一人去るとき(MtG)

登録日:2011/09/03(土) 16:35:43
更新日:2021/05/10 Mon 02:01:45
所要時間:約 6 分で読めます




一人去るとき。 ―Mark Rosewater


「黒を葬る」特集にようこそ! 今週は、マジックが生まれて以来最大の変革についてのお話だ。
既に諸君もご存知の通り、来年の夏に発売される基本セット2013より、マジックは4つの色によるゲームになる。すなわち、白、青、赤、緑だ。
黒はカラー・ホイールから退席し、そこに列するカードたちは、未来のゲームから永久に除外されることになる。
この改革は、基本セット2012に端を発し、イニストラード・ブロックにおいて段階的に実行に移され、まもなく詳細が発表される2012年春の”すんげえヤバい”小型セット(黒を見送る盛大なお別れパーティーになるだろう)をもって完了となる。

さて、ここで語るべきは、この決定に至るまでの過程と、多くの人々から寄せられた質問のお便り ―たとえば、
「どうしてこんなことになるの?」とか、「なぜ黒なの?」とか、「居場所の無くなったシュオルちゃんを貰い受けてもいい?」といった類の物― に対する回答だろう。
この改革に至った理由を短く言えば「必然」だ。もう少し長い理由は本文で語るが、この一連の変更は、マジックを次のステージに押し上げるために必要なことであり、これによって未来のマジックはより強固に、よりエキサイティングになると、私は確信している。
では、お別れの物語を始めるとしよう。



マローことマーク・ローズウォーター自らが記したこのコラム、なんと「MTGから黒が消滅する」と書かれている。

このコラムが世に出回ったのは基本セット2012が発売された頃(2011年7月ごろ)。
実は同セットに収録された黒のカードのあまりの弱さ(例:ケツ王)から、「こうなるだろう」ということはある程度予測されていた。

しかし、実際に黒を除外するとなると「黒の役割(除去やハンデス等)はどの色に移籍になるのか?」「対抗色・友好色の関係はどうなるのか?」「そもそも裏面を変えないといけないのではないか?」など問題も多い。
WotCがどのようにこの課題に取り組むのかは、コラムにも記載されている小型セットで明らかになるだろう。
恐らく、この変更はMTGの中でもカードデザインが新枠になった第8版かそれ以上に大きなものだろう。事実、黒の愛好家からの反発は大きなものになると思われる。

だが、WotCがこのような決定を下した背景には目に見える以上に大きなものがある。

我々プレイヤーも狼狽えることなく、この決定を受け入れていきたい。そして、短い間ではあるが、黒の華々しい終末を見届けようではないか。



黒を愛する方々へ。

追記、修正お願いします。

















   *   *
 *   + 嘘か真か☆
  n ∧_∧ n
+ (ヨ(*´∀`)E)
  Y   Y  *



このコラム、実は2ちゃんねるTCG板に存在する黒スレに貼られたコピペ。
この手のコピペとしては妙に完成度が高く、何も考えずに読むとうっかり信じかねない。



では、なぜこのようなコピペが誕生したのだろうか?
それは当時の黒の勢いの無さが原因といえる。

過去には暗黒の儀式やHymn to Tourach、ネクロポーテンスなど様々なパワーカードを擁し、さらに憎悪やカーノファージのようなスーサイド戦法のスリル溢れる魅力が黒にはあった。

ところが、現在ではそれらのカードは軒並み使用できず、せいぜい他の色に1マナハンデスや除去が出張する程度。
確かに墓所のタイタンや吸血鬼の夜鷲は強力なカードだが、そこに身を削る黒らしさはなかった。

そこに舞い降りたのが、ミラディンの傷跡ブロック最後のエキスパンション”新たなるファイレクシア”。
ファイレクシアといえば黒。黒といえばファイレクシア。鬱屈した日々を過ごしていた黒の愛好家たちにとってはまたとない朗報であった。
「これでまたあの頃の黒単が組める!」



誰もがそう期待した。

だが……
















シェオルたん「やあ^^」



黒の看板といえる伝説クリーチャーにはなぜか沼渡りという小物甚だしい能力が付けられ、一気にネタキャラに。

過去のエースファイレクシアの抹殺者のリメイクファイレクシアの抹消者もその異常な色拘束から黒単での使用が期待されたが、同セットにて登場した黒い除去四肢切断によって活躍の場が与えられない。
ではその四肢切断が……と思うだろうが、その四肢切断はファイレクシア・マナを持っているためデッキに黒マナが無くても使用できる。

黒のエースとして期待されたクリーチャーが自らの色である黒い除去呪文に駆逐され、さらにその除去呪文には黒マナが必要無い。
この仕打ちに黒スレ民は葬式状態。多色のジョーさんをスケベ色に染め上げる日々が続いた。



そして基本セット2012。

ここでも多くの黒愛好家が「せめて強迫は…」「新リリアナたんwktk」と様々な思惑を抱いていた。

しかし、その結果は惨憺たるものであった。



●新規神話レアがヴァーズゴスの血王(通称ケツ王)
●新規PWが収録された青・赤・緑に対して過去の再録の黒・白
●さらに白のギデオン・ジュラは公式で「実績を残したから」という最もな理由での再録だが、黒のソリン・マルコフは「イケメンだから」というあんまりな理由
●数少ない黒を支えていた強迫がスタン落ち
●黒の強みである単体除去を無力化するキーワード能力「呪禁」の登場
●血の味()


これにはさすがの黒スレ民も絶望

ほどなくして上記の嘘コラムが誕生したというわけである。



カードパワーの向上に伴い、黒ならではのデメリット持ちのカードが少なくなってしまった昨今。

果たして、過去の刺激的な黒単を組める日は再び訪れるのであろうか……



この後「アヴァシンの帰還」でまたやらかして

MtGの5色とは「白青赤緑」だとか言われた事が*1


ただし、このネタはすべてのプレイヤーに笑って受け入れられたわけではない
このネタはあくまで「黒スレ」というコミュニティのネタが、あまりの完成度の高さから持ち出されてしまい、ここにあれやこれやと尾ひれがついてしまったものなのだ。
この時期の黒が単に不遇一辺倒だったかというとまったくそんなことはなく、「墓所のタイタンや虐殺のワームのような良質なクリーチャーがいて」「四肢切断で死ぬとはいえファイレクシアの抹消者がいて*2」「一時期は3マナPW最強格といわれたヴェールのリリアナがいて」「挙句グリセルブランドという踏み倒しの定番枠までもらって」いる。
他にも「深淵の迫害者」「ファイレクシアの十字軍」のように、評価こそ大きく分かれるがかなり強烈なカードも多く擁していた。

そもそも当時の黒使いは「単色でなければ黒にあらず」という意識を持っておきながら「自分たちだけがΦで色の役割を奪われた被害者」「他の色は恵まれているのになぜ自分たちだけ」という被害者意識に染まっており、それが黒スレという当時珍しかったMTGのネタスレに集中したことで、単なる自虐ネタが次第に被害者の怒号へと変わってしまったのだ。
ネタとしての完成度が妙に高いので語られやすいのだが、当時の冷静なプレイヤーからは、「君も最初は面白かったが、もう飽きたよ。(ラクァタスの侮蔑)」と白い目で見られていたネタでもある。
確かに弱かった。だが「アヴァシンの帰還のリミテッドの話とスタンダードの構築環境の話を混同する」「《ファイレクシアの抹消者》は《四肢切断》のせいでまったく活躍できなかった」なんて感じでどんどん尾ひれがついてしまっている。

下のコメント欄でも
「グリセルブランドとか夜鷲みたいな、黒のくせにノーリスクハイリターンなクリーチャーが、環境からスーサイドな黒を駆逐とか一番やっちゃだめだと思う」
という意見が出ているが、筆者の知人は逆に「スーサイドのような下品な戦術は黒らしからぬものだ」と、青黒コンやエスパーコンをベースにした理想像を語っていた。
ほかにもショップ大会の場や当時のブログでは「暗黒の儀式がない黒は黒ではない」「ヨーグモスのいないファイレクシアなんてまがいものだ」「そもそも黒という色は…」という自分ルールを押し付けて自虐するプレイヤーも多かったため、付き合わされる側としてはたまったもんじゃなかった
このネタはあくまでも「黒スレ(とその影響を大きく受けたアニヲタwiki、ニコニコ動画など)」の内輪ネタなのだが、この内輪ネタを外に持ち出して語るプレイヤーも当時はかなり多く、
諸手を挙げて歓迎されたネタのように語られがちだが実際は「巣に帰ってやれ」「スーサイドはウルザ時代だけにしておけ」とすげなく返されるということも多かった。
そしてニコニコ大百科のコメント欄などでも分かるように、「批判的に言うと猛然と反論してくる」層が妙に多いものだから賢い人は触れていない。
つまりそういうネタなのである。

とはいえ基本セット2012や、続くイニストラードにおいて白や青や緑が異様なほどの強化をもらい、赤は大きく弱体化したとはいえローウィン~ミラディンの傷跡ブロックまでとても強い存在感を残し続けていた。
そして緑黒剣のプロテクションをはじめ、さまざまなカードでいじめ抜かれ、ネタレアをあらかた押し付けられた冬の時代だったのもまた事実。
みんなでわいわい環境で楽しんでいる中、黒使いだけが強化らしい強化をもらえず疎外感を感じるのも仕方のないことなのかもしれない。

このネタが流行した理由は、単に「マローのエミュが面白かったから」だけではない、当時のMTGを取り巻く複雑な事情がある。
たまには被害者ぶったり煽ったりするのをやめて、当時の話で素直に盛り上がるのもよいのではないだろうか。


パワーのあり過ぎなんてことが世の中にあるとしたら、それは俺がまだ追記・修正してないものだな。

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最終更新:2021年05月10日 02:01

*1 茶とは旧枠でアーティファクトカードが茶色(新枠は銀)だったので、アーティファクトカードのことを今でも茶とする名残

*2 当時隆盛していた赤や緑のビートダウンに対して激烈に刺さるカードだった。確かに《四肢切断》で死ぬが、熟練したプレイヤーだと《変異原性の成長》などでそれをすかしてきたりするのでかなりたちが悪く、専用のサイドボードを考えるプレイヤーもいた。