長巻

登録日:2009/06/14 Sun 00:13:32
更新日:2025/01/28 Tue 03:43:07
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概要

長巻(ながまき)とは日本刀の一種。室町時代に誕生した。中巻とも呼ばれる。

薙刀によく似た武器だが、長巻は分類としては長柄武器では無く刀剣である。

歴史

長巻は長く重い刀身を持つ大太刀・野太刀の操作性を高めるべく刃根元部に握りになるよう巻物を付けた中巻野太刀に端を発している。

この改造から生まれた刀剣は使い勝手が良かったことからか、後に最初から長柄をもった野太刀が登場した。これが長巻の始まりである。

柄は三~四尺(約90~120㎝)くらい、刀身は三尺(約90cm)前後と野太刀よりも幅広で、非常に重い武器になったがその長柄のおかげで野太刀よりも扱い易かった。

戦国時代には現在の形になり「に慣れない者は長巻を使え」と言われ、長柄武器の補助兵器として長槍隊の後ろに備えて大将の馬廻りについた。長巻術という武術も考案され、中には石突に予備の刃物を取り付けた物も作られた。

あの豊臣秀吉や上杉景勝などは、自分の軍の中に長巻隊をもっていた。

とはいえ大型刀剣系武器の宿命か、隊列の中では振るいにくく、
集団戦法に不向きゆえに槍のように主流の武器にはならなかった。


由来諸説

元々、戦国の世における日本での最強の近接武器は、長刀(薙刀)だと言われていた。
リーチが長く、とも野太刀ともとれぬ変幻自在の軌道を描く攻撃と、形状が持つ特性故に膂力のない人にも扱い易いその便利さからである。

然し世は戦国。侍と侍とが戦場でかち合う、儀式めいた戦いの前では、「それは女の使う道具だ」と敬遠されてしまう。

確かに長刀の祖は護身用具ではある。使えば強いのに、見栄のせいで使えない、なんと不器用な話しか。


ある時、一人の兵が、戦場で拾ったを見て思った。

「柄が鞘の分、長ければ……」

そして、やってみた。
抜いた鞘の口に、柄の底を無理やりはめ込んだのだ。
不器用にだが、長巻に似る形状。
更に接合部を手ぬぐいで縛れば、もう外れることはない。

結果、いざ戦場似に行く時には刀一本の姿で。
そして戦場では、最強武器(長刀)に似た形状でぶんまわしまくると言う、チキン武器の誕生である。

以上は諸説の一つに過ぎないが、想像すると面白いかも知れない。
もっとも薙刀が女性の武器という認識は合戦がなくなって長い年月が経った江戸時代中期以降の話であり、
戦国時代や江戸時代初期には薙刀を扱う武人や武芸者も珍しくなかったのでこの逸話は江戸時代中期以降の創作と考えられる。
そもそも長巻が成立したのは室町時代だし。
また、槍や薙刀、長巻などの長柄武器の柄は衝撃が集中するためにかなり折れやすい。
そのために実戦用の長柄武器の柄は折れないように樫などの強靭な木材で製作し、さらに長い茎*1で内側から補強するという手間のかかる手法で作られている。
そのため刀の鞘を無理やり柄に突き刺して作った簡易な長巻は実用に耐えうる強度があるとは考えにくい。
そういうことからも上述の逸話は平和な時代の創作の可能性が高いと言える。

ちなみに戦国時代やそれ以前の合戦で使われた薙刀は重厚長大でお世辞にも女性向けとは言い難く、
女性向けの薙刀は合戦用の薙刀を軽量小型化したものであり姫薙刀と呼ばれて区別されていた。
そして合戦がなくなった江戸時代に合戦用の大型の薙刀が廃れ、姫薙刀が一般化したことから姫薙刀が普通の薙刀と扱われ、
本来の合戦用の薙刀は大薙刀と呼ばれるようになったのである。


創作における長巻

現代における知名度は低く、それに比例してフィクションでもかなりマイナーな武器である。
これは長巻自体の知名度の低さもさることながら、創作においては設定次第で女子供でも大太刀を軽々振るえるため、そもそも膂力不足の解決を長巻に求める必要がないからだろう。
また長巻と言う呼称がマイナー且つ力強さに欠ける為か、フィクションに出てくる長巻状の武器は「薙刀」や「大太刀」扱いされる事が多い。これには両者と見分けがつきにくいという理由もある。
如何に主流で無かったとはいえど、時の権力者に認められ重用されたこと考えると、悲しいほどに廃れてしまったと言えよう。

主力として使っている。

令サムで颯爽と登場したイケメン鎧武者にして長巻使い。
やや振りが遅いが長いリーチと火力を備えた長巻らしい性能を持つ。

敵の参謀格であり重量級の長巻の使い手。
奥義「崩塊斬」は日本刀を叩き斬れたりして普通に強いのだが、相手が主人公サイド最強格の伊織だったのであえなくかませ犬と化した。

武器として登場。こんぼうより強くカタナより弱い。
早くカタナが欲しいところだが、現実はそう甘くない。
特にDS版では魔蝕虫討伐まで武器はこれで我慢せざるを得ないことがザラ。
前述のように大きな武器だが「女性が使った」というイメージからか普通のカタナより弱く、
直感的でないためか近年のシリーズでは「青銅の太刀」に立場を取られる形でリストラされている。

  • 長巻・ナギナタ刀(Kenshi)
長巻が刀カテゴリの武器として登場。
本作の刀は対人ボーナスと引き換えに重装備やロボットが苦手という特徴があるのだが、長巻のみ性能が他の刀と少し異なり、対人ボーナスが無い代わりに対ロボットのマイナス補正もなく、重装備に対する軽減率も低めになっている。
どうしても終盤まで刀を使いたい人は長巻で戦うことになるだろう。ただしモーションは普通の刀と同じなので少し違和感がある。
ナギナタ刀は長柄武器の武器で、刀身:柄がほぼ1:1という長巻に近いデザイン。
こちらは長巻とは逆に「刀カテゴリの特性を持った長柄武器」という性質を持ち、対人ボーナスを持つ代わりに装甲貫通マイナスと対ロボットのマイナス補正を持つ。

ゲルググの武器であるビームナギナタは形状からして長巻のほうが近い。
もっとも長巻も薙刀も決して双頭刃ではないが。

明らかに長巻状の武器を使っているが、テキストでは刀、長刀という表現をされている。
本人の怪力によって片手で軽々と振り回し、居合いまで使っており長柄の意味は殆ど無い。
彼女は魔法で刀身の形を変えられる為、薙刀や槍、ノコギリ等の長柄武器に変形させる為に柄を長くしているものと思われる。

DLC2に登場するボス、騎士アーロンが所持している武器。名言はされていないが形状からしてほぼ長巻で間違いないだろう。
騎士アーロン自身の俊敏な動きと得物の長い間合いも相まって、DLCボスに恥じぬ大変な強敵となる。
彼を倒した後はその妖刀をプレイヤーが使用することも可能。
プレイヤーの武器としても優れたリーチを持つ強力な武器だが、同作の刀武器共通の弱点として耐久性が低く長期戦には向かず、同じ刀武器のひとつである「物干し竿」のリーチには流石に負けてしまう。
また、この武器独自の特徴として切腹することで強化するという如何にも妖刀らしい行動がある。


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最終更新:2025年01月28日 03:43

*1 刀身や穂先の根本から柄の中に伸びる鋼鉄の芯