魔導炉
[解説]
基本的には操手から吸い上げたエーテルを増幅する、魔導工学の粋を集めて作られた精密魔導器。
この『基本的には』という但し書きは、要塞や都市の魔導障壁動力源となる据え置き型の大型魔導炉や、艦船の動力源となる大型魔導炉などは、操手のエーテルではなく液体エーテルを使って稼働しているからだ。
この『基本的には』という但し書きは、要塞や都市の魔導障壁動力源となる据え置き型の大型魔導炉や、艦船の動力源となる大型魔導炉などは、操手のエーテルではなく液体エーテルを使って稼働しているからだ。
元々の操手が供給したエーテルが10マギアだとすると、炉に通した後のエーテルは50マギアはあると考えるとイメージしやすい。
機兵の場合は、出力が上がったエーテルを転換炉という油圧機構に流す事で、機兵の全身に潤滑油が行き渡るのである。
機兵の場合は、出力が上がったエーテルを転換炉という油圧機構に流す事で、機兵の全身に潤滑油が行き渡るのである。
当時、サライは魔法現象の簡略化をテーマとした研究をしており、彼の研究の集大成とも言える作品が『マキナ・アウラ』と呼ばれる魔法だった。
この『マキナ・アウラ』と呼ばれる魔法は、魔墨というサライが調合した特殊な液体によって、特殊な文字により超合金の板に刻み込まれていた。
そこに刻まれていた文字の羅列は、サライがケルト神話という文献から持ってきたもので、情報を圧縮するのに最も適した文字媒体だと言う。
これこそが、今で言われるルーン文字である。
この『マキナ・アウラ』と呼ばれる魔法は、魔墨というサライが調合した特殊な液体によって、特殊な文字により超合金の板に刻み込まれていた。
そこに刻まれていた文字の羅列は、サライがケルト神話という文献から持ってきたもので、情報を圧縮するのに最も適した文字媒体だと言う。
これこそが、今で言われるルーン文字である。
サライはこの超合金の板を中枢部に使い、ある魔導器を造り上げる。
そして、サライが魔導器に手をかざしてエーテルを流すと、エーテルは文字の上を走り、魔導器の中を高速で循環し始めた。
別の研究者が測定機を持ってくると、なんと魔導器の中を走るエーテルの出力は100マギアを超えていた。
そして、サライが魔導器に手をかざしてエーテルを流すと、エーテルは文字の上を走り、魔導器の中を高速で循環し始めた。
別の研究者が測定機を持ってくると、なんと魔導器の中を走るエーテルの出力は100マギアを超えていた。
これが最初期の実験型魔導炉である。
研究者たちはこの『マキナ・アウラ』を使った魔導器を、開発中の新兵器へと搭載する事を上層部へと具申し可決された。
それから一年後、更に研究を重ねて劇的に性能向上した魔導炉を搭載し、人類史上初となる『機兵』と呼ばれる人型機動兵器が完成したのだ。
研究者たちはこの『マキナ・アウラ』を使った魔導器を、開発中の新兵器へと搭載する事を上層部へと具申し可決された。
それから一年後、更に研究を重ねて劇的に性能向上した魔導炉を搭載し、人類史上初となる『機兵』と呼ばれる人型機動兵器が完成したのだ。
[魔導炉技術の衰退と再発展]
初期の幻装兵用魔導炉は、基幹構造に科学技術の粋を尽くした超合金を用いていた。
しかし聖華暦187年にアルカディア帝国とカーライル王朝・聖王国の間で結ばれたヴァース条約とそれに関連して両国で制定された法律により、科学技術と称されるものは使う事ができなくなってしまう。
勿論のこと、魔導炉の基礎に用いられていた超合金も、科学技術の放棄と共に製法が失われたのだ。
しかし聖華暦187年にアルカディア帝国とカーライル王朝・聖王国の間で結ばれたヴァース条約とそれに関連して両国で制定された法律により、科学技術と称されるものは使う事ができなくなってしまう。
勿論のこと、魔導炉の基礎に用いられていた超合金も、科学技術の放棄と共に製法が失われたのだ。
そして魔導炉は、その性能が大幅に後退する事になる。
超合金を用いない魔導炉は試作されたものの、その炉は内部のエーテル圧に耐えきれなかったのだ。
炉が崩壊するならばまだ良い方で、場合によっては大爆発を伴う大事故となった。
超合金を用いない魔導炉は試作されたものの、その炉は内部のエーテル圧に耐えきれなかったのだ。
炉が崩壊するならばまだ良い方で、場合によっては大爆発を伴う大事故となった。
帝国も聖王国も、奇しくも同じ手段でこれを解決する。
魔導炉の性能を、大幅にデチューンしたのである。
具体的には、賢者サライが安全措置として組み込んでいたエーテル出力抑制のルーンを、更に幾重にも重ねて描き足したのだ。
魔導炉の性能を、大幅にデチューンしたのである。
具体的には、賢者サライが安全措置として組み込んでいたエーテル出力抑制のルーンを、更に幾重にも重ねて描き足したのだ。
これによって聖華暦100年代末期から200年代初期における鍛鉄製の魔導炉炉心であっても、内部のエーテル圧になんとか耐えられる様になる。
しかし代わりにエーテル出力は、幻装兵や精霊機の魔導炉に比して、見る影もないほどに低下してしまうのだった。
しかし代わりにエーテル出力は、幻装兵や精霊機の魔導炉に比して、見る影もないほどに低下してしまうのだった。
そして後に、新たな錬金金属の開発など素材の研究開発が進むに比例して、魔導炉の出力は徐々に向上する事になる。
基本的には素材の強度的進歩に見合う程度に、エーテル出力抑制ルーンの記述を削って行ったのだ。
ただし聖華暦830年代においては、かつて追加されたエーテル出力抑制ルーンは完全に無くなったのだが、それでも通常型の魔導炉では幻装兵の魔導炉に匹敵するエーテル出力は得られていない。
基本的には素材の強度的進歩に見合う程度に、エーテル出力抑制ルーンの記述を削って行ったのだ。
ただし聖華暦830年代においては、かつて追加されたエーテル出力抑制ルーンは完全に無くなったのだが、それでも通常型の魔導炉では幻装兵の魔導炉に匹敵するエーテル出力は得られていない。
これは、サライ自身の描いたルーン、ことに記述の変更が禁じられている機密部分の記述に秘密がある。
サライはこの術式を、超合金の炉心を前提に描いたため、それ以外の素材では100%の出力が出ないのだ。
しかしながら、この機密部分をいじろうものなら下手をすれば、魔導炉の機能が失われてしまうならまだ良く、場合によっては大事故に繋がる。
サライはこの術式を、超合金の炉心を前提に描いたため、それ以外の素材では100%の出力が出ないのだ。
しかしながら、この機密部分をいじろうものなら下手をすれば、魔導炉の機能が失われてしまうならまだ良く、場合によっては大事故に繋がる。
これをなんとかしようと、外部的なアプローチからのエーテル出力強化を試みた成果が、燃焼型魔導炉でありエーテリック・アクセラレーターである。
燃焼型魔導炉では炉の中でのエーテル循環を高める形での出力強化が試みられて、通常の魔導炉よりも起動が遅かったり、整備の手間がかかったり、余剰熱量が大量に発生してその放熱をせねばならない等、問題点はあれど成功を収めた。
エーテリック・アクセラレーターは、魔導炉から出力されるエーテル流の通り道にブラッドグレイルを置いて、魔導炉が操手のエーテルを増幅するのとは別原理による増幅方法を重ね掛けする事で、最終的なエーテル出力の大幅な増強に成功したのだ。
燃焼型魔導炉では炉の中でのエーテル循環を高める形での出力強化が試みられて、通常の魔導炉よりも起動が遅かったり、整備の手間がかかったり、余剰熱量が大量に発生してその放熱をせねばならない等、問題点はあれど成功を収めた。
エーテリック・アクセラレーターは、魔導炉から出力されるエーテル流の通り道にブラッドグレイルを置いて、魔導炉が操手のエーテルを増幅するのとは別原理による増幅方法を重ね掛けする事で、最終的なエーテル出力の大幅な増強に成功したのだ。
[基礎理論]
いかに天才的な術師、賢者サライであろうとも、無から有を造り出す事は容易ではない。
しかし現に、魔導炉を通したエーテルは、数倍から十数倍に出力そのものが増大している。
この秘密は、理論そのものがあまりにも難解であった事や、サライが厳重に秘匿した事もあいまって、830年現代においても知られてはいない。
しかし現に、魔導炉を通したエーテルは、数倍から十数倍に出力そのものが増大している。
この秘密は、理論そのものがあまりにも難解であった事や、サライが厳重に秘匿した事もあいまって、830年現代においても知られてはいない。
現在の技師や魔導士たちは基本、素材こそ超合金から錬金金属に変わっているものの、サライの遺した製法通りに魔導炉を造っているだけだ。
厳密に言うならばエーテルが、『マキナ・アウラ』と呼ばれる魔法を刻んだ金属板で囲われた空間である炉心部を循環する事で、『何故か』そのエネルギー量が爆発的に増大している事までは、現在の技師や魔導士たちも掴んでいる。
それ故、炉の中でエーテルを更に循環させてエーテル圧を高める事で高出力を得る燃焼型魔導炉や、エーテル循環の過程にブラッドグレイルを絶妙に配置する事で爆発的に出力を増大させるエーテリック・アクセラレーターなども、開発が可能となった。
厳密に言うならばエーテルが、『マキナ・アウラ』と呼ばれる魔法を刻んだ金属板で囲われた空間である炉心部を循環する事で、『何故か』そのエネルギー量が爆発的に増大している事までは、現在の技師や魔導士たちも掴んでいる。
それ故、炉の中でエーテルを更に循環させてエーテル圧を高める事で高出力を得る燃焼型魔導炉や、エーテル循環の過程にブラッドグレイルを絶妙に配置する事で爆発的に出力を増大させるエーテリック・アクセラレーターなども、開発が可能となった。
本当のところ、魔導炉の中でエーテルが増幅されている様に『見える』のは、実のところ間違いである。
魔導炉の中で循環しているエーテルは、呼び水、触媒に過ぎない。
重要なのは、エーテルが魔導炉の中で『循環』し、『渦』を描く事にある。
魔導炉の中で循環しているエーテルは、呼び水、触媒に過ぎない。
重要なのは、エーテルが魔導炉の中で『循環』し、『渦』を描く事にある。
エーテルの流れが渦を描く事で、これが『形代』としての働きを持ち、遠い場所にある別の『大渦』と霊的なリンクを生むのだ。
そしてその遠くの『大渦』に満ち満ちている、強大な莫大なエネルギーのごく一部、いや一部と言うのもおこがましいだろう、ほんの欠片ほどのエネルギーが、遠い空間を飛び越えて莫大なエーテルと言う形で出力されるのである。
元々魔導炉の中にあったエーテルは、『大渦』との霊的リンクの維持に使い果たされる。
いわば魔導炉は地下の石油をくみ上げるポンプであり、操手などが供給するエーテルはポンプを稼働させるための動力でしか無いのだ。
そしてその遠くの『大渦』に満ち満ちている、強大な莫大なエネルギーのごく一部、いや一部と言うのもおこがましいだろう、ほんの欠片ほどのエネルギーが、遠い空間を飛び越えて莫大なエーテルと言う形で出力されるのである。
元々魔導炉の中にあったエーテルは、『大渦』との霊的リンクの維持に使い果たされる。
いわば魔導炉は地下の石油をくみ上げるポンプであり、操手などが供給するエーテルはポンプを稼働させるための動力でしか無いのだ。
ここで、遠い場所にあると言う『大渦』だが、それはいったい何なのだろうか。
サライの描いたルーン、ことに記述の変更が禁じられている機密部分を解析するとわかるのだが、地球から『いて座』方向に2万5,800光年の距離を指し示している記述が入っている。
そう、銀河中心である。
サライの描いたルーン、ことに記述の変更が禁じられている機密部分を解析するとわかるのだが、地球から『いて座』方向に2万5,800光年の距離を指し示している記述が入っている。
そう、銀河中心である。
銀河中心には、巨大なブラックホールが存在している。
そしてそれは常に大量の物質を飲み込み、その質量は『渦』となって降着円盤を形成。
そのブラックホールは電波、X線、高エネルギー粒子のジェットなどの形で、常に飲み込んだ質量の一部をエネルギーとして放出する。
そしてそれは常に大量の物質を飲み込み、その質量は『渦』となって降着円盤を形成。
そのブラックホールは電波、X線、高エネルギー粒子のジェットなどの形で、常に飲み込んだ質量の一部をエネルギーとして放出する。
ここまで書けば解ると思われるが、魔導炉は銀河中心ブラックホールと『渦』という共通性により霊的リンクを創り出し、そのエネルギーのひと欠片をエーテル出力と言う形でちょろまかすシステムなのである。
そして魔導炉内部の『渦』の回転速度が上がれば上がるほど、銀河中心ブラックホールの降着円盤と『渦』としての相似性が上がり、取り出せるエネルギー量=エーテル出力も向上する事になる。
ちなみに普通の魔導炉の入力が10マギアあたり出力が50マギア程度なのは、普通の魔導炉ではそこまで高速の『渦』を作れない事、そしてサライの施した幾重もの安全措置に阻まれるためである。
そして魔導炉内部の『渦』の回転速度が上がれば上がるほど、銀河中心ブラックホールの降着円盤と『渦』としての相似性が上がり、取り出せるエネルギー量=エーテル出力も向上する事になる。
ちなみに普通の魔導炉の入力が10マギアあたり出力が50マギア程度なのは、普通の魔導炉ではそこまで高速の『渦』を作れない事、そしてサライの施した幾重もの安全措置に阻まれるためである。