フィールドに落ちている書物。
世界観を知ることができる。
からくり調べ
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(読む) |
そもそも「からくり」とは、天つ糸の力で動く機構のことを指す。
つまり職人や大工が扱う「からくり」も、獣狩の操る「からくり」も、
形作られる工程こそ違えど、本質は同じものと考えてよいだろう……
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本家からの便り
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(読む) |
息災か、妹よ。湊の獣狩がまた一人命を落としたと聞いた。
今の湊にとって小さからぬ痛手であろう。
無論、父上らは気にも留めていない。湊のことなど忘れているのだ。故にこそ妹が……
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長次の日記
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(読む) |
湊も随分と不便になった。動かなくなったからくりを再び動かす術は見つかっておらぬ。
家具は作り直せば、家屋は立て直せばよいが……我らが知恵の届かぬのが恨めしい。
思えば飾車が止まった時、切り倒してでも原因を解き明かさんとした金床衆の……
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余話・風師の菜花
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(読む) |
昔、風師の村に、勇敢さと勇猛さで知られた一人の獣狩がいた。
しかし、獣が末期に放った炎に巻かれ、家屋諸共に焼け死んだという。
後に人々は、誰からともなく、焼け野に菜花を植えるようになった。
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余話・不朽の大桜
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(読む) |
石堂の大殿、大桜を見遣ると、まこと美しい、花見の台を作ろうと仰る。
村の者はひれ伏して普請に取り掛かれど、然るにても心に懸かるのは、
何故かこの大桜、春が過ぎて夏の来るまで散らずにいることであった。
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旅籠紅梅庵宿帳
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(読む) |
明享三年、正月上。
三日、石堂家が御家来、安護盛時様御一行が到来される。
奥宮の吉水を確かめられると、期待外れの様子にて帰途に着かれる。
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狩りの記録
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(読む) |
……辺り一面の花盛り。仙境、あるいは桃源の如し。
人の築きしものすべて、花と根とに呑まれたり。
暴れ狂う獣の群れ、手慣れし獣狩の身をも容易く喰らう。
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打ち棄てられた書簡
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(読む) |
……獣多く田畑を拓く叶わず、山河険しく人の住める処増やす能わず。
然れど、大なる獣を狩る力も持たず。安護にとって何の益もない土地よ。
租税のみ収め、乙衆ら自ずから治めるがよい。いずれ飾りの沙汰人を送る……
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足軽頭の書き付け・壱
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(読む) |
盛時め! 大恩ある大殿を裏切って兵を挙げるなど、何たる不義不忠!
大月城を襲うた獣どもも、あやつの差し金ではあるまいな……!
このままでは我らの領する所、東の国どころか一つ残らず……
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足軽頭の書き付け・弐
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(読む) |
もう駄目じゃ、城は落ちて、大将もやられちまった……!
こんな気味悪い島にまで追い立てられて……そこかしこに獣がいやがる。
今朝も一人、島の獣に攫われた。俺たちはここで……
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千古の記録
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(読む) |
天つ岩殿。ながなきの島に移りし、獣狩のわざ。
海の底より湧き出づる気を、吸い上げ、操り、天へと放つ。
岩殿はふるさとにそびえし山。いつの日にか、かならず帰らん。
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石堂氏法度
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(読む) |
拾伍条
夏木立ノ島、獣溢レ危ウキ処ナレバ、ミダリニ入ルヲ禁ズ。
船ヲ出スニ於テハ必ズ家中ノ許シヲ得ルコト。獣狩ノ……
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誉山見聞
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(読む) |
皐月四日。魚取衆の甚五郎が言うには、夏木立の島の山が火を噴いたという。
翌五日。島の様子を検分。同道した獣狩によれば、日頃と比べて
獣の数が増えているそうだが、その他に変わった点は見受けられず……
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入山峠合戦陣触・壱
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(読む) |
石堂が兵三百、峠の先に砦を築きて待ち受ける。
我ら秘術を用いて鼠どもを洞より追い立て、南より奇襲す。
合わせて峠を抜かんと兵五百にて打ちかかれば、弱兵慌てて兵を退き……
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入山峠合戦陣触・弐
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(読む) |
石堂が砦、容易に陥落せしめるも、守る大将の武勇に優れること、大いに恐れる。
しかして敵大将の弱兵を統ぶところ、その意気は霜か露の如く儚く、林の間を逃げ惑う。
目指す大月城もまた、別隊が巨猪を誘いて攻め取らんと向かっておれば……
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僧侶の書簡
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(読む) |
……赤鷹派の奴輩は、一頻り境内を荒らし回った後、
捕らえた僧らを一人ずつ、深き渓谷の底に投げ込んでいった。
骸を啄む鷹の、何と禍々しきことか。御仏の遣いなどとはとても思えぬ。
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空照寺雑録
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(読む) |
二月廿日。北堂の僧兵が大挙して訪れ、倉を焼き払う。
僧も女子供も、多くが炎に巻かれ、苦しみの声を上げる中、
天より赤き鷹来りて、北道の僧らを啄み食らう……
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解獣命方
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(読む) |
ハナヤドシ、ヒメトサカ、ラセツ。姿も、棲む場所も異なる三種の獣。
しかしその腹を割り開いてみれば、共通して、淡く光を帯びる臓腑を持っていた。
それは天つ糸の輝きによく似ている。そこに天つ糸を蓄えているのやも……
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或る姫の日記・壱
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(読む) |
我の名は桜。母上にすすめられて、日記をつけてみる。
じゃが、いったい何を書けばいいか……。
そういえば、ゆうべ氏繁が天守の屋根に登ったとかで……
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或る姫の日記・弐
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(読む) |
父上もお祖父様もたいそうお怒りになられている。
安護殿ご乱心、などと騒ぎ立てる者もおるが、日ノ本きっての知恵者と評判の男。
いやな、予感が……
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或る姫の日記・参
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(読む) |
討死した小父上の隊の者が、城へと逃げてきた。
この大月を除いて、すべての城を奪われたという話じゃ。我は――
(筆が乱れており、これ以上読むことができない)
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或る獣狩の書簡・壱
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(読む) |
今日は大きなヤマウガチを仕留めたんだぜ。それも俺一人でだ。
その首飾りは、そいつの皮で作ったものでな。大したものじゃないが、
きっとおまえに似合うと思う。もちろん、大殿には秘密にしといてくれよ?
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或る獣狩の書簡・弐
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(読む) |
近頃、ようやくおまえの言うことがわかってきたよ。
この城は、どこもかしこも息苦しくて堪らない。
おまえと二人、湊でひっそりと暮らせたら、どんなにいいか……
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商人の手記
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(読む) |
……石堂の大殿とは良い商いをしてきたが、近く湊を離れようと思うておる。
湊の者は人と戦う術を持たん。かと言って強大な獣に抗うにも些か頼りない。
仮に戦禍を免れたとしても、遅かれ早かれ山河に呑まれるであろうな。
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阿川末宇多・壱
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(読む) |
玉響うつそみ暮れて ただ澱に身を尽く
玉の緒の夢忘れて 長からむ巡りを
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阿川末宇多・弐
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(読む) |
九十九奇しく狂えど よに見ゆるなく
月詠は何処までも
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阿川末宇多・参
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(読む) |
玉眸の平けし空に みなと不二や望む
魂結び績みなす調べ 逆に水曲越えて
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澱まずの願い
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(読む) |
天つ糸が澱みし処、貪り食う獣あり。狩らぬと澱みは溜まり、いつしか禍とならん。
一つは、骸埋まる地に死乱れ飛ぶ鼠。一つは、怨火湧き募る洞に潜む鶏。
一つは、底なき沼を衝き暴れる山嵐。一つは、雹突き刺す孤城に立つ狼。
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記憶の断片・命
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(読む) |
我らの同胞を幾人も踏み潰した岩山の化生が、剥がれ落ち、崩れ落ちてゆく。
ついに我らは得たのだ。天つ気を操り、獣を狩る力を。
だがその代償に――辺りの草木は枯れ、水は活気を失った。この力を御さねば……。
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記憶の断片・旅
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(読む) |
我らを止めるものはない。海を渡り、森を抜け、谷を下り、山を超える。
たとえ火を纏う大地であっても、氷雪の襲いくる山河であっても、獣狩は得物を振るう。
からくりの力で、我らが縄張りを広げる。まるで獣がそうするように。
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記憶の断片・雨
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(読む) |
いつの間にか、雨が降っていた。十日降り続いた雨は、我らから蓄えを奪った。
一月降り続いた雨は、我らの家屋を蝕んだ。半年降り続いた雨は、我らの郷を沈めた。
雨を、止めねば。すべてを押し流す怒れる水を、狩らねば……。
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記憶の断片・種
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(読む) |
長き、長き、狩りの果て。我らは不二の頂に辿り着く。
多くの命が濁流に飲み込まれた。老いも若きも、技も知恵も、等しく消えてなくなった。
すべてが流される。せめて、ただ一つ……一つの種を、ここに残そう。
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最終更新:2024年09月14日 16:06