2000年代初頭フジテレビ深夜アニメ問題

「2000年代初頭フジテレビ深夜アニメ問題」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

2000年代初頭フジテレビ深夜アニメ問題 - (2017/04/08 (土) 07:00:55) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/04/08 Sat 03:20:25
更新日:2024/01/28 Sun 01:18:52
所要時間:約 20 分で読めます





2000年代初頭フジテレビ深夜アニメ問題』とは主に2002~2004年ごろに起きていた
フジ深夜アニメの放送形態に関する問題である。

当時のフジ深夜アニメでは通常考えられないペースで放映上の不手際が発生しており、
放送休止・事前告知なしに放送時間変更・相次ぐ数話連続放送・放送休止により放送枠が確保できなくなったことでの打ち切りなどのトラブルを頻発。
結果フジの深夜アニメ放送そのものへの信用が失われたことで、一時期のフジテレビの深夜アニメ放送枠の消滅へとつながることとなった。

放送当日での変更も多かったという問題の性質上、過去の新聞のTV欄などを見ても記録があまり残っていないが
当時のアニメファンにとってはフジのアニメ視聴の死活問題に直結するものであり、非常に悪名を馳せた問題である。





・当時の状況


当時の深夜アニメは黎明期であり、1990年代後半に起きたエヴァブームの際に深夜に再放送を行ったことへの大きな反響、
青年向けアニメの需要の増加、アニメバブルによって放送枠の足らなくなった作品の受け皿など、
これらの要因により深夜枠でのアニメの放送形態への注目が集まり、視聴者の方にも深夜放送がそれなりに受け入れられてきたという段階だった。

深夜での放送形態そのもの関しては、ある程度のフォーマットが出来つつあったもののまだまだ試行錯誤が続いていたが
深夜アニメの本数そのものは増加傾向にあり、地上波各局でも週に何回かの深夜アニメ枠がある状況が定着し始めていた。
実際、90年代後半と比べると数多くのアニメが深夜に放送されるようになっており、「深夜アニメ」という言葉が定着しつつあったのもこの頃である。

特に2000年代初めのフジでは、週2~3日に渡って深夜アニメ枠があり、テレビ東京や地方局と肩を並べるほどの深夜アニメの拡大編成を行っていた。
そのため現在(2017年)と比べると、フジテレビは深夜アニメを放送する局としてアニメファンにとって非常に重要度の高いTV局であり、
結果的に多くのアニメを放送していたことがこの問題の拡大に繋がることとなった。


深夜アニメ放送の拡大を行う一方で、当時のフジ深夜放送では以前より放送日程に問題のある番組が存在しており、
週1放送の予定にもかかわらず実際には放送休止で月1~2回しか放送しないなどの問題が既に起きていたとされている。
これらのトラブルは表立って騒がれてはいなかったものの、問題としては確実に存在しており、
そのため同じ状況で深夜アニメ放送を行い同じような問題が起きたことは、半ば自明の理だったのではないかとの声もある。


一連の問題の先駆けとなったのは、2002年に放映された『Kanon』(東映版)で、1月30日から3月末までの1クールに満たない期間に
全13話を放映したことから2連続放送を頻発し、最終放送は3話連続放送行うというトラブルが発生。
そしてその後のフジの深夜アニメでも、放送時間や日程に関する多くのトラブルが起きることとなった。



・発生した問題


・放送休止

本来放送が予定されていたであった日にもかかわらず、放送休止になることが多かった。
これにより放送が翌週にズレ込み、後述の連続放送などのさらなる問題につながることになった。

例を挙げると『クロノクルセイド』では放送中止を挟んだため全24話が2003年11月24日から2004年6月9日と非常に長い期間での放送になっており、
『GUNSLINGER GIRL』では全13話で10月スタートにも関わらず、最終話放送が2月後半という事態が発生している。
『銀河鉄道物語』では週1の放送が、完全に不定期放送と化すという珍事が発生しており、放送の曜日すら変わるためいつやっているのか
訳が分からなくなるという状況が起きている。

ただこれに関しては後述の連続放送の件も含めて、アニメを後日ちゃんと放送してくれるだけ当時のフジではまだマシな部類の問題だったとも言われている。


  • 主な作品一覧
クロノクルセイド
GUNSLINGER GIRL
『銀河鉄道物語』
『WOLF'S RAIN』
ラーゼフォン
キディ・グレイド
超重神グラヴィオン



・放送時間変更

大問題点その1
アニメの放送時間が急遽変更になり、アニメが時間通りに始まらないということが多く見られた。
特番や編成等によって放送時間が変わることは今でも良くあることが、当時問題だったのは事前告知無しで当日に変更になることで、
アニメのリアル視聴がし辛くなることもさることながら、特に録画視聴組には非常に負担がかかる問題となっていた。

これは、当時のフジで深夜枠での欧州サッカーなど海外のスポーツ中継を行っており、これが延長放送されたことによる放送時間のズレが主な原因である。
早めに延長があったかどうかわかるゴールデンタイムでの野球などの延長と違い、深夜アニメの直前まで放送されている深夜のスポーツ中継の場合
中継が終わるまで起きていないと実際に延長が起きたか知りようがなかったため、これが放送直前まで放送時間がわからないという事態につながることとなった。

それ以外でも、放送機器メンテナンスで放送時間を変更することもあり、これが先の試合延長と重なるというケースも起きている。
こうなると、もはや放送時間がいつなのかわけがわからなくなる状態だった。
酷い場合だと、2時やる予定だったアニメが、実際の放送は4時頃だったというケースも存在している
そのため、当時のフジ深夜の番組予定表はあくまでも目安で、まったく当てにならないというのがアニメファンの間では通説となっていた。


この時期DVDの流通は始まっていたものの、録画視聴に関しては未だにビデオデッキでの録画が主流であり、
ましてや時間指定はできてもネット接続による番組内容変更に対応した自動更新など存在せず、放送時間のズレへの対応は持ち主が手動で行うものだった。
そのため急な放送時間の変更は特に嫌われるものであり、視聴者に非常に負担のかかる事柄だったのである。

当時のアニメファンの中で野球等のスポーツ生中継が嫌われていたのもこういった事情が関係しており、延長によって番組の放映時間がズレ、
しかもズレる時間も10分20分と試合によって変わるために、それを確認しながら自分で録画時間をズラさなければならないのは大変な負担だった。
(ここら辺の話は武蔵丸の悲劇も参照)

ましてやこの場合事前に知りようもないことから、対応するにはあらかじめ余分に時間を確保して録画すること以外方法がなく
またそのような方法で対処しても、大幅に時間がズレた結果、録画時間外に放送されて結局見れなかったといった悲劇も数多く存在した。
このため録画視聴組は、フジではまともなアニメ視聴すら難しいと言う状況だったのである。
画質が落ちる3倍モードでも6時間しか録画できないビデオの容量を無駄に圧迫することも合わさって、この件に関しては多くの怨嗟の声が上げられた。


  • 主な作品一覧
ほぼ大体の作品で起きていたので割愛する。



・数話連続放送

上記の放送休止により放送できなかった回を放送する為他の回と合わせる、またそもそも当初のスケジュールの時点で全話放送するための枠が足らなかったことによる、
数話まとめての連続放送も頻繁行われた。

この点に関しては、あらかじめ番組編成行って放送時間を確保している為、当時の新聞のTV欄やニュータイプなどのアニメ雑誌の番組予定記事で確認ができる。
特に後半に放送期間内での放送に間に合わせるために2話連続放送することが多く、一時期数話連続放送がほぼ常態化していた。
アニメの方でもこれらの連続放送をネタにすることがあり、次回予告で「今週は、このあとも放送が続きます」などのやりとりが行われることもあった。

また番組によっては事前告知なしでの連続放送を行うこともあり、『Gilgamesh』は4・5話が告知なしで連続放送され、
4話を見ようと放送時間にTVをつけたら5話の放送が始まっていたという被害が発生している。


  • 主な作品一覧
+ ...
『Kanon』(東映版)
2002/02/14木曜 # 3、4
2002/02/21木曜 # 5、6
2002/03/21木曜 # 9、10
2002/03/28木曜 # 11、12、13【最終回】

『藍より青し』
2002/08/22木曜 # 17、18
2002/09/05木曜 # 19、20
2002/09/19木曜 # 21、22
2002/09/26木曜 # 23、24【最終回】

『超重神グラヴィオン』
2002/11/19火曜 # 6、7
2002/12/02火曜 # 9、10
2002/12/09火曜 # 11、12

灰羽連盟
2002/11/28木曜 # 6、7
2002/12/05木曜 # 8、9
2002/12/12木曜 # 10、11
2002/12/19木曜 # 12、13

『キディ・グレイド』
2003/01/08水曜 # 11、12
2003/02/26水曜 # 17、18
2003/03/05水曜 # 19、20
2003/03/12水曜 # 21、22
2003/03/19水曜 # 23、24 【最終回】

『L/R Licenced by Royal』
2003/03/27木曜 # 12、13 【最終回】

『TEXHNOLYZE』
2003/05/02木曜 # 3、4
※2話分を編集、30分で放映。

『Gilgamesh』
2003/10/12日曜 # 1、2 【初回】
2003/11/02日曜 # 4、5
2003/12/21日曜 # 11、12
2004/01/11日曜 # 14、15
2004/02/01日曜 # 18、19
2004/03/21日曜 # 25、26 【最終回】

『銀河鉄道物語』
2003/12/22月曜 # 5、6、7
2004/01/12月曜 # 10、11
2004/01/26月曜 # 13、14
2004/02/16月曜 # 16、17
2004/02/26木曜 # 18、19
2004/03/04木曜 # 4、20
2004/03/11木曜 # 1[再]、11[再]
2004/03/18木曜 # 9[再]、18[再]
2004/03/27日曜 # 22、23、24

R.O.D -THE TV-
2004/02/12木曜 # 13、14
2004/02/18木曜 # 15、16



・打ち切り

大問題点その2
上記の問題で生まれた放送のズレを、連続放送や時間変更といった措置でもカバーしきれなくなった結果、
そのまま放送期間が終わり打ち切りになるパターンもあった
この場合、アニメ製作そのものの問題ではなくあくまで放送局側の問題である為、作品のストーリーそのものはまだ続いているものが多く、
話の途中なのにいきなり放送終了するパターンがほとんどだった。
ソードマスターヤマト状態ですらない、本当に最終回のENDマークすらつかない放送終了である。

例を挙げると『R.O.D -THE TV-』では主人公の紙使い三姉妹のうち、三女・アニタを残して他二人が敵の攻撃で行方不明。
また前作主人公・読子の愛する神保町が、敵の策略で壊滅。敵・大英図書館の計画は以前進行中……と言うところで終了。
『サムライチャンプルー』は、アイヌの男・オクルとの戦いで終わり。もちろんフウの探していた「向日葵の匂いのする侍」の話は影も形も出ない。
『GAD GUARD』は、主人公ハジキが街にいられなくなりシティの外へ。それにヒロインのアラシが付いていき、二人旅が始まるもののアラシが病気で倒れる……。
というところで終わっている。
これら残りのエピソードに関してはそのほとんどが地上波では放送されず、BSやスカパーなどの有料放送で放送されることとなった。


ただしこれに関しては局の都合だけでなく、アニメ製作の遅れから放送が間に合わなくなり、総集編を挟んだことによる放送枠終了が原因の打ち切りも
含まれているため、製作側にも非があったものも存在している。
『WOLF'S RAIN』では全26話の予定が、途中で四回も総集編を挟んだことにより全30話に変更。
TV放送では最終話が放送されずに、残りは後日OVAで製作。またそれをTVで放送と言う形をとっている。


  • 主な作品一覧
+ ...
『WOLF'S RAIN』
2003年1月6日~7月29日放映、全30話。
26話で終了。

GAD GUARD
2003年4月17日~9月25日放映、全26話。
20話で終了
また『EPISODE 6』が未放映、第7話(EPISODE 8)の製作が間に合わず第6話(EPISODE 7)を二回放送すると言うトラブルも起きている。
アニマックスにて全話放送。

『TEXHNOLYZE』
2003年4月17日~9月25日放映、全22話。20話で終了。
ただし最終話に当たる『ROGUE 22 MYTH』は放送しており、終盤二話が未放送となっている。
未放送回は代替措置としてネット無料配信。

『R.O.D -THE TV-』
2003年10月16日~2004年3月18日放映、全26話。
20話で終了。
フジテレビ721・スカパー!PPV・AT-Xで全26話を放映。
また打ち切り関して、一部マスコミでも取り上げられている。

サムライチャンプルー
2004年5月20日~9月23日放映、全26話。
17話で終了。
BSフジが続きの話数を放映。




・どうしてこうなった

これらのトラブルの理由として局側からのテロップでよく発表されていたのは、『放送機器のメンテナンス』というものである。

当時のフジテレビは地上デジタルテレビ放送を間近に控えており、それに対応した機器の調整が必要となっていたが、
当然その間は放送ができなくなるため、そのために放送が少ない深夜帯にこのメンテナンスを行うこととなっていた。
フジの場合、朝4時30分に朝のニュース番組が始まるため、それまでにその日のメンテナンス作業を終えなければならず
結果それより前の時間の深夜アニメなどの時間帯の番組を、日によっては時間を変えたり放送休止したりせざるを得なかったという事情があったとされている。

先の『R.O.D -THE TV-』打ち切りの際の読売新聞の取材に対しても

「当初は全話放送の予定だったが、スポーツ中継の延長や放送機器の保守点検などのため、放送時間が確保できなくなってしまった」

という回答をしており、これらのトラブルには機器のメンテナンスの問題が深く関わっていたのは事実と思われる。
このような地上デジタルへの対応のためのメンテナンスは当時では珍しいことではなく、実際他局でも放送機器メンテナンスは行われており、
それを影響の少ない深夜に行うことは確かにほぼ通例となっていた。


が、そのような理由があったとしても、メンテナンスのための時間を局側でしっかりと確保しておけば済む問題であるため
本当の理由としては、やはりフジの番組編成そのものに無理があったのではないか、と言われている。
他局の深夜番組ではきちんとした放送がなされておりフジほどのトラブルは起こっていなかったことも、フジの編成への疑惑を強める要因となった。


少々話は変わるが、フジの朝のニュース番組を時間はズラせないという事情は、スポーツ番組の延長放送による問題にも関係しており

試合の延長放送で放送時間がズレる→深夜のアニメ帯にまでズレが出てくる→深夜アニメの後ろにある朝のニュース番組はズラすことができない
→よってあまりに放送時間のズレが大きかった場合、その直前の深夜アニメは放送時間が確保できなくなり放送休止になる。

と、いったことにも影響している。
2003年からは朝のニュース番組が朝4時30分から朝4時25分に繰り上げになったことにより、30分延長の猶予がなくなり放送休止が増えるといった事態も起きている。
(主に『GAD GUARD』、『TEXHNOLYZE』が被害を受けている)
いずれにせよ、やはり一番の問題は無茶な番組編成にあり、それがこれらのトラブルの多発につながったのではないかとの見方が強い。



また、深夜アニメの拡大の中ではとにかく放送枠の確保することが急務であり、これらのトラブルがあったとしても
放送枠の確保のためには多少の無茶は無視せざるを得なかったというアニメ側の事情が問題を後押ししたという説もある。

当時の深夜アニメ放送は、大体が地上波キー局に頼っている状況であり、日本テレビTBS・フジ・テレビ朝日・テレ東で多くの深夜アニメが放送されている。
これはMXなどの地方局は、地上デジタル放送に対応していなかったため視聴できる地域や方法が現在よりも限られていたためである。
またネット配信等の方法は全く普及していない状態で、BSなどの放送も主流とは言えず、多くの視聴者を確保できるのは地上波キー局の深夜放送となっていた。
そのため、トラブルがあろうともこれらキー局で放送できることは、ビジネス面からみても非常に魅力的だったのである。

実際に放送に関して、局側から「全話を放映しきるのは最初から無理」とあらかじめある程度説明されていたという話もあり、
この問題では、そうした条件だったとしても放映を決定し、全話放映という当たり前の拘りを捨てた制作・提供側も原因の一つだったという声も存在する。



・その後

これらの放送トラブルによりフジ深夜のアニメ放送は、次第に数そのものが減少していくこととなる。
そして2004年10月には、フジテレビの深夜アニメはほぼ全滅してしまった

この理由は明確になっていないが、やはり度重なるトラブルによって視聴者やスポンサー・アニメ制作会社から信用を無くしたこと。
またフジ局内でもこれらの無茶な編成が問題視されたのではないかと言われている。


その後、2005年4月。フジテレビは新しいアニメ枠として『ノイタミナ』を制作。
再び、深夜アニメ放送を再開することなった。
この枠の誕生の経緯に関しては、 「アニメの常識を覆したい」「すべての人にアニメを見てもらいたい」 といった意気込みが語られていたものの
裏事情として、これらのトラブルによって失った信用を取り戻すため、明確なアニメ枠と放送時間帯をしっかりと確保していることを
アピールする必要があったのではないかとの見方もされている。

結果としては、『ノイタミナ』はこの時のような放送休止やイレギュラーな放送時間変更を行うことなく、安定した深夜アニメ放送を行っており
再びフジテレビ深夜のアニメ放送を定着させることに成功している。


・余談

  • 当時テレ朝でも深夜アニメ枠があり、『巌窟王』『SoltyRei』『SPEED GRAPHER』などのアニメを放送している。
    フジの深夜枠が減り始めた際、新しい受け入れ先のように放送本数が増えていったが、『IGPX』『タイドライン・ブルー』『ガラスの艦隊』の放送の際、終盤の話を放送せずに最終回を迎えるというこの時のフジと似たような問題を起こしている。
    そして2007年4月改編以降、テレ朝でも深夜アニメ枠自体が消滅してしまった。

    その後は『Zombie-loan』や『新世界より』、『ユーリ!!! on ICE』『タイガーマスクW』など不定期なアニメ放送は行っているものの、
    安定したアニメ放送枠そのものは未だに消滅したままとなっている。





追記・修正は当時の状況を知る方がお願いします。



この項目が面白かったなら……\ポチッと/