ・グラム・ザンカイ(オウラ・オウム)だ。
ジカルド卿は、様々な国家で主力機とされている機装兵を設計し、先行量産型数機を建造し、その陣頭指揮を執って、各国での生産体制を整えた功を持ち、聖王国にて貴族位を与えられて辺境伯の地位に就いた人物だ。
だが辺境伯の地位に就いて後の彼は、基本的に一品物の機装兵……たとえどんなに強くとも、戦局それ自体には影響を与えづらい機体ばかりを造っていた。
例外は聖王国に義理立てして造ったオーラ・グラム・ザンカイ(オウラ・オウム)だ。
そんな彼が、アルカディア帝国の依頼を受けて自らの手で建造したのが、この「バルクウェイ公国旗機・頂の機兵(ゼータル・ケーニス)」であった。
何故聖王国の貴族位を賜っている彼が帝国の機兵を造るのかと言えば、簡単な話、帝国から聖王国上層部に対し、充分な付け届けがあったからだ。
何故聖王国の貴族位を賜っている彼が帝国の機兵を造るのかと言えば、簡単な話、帝国から聖王国上層部に対し、充分な付け届けがあったからだ。
更に言えば、依頼されたのが「国王(公王)の象徴となる機体であって、戦闘力は二の次」と言う条件が付いていためもある。
たった1機の機装兵を造るだけで、大枚の金が入るのだ。
聖王国上層部はジカルドに対し、「バルクウェイ公国の旗機」の製造を依頼する。
ジカルドは、「一応1国の旗機であるから」との理由で、最高級の材料の調達と、最新鋭の建造機材の引き渡しを条件に、建造を承諾した。
たった1機の機装兵を造るだけで、大枚の金が入るのだ。
聖王国上層部はジカルドに対し、「バルクウェイ公国の旗機」の製造を依頼する。
ジカルドは、「一応1国の旗機であるから」との理由で、最高級の材料の調達と、最新鋭の建造機材の引き渡しを条件に、建造を承諾した。
ジカルドは造る機体の基本を、かつて帝国に卸したガルク・トーブの構造を使う事に決めた。
かつては総体的な技術の低さにより諦めた様々な機構を、拡張性の高さと言う形で盛り込む。要はいざとなったら、何でも付け加えられる様にしただけである。
その際に、旧態依然とした構造は改め、小さくて信頼性も高い新型システムに入れ替えたりもしている。
かつては総体的な技術の低さにより諦めた様々な機構を、拡張性の高さと言う形で盛り込む。要はいざとなったら、何でも付け加えられる様にしただけである。
その際に、旧態依然とした構造は改め、小さくて信頼性も高い新型システムに入れ替えたりもしている。
機体その物の建造が順調に進む中、搭載される魔導炉の選定は難航を極めていた。
新規生産された新型の炉は、どれもジカルドの目には適わなかったのだ。
已む無くジカルドは、第一次聖帝戦争期の古戦場からの発掘品に頼る。
場合によっては幻装兵の魔導炉が手に入るかも知れない。その思いは叶った。
手に入った状態の良い炉の中に、彼の目を惹いた物が存在したのである。
エーテル出力は最高レベルではないものの必要充分であり、何より「何か」を感じさせる代物だったのだ。
新規生産された新型の炉は、どれもジカルドの目には適わなかったのだ。
已む無くジカルドは、第一次聖帝戦争期の古戦場からの発掘品に頼る。
場合によっては幻装兵の魔導炉が手に入るかも知れない。その思いは叶った。
手に入った状態の良い炉の中に、彼の目を惹いた物が存在したのである。
エーテル出力は最高レベルではないものの必要充分であり、何より「何か」を感じさせる代物だったのだ。
魔導炉と機体本隊は揃った。
そして双方を調律して、ついにこのゼータル・ケーニスは完成したのだ。
聖華暦299年、機装兵として建造されたこの機体は、万が一の予備部品の山——優に機体1機分を組み上げられる数——と共に、「バルクウェイ公国へと引き渡されて行ったのである。
この機兵の魔導炉に、精霊と呼ばれる存在が憑依している事を誰にも知られる事無く……。
そして双方を調律して、ついにこのゼータル・ケーニスは完成したのだ。
聖華暦299年、機装兵として建造されたこの機体は、万が一の予備部品の山——優に機体1機分を組み上げられる数——と共に、「バルクウェイ公国へと引き渡されて行ったのである。
この機兵の魔導炉に、精霊と呼ばれる存在が憑依している事を誰にも知られる事無く……。
この名機ガルク・トーブを元にした機兵は性能的には、機体や魔導炉の格から見て、低いレベルにある。
実際のところ、実戦に出る事は考えられておらず、後方に立って全軍の士気を高めるためだけの機兵であったからだ。
実際のところ、実戦に出る事は考えられておらず、後方に立って全軍の士気を高めるためだけの機兵であったからだ。
それ故に、この機兵の見た目は思い切り気を張って造られている。
外装は銀色に輝く、手間のかかる美しい鎖帷子で覆われており、それだけで並の機装兵何機分になるか分かったものではない。
そして戦いの性能には寄与していないものの、動きは滑らかで精緻を極めており、まるで甲冑を着た人間を機兵大に引き伸ばした様な印象を受ける程だ。
これに比べれば、他の機装兵はまるで木偶人形にしか見えない。
外装は銀色に輝く、手間のかかる美しい鎖帷子で覆われており、それだけで並の機装兵何機分になるか分かったものではない。
そして戦いの性能には寄与していないものの、動きは滑らかで精緻を極めており、まるで甲冑を着た人間を機兵大に引き伸ばした様な印象を受ける程だ。
これに比べれば、他の機装兵はまるで木偶人形にしか見えない。
[武装]
この機兵の装備は、美麗な装飾を施された破斬剣、美麗な装飾を施された小剣、そして美麗な装飾を施された盾(中)である。
魔導砲は装備すれば撃てるが、護られる立場の国王(公王)機として造られたため、基本の装備品には入っていない。
魔導砲は装備すれば撃てるが、護られる立場の国王(公王)機として造られたため、基本の装備品には入っていない。